「…………はぁ」
雄英高校入試会場にてあたしたちは筆記試験を終え、実技試験会場に意気揚々と向かっていると人使さんがどこか不安げな溜め息をつきます。
「どうかしました? そんな溜め息ついてたら、幸せが逃げちゃいますよ?」
「そりゃ溜め息もつきたくなるよ。なんだかズルしてるみたいでさ、なんか罪悪感がすごくて」
人使さんの背中には、一見彼には似合わないであろうRPGでしか見ないようなゴツゴツとした剣が下げられていました。
当然それはあたしがポニーちゃんとともに作った合作のサポートアイテム擬きで、素材はポニーちゃんの角で出来ています。
ポニーちゃんが自由に扱える
何度も何度も、角を飛ばしまくった結果として最大五十本の角を操れるようになり、一本一本が硬度も強靭なものでガチガチのコンクリートぐらいなら軽々と砕くことができるのです。
「問題ナッシングデス! サポートアイテムを使ってはダメというルールはないのデスから、
「あたしは人使さんとも一緒に雄英に通いたいと思いますし、同じスタートラインから共に歩きたいです。それとも、人使さんはそのまま落ちていいと思っていますか? 後悔はないと本気で言えますか?」
「…………っ!」
あたしの鬼気迫る言葉に、人使さんは一瞬気圧されたような表情になりましたがすぐに笑みを浮かべ開き直ったように言いました。
「そうだな。俺も“個性"の相性だとか、ズルかもしれないとかで落ちたくない。…………これはありがたく使わせてもらうよ」
「はい、是非ともご使用ください!」
人使さんの凝りを解消できたことで、あたしたちの足取りは軽くなりました。
実技試験、必ず三人とも受からなくてはいけません!
◆◆◆◆
「今日は俺のライヴにようこそー!! エヴィバディセイヘイ!!」
ホールに入ってしばらく待っていると、ボイスヒーロー『プレゼント・マイク』が会場中にビリビリ響きました。
ですが、会場の誰一人さえリアクションをしていなくてせめてあたしだけでもと声をあげようとしましたが二人に口を塞がれました。
「こいつぁシヴィー!! 受験生のリスナー! 実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!! アーユーレディ!? YEAHHー!!」
どんなメンタルをしていたら、あんな平気そうに出来るんでしょうか?
あたしだったら、顔を真っ赤にして逃げ出してますね。
「入試要項通り! リスナーにはこの後! 10分間の『模擬市街地演習』を行ってもらうぜ!! 持ち込みは自由! プレゼン後は各自指定の演習会場へ向かってくれよな!!」
三人それぞれの会場を確認すると、あたしとポニーちゃんがFで人使さんがBでした。
人使さんがまた不安そうにしていないかと顔色を窺いますが、しっかりと前を見据えているようなので大丈夫でしょう。
「演習場には"仮想
処注意や第四の0p敵についての説明を最後に、あたしたちは二手に別れて会場へ。
「必ず三人で受かりましょうね、ポニーちゃん」
「“A dream doesn’t become a reality through magic. It takes sweat, determination, and hard work.”(「夢は「魔法」によって叶うものではない。「汗」と「決意」と「努力」)デス!」
確か、アメリカの政治家『コリン・パウエル』の名言でしたっけ。
ありがたいお言葉を胸に、あたしたちはF会場へと向かいました。
「わー」
「…………Wow」
ジャージに着替えたあたしとポニーちゃんは、もう街と言っても差し支えないほどの規模の試験会場に圧倒されていました。
どのようにこれほどの敷地を用意したのか、雄英の本気度が窺えます。
『ハイスタートー!』
「「っ!」」
プレゼント・マイクのスタート宣言が響き、あたしたちは反射的に駆け出しました。
「ロゼ、乗ってくだサイ!」
「はい!」
ポニーちゃんの頭から二本の角があたしの足下までやってきて、あたしはすぐに飛び乗ります。
二人で飛行しながら直進していると。
『標的捕捉!! ブッ殺す!!』
『ブッ殺す!!』
