「今日は夏祭りがあるらしいぞー」
「ほーん」
僕は先日知り合った、マヤノトップガンのトレーナーと話していた。このトレーナーはチームアルタイルのトレーナーでもあり、メンバーにはこの前あったアグネスデジタルもいるらしい。
「担当してるウマ娘と行くと喜ぶ上に、トレーニングの息抜きにもなる。行ってみたらどうだ?」
「言われなくても、もう行く予定ですよ」
今日は夜にテイオー達と約束をしている。言いそびれたけれど夏合宿中は他のトレーナーとよく会うので少しだけトレーナー仲間が出来た。
「流石だなぁ……全く、トレーナーとしての腕は間違いないんだがなぁ……」
「なんか文句あります?」
「その舐めてる口調だよ!!全く生意気で面白い」
生意気で腹を立てるかと思いきや面白いと言い出す。僕にはもう訳わかんない。
「おぉ、お二人共お揃いだねー」
「げ…もっと生意気なのが来た」
「何よ!!私に文句あるの?」
今話に入ってきたのはこれまたこの前知り合った会長のトレーナーだ。会長程のウマ娘のトレーナーの癖にチームは作っていないらしい。
「まぁまぁ落ち着きなさいな二人とも」
「あんたもあんたで腹立つわねー……」
会長のトレーナーは最初は少し怖かったけど、話してみるととてもいい人だ。後、とてもいじりがいのある人だ。
「最年少トレーナーに煽られる歴戦のシンボリルドルフトレーナー……もう絵面が面白い」
「あのねぇ…」
「おー、怖い怖い」
アルタイルトレーナーはまぁ、かなりお調子者でのんびりしている。ただ、筋肉の圧が凄いから結局ちょっと怖い。
「そろぼち話すの飽きた」
「多分言うだろうと思ったー!!お前ほんっと面白い」
「あーはいはい」
僕はお前が訳わかんなくて面白いわ。
「トレーナー、ボクに押さえつけられたら勝てる?」
「やってみ?」
テイオーにそんなことを聞かれたので試しに壁に押し付けてもらう。
「力強いな」
「マヤノが人間とウマ娘じゃあ、力の差が凄いって言ってて気になってさー。マヤノのトレーナーあんなにムキムキマッチョなのにマヤノの方が力強いんだってー」
「それは凄いな」
アルタイルトレーナーは他のトレーナーやウマ娘にも筋肉モリモリマッチョマンの変態と呼ばれる程の筋肉ダルマだ。あれでもウマ娘に勝てないのか。
「テイオー、見てて?」
「うん?」
テイオーに押さえつけられた状態から上手く抜け出してみせる。
「えぇ!?」
「まぁまぁまぁ」
昔、虐められていた時に護身用でこういう意味の無い技術を覚えた。
「トレーナーすごいねー……」
「無駄知識だし。日常で使うことないから」
というか、僕ならウマ娘との力比べでも少し抵抗できるし……あんまり意味は無い。
「そういえば夜は夏祭り行く約束だけど、服装はどうする?」
「ボクは私服で行くつもりだよー!!」
「へい。あぁ、あとキングとタキオンにも私服で来るように言っといてくれ」
「うん!!」
折角の夏祭りだ。楽しめるだけ楽しまなきゃね。
「やーやー、トレーナー?待ったー?」
「待った」
「そこは今来たとこって言うところでしょ……」
キングにツッコミをされたが無視である。今は夏祭りということで会場の近くに集合したところだった。
「ふむ……トレーナー君、君は乙女心というものが分かっていないようだね」
「タキオンも言うのかよ……テイオーとそんなカップルみたいな話しても困る」
「あぁ……君達に恋愛感情は一切ないんだったね」
テイオーと恋愛はなんか違う気がする。テイオーもそう言ってたし。あと恋愛について一番分かってなさそうなタキオンが言うのはちょっと腹立つ。
「はぁ……ほら行くよー」
「やる気出しなさいよ……」
「ほらほらー♪行っくよー♪」
「キモイ」
「酷すぎる」
キングに言われた通りにしただけなのに……なんでそんなことを言うんだキング!!
