平行世界の夢旅人 -Parallel World Which You Travel- 作:たか丸
今回ちょっと大好きな気持ちを隠さない大切さを誰かから学んだので、その大好きな気持ちの勢いのままこの作品を執筆しております。
たか丸の欲望詰め合わせセットになっています。
どうぞ暇つぶし程度にご覧下さい。
突然目の前が暗くなった。
驚き、戸惑い、何かを探し求めるように暗闇を掻き分ける。
何も掴めはせず、何一つ音が聞こえず、声すら出せない。
だんだん息が苦しくなる。
どうやら空気が薄いみたい。
何も考えられなくなる。
遠のく意識の中で私は、幼なじみの声を聞いた気がした。
誰かの名前を呼ぶ、あの子の声を。
──────
気がつくとそこは私が通う虹ヶ咲学園の中庭だった。
ファンタジー物の読みすぎかと思うくらいの体験をした故に、気がつくとそこは全く知らない世界の森の中で、「こ、ここはいったい……?」みたいな展開が巻き起こるのではと予想したけど、どうやらそうではなかったみたい。
そういえば、目の前が暗くなる前は確か……そう、中庭のベンチに座って日向ぼっこをしていたんだ。
つまりこれはファンタジーでもなんでもなく、ただただ私が日向ぼっこして眠くなって寝落ち、うつ伏せだったから息苦しくて目が覚めた……って解釈でいいかな?
なーんだ、ちょっと一瞬トキメいたけど、やっぱりそんなもんだよねぇ。
さてと、たしか今日の部活はないから、ちょっと寄り道して帰ろうかなっ。
身の回りを見てもカバンはない。
あちゃ、教室まで取りに行かなくちゃだ。
時刻は午後4時22分。
空の色が少し浅葱色っぽくなってきている。
夕暮れが近い。
早くしないと寄り道時間が短くなっちゃう!
さてと、急ごう!とばかりに勢いよくベンチから立ち上がり、教室に向けて踵を返した。
流れていく景色はいつも通りの虹ヶ咲学園そのもの。
淡い幻想を抱いていたわけだけど、徐々に現実に引き戻されていく。
「あ、そうだ。部室にみんなの新曲のCDを置いてきちゃってたんだった……」
作ったばかりで今日の朝みんなに聴いてもらった新曲。
我ながらなかなかに会心の出来で、これならμ'sやAqoursにも負けないぞ!って曲になったんだよねぇ。
聴いてもらいたい一心で、みんなに聴いてもらったらほっとしてそのまま忘れてきちゃった……
カバン取りに行ったら部室に寄り道してからお台場に行こうかなっ。
?「侑ちゃん?」
ふと聞こえた。
聞き覚えのある声。
すごく安心する優しい声。
大好きで大切な幼なじみの声。
けれど
私の事じゃないとは分かっていたけれど、声の主の顔が見たくて、私は振り向いた。
そこにはもちろん、私の大好きな幼なじみ、上原歩夢ちゃんがいた。
しかしここで私は不可解な事に気が付く。
歩夢ちゃんは「侑ちゃん」という私の知らない人の名前を呼んでいた。
おそらく音楽科に所属する私とは違う、普通科に所属する歩夢ちゃんのお友達なんだろうなと思っていた。
けれど、振り返って見た歩夢ちゃんは他の誰でも、どこでもない、私を見ていた。
つまり歩夢ちゃんは私のことを"侑ちゃん"という人物で認識していることになる。
そしてその後にハッキリと私の目を見て、
歩「もう侑ちゃん、練習の時間になっても部室に来ないから探したんだよ?」
"侑ちゃん"と、確かにそう言った。
侑。
私は……侑?
そんなわけない。
だって私の名前は……
なま、え、は……
あれ……?
