俺の妹が子持ちでバツいちの男と結婚した件   作:加具

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余ったチャーハンは空達がおいしく頂けたかといったらそんなこともなく・・・前編

お前たちの名前をつけたのは俺じゃない、でも、今一番お前たちの名前を呼ぶ資格があるのは俺だと思ってもいいか?

 

 

「・・・スマン」

 

俺はホカホカのチャーハンが並ぶお茶の間で、そこにいる少女たちに謝っていた。

 

「どういうことか説明しろや」

 

みるからに不機嫌そうなのは二人。

空と、そして目の前にいるこの不良な感じの女

美羽はどうしたらいいのかわからず戸惑い、ひなはそもそもなにが起きているのか理解しておらずポカーンと口を開いていた。

 

今の発言はその不良な少女からである。

 

「伝えてなかったな、こいつらは今度から一緒に暮らすことになる小鳥遊空、美羽、ひなだ」

 

それぞれに矛先をむけながら紹介を行う。

美羽はペコリと、ひなは「ひなです、さんさいです!!」とドヤ顔で挨拶をし、空はチラリとこちらをみた後少しだけ頭を下げた。

それにたいし、この女はぶすくれたまま一瞥して行くだけ。

とりあえずコイツのことを皆に紹介しなければ。

 

「こいつは瀬川真愛美、俺の娘だ」

 

本人から聞かされることで再度の衝撃だったのだろう。

俺の口からでた言葉を聞いた少女たちは驚きに顔をひきつらせた。

 

そりゃ驚くよなぁ、二十代中盤にしてまさかの高校生の娘である。

お前は何歳で子を孕ませたのかと・・・

 

「むすめって?」

 

空はオウム返しに俺の言ったことを繰り返した。

 

「聞いたまんまの意味だよ、俺はコイツの娘だ」

 

ぶっきらぼうに言う真愛美、父親をコイツ呼ばわりとは本当にフテェ野郎である。

 

「血は繋がっちゃいねぇけどな」

 

吐き捨てるように言う。

その言葉に再び疑問符の二人。

いきなりの爆弾投下にみんなどうしていいのかわかっていない。

 

「……とりあえず飯を食おうか、うまそうだな、このチャーハン」

 

せっかく暖かいご飯が目の前にあるのだ。

話はそれを食べてからでもいいと思う。

という現実逃避を初めてみた。

 

一口食べる。

……これは

 

「言っとくけど俺じゃないかんな」

 

そういいながら真愛美もバクバク食い始める。

 

「油でギトギト、味も偏りがあってちぐはぐ、テキトーに切った野菜にゃ火が通ってなくてしまいにゃこれだ。」

 

ペッと吐きだしたそこには卵の殻。

 

「テメェ、なんてもん食わせやがる、こりゃあれか?お前なりにアレンジした殺人兵器か?」

 

皮肉も冴えている、今日の真愛美は殺る気だ。

 

「親父、こんなん食うことねぇ、待ってろよ、すぐうまいのつくってやっから、今日は良い肉―」

「いいよ、これもうまいさ、空がせっかく作ってくれたんだしな」

 

完全にチーンとなっている空への援護射撃のつもりだったんだが。

それを聞いて嬉しそうな顔をした空の反面、真愛美は―

 

「あ?俺の飯は食えねェってか?そうかい、わかったよ、じゃあ俺もこんなクソまずい飯いらねぇ」

 

居間から立ち上がると真愛美は家から飛び出して行った。

しばらくして下からバイクのエンジンを噴かす音が聞こえてきた。

あいつ俺のZZR乗っていきやがった。

 

「お兄ちゃん」

 

慌てて腰を浮かし、追わなくていいのかと目線で問いかけてくる。

 

「大丈夫、あいつはこんなんしょっちゅうだし、行くとこも分かってる。」

 

毎回行き先は同じである。

あいつと俺の取り決めもあることだし、今はこいつらを優先する。

 

「本当に悪かった、俺が説明しなかったから」

 

