今日はというと、菊花賞の日に約束したお出かけをすることになっている。ちなみにテイオーは何とか歩けるようになった。今回は骨折が軽度だったので助かった。
「それで……なんでショッピングモールに?」
「いいからいいからー」
どこでも行っても良かったのだけれどテイオーが選んだのはトレセン学園の近くにあるショッピングモールに行きたいと言われた。
「よーし!!来たからには遊ぶぞー!!」
「はいはい」
今日はテイオーの勝利記念だ。テイオーに思う存分付き合おう。
「トレーナー!!似合う?」
「うーん……普通」
「なんかそういう気がしたよー……」
まずは服屋さんに来たのだけれど僕は特にオシャレに興味はないからテイオーに似合うか聞かれても困る。
「トレーナーせっかく顔も整ってる体型もいいんだからオシャレすればいいのに……」
「体型は良くないでしょ。ほら、見てよこの身長」
僕の身長は155cmだ。テイオーよりちょっと高いくらいで会長やタキオン、キングよりも低い。この年齢の男子にしては低すぎる。
「まぁ、パッと見中学生くらいに見えるかもね」
「うるせー」
「しかもその顔だし……女子中学生に見えるかな!!」
「うるせー!!」
煽りよる。
「可愛いのは認めてもいいと思うんだけどなー……」
「ほう、喧嘩か?」
「もー!!」
「ほう、牛か?」
「ボク達コントしてる訳じゃないんだよ!?」
いつもコントみたいなことしているのは気のせいだろうか。
「よーし!!こうなったらボクがトレーナーの服選んであげるよー!!」
「えー」
「えーじゃないよ!!年頃の男の子が、女の子に服を選んでもらえるなんて、凄く幸せなことなんだよ?」
それはそうなのかもしれないけれど、テイオーの為に遊びに来たのにそれはどうなのだろうか。
「ほらほら、トレーナー!!これとかいいんじゃない?」
結局、テイオーは三着服を買い、僕も三着買った。テイオーのセンスは良かったので僕もいい感じの服が買えて満足だ。
「ねぇ、トレーナー!!見て見て!!はちみつアイスクリームだってよ!!食べようよー!!」
「奢るから買ってくるよ」
「奢るなんてしなくていいよー!!ボクの分はボクが買うからね!!」
そう言ってテイオーはアイスを二つ買ってきた。
「はい!!トレーナー!!」
「僕の分も?」
「うん!!」
テイオーは僕の分まで買ってきていた。僕が奢るどころか僕が奢られた。
「……なんか、変わったね」
「え?」
「まだテイオーのトレーナーになったばかりの頃はテイオーにめちゃくちゃねだられてたからさ」
あのころのテイオーなら間違いなく、僕が奢るといえば大喜びで奢られただろう。
「そういえばそんなこともあったねー……まだ一年も経ってないのに懐かしく感じない?」
「確かにね……色々とあったしね」
タキオンとの出会いから、テイオーが怪我して喧嘩して、キングと出会って、三冠を取って……他にも沢山あった。今ここでは言いきれないくらいに。
「ボクね、ほんっっとうにトレーナーには感謝してるんだよ?」
「それはお互い様だよ」
テイオーには沢山迷惑をかけた。テイオーはそれでも着いてきてくれた。僕の期待にも答えてくれた。約束も叶えてくれた。感謝してもしきれないくらい、テイオーには色々と貰った。
「だからかな………今日はトレーナーに沢山楽しんで欲しいんだよ。だから、今日は近場のショッピングモールに行くことにしたんだ」
「どゆこと?」
「ふふ……トレーナーって多分遠出苦手でしょ?」
……その通りである。僕は元々外に出たがるタイプでもないので遠出するのはちょっと面倒に感じてしまう。
「おみとおしなんだねー……」
「ふふーん!!テイオー様は……いや、ボクはトレーナーのことならなんでもわかる自信あるよー」
それは言い過ぎだろう。
「というか……テイオー様って言ったあとなんで言い替えた?」
「……無敵のテイオー様なんて、いないよ。もし、ボクが無敵なんだったらそれはボクだけの力じゃないから」
僕の知らない間にテイオーは変わっているらしい。そんなテイオーが少し羨ましい。
「だったら皆でなろう!!無敵のウマ娘に!!」
「…そうだね!!」
テイオーはニッコリ笑っていた。
「あー!!アイス溶けてるー!?トレーナー食べて食べて!!」
あぁ……アイスのことをすっかり忘れていた。勿体ないから急いで食べなきゃ。
トレーナーがトイレに行ったので、ボクは少しベンチに座って待っていた。
「遅いなー……」
もう結構時間が経ったのだが、なかなか帰ってこない。アイスを急いで食べたせいでお腹でも壊したのかな?