「三人とも何してんのさー!!早く行くよー!!」
「へーい」
テイオーは待ちきれないらしい。夏合宿に来てから初日以降息抜きの時間がなかなか取れなかったし当然と言えば当然だけどね。
僕は今、右手に綿菓子を持ち、左手にりんご飴を持って食べながら歩いている。
「うーん♪」
「トレーナー甘いもの食べ過ぎじゃない?マックイーンみたいだよ?」
「メジロのお嬢様は甘いもの好きなんだ」
意外なことを聞いた。そういえば、最近マックイーンとあのトレーナーを見ていない。タキオンに助けて貰ったあの一件以来、会っていない気がする。
「トレーナー、食べないんだったらボクが貰っちゃうよー!!」
「あ!?」
テイオーにりんご飴を奪われる。
「あー!!」
「ほらほらー、食べちゃうよー!!」
「テイオー、食べ物の恨みは怖いぞ」
テイオーが持っているりんご飴を全力で奪いに行く。しかしテイオーに一齧りされた。
「あーー!!」
「へーんだ!!」
何もしてないのに……理不尽だ……
「しょぼん…」
「と、トレーナー!?そんな顔しなくてもいいじゃん!!ほら返すからー!!」
どうやらすごい顔をしていたらしい。だって、食べてたもの取られたら誰でも悲しくなるよね?そういうことなんすわ。
「えっと……トレーナー?それ食べるのかしら?」
「……?」
キングが顔を赤くしてこっちを見てくるがなんの事だかよく分からない。
「……?」
テイオーも同じくらしい。
「君達二人はもう少し学んだ方がいいことがあるようだね……」
何故かよく分からないがタキオンから呆れられた。何かあったのだろうか。
「まぁいいや」
気にしないことにしよう。
りんご飴も綿菓子も食べ終え、僕はアルタイルトレーナーから聞いていた草原にやってきた。そこにはアルタイルトレーナーとそのチームメンバーが居た。
「おー、来たなー」
「やーほー……って、そこで倒れてるのアグネスデジタルだろ?どした」
「何か夏祭り中に倒れた。なーに、いつもの事だ気にするな」
いや、気にしない方が無理あるだろ。草原で横にされているアグネスデジタルはどこか幸せそうな顔をしている。
「そういやぁ、こいつの遺言は『テイオーさんとトレーナーさんが尊すぎてしんどい……あぁ……しゅき……』だったんだが、何かしたか?」
「……?」
心当たりはない。ちなみに後ろでキングが呆れた顔をしていた。
「いやー……テイオーちゃん?」
「あっ!!マヤノじゃん!!」
マヤノトップガンがテイオーに顔を赤くして話しかける。
「どうしたのマヤノ?」
「テイオーちゃん本当に何も気にしてないんだ……あはは……」
「どうしたのマヤノ!?」
何やらマヤノトップガンの様子がおかしい。どうしたんだろう。
「マヤノ君、あの二人にその話をしても無駄だよ」
「そうみたいだねー……」
マヤノトップガンとアグネスタキオンという珍しい組み合わせの会話が見れた。話の内容は理解出来なかったが。
「おー、皆!!そろそろ打ち上がるはずだ」
アルタイルトレーナーがそう言った瞬間、空に大きな花火が咲いた。
「おー!!本当に見やすい!!」
アルタイルトレーナーに紹介してもらったのは花火を見るための場所だった。すこし離れているので穴場スポットらしい。
「すごーい!!」
「ふむ……花火は心が和むねぇ……」
「そうねぇ……」
花火は次々に上がっていく。物凄い綺麗だ。そしてなんだか凄くしんみりした気持ちになる。
「テイオー」
「なになに?」
「明日からはもう遊んでる暇ないぞ」
「……分かってる」
時間はそこまで残されていない。怪我はまだ完治した訳では無い。状況が厳しいのは今も変わらない。
「トレーナー、ボクまだまだ頑張るから」
「大丈夫、僕も頑張るから」
「……いや!!ボクの方が頑張っちゃうもんねー!!」
花火を見ながらいつものように口喧嘩を始めた
デジタル氏、出てきて二話目で見事に気絶。