この三姉妹にまだ、重大な話しをしていなかったから。

 

「あいつは、真愛美はあいつも言った通り俺とは血が繋がってない」

 

家族になるということを甘く見ていた。

良かれと思ってしたことなんて簡単に裏目にでる。

 

「あいつはちょっとした事情で俺が拾ったのよ」

 

表現は間違っているし、複雑な事情があるけれど、それは俺の口から言う事ではない。

それはいつしか本人が、気が向いたら彼女達に話せばいいことである。

ましてや、あって一日もたたない空達に話すなんてそんな簡単な問題でもない。

 

「あいつも家族、伝えなかった俺が悪い、新しい家族が出来るっていうのは、真愛美にもお前たちにも喜んでもらえると思ったんだ。」

 

楽観的に考えていた。

真愛美には妹たちができて、空達には姉ができる。

それだけだと思ってた。

 

真愛美がああみえて手がかからなかったし、バイトで外に出ていることも多い。

仕事に出てばかりの俺とは別に、彼女にも別の繋がりをつくってやりたかった。

 

それが俺の友人であったり、今の空達であり、誰かであればいいと思った。

それは空達をその為にと思ったんじゃなくて、皆で家族になれないかと思ったんだ。

姉妹ができる事を伝えなかったのはサプライズ、そのつもりだったんだが、真愛美にとってそれは逆効果になってしまったようだ。

 

本当に、成長しようが、結婚まで妹を育てようが、何をしようが父になるのは本当に難しい。

母親もおらず、家で常に出迎えてくれる存在のいない彼女たちに、何かできないかと考えた結果がこれである。

 

「本当に悪い、後は俺の口からは言えない」

 

彼女たちの反応をみる。

俺の話しを聞いてくれた彼女たち、どんな反応が帰ってくるのか。

 

「お兄ちゃんに家に来るかって言ってもらえた時、すごくうれしかった」

 

最初に声をだしたのは空。

 

「未来が私達の手の届かない遠い所にいってしまって、何も考えたくなくなった」

 

あの時にどんな気持ちをもっていたか。

 

「事情は分からないけど、真愛美さんもそうだったのかなって考えた」

 

推測になるけど、出て行ったあの不良少女はどんな気持ちだったのか。

 

「ホントに偶然なんですけど、私達、だれも血は繋がってないんですよね」

 

美羽が笑いながら言う。

 

「お兄ちゃんもいったじゃない、血の繋がりは関係ないんだよ」

 

空も笑いながら言う。

 

「「だから、もう一人ぐらい増えたって、大丈夫だよ(ですよ)、きっと」」

 

二人は何処か嬉しそうに言うのだ。

 

「ひなも、お姉ちゃん増えたらうれしいもんね?」

 

美羽が笑いながらひなに聞いた。

 

「おねえちゃんふえゆの?」

 

首を傾げながらひなは俺の方をみた。

 

「さっきここにいた奴なんだけど、ひなのお姉ちゃんになっていいか?」

 

ひなは少し考えた後で弾けるような笑顔を見せてくれたのである。

 

「おねえちゃんふえるのひなうれしい!!」

 

本当に意味が分かっているという事はないのだろう。

それでも、ひなはあのきかんぼうを姉にもっていいと言った。

 

「ありがとよ」

 

クシャクシャとひなの頭をなでる。

えへへ~と嬉しそうに笑っているひな。

 

「じゃあ、あいつ迎えに行ってくるからよ、お前らは寝ときな、きっと帰ってくるのは朝になるから」

 

俺も立ち上がり、玄関から外にでる。

 

「部屋、汚いまんまでごめんな、今日は我慢してくれ」

 

三姉妹の快い“いいよ”の返事を耳にして、俺は階段を下りた。

 

カン カン カン

 

一段一段階段を降りながら、俺は胸のポケットに入れていたクシャクシャの星のロゴの入った特徴的なパッケージを取り出す。

 

ぷか~

 

