「貴方、どうしてここにいるの?この強盗団達とどんな関係?……黙ってないで答えなさい!」
鳥人お姉さんはまんまヴィランを見るような目で俺の事を睨み、警戒している。
もう見るからに敵意maxだわ、うん。いやね、俺が人質の子を助けたなんて鳥人お姉さんは知りっこないし、逃げろといった不審者が強盗団がうようよいるビルに居たりなんかしたら、そんな反応になるのも分からなくはないよ?だけどちょ〜っと敵意高すぎない?あれか、眼鏡のせいか。この赤眼鏡が勘に障ったのか?!ごめんね!でもこれトレードマークみたいなもんだから外さないよ!
それはともかく、俺は無反応を貫いたまま、少〜しずつ後ろ歩きで階段に近づく。
ある程度まで近づいたら、一気に階段を下ってそのまま逃げたろ!という魂胆である。流石にプロヒーロー相手に個性使って危害加えたら完全outだし、かといってこの状況て正直に事情を話しても嘘をつくなこの不埒ものグサー…ってされそうだし、逃げるが勝ちっつ〜ことでw
「ブレイザー、下は粗方終わりまし…何してるんです?」
ん我が逃走経路がぁぁぁ!!?!!
これはまずい。いくら俺の忍び足が完璧だったとしても、流石に後ろから見られたら少しずつ後退してる事がまるわかりである。そして当然そんな事になればこいつは鳥人お姉さんに教えるだろうし、そんな事になればあの敵意maxなお姉さんは"何処へ行くんだぁ?"と言った後にこちらを血祭りにしてくるにちがいない。あ…悪魔たん……。
というかあのお姉さんのヒーローネーム初めて聞いたけど、ブレイザーっていうんだ。ふ〜ん、中々かっこいいじゃん。俺のセブン上司(笑)と交換しない?あ、いらない?あっそう…
「テッシ、そいつ捕まえて。強盗団の一味と何か関わりがあるかもしれないから。」
「えっ、まじすか!」
おっと、ついに捕獲命令が出てしまったか。
流石にこの歳で前科者になる訳にもいかんし、ここから脱出する方法を真剣に考えねば。う〜ん……う〜ん………よし、ここはマン兄さんよろしく自分が無害な事を示そう。ヘッヘッヘ、シンパイスルコトハナイ
『……〜〜!』
おや、鳥人お姉さんのつけてる通信機から何か通信がきてるな。ここはウルトラ七つ道具の一つ、ウルトライヤーの出番だな。
説明しよう!ウルトライヤーとは、セブン上司に備えられた能力であり、このウルトライヤーが活性化してる状態ならば俺は例え数百キロ離れた場所で落ちた針の音も聞き取る事ができるのだ!
ただし、実際には針の音以外にもこの都会には雑音が溢れているので聞こえる事は多分ないぞ!
『ブレイザー!聞こえるかブレイザー!!』
感度良好感度良好。他の雑音が煩いけどギリギリ通信機の音を拾えるな。
「どうした、今こっちも取り込んでて…」
『大変だ、一味の一人が巨大化の個性持ちだった!急いで捕まえないと大変な事に…』
巨大化の個性もちだぁ?おいおい冗談きついぜヒーローさんよ〜?そんなん出てきたら本当にウルトラマン案件じゃ…あ、これやばいな。あちこちから建物の軋む音が聞こえてくる。
そしてその数秒後、床にひびが入るのとほぼ同時くらいに巨大な何かが床を突き破ってくる。
俺は咄嗟の判断で床に突っ伏してる熊男と後ろにいるブレイザーの仲間を抱え、壁をぶち破って外に飛び出す。くそ、大の大人二人抱えながら飛ぶのって結構疲れるな…。
「い、いきなり何をっ………ってななんだあれ?!」
脇に抱えてるブレイザーの仲間(確かテッシとか言ったっけ?)が目を見開きながら規格外の大きさとなったそいつを見る。
体長はそ30〜40mくらいか。奴等のアジトとしていたマンションより一回り以上大きなそいつは、全身にゴツゴツとした岩のようなものがついており、人間というよりは怪獣といった方が適切なような気もする。というかほぼ怪獣だなありゃ。
「まずいまずいまずいまずい、あんな巨体が街で暴れでもしたらひとたまりもないぞ……!俺の個性じゃ到底太刀打ちできないし、対応できそうなヒーローは他の案件で街に居ない…!!」
ま…まじですか。ただでさえあの大きさだと物理的な力比べは"例外"を除いて望めそうにないし、搦め手を使うにしても一定以上の力と経験がないと難しいだろうに、人手までないとは。
「くそっ!皆と連絡がつかない!皆何処に…!ちょっ、もう少し右に行ってくれ!そうそこ!」
テッシ君の言うとおり右に寄ってみると……おぉ、瓦礫の中に鉄でできたドームのようなものがあった。全容はよくみえないが、恐らくあの中に鳥人お姉さんの仲間たちやらが入っているんだろう。
一安心……といいたいけど、ドームのある瓦礫はあの怪獣擬きのほぼ足元にある。あのドームがどれくらいの強度があるのかわからないけど、あの巨体に押し潰されて無事でいられそうかと聞いたら……正直微妙である。
テッシ君も俺と同じ考えなのだろう、安心したような表情を浮かべつつも、いつ爆発するかわからない爆弾を目の前にした時のような緊張感が腕越しに伝わってきた。
「ヴルァァァァァァァ!!!」
と、怪獣擬きが獣のような遠吠えをし空気を震わせる。まるで本物の野獣みたいな豪快な雄叫びは、恐らくここからそう遠くない街にまで響き渡っただろう。
「お……おい、お前を善良な市民だと信じて頼みがある。」
おや、テッシ君がいつになく真面目な顔でこちらを見てきてるな。いや、今日が初対面だからいつになくもクソもないんだけどね?