まぁ、今はのんびり待とう。時間はまだまだある。
…それにしても、トレーナーには沢山のことを教えてもらった。色々あったからこそ、ボクはここまで来ることが出来たのだとおもう。ちょっと大変だったけどね。
初めてトレーナーに会った時は物凄く冷たい反応ばかりするから嫌われているのかとも思ったなぁ……トレーナーとの約束をしたあの日、本当にどうすればいいのか悩んだ。ただ、ボクに出来ることはトレーナーに三冠の景色を見せてあげることだけかなって。結局、その約束に一番助けられたのは誰でもないボクだったけど。
皐月賞の時も、日本ダービーの時も、怪我をした時も、菊花賞の時も……どんな時でもボクは約束のおかげで諦めずにすんだ。勿論、プレッシャーにもなったけど、それ以上に力をくれた。
「やっぱり……トレーナーには沢山助けてもらったなぁ……」
トレーナーがいなかったら……いや、もしトレーナーじゃなかったらボクは三冠ウマ娘にはなれていなかったと思う。根拠はないけどね。
「あの……」
突然聞き覚えのない声をかけられてびっくりする。
「トウカイテイオーさんですよね!!質問したいことが沢山あるんですよー!!」
手にはメモとペンを持っている。どうやらマスコミらしい。
「いや……今はプライベートだから……」
「そんなこと言わないで下さいよー?ほらほら!!皆!!」
マスコミの人が声をかけると数名が集まってきた。そのうち2人はウマ娘だった。
「少し強行手段ですけど……この機会は逃せないのでねぇ……」
流石にやばいことに気付き、逃げようとするがウマ娘に掴まれた。
「離せっ!!」
ボクは怪我から復活したばかりでまだ本気で暴れることが出来ない。ウマ娘の力を振り払うことは出来なかった。
「まぁまぁ、話さえしてくれれば離すから……」
「何してんですか」
聞きなれた声が聞こえたかと思うと、トレーナーが立っていた。
「あぁ……トレーナーさんが一緒だったんですね……テイオーさんの取材をと思いまして……」
「学園も通してない癖に取材なんか出来るわけないしょ?」
「うるさいガキだな!!」
一人がトレーナーに向かって殴りかかる。
それをトレーナーは見事にいなして逆に殴り飛ばした。
「これなら正当防衛成立だよね?」
「人間がウマ娘には勝てない!!」
ボクを抑えているウマ娘と別にもう1人ウマ娘がトレーナーに向かっていく。
でも、トレーナーはその突撃してくるウマ娘を避けて、更に手を掴み足を引っ掛けてその場で一回転させて倒した。
「お引き取り願います」
「うぅ……覚えてろよ!!」
「うん、覚えてるよ。学園に言いつけるまでは」
トレーナーはスマホを取り出すとそこにはマスコミ達の顔が写っていた。どうやら、写真を撮っていたらしい。
「くっそ!!」
マスコミ達はボクを解放して逃げるようにその場を後にした。
「大丈夫?」
「こっちのセリフだよー!!」
ウマ娘もいる相手に勝負を挑むなんて命知らずにも程がある。
「いやー……まさか無駄知識が役立つとは思ってなかったよ」
そういえば、昔いじめられていたからその対策として護身術を学んだと言っていた。
「それにしても無茶し過ぎー!!」
「それだけテイオーのこと大事ってこと」
「うぅ……恥ずかしいこと言わないでよー……」
トレーナーはなんのことやらと首を傾げている。そういうところは相変わらずだ。
「でも、トレーナー……いや、なんでもない!!」
「え!?気になるけど!?」
さっきのトレーナーはちょっとかっこよかったなぁ……なんて言おうとしたけど恥ずかしくて言えなかった。
「今日は楽しかったねー!!」
あの後、僕達は散々遊び回った。
「いやー……初めてテイオーにゲームで負けたよー……」
ゲーセンに行ったのだが、そこでダンスゲームで対決し、僅差で負けてしまった。何回も繰り返しやったので、僕の体力が尽きて負けた。
「でも!!あれはノーカンだよ!!ウマ娘と人間じゃ体力の差がどれだけあると思ってるのさ」
「でも、勝ちは勝ちだもーん」
今、テイオーが怪我から復帰したばかりでなければ足が出ていた。
「はぁ……もういいやテイオー、ほら」
僕はバックの中に入れていたあるものを取りだした。
「これ……スマホケース?」
それは、青空と雲が描かれているスマホケースだった。
「ほら見て」
僕はもうひとつ同じものを取り出す。
「おそろいー」
何かお揃い物が欲しかった。そしてテイオーと僕のスマホが同じサイズなのは知っていたのでスマホケースにすることにした。
「トイレに行くとか行った時、なかなか帰ってこなかったでしょ?あの時買ったんだー……まぁ、テイオーが襲われてたのはびっくりしたけどさ」
「だから、あんなに遅かったの!?」
本当はすぐに買ってくるつもりだったのだけれど、なかなか決めきれなくて時間がかかった。
「全く……ありがとう、トレーナー」
「これは、テイオーが三冠ウマ娘になった記念ね」
テイオーにスマホケースを渡す。
「なら、会長に勝てたらもっと凄いもの貰おうかなー!!」
「実現可能な範囲のものなら買ってあげるけど……」
「ボク土地が欲しいな!!」
「実現可能な範囲じゃない!?」
流石に冗談キツい。
トレセン学園について、そろそろ解散しなければいけない。
「今日はお疲れ様テイオー。明日は足を休めるように」
「分かってるってー」
テイオーはウンザリしたような顔で言ってくる。そして、すぐに真面目な顔になった。
「……トレーナー、なんか改まって言うのも恥ずかしいんだけどさ……これからもよろしくね」
「こちらこそ」
僕達の物語はまだ始まったばかりだ。
二章は10話までは書けましたがもう少し溜めます。ちなみに二章はテイオーではない別のキャラがメインになります。お楽しみに。