肺に煙を送り鼻腔から抜けて行く煙を味わいながら吐く。

煙はそのままゆっくり夜の空に消えて行った。

階段を降り終えた所で俺は車庫から俺のバイクがなくなっていることを確認すると階段の一段目に座りこんだ。

実のところ俺は真愛美を追う気は今回ない。

それは俺と真愛美の二人で決めた取り決めがあるからである。

 

ぷか~

 

あいつと決めたルールは三つ。

今日はその内の一つに該当する日なのだ。

 

とにかく俺はいつあいつが帰ってきても良い様にここで待っておくだけである。

まだ春になったばかりの夜は少し肌寒く、薄着ででてしまったことを後悔したが、さっき啖呵きってでてきた手前戻れない。

 

ぷか~

 

俺はひたすらタバコを吸い、空の星を見上げ、時間をつぶすことに専念した。

ここらの空は結構都心からも離れているから比較的綺麗だ。

星座がどうとか、そんなのは分からないがやることもないので空を見上げていた。

 

俺が決めた彼女とのルールはこうだ。

 

その一

「家出を認めるのは一つの喧嘩につき一回まで」

 

一人になる時間、何処かに逃げ出したい時間が欲しい時が誰にだってあると思う。

家族の顔なんて見たくもない時だってあるだろう。

だから、俺は一回目の家出は追わない。

好きな時に家からでて、好きな時に帰ってきたらいい。

考える事、一人の時間を、彼女にとって有意義に使える様に。

 

その二

「二回目以降で見つかった時は決して逃げてはいけない」

 

1のルールを破り家出をしてしまうこともある。

そうなったら逃がさない。

どこに行こうが、どうやってでも捕まえる。

だから、もし見つかった時には諦めること。

 

その三

「いつでもいいから、一日一回は家に帰ってくること」

 

どんなに嫌でも、絶対に一回、家に帰ってこいと伝えている。

顔を合わせたくないなら俺が出勤のときでもいいし、別に部屋に引きこもっていてもいい。

俺と顔を合わせる事が重要なんじゃなくて、ここが真愛美の家なのだという事を知ってもらう為に。

 

 

以上が我が家の喧嘩の時の三カ条である。

約束を破ったら俺の拳骨が容赦なく飛んでいく。

あいつと一緒に暮らし始めてもう三年になるが、その間、このルールが存在し続けていた。

あいつが来た時の最初の喧嘩の後でつくった俺たちにルールである。

 

 

“もう一人ぐらい増えたって大丈夫だよ”

 

 

あいつらはそう言った。

それが本心からでたものだとはまだ俺には思えなかった。

あってまだろくに話してもいない。

しかも真愛美の外見があんなだし、機嫌も悪かった。

そんな奴とあってすぐコイツと一緒にこれから暮らして行くと言われたって不安に決まっている。

 

でも一つだけ安心したことは、三人はそれでも真愛美を受け入れようとしてくれている。

受け入れないと仕方ない状況をつくってしまったのは俺なのかもしれないが、これから先、家は二つあるのだ、最悪な所までは一応考えてある。

できれば、みんな一緒に暮らしたいと思うがそれは俺が決める事ではない。

 

ぷか~ ぷか~

 

“さて、うちの長女はどう思ってんだろうな……”

 

前から細かい事で機嫌をすぐに悪くする娘だった。

それでもそれなりに聞きわけも良かったし、自分の金は自分で稼ぐからとバイトもしている。

バイト代を家計にも入れようかと言われた時にはどうしようかと思ったもんだ。

 

色々考えてんだろうな。

家出をする時はむしゃくしゃしてだったり、一人になりたかったり、色々あるだろうが、ああみえて繊細なあの女は結局いつも最後は決まった場所で膝抱えて色々考えてやがるのだ。

俺はそのことに口出しするつもりもないし、あいつがそうしたいならそれでいいとも思う。

何でも話しを聞けばいいってもんじゃない。

悩み方なんて人それぞれだし、あいつが必要だと判断したら、話してくれることは知っているから。

 

