皆で歩む夢の話   作:月見草クロス

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色々してたら投稿遅くなったゼ


トウカイテイオー

テイオーがレースで走っている。それだけでも感動する。しかしスタートで出遅れてしまったテイオーは最後方からのスタートとなっていた。

 

「……厳しいな」

 

「…見ててください」

 

会長から不安の声が漏れる。僕はむしろこの状況は狙い通りだった。

 

「……上手くいくのか、本当に」

 

「テイオー次第かな……」

 

テイオーは最後まで加速力を取り戻すことは出来なかった。だからこその秘策があった。

 

「テイオー!!」 「負けるなテイオー!!」 「ファイトー!!」 「まだ行けるぞー!!」

 

ファンクラブの人達も観客もテイオーの走りを見てかなり不安になっている。やはり走り方が素人目でも悪くなっている。

 

「大丈夫」

 

まだ慌てるような時間じゃない。

 

『さぁ、第二コーナーに入りました!!一体誰がどこで仕掛けるのか!!そして、トウカイテイオーは大丈夫なのか!!』

 

順位はまだ動かない。菊花賞は3000m。今までの皐月賞、ダービーに比べると距離がかなり長い。途中で仕掛けるのはリスクが高すぎるから当然だ。

 

「……うぅ」

 

誰よりも勝つことを信じなければいけないのに、息が詰まる。テイオーの走りを見るのが怖い。

 

「トレーナー君、しっかり見たまえ」

 

「タキオン……」

 

そういえば、皐月賞でも菊花賞でもタキオンには色々助けられた。どうやら、今日もらしい。

 

『さぁ!!最終コーナーに差し掛かった!!一体誰が前に抜け出すのか!!』

 

そろそろ、始まる。

 

 

 

『トレーナー?ゴルシを呼んで何するのさ』

 

『そりゃあ、ロングスパートの練習だよ。スピードにすぐ乗り切れないならゆっくりスピードを出し始めればいいだろ?』

 

『というわけで、ロングスパートの達人ゴルシちゃんの出番ってわけ!!テイオー!!私に任せときな!!』

 

『えぇ……本当に大丈夫かなぁ……』

 

 

そろそろ……!!

 

ボクは最終コーナーに差し掛かったところで大回りをしながら少しずつスピードをあげる。一番後ろでレース展開をするつもりは無かったのだが、スタート練習まではする時間がなかったので、ロングスパートの練習ついでに追い越しのコツをゴルシに教えてもらっていた。

 

『おっと!!ここでトウカイテイオーが!!ゆっくり!!ゆっくりと上がってきた!!』

 

一番後ろだったので少し諦めかけていた観客達がそれを見て大きくわきあがる。

 

前が、遠く感じる。いつもならすぐ近くにみえる先頭がはるか遠くに見える。でも、ボクは負けられない。今日だけは絶対に負けたくない。

 

『トウカイテイオー!!期待を裏切らないトウカイテイオー!!来た!!来た!!まさかのロングスパートで少しずつ前に追いついていく!!』

 

少しずつ前が近くなっていく。それでもまだ遠い。

 

「負けるかァァァァァ!!」

 

声を出して自分を奮い立たせる。前へ前へと足を動かす。

 

『さぁ!!最後の直線!!トウカイテイオー!!差し切れるか!!』

 

気づけば先頭がいつもと同じくらいの距離にいた。そして大回りをしたおかげで直線では足場もいいし、前には誰もいない。

 

スピードもトップスピードに近い。これなら……!!

 

「はぁぁぁっ!!」

 

もう一度、自分を奮い立たせ、前に上がっていく。そして……!!

 

『トウカイテイオー!!ここで先頭を躍り出た!!』

 

遂に前には誰もいなくなった。

後は逃げ切るだけ、そんな時だった。

 

 

足が……痛い……!!

自分でも分かった。恐らく、足が限界を越えようとしている。それを痛みという形で知らせてくれているのだ。

 

次の1歩を出していいのだろうか。これで転倒したらボクは間違いなく……終わる。それは……やだなぁ……

 

でも、もっと嫌なことがある。ボクの目にはボクを応援する皆の姿があった。

タキオンも、キングも、マヤノも、アルタイルのメンバー達も、会長も、そしてトレーナーも僕の勝利を信じて待っていてくれる。

 

痛みなんて今はいい、ボクはそんなことより!!

 

 

「ボクが勝つんだぁぁぁぁ!!」

 

 

『トウカイテイオー少しよろけたか!!しかし!!依然として先頭はトウカイテイオー!!』

 

テイオーが明らかによろけた。スピードも少し落ちた。

 

「テイオー……!!」

 

走り方も足を支えるような走り方になっている。間違いなく、足が限界を迎えている。

 

でも、それでもテイオーは足を止めていない。

 

「っ……!!」

 

僕は観客席を降りて、ゴールの方へと向かう。

 

「トレーナー君!?」

 

「会長!!行ってきます!!」

 

 

『100mをきった!!逃げ切れるのかトウカイテイオー!!』

 

足が重い。でも、それなのに身体は動き続けている。

 

『後ろから来ているぞ!!トウカイテイオー!!段々と差が詰まる!!三バ身、二バ身……そして一バ身』

 

「テイオーちゃーん!!」 「テイオー!!」 「テイオーさん!!」 「行けー!!」 「逃げ切れー!!」

 

皆の声が聞こえる。応援されている。

 

「テイオー!!」

 

会長の声がはっきりと聞こえた。そうだよね、まだ負けてない。

 

足の限界はとうに超えている。でもまだ動く。

 

「だぁぁぁぁぁ!!」

 

『いや!!トウカイテイオーここで加速!?後ろは追いつけない……!!これは…!!これは奇跡だ!!怪我を乗り越えトウカイテイオー!!今!!1着っ!!』

 

「……ぁぁ」

 

ゴール超えた瞬間、身体が言うことを聞かなくなる。限界なんてゆうに超えていたらしい。

 

「やったよ……トレーナー……」

 

約束は果たした。怪我を乗り越えて、夢の無敗の三冠ウマ娘になった。

 

でも、もう走れないのかな……勢いが殺しきれないまま倒れればボクの身体は持たない。

 

「テイオー!!」

 

倒れ込む直前、聞きなれた声がボクの耳に響いた。




一応、あと一話で区切りになります
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