俺の妹が子持ちでバツいちの男と結婚した件   作:加具

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終わるはずが中編、ホント中だるみ的な一話です。


余ったチャーハンは空達がおいしく頂けたかといったらそんなこともなく・・・中編

願わくば、俺はお前達の幸せを願う。

真愛美や空、美羽やひな、それぞれの幸せじゃなく、お前達皆の幸せを願いたい。

 

 

 

 

 

「クソッ!!」

 

ガシャン!!

 

派手な音をたててフェンスが揺れる。

ムカつく、マジでムカつく。

 

学校を急ぐ道すがら、俺はたまりかねて悪態をついた。

 

「あの糞親父、マジで死なねぇかな」

 

本当にイライラする。

これ以上負担を増やしてどうすると言うのか。

 

分かってる、もう分かってしまっている。

あの親父はやるといったらやる男だ。

 

俺を引き取ると言った時も本当に引き取って娘にしてやがったし……

もうあの三人を引き取ることは決定してしまっている。

 

だからこそ考えなければならない。

自分が経験したことがないから何とも言えないけれど。

きっと、きっと子供を育てるって大変な事なのだ。

 

社会の授業で先生が蘊蓄(うんちく)を語っていたのを思い出す。

正確な値段なんて憶えていないけれど、子供を育てるのはまずたくさんのお金がかかるのだ。

 

それだけじゃない、それに倍する時間を子供相手にとられ、息つく暇なんてねぇのである。

 

そんなことをいいだしたら親父は“そんなのきにすんな”と豪快に笑うだろうが、俺は知ってる。

俺らの生活は何も変わらないのだ。

テスト費がいるからとせがめばくれるし、服が欲しいと言えば“そんなの自分で買え”と言いながらも買ってくれる。

 

最初はおこずかいとしても、高校生にもなった女は色々と手間がかかるからと少なくない金額を貰っていた。

俺達は普通に暮らしているのと何一つ変わらない、苦労もない生活を送ることになる。

 

でも、俺は知っているのだ。

そうなった時、親父の食事は平気で貧しいものになる、自分の服なんて買うことはほぼなくなる。

第一に、やっと金がたまってきたからか、減らしていたタバコの本数が、きっとまた減るのである。

親父がそうやって、視えない所で無理をしていく……

 

「…ゼ、ゼヒュー、ゼヒュー」

 

私は息を慌てて整える。

深呼吸、深呼吸。

さもないとこれから過呼吸を起こしてまた親父の手を焼かせることになる。

 

「ほ、ほんとに、メンドイよな、この体も、あんたもよ……」

 

そろそろ行かないと本当に学校に遅刻する。

俺は学校への道を急いだ。

 

そして学校で聞くのである。

お節介なクラスメイトから、小鳥遊家という家族に起こった出来事を―

――――――――――

 

次女というのはけっこう気を使う。

 

姉からは世話を焼かれ、時々焼いて、妹には世話を焼く。

そんで親がこのまえ亡くなった。

自分的には弱い所を見せるのは大嫌いである。

妹はまだ何が起きたのか理解はしていないが、姉はとても沈んでいた。

もちろん私だってそうだったけれど、私が泣くと姉が泣けないのである。

 

世話焼きなうちの姉は私が泣くと私の心配をしてしまうから。

私は、誰かを心配することはあっても誰かに心配されることは大嫌いなのだ。

 

という所で、私こと小鳥遊美羽は頭を抱えていた。

何といっても突然現れた新しく姉となる人のことである。

真愛美さんは口調や性格なんかは荒いけど、でもいい人だと思う。

 

最初の出会いの際も文句を言いながらも私達に出て行けとは言わなかったし。

私達の分もおいしい朝食をつくってくれた。

あの時怒ったのだってそうだ、父親が娘である自分を置いて、他人をかばったから。

私達を置いて部屋にこもり、おじさんが帰ってくるとすぐに飛び出し、詰め寄ったのだ、“これはどういうことだ?”と。

そうして飛び出していったあの人も不安なんだと感じた。

 

家族になるのだ、あの人の苦しみや痛みなんかも分かち合っていきたい、そう思うのは駄目な事なんだろうか。

 

「本当の娘じゃないんだってさ、お姉ちゃん」

 

私は伯父さんが出て行った後で、少し呆けている姉に声をかける。

ニヤニヤと笑って、イタズラッぽくするのがコツである。

 

「だ、だからなんだっていうのよ!?」

 

姉は慌てた声をだして真っ赤になる。

ウム、元に戻った様でなによりだ。

 

「べっつに~~~」

 

笑いながら私はひなをなでた。

難しく意味も分からないような話をじっと我慢して聞いていた子へのご褒美である。

 

「新しいお姉ちゃんが出来たよ、ひな、よかったね~」

「うん、ひな、ねぇたんとままごとするー」

 

元気に言う相変わらず可愛らしい妹。

 

「そっかぁ、私も混ぜてくれる?」

「いいお!みうねぇたんはごぼうさん!!!」

 