真愛美はああみえて面倒見もいいし、もっと気楽に自分に三人妹ができたことを喜んで欲しかったんだが・・・

主役の意見を聞いていない状態での思考がまとまる筈もなく、とりとめもなく考えて時間はすぎ、辺りは少しづつ明るくなってきていた。

 

ブォン ブォン ブォン

 

遠くの方から聞きなれたバイクのエンジン音が響く。

車庫に俺の愛車を入れヘルメットをはずす、自分の原付やらヘルメットやらがある癖に全部俺のを使ってやがった。

制服のまま出て行って寒いんじゃないかと心配していたが、バイクに入れていた俺のジャンパーを羽織っていた。

事務所を開けて俺のバイクの鍵をなおし、出てきた所で階段に座っている俺を見つけた。

 

「よぅ、寒くなかったかよ?」

 

とりあえず声を掛ける。

 

「ハ、よれよれのうっすい作業着着てる親父にいわれたくねぇよ」

 

確かにごもっともである。

 

「ハハ、違いねぇ」

 

笑いながらタバコを吸う。

 

「なんでそんなとこじっと座ってたんだよ?」

「お前待ってたに決まってんだろ?」

「ずっとそこでかよ?」

「まぁな」

「……バカだろ」

 

その声の後、両方少しの沈黙。

 

「で、どうよ?」

「まだムシャクシャしてるにきまってんだろ」

 

頭をガシガシと掻く真愛美。

まぁそうに決まってるわなぁ。

 

「とりあえず家にはいっか」

「いや、その為に家に帰って来たんだよ!」

 

それでも、少しは落ち着いてくれたようだ。

 

カン カン カン

 

「なぁ」

「なんだよ?」

 

階段をあがりながら声を掛ける。

真愛美は俺の後ろについてきながら振り返った俺の顔をみていた。

 

「俺、お前の親父だからな」

 

とりあえず一言。

それがどういう意味とかそんなのない。

でも、なんとなく言っときたかった。

だから何かしろとか、何考えてるか話せとか、そんなことは一切考えてない。

ただの確認。

 

カン カン カン

 

また俺は真っ直ぐ向いて階段を上がり始めた。

後ろからはなんの反応もない。

 

ガチャ

 

そのまま階段を登り切り玄関を開く。

居間を通りそこで真奈美と別れる。

 

「親父」

 

別れ際、真愛美から声がかかった。

 

「当たり前のこと言ってんじゃねぇよ」

 

そうやって自分の部屋に入って行った真愛美。

空達を確認しようと自室の前の扉を開いた。

 

すぅー すぅー

 

布団をひいて気持ちよさそうに眠っている三人がそこにいる。

どうやら今日はみんなで一緒に寝る様にしたらしい。

一安心して俺は自室に入る、今日も仕事でいまから寝ると確実に寝坊してしまう自信がある。

だから自室でしばらく時間をつぶし、そっから飯を食って出勤だ。

 

居間でテレビみててもよかったが、いつも飯をつくるのは真愛美である。

俺が居間にいたら今日は気まずいだろう。

 

部屋に入って少しすると、真愛美の部屋の扉が開く音がした。

それに続いて居間の扉が開き、台所に出る。

 

トントンと包丁の音や電子レンジの音など料理をする音が聞こえ、それが終わったら居間で飯を食う音と食器を洗う音が結構な早さで連続して聞こえてくる。

朝の補習授業があるからもう出て行かないといけないらしい、ホント最近の高校生は勤勉である。

朝から勉強なんて朝が弱い俺からすると本当に勘弁してもらいたい。

 

とにかくそんな慌ただしい音が玄関から出て行ったことを確認して俺は部屋から出る。

台所をみると昼の俺の弁当と“みんなでくえ”そう書き置きをした大量のサンドイッチがそこにはあった。

 

忌わしいものでも消去するかのように大量にあったサンドイッチに添えられていた溢れる程の卵焼きと、ごみ箱に溢れていた卵の殻は彼女の中での空の料理に対する恐怖が見え隠れしていて思わず苦笑してしまった。

 




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