キングにはメニューを送っておいた。デビュー戦まではまだ時間があるものの、練習を欠かす訳には行かない時期だ。スタミナ不足が心配なキングは、特に。
「なかなか釣れないね」
「そんなものですよ~」
今、僕はスカイと海で釣りをしているわけなんだけど……これって、何が楽しいのかな?
「……トレーナーさんソワソワし過ぎですよ~?」
「うるさいやい」
どうやら僕はじっとすることは苦手らしい。
「スカイー、これつまんないよー」
「私に文句言われても困っちゃいますよ?」
そりゃあそうだけど、僕が釣りの楽しさに気づくのはかなり難しそうだ。
「自分から行くっていったのにトレーナーさんまさかここまで釣りが苦手だなんて思ってなかったですよー」
「みーとぅー」
軽い気持ちでいったからまさかここまでとは思ってもみなかったんだ。許してくれ。
「ねぇスカイ?ひとつ聞きたいんだけどさ」
「はいはい~?」
「スカイは何のために走ってる?夢はなに?」
僕はテイオーとの経験からウマ娘に最も大事なことは勝ちたいという気持ちだと考えている。その気持ちを引き出してくれるのはやはり走る理由、特に夢なのだと思う。
実際、うちのチームはスカイ以外『一流のウマ娘になる』だとか『1着になる』だとか何かしらの目標を持って走っている。
「……トレーナーさんはどう思います?」
「楽しいから」
「もしかしてセイちゃんのこと馬鹿にしてます?」
スカイは何事よりも楽しいことを優先しそうだからそうかなと思ったんだけど……
「まぁ、ほとんどその通りですけどねー。作戦を練って、周りの皆がそれにハマってくれた時、予想外の作戦に驚く皆の声!!それが、忘れられなくて走ってるんですよねー」
「へー、なんか変なの」
「ぶーぶー、トレーナーさんは私のことバカにしすぎですよー?」
このくらいの方が仲良し感がしていいと思うのだけれど。
「なるほどねぇ……勝ちたいっていう思いはあるんだよね?」
「どうだろうね~」
スカイは本音で語ってくれないことが多い。無理矢理話させるのは良くないがもう少し信頼して欲しい。
「そういうトレーナーさんは何かあるんですか?」
「え?」
「トレーナーさんは今、なんでトレーナーをやっているんですか?」
「えっ、と……」
昔は自分の叶わない夢を乗り越えるためにトレーナーを始めた。ただ、テイオーと共にそれを乗り越えた今、僕は何のためにトレーナーをしているのだろう。
「言いたくないなら、答えなくていいですよ?そんな深刻な顔、しないでくださーい」
どうやらまた顔に出ていたらしい。
「はぁ……じゃあ、僕からも痛いところつかせてもらうけどさぁ……スカイはなんでこのチームに来たのさ」
「あれれ~?この前も話しませんでしたっけ?」
「いーや」
実はあの日からスカイのことを色んな人に聞いて回った。
「昔、1週間以内で契約打ち切りが二回。それに加えて二回とも理由は自由すぎてついていけないから」
「……なんでそんなこと知ってるんです?セイちゃん、キング達にすら秘密にしてるんですけど」
「まぁ、ちょっとね」
この情報はトレーナー友達の多いアルタイルトレーナーから聞いた。
「ふーん、それでそれで?」
「怖いでしょ、契約打ち切り」
「………」
図星のようで顔を下げて黙り込んだ。
「それでも、ベガに来た。理由は楽しそうなんかじゃない」
「……キングがトレーナーさんは無駄に鋭いって言ってたけど、本当みたいだね」
無駄には余計だ。
「トレーナーさんのことを初めて知ったのはキングから話をされた時だったかなぁ……」
「ほうほう」
「キングから自分の自慢をするみたいな口振りでトレーナーさんの話をするものだから、つい興味が湧いちゃって、調べまわったんです」
キングが僕の話をしてくれているのがすごく気になるが続きを聞こう。
「すると、まぁ驚き!!私とほとんど歳も変わらない上に、ウマ娘達と友達のような関係性じゃありませんか!!」
「それでそれで」
「まぁ、要するに他のトレーナー達とは少し違うなーって感じて、試しに来てみたんですよ」
他のトレーナーと違う……ね。
「トレーナーさん、実際に私の釣りに付き合ってくれるくらいお人好しですし、ここに来てよかったですよー」
「そんなお人好しじゃないよ」
「謙遜する人は好みじゃないなぁ」
スカイが好みだとかどうとか、今はどうでもいいんだが。
「なーんか、トレーナーさんって本当にいい意味で友達みたいだよね~」
「褒めてる?」
「もちろん、褒めてますよ?」
「まぁ、友達くらいでいいよ」
スカイは少し意外そうな顔をしていた。
「トレーナーはウマ娘の杖だって会長はよくいってたけどさ」
「トレーナーさんって、会長さんのこと大好きだよね」
「そこは置いといて、トレーナーはウマ娘に信じてもらえるくらい仲良くなることが大切だと思うんだよねー。ウマ娘もトレーナーもお互いを信じられるくらい仲良くなきゃ」
「へー、トレーナーさんって意外と考えてるんですねー」
「とか言っとけばそれらしいじゃん?」
スカイから睨まれる。
「ごめんごめん、僕はそんな深くまで考えるほどの人間じゃーないよ」
「トレーナーさん、本当のことでもそういうこと言わない方がいいと思いますよ」
「まぁ、僕はこんな見た目だし性格も幼稚だし、友達くらいの関係性で大丈夫!!『この人に着いていけば問題ない!!』なんてトレーナーは目指してないしね」
実際、テイオーと頑張ってこれたのは僕のおかげなのはよくて二割くらいで残り八割はテイオーや周りの人達のおかげだ。
「全く……トレーナーさん本当に変わってますね」
「そう?」
「そうですよー。ただ、もう少し自分に自信もった方がいいと思いますよ?」
「えー」
「えーじゃないですよ」
自分に自信を持つなんて、そんなこと僕には一生できない気がするのだけれど。
「あー、なんだか私もじっとしてられなくなっちゃいましたー。トレーナーさん、行きましょう!!」
「行くって?」
「それは……ここよりのんびりは出来ないけど、皆がいる場所ですよ」
?
「首傾げないで察して下さいよ!!トレーニングに行くって言ってるんです!!ほら、早く片付けないと日が暮れちゃいますよ!!」
なんだかよく分からないけど、やる気が出たなら良かった……のかなぁ?
(実はちょっと大事な回だったりする)
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