俺の妹が子持ちでバツいちの男と結婚した件   作:加具

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空の料理の際には美羽とひなは二人でひたすらじゃれていました。

 

別にいつも一緒にいる事が家族なんじゃない。

どんな形でも、どんな奴でも、家族だと思う奴が家族だ

 

 

「今更でワリぃが、お前ら油の匂いとか平気か?」

 

親族会議の後、俺のバカげた案を聞いた信好さんや小鳥遊の親戚連中、そしてよし子伯母さんを交えて話し合った。

一応俺は働いてるし、前の生活の癖で何かあった時の為にお金も溜めてある。

そこまで稼ぎがある方ではないかも知らんが三人を迎え入れる基盤は出来ていた。

 

俺の働いている所は地域の町工場を少し大きくした位の工場

自転車やバイク、車などを整備したりしている。

社長が俺の知人だったこともあり、裕理の結婚を期に住むんでいたアパートを引き払い会社に併設された住居に住み始めた。

 

喜ばしい事に工場は慌ただしく繁盛しており、社長は近くに新築の家を建てたという事で移り住んで行った後を借りた。

家賃は激安だし、元々家族で住まれていたという経歴の通り、俺が暮らすには広すぎる位の大きさだった。

さらにはある程度の家具まで置いて行ってくれているのだから社長には頭があがらない。

 

当初小鳥遊家から通うという事も考えられたが、ひな達が春休みである一週間程、俺に三姉妹の面倒をみれる能力があるのかの検査が入る事となり、環境の変化、それに対する子供への対応等様々な所をみられるのだとか。

という事で先の発言である。

 

俺は家を出る時にその難題に気付いた。

家は町工場である。

当然作業場は機械の油の匂いが充満しているし、そんな環境で過ごしている俺もその匂いが染み着いている。

 

女なんだし、機械だの油だのの匂いは嫌がるんじゃないんだろうか。

当然だが今回の訪問時にはちゃんと洗濯をし、匂いを落としてから訪問している。

まぁ裕理がいる時はそんな事もしてなかった。

あいつは油の匂い平気だったし、時にはこの匂いが好きとさえ言っていたから。

 

もし無理という様であったなら、無理矢理でも親戚連中と伯母さん納得させて、俺が家から通う覚悟だった。

 

すると、

 

「大丈夫だよ」

「気にしませ~ん」

「ないがくしゃいの~?」

 

と思い思いの返事が返ってきた。

俺はひなに歩み寄る

 

「これだ。」

 

俺はバイクのバックパックからレンチを取り出し匂いをかがせた。

 

「あはははは!!くしゃい~!!!」

 

匂いをかいで何故かテンションがあがるひな。

……大丈夫だよな?

 

一先ず俺の家に向かうのは問題なさそうでなによりである。

俺の家に向かう為に、三人には足がないのでバイクを小鳥遊家に置かせてもらい、電車を乗り継ぎ池袋から八王子へ、そこは東京は東京でも、大都会のイメージとは程遠い場所だった。

近くにあるのは通称タマブンの名で呼ばれている多摩文学院大学。

一応俺の出身校である。

近辺には馴染みの飯屋があったりするし、大学にもまだ俺の後輩が残っており、時々この工場にも遊びにくる。

 

途中電車から駅についたのち、また電車での移動。

 

「………………」

「遠いですね~」

「ちかれた~」

 

とそれぞれの反応が返ってきた。

ひなは俺が背負うことにし、美羽にはもう少しだと伝える。

無言で頑張る空にはポンポンと頭を叩いておいた。

 

そうやって辿り着いたころには既に正午をまわり、太陽は頭上に煌々と輝いていた。

 

「ほら、ここが入り口だ」

 

事務所の横に併設するようにして俺の自宅は二階にあった。

通りすぎる時に例の匂いも否応なしに香ってくるが少なくとも彼女達の表情に変化はなかった。

 

カンカンカンカン

 

金属製の音をたてながら俺達は二階へ向かう

 

ガチャン

 

かけていた鍵を開けて俺は娘達三人を我が家に迎え入れた。

 

「ようこそ、取り敢えず此処がお前達の一時の家だ、もしなんか必要なもんがあったら言えよ?」

 

俺の家の間取りを伝えておくと、工場の上につくられた建物の二階部分にあたるスペースである。

玄関を入ると早速台所と浴室、トイレがあり、そこからリビングに通じている。

かっこつけてリビングなんていったが畳敷きの日本家屋なのでお茶の間というのが正しいのだろう。

 

「ここが居間」

 

俺は部屋を説明して扉を指し示す。

 

「ここが俺の部屋」

 

前に住んでいたアパートの退去と同時に荷物は全部此処に運び込んだ。

 

「ここは内緒」

 