「俺をここに降ろして、お前は街まで行って街の人達を避難させてほしい。あいつが街まで進撃するのは時間の問題だし、ブレイザーも見当たらない。今ここであいつの存在を街に知らせられるのは、お前しかいないんだ。…頼むっ!」
「……ここに残るってことは、あの怪獣の相手をお前一人が受け持つって事だけど、それでもいいの?」
「あぁ、構わない。」
なんという真っ直ぐな目。これはそう……就活を乗り切り、心機一転、これから会社の為に頑張るぞと気合いをいれていた、あの頃の純真な俺そっくりだ…。
けっ、変な事思い出させやがって。んでもま、お前の思い…しっかりと俺の胸に届いたぜ?
俺は両脇に抱えた二人を怪獣擬きから少し離れた道路に降ろすと、また空に浮かぶ。
「……頼んだぞ。」
俺はその言葉に、サムズアップで答え
「しゅわっと!」
怪獣に向け、猛スピードで突っ込んでいく。
猛スピードで、突っ込んでいく。
「えっ?……は、はぁぁ??!!!」
いや……だって敵前逃亡とかウルトラマン様の戦い方じゃないし…。
それにほら、俺が囮になればあいつを街からも足元のドームからも引き離せて、一石二鳥だし、良いことづくしなんだもん。
まあ、だからってちょっといい雰囲気だったのをぶち壊しちゃったのは、正直すまんと思ってる。ごめんなテッシ君。
背後から「お前…それはないだろうがよぉぉぉ!!」という声が聞こえた気もするけど、多分恐らくきっと気のせいだろう。
つー訳で、このまま怪獣にダイナミックエントリーじゃぁぁ!!
ドスッ!
「……ガァ?グギャァァ!!」
ペシッ
グベラッ?!
まさかのエントリー失敗!
あの野郎、見た目以上にヘビーですぜぇ……グレート。
怪獣に集ってきた蠅を手で払うかの如く吹き飛ばされた俺は、地面にめり込み、軽い脳震盪で意識が朦朧としながらそんな事を思う。
っと、まずい!気づけば目の前に広がるは怪獣擬きの巨大な足裏!裏!裏!このままでは出来損ないのハンバーグの如く、ペチャンコになっちまう!
何とか体を浮かし、その場から脱出する俺。そのまま怪獣擬きとの本格的な戦闘に入る。
うおおぉぉ!ウルトラセブン上司の力よ!エメリウム光線!偽ウルトラセブンの力よ!エメリウム光線!セブンガーの力よ!体当たり!駄目だ、利きやしねぇ。
そもそもセブン上司と偽セブンって、力被ってんだよ!体感殆ど違いがわかんねぇよ!セブンガーに至ってはセブンですらねぇし!まじで酒飲みながら作った力としか思えねぇ……。
せめてセブンXとかセブン21とか、少しでも違いのあるセブンの力がほしかったよ……いや、これまじで。
「グゥゥゥ……ラァァァァァ!!」
うわっ、やたら滅多に暴れだしやがった。まずいな、これ以上興奮させるとドームを踏み潰しかねない。
……加減が難しいけど、あれを出すしかないか。
「シュワッチ!」
俺は両腕を交差させ、怪獣擬きに渾身のウルトラ念力をかける。
「グオ?オォォォォ??!!」
急に体が動かなくなり、困惑して暴れだそうとする怪獣擬き。俺はなんとかそいつを必死に必死に抑えつけ、歯が砕けそうになるくらい踏ん張り、なんとか何もない更地まで投げ飛ばす。
怪獣擬きは、思いっきり地面へと叩きつけられ、衝撃で悶えている。今のうちにと、俺は両腕をくの字に曲げて胸を張り、太陽光を体にチャージする。
太陽の光が胸から肩へ移動し、そこから腕に貯まっていく。時間が経つ事に、体に力が溢れてくるのを感じる。
「グァァァ!ウギャァァァァ!!」
と、悶えていた怪獣擬きが起き上がり怒りの咆哮を上げはじめる。まっずい、まだチャージが終わってないっつうのに…!