ままごとだと言っているのに食材になっているという妹のエキセントリックな配役に

 

「じゃあ、水抜きちゃんとしなくちゃね」

 

そうやって受け答えていた私もそうとうアレであると思う。

 

ピリリ、ピリリ

 

そんな話をしている中で電話がかかってきた。

 

「お兄ちゃんの携帯からだ……」

 

音は直ぐに仕事終わらせてあがってくるからといっておいて行った携帯からしている。

 

「どうする?」

 

私は姉を見た。

 

「分かんないよ、お兄ちゃんまだ仕事中だろうし」

 

そう言いながらもずっと携帯は鳴り続け―

 

「うるさ~い!!!」

 

我が家の末姫の逆鱗に触れた。

その瞬間覚悟を決め、携帯の通話ボタンを押していた。

 

「もしもし」

「やぁっと繋がった!!」

 

その大きな声は私の答えを無視して帰って来た。

 

「先輩、割のいいの見つけてきましたよ、これが急がないと流れちゃう話なんで、急いで電話させてもらったんですけど……先輩?」

 

受話器の向こうで黙っているこちらが気になったのだろう。

すこし困惑しながら確認する声が返ってきた。

 

「あの、伯父さんは今お仕事中で……」

「真愛美ちゃんではないね、君、誰?」

「あ、美羽って言います。伯父さんの家でお世話になっているものです」

「そ、そうなんだ、僕は佐古というものです。…………この声、僕のジャスティスと見た」

 

納得の声の後、何か小さな声で呟いていたけれど、その声は私には聞こえなかった。

 

「伯父さん、今お仕事中なんですけど……」

「いや、いいよ!!いくらでも待つ、この僕の命にかけて待たせて見せる!!」

 

途端に元気になってやるきになった声。

 

「その変わり、佑太さんに僕のこと良く言って伝えといてね!」

「はい、分かりました。ありがとうございます」

「……もう一回言ってもらえる?」

「ありがとうございます(はぁと)」

「うあぁぁぁあぁあっぁあキタコレ!神キタコレえぁぁぁっぁあ!!」

 

壮絶な奇声を発しながらその通話は切れた。

 

「……なんだったの今の?」

 

その声はお姉ちゃんの所まで聞こえていたのだろう。

姉は少し冷や汗の様なものを流しながらこっちを見ていた。

私はニッコリほほ笑んで―

 

「お兄ちゃんの友達みたい、バイト探してくれてたんだって、良い人みたいだよ?(はぁと)」

 

と突っ込みどころ満載で言ったのだが……

 

「バイト?」

「あ」

 

姉はさっきの人の事よりもそっちが気にかかった様で、

 

「私達のせいなのかな……」

 

あぁあ、また姉が落ち込んだ。

 

「―そんなんじゃねぇよ」

 

突然の後ろからの声に振り向くとそこには伯父さんの姿があった。

 

「佐古からの電話があったって?ほいほい」

 

伯父さんは私が未だ持っていた携帯をするりととると通話を始めた。

 

「よぉ、佐古」

「~~~!~~~~~~!」

「へぇ、そんなに良い条件でいいのかよ?」

「~~~~、~~~~~~~」

「了解、その日あけとくよ、……美羽にあわせろだぁ?」

 

その会話の後、怪訝な顔でこちらをみる伯父さん、私はあんまり意味が分からずコテンと首を傾げてみせる。

 

「……本人、意味が分かりませんみたいな顔してるぞ?」

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

そこだけは聞こえる位に大きな雄たけびが轟いた。

 

「うるせぇな、分かったよ、ちょうど皆に紹介しようとはしてたんだし、そんときにな」

「~~~~~!~~~~~~~!」

「分かったか泣くなよ」

 

・・・

 

どんな会話が繰り広げられているのだろう?

純粋に疑問に思った。

 

「ふぅ」

 

通話が終わると少しの嘆息の後、伯父さんは居間の私達が顔を突き合わせているに腰を下ろした。

 

「何かの時の為にと思って、前から金を溜める様にしてるんだよ」

 

そういってテレビをつける伯父さん。

 

「ひな、ルナルナやってるぞ?春休みスペシャルだとさ」

「みる~~~~!!!」

 

ひなは嬉しそうに俺の膝の上にのってきながら画面を食い入る様に見つめていた。

アニメの中では起承転結とばかりに一度は追いつめられピンチのルナルナ。

 

“お~っほっほっほ、ルナルナあなた達もこれでおしまいね!!”

“でたな、シーカー仮面!!”