少なくとも今俺の部屋にあげる事は出来ない。

男には色々な事情があるのである。

 

「そんで今から紹介する部屋の中から一つ選んでお前たちの部屋にしていい。ひなは空か美羽どっちかの部屋にいれてやんな。」

 

この家には都合五部屋のスペースがある。

一つは俺の部屋、一つは物置で一つは居間、残りの二つが友人知人やそのたもろもろが来たときの為にあけている。

そこを娘達の新しい部屋にする。

 

「急な事だったんで片づけてねぇからそれは後で片付けとく、ベットじゃねぇけど大丈夫か?」

 

部屋にあるのは敷布団である。

押し入れに入っていて毎回入れて出してを繰り返してもらうつもりだ。

 

「大丈夫だよ」

「OKで~す」

「たためるベットだお~~~!!」

 

一応確認してみたが大丈夫そうでなにより。

ひなにいたっては敷布団でかなりテンションがあがっていた。

 

「部屋は各自で決められるか?」

 

俺もそろそろ仕事場に顔をださないといけない。

社長とも顔見知りだし、目を掛けてもらってるからこそ、一週間なんて長期の休みもとれたし、空達の面倒も見れた。

まさかそのまま一緒に暮らす事になるなんて思いもしなかったし、社長にもそんな事言ってなかったがまぁなんとかなるんじゃないだろうか。

あいにく所長も家族サービスで旅行に出かけているからつたえることはできないんだが。

 

とにかくそういうものももろもろ含めて事務所に顔を出しておきたい。

俺が目線を向けると三人揃って頷いた。

 

「そうだ、お前ら下着やら服やらは持ってきてるよな?」

 

一応の確認、ここから買い物に出るんならそれなりの距離、歩かないといけないし服なんかかさばるから荷物持ちがいるだろう。

 

「し、したぎ!?」

 

俺の発言を聞いて空の顔が真っ赤になる。

何か悪い事をしただろうか?

 

「伯父さん、デリカシーを持ってください!!」

「……了解」

 

そうだった、仮にも女の子そんな話は恥ずかしいか。

まぁ、家の妹がオープンだっただけなんだろう。

下着選びには毎回連れて行かれたし、平然と下着姿で歩くし、夏場なんて二人で扇風機回しながらパンツ一丁と下着一丁で過ごしてたこともあるし。

とにかく、そんな感覚に慣れてしまっていた俺は、彼女たちが言う様にデリカシーにかけてしまうのだろう。

 

「とにかく、何か必要なものがあればいえよ、一応、これ置いとくから。」

 

そういって五千円札を机の上に置いて、俺は家をでて職場に顔を出しにいった。

 

「そうそう、内緒の部屋は入るのはNGだ、理由は後でのお楽しみ。」

 

軽い気持ちでそう言ったこの時の俺の判断が後々になって響いてくることをこの時の俺は考えてもいなかった。

 

―――――

 

“部屋、ヤニ臭いけど大丈夫か?”

 

あれだけ親族の前で啖呵をきったあの人は、いざ家を出て行く時少し申し訳なさそうにこちらに聞いてきた。

タバコを吸っていたのは知っている。

毎回家に来たときにはほんのかすかに臭っていたし、何よりも、裕理さんがあの人の話をする時にいつも言っていたから。

 

“兄貴を語るときにタバコの話は外せない。”

 

愛煙家であり、バイクに跨りいろんな所に連れて行ってもらったこと。

どんなに辛い時でも笑っていたこと、金がなくて二人ですすったひと束のソーメン。

 

幸せな出来事も辛い出来事もあの人がいたから乗り越えられたと。

 

“そんな兄貴から匂った機械油とタバコの匂いが私は大好きだった。”

 

そう裕理さんは言っていた。

かく言う私もそうで、小さい時から何度か来てくれて、その度に私をバイクの後ろに乗せてくれて、背中に掴まって顔をうずめている私には、気を使っていたのだろう、洗剤の良い匂いの中で微かに臭う、この苦い様な匂いが好きだった。

 

“そうだな、俺の事は兄貴と呼べよ。”

 

冗談でいったその一言をあえて真に受けて、私はあの人の事を兄と呼ぶ。

憧れなのかなんなのか、私の気持ちを今正確に表現することはできないけれど。

私こと小鳥遊空は瀬川佑太というあのかっこいい兄の事が大好きなのであった。

 

「じゃあ、早速部屋を決めましょうか。」

 

そんな兄の負担になりたくない気持ちは私の中に十分にあった。

それぞれの内装を見るがどれも畳がひかれた和式の部屋であり、そんなに内装も変わらない。

ただそれぞれの特徴としては、一つは鏡が置いてあり、その鏡一面に隙間を残さないように様々な化粧品が置かれていたり、鏡の下のたなにはストッキングが入っていた。

他にもキッチン、トイレ、浴槽、居間など家の中を散策してまわった。

 