そんな事を気にする訳もなく、怪獣擬きは獣のような叫び声を上げながら、一直線にこちらに向かってきて……
「ブレイズ・ブラインド!」
しかし次の瞬間、どこからか現れた鳥人お姉さんが俺と怪獣の間に割り込み、その身に纏った羽を大量にバラ撒いて怪獣の目隠しをした。
虚を突かれた怪獣は、一瞬だがその場に足止めされる。
しかし直ぐに手で目の前の羽を払いのけ、再びこちらに向かってこようとするが……
「時間切れだ!」
光のエネルギーが充分に貯まった両腕をL字にクロスさせ、セブン上司最強の必殺技を放つ…!
「ワイド…ショットォォォ!!」
俺の腕から放たれた極太の光線は、ジェット機のエンジン音のような重低音を響かせながら、怪獣擬きの体にヒットする。
「グゲッッ!ガッ…ガァァァァ!!」
あまりの威力に、エメリウム光線では眉一つ動かさなかった怪獣擬きも、思わず苦悶の声を上げている。
これが本当の怪獣だったなら、何も考えずフルパワーでぶっぱなして大爆発されりゃいいのだが、元はといえばこいつも人間の為、加減を施して撃つ必要がある。
それでも、等身大ならどれだけ手加減しても蒸発案件なこの技を受け止められるこいつは相当タフなようだが。
「グッ……ゲガァァァァ!!」
と、断末魔のような声を怪獣擬きが上げだしたので、発射を止める。
怪獣擬きは、ゆっくりと倒れ、その場でどんどんと縮んでいき……最終的に、ちょっと大柄なくらいの男にまで戻っていった。
……ふぅ、ようやく片付いた。いや〜、一時はどうなる事かと思ったけど、万事丸く収まってよかったよかった。
腰に手をあて一息つきながらそんな事を思った俺は、そのままどさくさに紛れて帰ろうとして…
「待ちなさい。」
鳥人お姉さんに止められる。
はぁ……やっぱこうなるよなぁ。えっと、犯罪者であるとはいえ他人に個性を使って攻撃した訳だし、やっぱまずいよなぁ……モウマヂムリ……。
「貴方……ヴィラン、じゃないのよね。もしかして、ヴィジランテとかいう自警団擬き?」
え?いやまあ……ニュアンス的にはヴィジランテの方が近いけど…。俺は鳥人お姉さんさんの質問に肯定するよう、首を縦にふる。
「そう…でも、ただの自警団にしては、貴方の個性は強すぎる。教えて……貴方一体何者なの?」
異世界から来た転生者です
……な〜んて言ったら、黄色い救急車を呼ばれかねないな。ふむ、俺が何者か…か。
「俺は……セブン。ウルトラセブンだ。」
はい景品表示法違反。この人ウルトラセブンの名を騙ってるセブン上司ですよ〜。
「セ……ブン。そうか、それが貴方の名前か…。」
鳥人お姉さんさんは、ノスタルジックにそう言うと俺に背を向ける。
「本当はこんな事しちゃダメなんだけど、幸いにも貴方の姿を見たヒーローは少ない。この件に、貴方が関わっていた事実は、私が消しておくわ。だから…行きなさい。」
ま……まじっすか。なんて神対応なんだ…母性すら感じる。はっ、もしや貴方が俺のウルトラの母…?ま、ママ〜。
「…恩にきる。」
眼鏡をクイッとさせながら短く感謝の言葉を伝えると、俺は全速力でその場から離脱する。
家に帰ると、母親がキッチンで料理を作ってる音がする。もうそんな時間になってたのか…。
「七斗〜、あなた大丈夫だった〜?何かさっきすっごい大きな叫び声聞いたから、母さん心配してたのよ〜?」
あ、やっぱあいつの声ここまで届いてたんだ。まあ怪獣擬きがいたって事は幸いほとんどの人が知らないままっぽいから、適当に誤魔化しておくか。
「大丈夫大丈夫、きっとどっかで酔っ払いが歌でも歌ってたんだよ。」
母親はそうかしら?ま、きっとそうねと直ぐにこの話題を終わらせ、今日の晩御飯の話へと話題をシフトさせた。
俺は適当に相槌をうちながら、今日の出来事を振り替える。
ふむ…ヒーロー……ヒーローかぁ……。ヒーローになりゃ、今日みたいな事があっても、ビクビクせずに思いっきり個性使えるよな…。ヒーローとかライセンスとるのめんどくさそうだから将来の選択肢になかったけど…意外とありかもしれんな。
となると、こっから一番近いヒーロー科のある高校といえば…
「母さん、俺雄英に行くわ。」
雄英高校しかないわな。おし、いっちょやってみっか!
次回短めなブレイザー視点書いて、完結にしようと思います。てな訳で次回第3話、ゾフィーと何処で差がついた…に、こうご期待。
主人公:光 七斗
個性:セブン!セブン!セブン!
偽ウルトラセブン、セブンガー、セブン上司の三人の使う技を使える。技の使用には光のエネルギーが必要で、一時間日向ぼっこをすれば20〜30分は個性を使用できる。
バリエーションは微妙だが、技の性能はどれもピカ一。特にワイドショットは、本気で撃てば街一つ簡単に消し飛ばせる威力がでる。