ホロライブラバーズRTA(初投稿)   作:Shohei Hayase

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凡例

「不知火フレア」さん

「白銀ノエル」さん

「宝鐘マリン」さん



Ep.7/本編開始前(5) 西暦20XX年3月1日

えー、こんにちは。

 

ショウヘイと申します。

 

では、前回の続きからやっていきたいと思います。

 

 

 

>マリンと空を見上げていると、遠くからザッザッという足音が響き、しばらく経つと数人の騎士とエルフを引き連れてフレアとノエルが現れた。

 

「いやーごめんごめん、待たせちゃった?」

 

>「そんな事はない。 ……これで全員か?」

 

「そうですね。では早速ですが、馬車に乗り込んで下さい」

 

>ノエルに促され、2頭立ての大型馬車に全員が乗り込むと、馬車は静かに動き出した。

 

>「……揺れが少ない?」

 

「最新の技術を使ってるんだってさ。車輪それぞれに装備した発条(バネ)に馬車の揺れを吸収させるらしいよ」

 

「よく知ってましたね、フレア」

 

「国王が教えてくれたよ」

 

>何でも無いように語るフレアだが、そんな技術が存在していた事など俺も知らず、金属加工の巧者であるマリンに視線を向けても、凄まじい勢いで首を横に振るだけだった。

 

>「可能なのか? マリン」

 

「……全車輪を独立させるとなると、これは確かに新技術ですね。船長なら出来ますけど」

 

>マリンの解説によると、車輪を独立させるということは、即ち車軸を用いないという事であり、発条(バネ)上の荷重を均等に分散させる高度な技術を要するらしい*1

 

>その解説に俺とフレアは聞き入っていたのだが……

 

「ふぇ……?」

 

>案の定、ノエルは目を回してしまった。

 

「アハハ……」

 

「何で分かるんですか……?」

 

>「……魔法だって技術だしなぁ」

 

>ノエルの疑問には、こう答えるしかなかった。

 

>ただ魔力を込めるだけでは魔法は成立しない。作用機序(モードオブアクト)世界法則(ワールドルール)体内環境(オドステージ)。理論がなければ、魔法は使えない。一部本能で魔法を使える人間(ノエル・フレア)も居ることには居るが、それは極めて少数だ。

 

>(なんだか、少し眠くなってきたな……)

 

>先程の訓練によって、体にはだいぶ疲労が溜まっていたらしい。蹄の音を立てて進む馬車の中で、俺は振動を睡眠導入剤代わりに意識を落とした。

 

 

「……将平、着いたよ?」

 

>「っ……すまん、フレア。寝てた」

 

>フレアに優しく肩を揺すられ、意識が暗闇を知覚する。馬車を降り、空を見上げると、すっかり夜の帳が下り、木々の合間から見える空を満天の星が埋め尽くしていた。

 

>「……んで、アレか?」

 

「そう……だと思うよ」

 

>目の前には、何か強い力で無理矢理抉られたような穴が口を開けており、その中には薄っすらと淡い光が瞬いていた。

 

>「『魔力探査(マナ・サーチ)』……!?」

 

>念の為に魔力探査を掛けるも、目ぼしい反応はなかった。 ……しかし、多量の魔力が出入りしているようで、あまりの魔力光(レマナイト)に視界がくらみ、思わず目を閉じて顔を背ける。

 

「……うぐ」

 

「……どうしたんですか?」

 

>俺と同じく魔力に敏感なフレアが穴を見て顔を顰め、魔法を使えても魔法使いでは無い(魔力の感知能力を持たない)ノエルとマリンは俺達の様子を見て不思議そうにしていた。

 

>「この穴から、恐ろしいくらいの魔力が出てる……竜種のブレスか?」

 

「竜種だってこんな魔力出ないよ……うっ、魔力に酔う……」

 

>そっと後ろを振り向けば、エルフ達は全員気分が悪そうにしており、中には顔が青くなっている者もいた。

 

>「なにか魔力文様があるわけでもない……っていうことはマジで偶発的に発生したのか? これだけの代物が?」

 

