俺には不思議な力がある、前回にも言ったが、それは人の内側を見る力だ。
誰もが忌み嫌うそんな力…そんな力を持つ俺は今窮地に陥っている。
ニンヒルと呼ばれた場所に連れてこられた俺は、何が何だかわからない。
場所に着くなり俺を助けてくれたと思われる黒い服のオッサンがじっとこちらを見ているのだ。目を逸らしたくても逸らせない。そんな威圧感がある。
ー……俺が何をしたっていうんだ!?
「本当にお前さんか?俺にはそうは見えん」
「はぁ?俺にもよくわかんないんすけど」
「多分この子だよ?サーシャが反応してる」
パオロは懐から小さな玉を取り出した、増本は不思議そうにその玉を見つめる、途端その小さな玉を光が包み込む、増本は目を見開いた。
「儂が見えるのかえ?」
頭上からの声、驚き下げていた顔を上げればそこには3mはあるであろう巨人が佇んでいた。恐怖に身を怯ませ尻餅をつく、パオロは首をかしげた。
「高弘君、サーシャが見えるの?」
「見えるも何も、目の前にデカくいんだろうが!?そうやってとぼけて、俺を嵌める気かよ!見えてんだろお前らにも!!」
増本の怒りにも似た問い掛けにパオロとジューリオは顔を見合わせる、ジューリオはカハッと笑った。
そんな男の反応に増本は苛立ちを募らせた。増本の苛立ちを解ったように諭すジューリオは、宥めつつソレについて喋り始める。
「こいつ、サーシャはニンヒルの守り神だよ、俺達の守護神、そして敵でもある存在。優しい心を持つ者が持てばそのサーシャは心優しいモノになる、悪の心を持つ者が持てば、そのサーシャは味方をも殺す悪になる、……今のところ、このサーシャは俺達の味方さ、今のところは、だけどな」
「なんだよそれ、……まぁ、うん、味方って事は解った」
「取り敢えず、お前の地位が今確定した」
ジューリオの言葉に増本は頭の中にはてながドンドンと多くなっていく、サーシャと呼ばれた巨人はゲラゲラと豪快に笑ってみせた。
「まっさかぁなぁ、こんなチビが神の子なんて思わへんで」
「はぁ?!?!?神の子!?!?」
「ぁあーっ!今ジューリオがカッコ良く決めようと思ってたのにサーシャが言っちゃったんだー???」
「は!?いや、てか何神の子って?!」
「ごほん、それは俺から説明するサーシャは黙っとけよ」
はいはい、等と適当にするサーシャ、増本の横に腰を下ろして一緒に話を聞くらしい、増本もジューリオの話に耳を傾けた。
「神の子、それはこの世の救世主、ナーハフォルガーとも呼ばれている」
「救世主?」
「嗚呼、絶望を知らせる三つの鐘を終わらせる救世主、そして君は、その救世主だ」
「ちょ、意味がわかんないんだけど」
「ナーハフォルガーの地位はたった一つで決まる、コイツが見えるか見えないか」
ジューリオはコイツ、と呼んだサーシャを指さした、勿論見える筈も無いのでなんとなくでさしている。
増本はジューリオの話にハッハッハッ、と乾いた笑いを見せた。
「俺が神?髪の毛の間違えじゃね?そんな話信じられない、俺が神っていう証拠なんざねえだろうが」
「なら一つ聞く、お前の母は何処にいる」
「は?母って別に「死んだんじゃないのか?いや、お前は多分、母親の顔を知らないだろう?」
「は、なんで、知って」
「お前の母親が、この世の神だからだ」
「何言って、」
「お前の誕生日はEnero.uno」
増本は首を傾げる、ジューリオは口を開き言葉を発した。
「一月一日…元日に産まれたか、めでたい事だ…めでたくもあり、悲しい日、それはお前の母、そして一人の神がこの世から居なくなった日だ」
「ちょ、なんかほんとに意味がわかんない、ならさ、そんなこと言うなら俺の母親のことなんか教えてくれよ、写真とか、あんだろ?名前とか、声とか」
「……ムム様は、お前に何も教えなかったんだな」
「なぁ、教えてくれよ、俺の母親の名前は!」
増本は泣きじゃくる、何故涙が出るのかはわからない、けれど、増本の感情は一つだけだ。
逢いたい、母親に、知りたい、母親のことを、なんでもいいから、母親を感じたい。
「人間での名は増本美夜子、本当の名はセリャド・ムム」
「美夜子…ムム…」
「俺達の、主だ。大変綺麗な姿をしていた、そして心優しくもあった、ムム様は、俺達を第一に考えてくれた」
増本は静かに涙を流しながらジューリオの話を聞く、サーシャも話を聞いていた。
「ムム様は唯一、絶望の鐘を封印出来るお方だった、その上、自分を棚に上げず、まるで家族のように接してくれたムム様を俺達は大好きだった、そんな時だよ、ムム様が殺されたのは。反信者に、ムム様は殺された、お腹は大きかった、ムム様は死ぬ直前言ったんだ」
『ムム様!ムム様!』
『…ぉ…がぃ……この、こを…だして……』
『何を、言って、』
『…ゎ…し…なか、から…この…だして……』
『そんなことをすればムム様が!』
『…こ、こは…っと…せか…、ぃを…すくって、…れる……』
「俺は、涙ながらにムム様の言う通りにした、救護の奴等を呼んで、お腹の赤ちゃんを取り出したよ、そして俺は、病院の前に赤ちゃんを置いた」
「それが、俺か…」
増本は俯いた、事実を受け入れられないのもあるだろう、増本は酷く悲しんだ。
「1つ、答えてくれ」
「なんだ?」
「あの少女が言っていた〝主様〟ってなんだよ」
ジューリオは眉を顰める、パオロが二人の間を割って入り笑顔で話し掛けた。
「とーにかくさ、今はご飯食べようよ!腹が減っては話は出来ん!まずは腹ごしらえ、それから長い話をすればいいじゃん!」
パオロの言葉にジューリオは、笑顔を見せた。
そんな二人に増本は、違和感を覚えるのだった。
…Tobe continue…
オリジナルってームズイですね