「後残ってるのはここだけだね。」

「たんけんもうおわいなのー?」

 

そして最後の一部屋、お兄ちゃんの部屋の前である。

扉を開けると―

 

「へ~、おじさん意外だな~」

 

美羽はそこに広がる光景をみて一言

 

「うわ~ほんがいっぱい~」

 

ひなも目の前に広がるアニメチックな表紙の数々にご満悦である。

そこは漫画が所せましと置かれている本棚のある部屋だった。

 

「これならあの部屋、おじさんに見せても平気だね」

 

イタズラッぽく微笑む美羽

 

「イ、イヤイヤ、無理だから!!」

 

あの部屋っていうのは裕理さんの部屋のことで、そこにはとてもお兄ちゃんには見せられないような秘密が散乱しているのだった。

とにかく、

 

「決めた、私この部屋がいい」

 

この部屋には私の夢がある、希望がある。

ラインナップをみると今時のものより古いものが揃っていることがわかった。

それに、ここはあの人の部屋の前だし・・・

 

「分かった、じゃあ私はあっちの部屋ね」

 

美羽は聞き分けよくもう片方の部屋を選んでくれた。

 

「ひなはどうしよっか?」

 

今まで一緒に冒険を重ねてきたひな隊員は目をキラキラさせながら私達のことをみているのだった。

 

「ひなはお姉ちゃんと一緒でもいい?」

 

そうやって聞くと

 

「うん、ひな、そらおねえちゃんといっしょー」

 

パタパタと駆け寄ってきて足に抱きつくひな。

 

「ズルーい、ひな、後で私の部屋にも遊びに来てね」

 

それをみた美羽がひなに抱きつく。

そんな光景をみているだけで、あの時の選択は間違ったものじゃなかったと改めて実感した。

 

「さて、それじゃ部屋も決まったし、荷物運ぼっか」

 

後でお兄ちゃんから指示があるかも知れないので広げる事はせず、あくまで運び込むだけ。

各自運び込みが終わると再び居間に集合した。

 

時計を見ると、朝以来見ていなかった時計は既に三時を回っていた。

雑貨の買い物はお兄ちゃんがついていくといっていたから今はいいとして、何かの為にと置いて行った兄の五千円札がきらめいていた。

冷蔵庫をみるとニンジンや玉ねぎ、卵など少しは備蓄がある。

 

「・・・ご飯をつくろうと思います」

 

少しでもあの人のためになることを、純粋な気持ちで言った。

その言葉が後々、あんな事件を巻き起こす事になろうとは考えてもみなかった。

 

横から美羽が小さな声で

 

「あかん、それフラグや」

 

と言う理解できない言語を放っていたが私の耳には届かなかった。

 

―――――――――

 

近くのスーパーを散策によって見つけ、私は食材を買い込んだ。

卵がタイムセールで安売りになっていたので思わず買ってしまったり色々なことがあったがまぁミッションコンプリートと言ってよいだろう。

 

家に帰り食材を確認する。

玉子、ニンジン、玉ねぎ、etc、etc

 

「よし、チャーハンにしよう」

 

よしもなにも確認なんかしなくても私に出来るのは野菜炒めて、玉子ぶっこむチャーハン位のものだった。

野菜を切りにかかる際にはいつ包丁が自分のことすらもみじん切りにしかねないか恐ろしかったし、玉ねぎを粉みじんにした時には某タ〇イタニック等の感動巨編をみた時以上の涙を流した。

悪戦苦闘してるうちに時間はどんどん過ぎて行き、夕焼けが沈み始める時間となっていた。

 

なんで!?

 

まだ野菜を刻むことしかしていないのに・・・

そこでご飯を炊き忘れていたことに気付き絶望し無力感に打ちひしがれた。

 

そんな時―

 

カンッ カンッ カンッ

 

階段をあがってくる音が聞こえた。

 

お兄ちゃんが帰って来た!?

慌てるがどうしようもない。

何もかも中途半端なままあの人の目に入ってしまう。

 

ガチャ

 

私は扉が開く音とともに何に備えてかは知らないが、身構え、目をつぶった。

 

「親父~、今日は帰ってきてんだよなぁ~、今日は良い肉・・・」

 

耳慣れない声に目を開けると、そこにはラフな格好に制服を着崩した綺麗な女の人が立っていた。

 

「あん?お前誰?」

 

眉をひそめて問う女の人、多分私より年上。

 

「あ、あなたこそ誰よ?」

 

勇気を振り絞って私は聞き返した。

 

「俺か?俺は瀬川真愛美(まなみ)、ここに住んでる瀬川佑太の娘だよ」

 

その一言に、私は体が凍りつく感覚を実感した。

 

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