あたしたちの前に二体の1p仮想敵が飛び出し、物騒な台詞を吐きながら飛びかかってきます。
でも…………
「よいしょっ!」
発動した“個性"は『怪力』。
自分の力が常時とはかけ離れた感覚を覚えながら、拳を振り上げ殴り付けます。
グシャっと硬い外装がひしゃげる音を響かせて、仮想敵は沈黙。
ポニーちゃんも難なく倒したようで、すぐに他の仮想敵を狙います。
2p、3pとどんどん仮想敵を倒していくうち、気づいた時にはあたしが62pでポニーちゃんが64p。
残り時間も僅かになり、仮想敵の数も目に見えて少なくなってきた気がします。
もう少しポイントを稼げたらいいなと思い辺りを見渡していると、見上げるほど高いビルをなぎ倒しながら0p敵が姿を見せました。
その付近には怪我を負ってうつ伏せに倒れていて、それを見たあたしたちは無意識に身体が動いていました。
逃げている集団の中から、ぽっちゃりとしたショートヘアの男の子の髪を一本だけ引き抜くと口に含んだ後飲み込ました。
その瞬間、あたしの中に新たな個性が芽生えるのを自覚します。
個性『ツインインパクト』
打撃を与えた箇所に任意のタイミングで、もう一度打撃を発生させる個性。
その二度目の打撃は数倍の威力になる。
丁度良い個性が手に入ったと頬を綻ばせ、ポニーちゃんに合図を送ります。
それに了承したポニーちゃんは、頷くと無数の角を射出。
0p仮想敵の視覚カメラを覆い尽くし、突然目の前が真っ暗になったことで大慌て。
その隙に、敵の頭上へと一気に上昇。
ポニーちゃんの操作する角から飛び降り、敵の頭部に着地します。
あたしの角を引き抜き、『怪力』で強引に打ち込みます。
そして、発動させた『怪力』をもって全力で殴り付けます。
最初の打ち込みで入った亀裂が広がるものの、とどめには至りません。
──────少し前までのあたしだったら。
「
先程の数倍の一撃が再び叩き込まれ、とてつもない破砕音が響き0p敵の頭は盛大に砕け散りました。
『終了~!!』
仮想敵を倒すと同時に、プレゼント・マイクの声が響くと試験終了が告げられます。
前世の最後に感じた満足感、それによく似た感覚があたしの中に宿っていました。
◆◆◆◆
雄英入試から一週間後、あたしたちはごくりと生唾を飲みながら郵便受けに入っていた封筒を握りしめていました。
筆記試験も自己採点した限り問題なく、実技試験でどの程度の点数で合格なのかが分からなかったために不安げな日々を過ごしていました。
でも、その日々ともようやくお別れです。
「ポニーちゃん」
「ロゼ」
二人で同時に封を破り、中身の小さな投影機を取り出します。
投影機を作動させると。
『『私が投影された!!』』
「ええっ、オールマイト!?」
「
明らかに画風違いな顔面が空中に投影され、あたしは尻餅をつきポニーちゃんは興奮のあまり英語が飛び出していました。
ナンバーワンヒーロー・オールマイト。
来年度から雄英の教師として赴任することが決まったらしく、その事実にポニーちゃんはあたしでも聞き取れないほどの早口で英語で何事かを叫んでいます。
『『筆記も問題なし、実技は81p(83p)余裕で合格だ!』』
「ほっ…………」
『『そして先の入試、見ていたのは敵Pのみにあらず!!
『如月ロゼ60P!!』
『角取ポニー50P!!』
『『合計で141P(133P)!!』』
「「やったー!!」」
『『来いよ如月(角取)少女!
感動のあまり晩御飯の用意も忘れ、しばらく呆けていると電話が鳴っていることに気づきます。
『心操人使』と表示されていて、あたしは急いで電話に出ました。
「もしもし、人使さん!? 試験の結果ですけど…………」
『もちろん受かったさ。あんだけ手厚いサポート受けといて、不合格したらお前らに顔向けできないからな』
人使さんの合格を聞いて、あたしのテンションはうなぎ登り。
ポニーちゃんを交えてあれやこれやと話している内に、時刻は0時になっていました。
電話を切ると、ぐぅという腹の虫が泣きわめきあたしたちは遅めの夕食をとりました。
新たな高校生活を想像し、胸を踊らせながら。
ポニーちゃんのチート化デスね
ロゼちゃんとポニーちゃんが同じ会場なのは学校が違うためです。