夏合宿も終わり、今日からテイオーがまともに練習出来るようになった。まだ、レースに出られるかどうかは医者の判断次第ではあるが、このペースならギリギリ間に合うはずだ。
「トレーナー、どんな練習するの?」
「とりあえず一周してきて。走りがどんな感じかを見ておきたいから」
「分かった」
テイオーが走り出す。走っているだけで感動する。テイオーが走っているのを見るのはかなり久しぶりだ。
「だよなぁ……」
筋力も筋トレをしていたことでついている。スピードは意外と数ヶ月休んでも落ちずらい。問題となるスタミナは夏合宿でリカバリーした。
ただ、それだけやっても元の走りとはかなり程遠い。
「……そうねぇ」
菊花賞までは二ヶ月をきっている。このままだと走れたとしても勝てるかどうか……
「トレーナー?」
「うん?」
考えているとテイオーが僕の顔を覗き込んできた。
「今の走りどうだった?」
「……テイオーはどう思う?」
「正直、全然ダメ。自分の走りじゃないみたい」
テイオーはキツくはなさそうだった。スタミナは夏合宿のおかげでついていたらしい。
「テイオー、今日は久しぶりあとはコースをジョギング。フォームを意識しながらやること」
「はーい」
走り出すテイオーを見ながら考える。何とかして勝たせてやりたい。
ただ、やはり走り方がかなり悪い。いつものように集団に紛れて走るとどうなるか想像出来ない。
「……試してみるしかないか」
明日は併走トレーニングにしよう。そこでどうなるかでまた考え直そうかな。
チームアルタイルの協力の元、併走トレーニングを実施することになった。アルタイルからマヤノを含む三名と連れてきたタキオンとキング、そしてテイオーの六人での併走となった。内容はコース一周での競走だ。
「テイオー、出来る限りでいいからやってみて」
「分かった、まかせて」
揃っているメンバーはかなりの強豪揃いだ。アルタイルメンバーはもちろんだが、タキオンもキングもかなり強い。
「それにしてもこんなにメンバーを揃えて併走とは何を考えてるんだ?」
「見てりゃ分かる」
アルタイルトレーナーから声をかけられる。ダメ元で連絡してみたら快くOKしてくれた。
「しかし、病み上がりでこのメンバーは……」
「まぁまぁ」
正直、結果は見えている。テイオーは多分、勝てない。
「デュフフ……あ、始めます?」
「頼むよデジタル」
スタート役のアグネスデジタル。相変わらずである。
「スタート!!」
併走が始まる。テイオーはいつものように集団に入って走る。
先頭はマヤノトップガン。変幻自在に作戦を変える彼女、今回は逃げるつもりらしい。
「走れてる!!フォームは崩れてるが、これはすごい。やるなぁテイオーは」
アルタイルトレーナーが絶賛する。僕もかなり走れているとは思う。けど多分……
最後のコーナーに入り、皆がスパートをかけ出す。テイオーもスパートをかけようとしているみたいだけど……
「やっぱりか」
集団をいつものように抜け出せない。スピードもスタミナもあるのに、走り方のせいでスピードを出し切れていない。
そうしている間にテイオーの周りのメンバーはテイオーを置いていく。
そしてそのままゴール。一位はサラッとタキオンが取って、テイオーは最下位だった。
「アグネスタキオンはとんでもないな……デジタルから聞いてはいたが……」
実際、タキオンがここまで速いとは思っていなかった。デビューすらしていない中、デビュー済みで結果も残しているマヤノトップガンより速いのは明らかに異常だ。
いや、今はそこはいいんだ。
「そしてテイオーは最下位と……なぁ、お前こうなることわかってたな?」
「だから何さ」
「全くお前は流石だなぁ」
アルタイルトレーナーの言葉を無視して考える。テイオーは一気にスピードを出し切れない。なら考えられる手は一つだ。
「ねぇ、ちょっといい」
「なんだどしたよ」
「紹介して欲しいウマ娘がいるんだけど……」
「テイオーちゃん、大丈夫?」
「う…うん」
負けた。走れなかった。スピードを出そうとしてもなかなか上がってこない。結局、トップスピードになる頃には手遅れになった。
「マヤノ、今日はありがとう」
「テイオーちゃん……」
悔しい。悔しくてたまらない。
「テイオー」
トレーナーが僕の元にやってきた。
「作戦がある」
険しい顔でトレーナーは僕にそう言った。
次回、菊花賞です