>壁面にも穴の周囲にも、自己術式化を示す魔力文様が認められず、これだけの魔力が秩序立って動き、しかもその先が異世界に繋がっているという奇跡に、俺は思わず感嘆の声を漏らす。

 

「……将平達もキツそうにしてるし、もう穴の中に入ったほうが良いんじゃない?」

 

>ノエルの声を聞いて、俺は一歩一歩、穴に向けて歩みを進める。噴出する魔力は勢いを増し、ついに物理的干渉力を持つまでになった魔力の風が頬を撫でる。

 

>伸ばした人差し指が、何かに触れる。

 

>まるで水面に触れたように、触れた所から魔力のゆらぎが穴の縁に飛び、跳ね返り、幾何学的な美しい図形を描き出す。

 

>(……これ、魔力それ自体が魔法陣か……!?)

 

>考える間もなく、俺の手が膜の向こうに沈む。

 

>……抗えない。抵抗という言葉を忘れたかのように、ズブズブと腕が沈んでいく。俺の体も、魂も、何もかもが取り込まれ……

 

 

>───()()()()()()()

 

 

>「……っ!?!?」

 

>一瞬の暗転。全力疾走したような気だるさが全身を駆け巡り、思わず体勢を崩す。

 

>「……何だ、この硬いの」

 

>地面に膝をつくも、そこから伝わってくる感触がおかしい。石のようだが、それよりも幾分か滑らかなように感じる。

 

>「黒い石が……道全部に? 石畳じゃないのか」

 

>視線を地面から離し、前を見た俺は、たっぷり20秒絶句する。

 

>灰色の巨大な建物、風切音のようなものを断続的に立てるクリーム色の箱。地面にはポツンポツンと錆びた金属の円盤が置かれている。

 

>「路地……か? 俺達の世界とは、全く違うな」

 

>人一人程度しかない道幅と、道の向こうが明るい事から、俺はこの場所を路地だと当たりをつけた。

 

>膨大な魔力が俺の背後から放たれ、思わず飛び退ると同時に、ノエル、マリン、フレア達が現れた。

 

>膝をついたのはフレアとエルフ達。ノエルとマリンは少し苦しそうにしているが、倒れる程の物では無いようだ。

 

>(騎士は平然としている……鍵は魔力量と、魔力の感知能力か?)

 

>俺がそんな仮説を立てていると、前から靴音が聞こえ、俺達はノエルを守る様に陣形を組む。

 

>「……お待ちしておりました。白銀騎士団長殿」

 

「貴方は?」

 

>「私は王都守護第一騎士団、白金騎士団所属の者です。詳しくはこれを」

 

>差し出されたバッジを俺が受け取り、それに魔力を当てると、バッジに埋め込まれた宝石の中心に王家の印章が浮かび上がった。

 

>「バッジは本物だな」

 

>「えぇ。では」

 

>男は俺からバッジを受け取り、懐から取り出したナイフで手の甲を薄く傷つけ、血を宝石の上に垂らす。

 

>「……蒼。本人だ」

 

>俺が励起させた魔力と、宝石に焼き込まれた魔術が垂らされた血によって反応し、宝石が青く輝き出す。

 

>これは本人の血液でないと宝石が反応しない為、少なくともこの男が偽物であるという可能性はなくなった。

 

「国王より臨時裁量権を得ております、王都守護第三騎士団、白銀騎士団長白銀ノエルです」

 

>「……委任状を」

 

>ノエルは男の言葉を受けて、懐から薄く折り畳まれた紙を取り出す。 ……信じられない位に薄い。羊皮紙の半分程度か?