 

「おぉ、胡桃ちゃん頑張ってんじゃん」

 

ぽつりと呟いた言葉に反応したのは当然ひな

 

「えぇ?ルナルナはくるみなんてなあえじゃないお」

「違うさ、俺はシーカー仮面と友達なの」

「えぇ~、シーカーかえんはわるいひとなのよ~?」

「いやいや、根は良い奴なんだよ」

「そうなお?」

「おう」

「そうかぁ~」

 

ほにゃっとした顔に戻るひな、我が妹ながら、かわいいな。

テレビに集中しだしたひなはそこに置いておいて伯父さんは私達に目を向けた。

 

「何か言いたいことがあるかな?」

 

その問い掛けに我慢出来なかったのか姉が口を開いた。

 

「お兄ちゃん……無理はしてない?」

「無理?今の俺が無理してる様にみえるかよ?」

 

笑って自分を指す伯父さん。

確かにそれは自然体だった。

 

「本当に?」

「当然だ、こちとらお前ら育てる前から裕理と真愛美を育ててきてんだよ」

 

からからと笑う伯父さんの体から、前ほどタバコの匂いがしなくなったのは気のせいだろうか。

でも私は、その言葉を飲み込んだ。

姉はそこにはまだ気付いていない様だ。

 

「うん、わかった」

「飯食い終わったら、また下に降りるからよ」

 

姉は一応の納得を見せた様である。

そういってひなを地面に降ろし立ち上がると冷蔵庫から真愛美のつくったご飯を取り出しレンジで暖め始めた。

 

「おまえらも食うだろ?」

「「「たべる(たえる!)」」」

 

三人は揃って声をあげ、昼ごはんを食べる事になった。

 

――――――

 

「だからそうじゃねぇって!」

「ハイッ!」

「馬鹿、そんな切り方したら自分の指切っちまうぞ!!」

「ハイッ!!」

「てめぇまず皮を剥け!!」

「スイマセン!!!」

 

仕事場から帰ってくると、調理場は戦場とかしていた。

熱血指導……というかスパルタ指導のもと、空は右往左往しながら真愛美の指示を受け料理に励んでいた。

 

「ほら、帰って来た、間に合わなかったじゃねぇか!!」

「おかえりなさい、お兄ちゃん、ごめんなさい、ご飯もう少しかかりそう」

 

申し訳なさそうに言う空。

 

「別にかまわねぇよ、ゆっくりやんな」

 

そういって台所を通り過ぎる。

 

「あんまり、いじめてやんなよ?」

「ふん、物覚えがワリいのがワリいんだよ」

 

そっぽを向いて真愛美は再び空に目を移した。

 

「だから、なんで湯気でてんのに凝視するだけで引っくり返さねぇんだおめぇは!!!」

「だって見てろって……」

「臨機応変って言葉をしれやぁぁぁぁぁ!!」

 

再び怒号があがる。

食卓はまだ遠い……

 

「あ、おかえりなさい」

「おかえいなさい!」

 

居間では二人の娘がテレビを見ていた。

 

「もう少しでご飯だとさ」

「……まだまだかかりそうですけどね」

 

苦笑気味の美羽。

彼女は空が悪戦苦闘している中ずっとひなの面倒を見てくれていたのだろう。

 

「次女は気を使って大変だな」

 

笑って言う俺にキョトンとした後

 

「そう思うなら伯父さんもなんとか言ってやってください」

 

そんな返答が返ってきて。

 

「面目ない」

 

そうかえし二人で笑い合った。

 

―――――

 

「家出をしようと思います」

 

かしこまった感じで言ってのけたのは真愛美

ご飯として少し焦げたハンバーグが出てきて、焦げはしたものの、食べられない事はなかった。

 

皆でもくもくとご飯を食べ、全て食べ終わった後、皿をしっかりと洗い場まで持って行き、真愛美はそう言った。

俺を見る視線は別にいらついているわけでもなく、寂しげでも無く、なんというかスッキリとした顔だった。

 

「了解」

 

その返答に―

 

「空」

 

真愛美は空に声を掛けた。

 

「ハイ!!!」

 

姿勢を正して真愛美の方を向く空。

 

「明日は卵焼きだかんな」

 

それだけ告げると真愛美は玄関を開け外に出て行った。

それからすぐに、聞きなれた原付の音がする。

 

俺は食卓に目を向けた。

 

「あ、ああ、あのう、私の……せいですか?」

 

目線を向けると落ち込んだ風な空。

手が震え、可哀想な位に顔を青くしている。

 

「違うよ、空、お前のせいじゃない」

「じゃあ……」

「真愛美と話をつけてくるから」

 

俺は視線を美羽に向ける。

視線を察したのか美羽は任せてとばかりに胸を叩いて頷いてくれた。

 

「もしお前のせいなら、真愛美が明日の話なんてすると思うか?」

 

立ち上がって俺のバイクの鍵をとる。

 

「あ」

「そうだろう?あんなに楽しそうな真愛美久しぶりだったんだぜ?」

「楽しそう?」

「ああ、しかもかなり」

 

未だ涙目の空の頭を撫でる。

 

「大丈夫、ちょっと真愛美と話をしてくるだけだよ」

 

そう言って俺は玄関を出た。

風がまだ寒い。

 

愛用のバイクに鍵を差し込みエンジンをふかす。

 

「さぁ、いっちょ行きますか」

 

目指す先は家族のだんらん。

空は星の瞬きがみえる位に澄んでいた。

 

 

 

 

 

 

 




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