──────
歩「記憶……喪失……?」
「うん、分からないんだ……自分の名前だけが、どうしても」
歩「名前?あなたの名前は侑、高咲侑だよ?」
「いや、分からない……分からないけど……私の名前は絶対に、高咲侑じゃないんだ……」
高咲侑。
まったく聞き覚えのない名前だった。
直感的に、「私は高咲侑じゃない」と悟った。
でも、高咲侑という名前であること、「侑ちゃん」と歩夢ちゃんに呼ばれることは不思議と心地よくて、もしかしたらこれが私の名前なのかと、一瞬思った。
歩夢ちゃんもわざと私を違う名前で呼んだりするような子じゃないし、それをずっと続けられるような、嘘をつける子でもない。
歩夢ちゃんはさも当然のように私のことを"侑ちゃん"と呼ぶ。
私のことを"高咲侑"という人物として認識しているということは、身体的特徴がその"高咲侑"という人物に酷似しているから。
つまりこれは……
「ごめん歩夢ちゃん、ちょっと落ち着くためにピアノ弾いてきていいかな?」
歩「えっ?あ、うん……いいけど……ねぇ侑ちゃん、どうして"
「そりゃ、歩夢ちゃんは歩夢ちゃんだからでしょ?」
歩「えと……いつもは
「……え?」
ああ、もう。
思考整理のためにピアノなんか弾く必要ない。
確信した。
「歩夢ちゃん、今から話すことは作り話でもなんでもなくて、今実際に起こっていることだから、笑わずに聞いてね?」
歩「う、うん……」
目をぱちくりとしてこちらを見つめる歩夢ちゃん。
「私は、この世界とは違う世界にいる人間で、この世界の高咲侑という人の体と入れ替わっているのかもしれない」
なんてファンタジーな言葉を発したんだろう。
歩夢ちゃんも呆気に取られて目をまん丸にしてる。
そりゃそうよ。いきなりこんなこと言われたらビックリするし信じられないでしょうよ。
歩「えっと、私の目の前にいる侑ちゃんは、侑ちゃんの体をした別世界の誰かってこと……?」
「そう。そして歩夢ちゃんは私が元いた別の世界でも存在していて、歩夢ちゃんのことを歩夢ちゃんだって認識できているのは、私が歩夢ちゃんと幼なじみで知り合いだから」
私の知っている上原歩夢は、明るめのレッドブラウンカラーのセミロングヘアで、右側に三つ編みシニヨンを作っている。
たれ目でとても整ったかわいらしい顔立ち、優しさに溢れた声、悔しいけど私なんかよりも全然ある胸、さらに悔しいけど私よりも少し高い身長。
全くもってそれが一致していて、私の前にいる歩夢ちゃんは正真正銘本物の上原歩夢であると同時に、私がいた世界とは違う上原歩夢でもある。
「つまりこれは、パラレルワールド……この世界の高咲侑さんと私が元いた世界の私はパラレルワールドにおける並行同位体なんだ!」
歩「へ、並行同位体……?」
「要は別世界に暮らす同じであって違う人!見た目とか名前とか、何かしらは全く同じなんだけど、決定的に違う何かがある……そんな存在のことだよ!」
歩「同じだけど違う人……じゃあ別世界の私は、私だけど私とは何かが違うかもしれないってこと?」
「今のところ違う点は見当たらないけど……つまりはそういうこと」
にわかに信じ難い話だけど、歩夢ちゃんは真剣な表情で悩んで、そして
歩「……私は信じるよ!別世界の侑ちゃんなんだもんね!だったら私は、大好きな侑ちゃんのこと信じないわけないもんっ!」
「歩夢ちゃん……!」
この心の広さも私が知ってる歩夢ちゃんと同じ。
別世界の歩夢ちゃんとはいえ、なんだか実家のような安心感に浸れる。
歩「とりあえずこれから練習なんだけど、えっと、侑ちゃん……でいいのかな?」
「うん、結局自分の名前は分からないし、歩夢ちゃんが呼びやすいならそう呼んでくれれば」
歩「じゃあ侑ちゃん、今日は事情が事情だから練習お休みにして帰らない?」
「そうだね……もしかしてだけど、家ってやっぱり隣同士?」
歩「うんっ!いつも朝起きて侑ちゃんのスマホ鳴らして、ベランダに出て挨拶して、支度が終わったら一緒に学校に行くんだよ!それで帰ってきてお風呂から出たら湯冷ましにベランダに出て少しお話するの!」
「あぁ……全部同じだ……!」
いつも朝は歩夢からかかってくる電話が目覚まし。
寝ぼけ眼を擦りながらベランダに出ると、お隣のベランダには歩夢がいて、少しおしゃべりをする。
マンションの階段下で待ち合わせて一緒に登校。
帰宅後は入浴して、ベランダに湯冷ましに行くんだけど、何故かいつもタイミングが合う……これが幼なじみパワー……?
全部おなじルーティーン。
この世界の私、ほんとに私と変わらないんだなぁ……
歩「あっ、ねぇ侑ちゃん」
「ん?」
歩「みんなには……なんて説明しようか……?」
そういえばそうだ。
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会には私と歩夢ちゃんの他に、中須かすみちゃん、桜坂しずくちゃん、朝香果林さん、宮下愛ちゃん、近江彼方さん、優木せつ菜ちゃん、エマ・ヴェルデさん、天王寺璃奈ちゃん、三船栞子ちゃんの計11人が所属している。
個性派揃いの虹ヶ咲だけど、ソロのスクールアイドルとして活動することで、お互いの個性を潰し合うことなく、それぞれのステージでそれぞれの個性を爆発させるのが持ち味。
個性派だから仲良くないかと言われれば間違いなくそれはNO。
めっちゃ仲良い。うん。
しかしどうしたものか。
みんなに説明するにしても、歩夢ちゃんみたいにすんなり信じてもらえるかは分からないし、特に愛ちゃんなんかは面白がりそうだし、せつ菜ちゃんに関しては収拾がつかないくらい盛り上がっちゃいそう……
「あ、いいこと思いついちゃった!あのね……」
歩夢ちゃんに耳打ちして、閃いた案を伝える。
歩「うんうん……うん……えっ?えっと……」
「どうかなっ!」
歩「うーん……侑ちゃんがそうしたいなら……」
「よしっ!じゃあやってみよう!予定変更してこのまま部室にGOだっ!」
ひひっ、楽しみ〜っ!
To be continued
いかがでしたでしょうか?
本作はあなたちゃんの名前が判明するまで、そして元の世界に戻れるまで続けようかなと思っています。
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それでは次回もお楽しみに。