 

>「委任状、確かに確認いたしました。感謝いたします。白銀騎士団長殿」

 

>ノエルが差し出した紙を受け取り、つぶさに目を通した男は、短く言って紙を再び折り畳み、自分も紙を取り出して重ね、ノエルに渡す。

 

>「それでは、私は王命により帰還致します。御武運を」

 

>男は一礼して俺達の横を通り抜け、元の世界への門へと近づく。

 

>「……どうか、仲間の仇を」

 

>門に手を触れ、その体が取り込まれる時になって、男は俺達に告げた。

 

>血を吐くような、声音だった。

 

 

「さてと、取り敢えずあの人が持ってきた書類に目を通しましょうか」

 

>男が門に消えてからの静寂をノエルの声が消し、全員に紙束を配って行く。

 

>「……全員分書いてくれたのか」

 

「こういうのが一冊だと、困っちゃうんですよねぇ」

 

>マリンは書類をプラプラさせながらも、その視線は文字から決して動かさない。

 

「皆さん、行き渡りましたか? ……では、ブリーフィングを行います」

 

>ノエルが音頭を取り、報告書の読み合わせが始まった。

 

「この国の名前は『日本』って言うみたいだね」

 

「国体は議会制民主主義、我々とは全く違う政治形態ですけど、国王に相当する人物もいるとの事です」

 

>「言語は日本語……ざっと見た限りではあるが、王宮の図書館に所蔵されている中で該当する字形は無い」

 

「通貨単位は日本円……えっ、兌換(だかん)じゃないんですか!?」

 

>ノエルが驚愕の声を上げ、その言葉の意味を理解した俺たちも同様に驚く。

 

>「ハァ? どうやって経済維持してるんだよ! 頭おかしいんじゃねーのか!?」

 

「よく経済崩壊しませんね、この国……」

 

「泥舟に乗ってるみたいなものじゃん……凄いね」

 

「えっと……まぁそれは置いといて。ここで1つ重要なのが、『我々はこの世界の人間では無い』と言う事です」

 

>「……大分身分証明が()()()な、この国」

 

「……見た限りではありますけど、司法を通さないと戸籍取得手続が出来ないみたいですね」

 

>「っはー……これ身分証明を取得するのは無理だな。けどそれだと何も出来ねぇぞ」

 

>ノエルは暫し考え込んでから、ゆっくりと口を開いた。

 

「現地裁量権に於いて、不知火フレア殿に協力を要請します」

 

>「おい、ノエル!」

 

「……わかった。了承するよ」

 

>フレアも苦い顔をして頷く。

 

>「お前……!」

 

「裁量権を有するのは私です」

 

「ここに至っては、どうしようもないからね」

 

>俺も、フレアも、マリンも、ノエルも、全員が浮かない顔をしている。

 

>……だが、こうする事でしか手詰まりを解消できないのも事実だった。

 

>「……手持ちの地金は?」

 

>俺も一度溜息を吐いてから、会話に参加する。

 

「私が1キロ持ってるよ」

 

>「良く持ってたなオイ」

 

「金なら万国共通*2かなって……エヘヘ」

 

「じゃあ、私は買取店を見繕ってくるよ」

 

>「俺は認識阻害の札を作る。羊皮紙とインクじゃ常駐は無理だ。魔力を切らすなよ」

 

>羊皮紙に魔法陣を描き、魔力を導通させる為に血で薄くラインを描く。

 

>「出来た」

 

「流石の早業。貰ってくよ」

 

>「これも持ってけ。無いよりマシだが……」

 

「ありがと、将平」

 

>フレアにローブと羊皮紙を渡し、彼女はノエルから地金を受け取る。

 

「じゃ、行ってくるね」

 

>フレアは静かにそう言うと、路地の向こう側に歩いて行った。

 

 

 

あー……うん。日本に住んでると気付きませんけど、日本って身分証明ほんとキツいですからね。身分偽造なんて現代日本ではまず不可能です。

なのでノエル達は金を売却する事で当座の資金を得ようとしているのですが、当然人を騙すことになるので、この事が露見してしまった際、幽世側からの好感度が下がってしまいます。それでも他の行動を取れないのは、まとまった資金を得るにはこの方法しか無いからですね*3

 

最悪手ではあるが最善手。この方策は吉と出るか凶と出るか……

 

ではまた次回、お会いしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
独立懸架式サスペンションは1920年以降普及した。

*2
そもそも宇宙規模で見れば鉄以上に重い元素は希少。

*3
株とか? ただし利益を得る方法は一切知らない。

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