ニーアランドの喫茶店   作:アテュ

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エステラ編 その②です
前話でちょっと矛盾するところがあったため修正。申し訳ない


Elevenses tea

極上、最高、至高

 

表現は様々なものがあるがどれも意味は大きく変わらない。ひときわ優れたこの上ないものだ。

 

しかし飲み物ほど同じ材料から作られ価値が変わってくるものはなかなか無い。

 

優れたワインと凡百のワインではつけられる値は数万倍変わる事さえある。

 

 

紅茶はどうだろうか?

 

そもそも紅茶とは緑茶、烏龍茶と種を同じくする物であり発酵具合の違いでしかない。

 

緑茶が0%とすれば烏龍茶は50%、紅茶は100%にあたる。

 

そのため、緑茶に比べ烏龍茶はコクが深い。紅茶はさらにコク深く奥行きを感じるだろう。

 

 

話が少々脱線してしまったが、安価なティーパックのものだと1個数十円、もしかしたら数円程度のものもあるかもしれない。

 

では高いものでは?それでも数千円。万はなかなか超えないだろう。

 

手に入れやすい紅茶だが高級なイメージも多い。ラグジュアリー感あふれるカフェ。オーセンティックな魅力溢れる純喫茶。イギリスの空気を感じさせるサロン。

 

紅茶、茶は品質そのものももちろんだが、英国で流行してからどこか神秘的なイメージを持たれている。

 

つまり飲み物としてだけでない、その場も非常に大事な役割を果たすのだ。

 

 

「なるほど、この人ちょっと説明長いねエステラ」

 

「こら、ルクレール失礼でしょう。同じスタッフなんだから」

 

「いえいえ、あまり硬くなられすぎるとこちらも緊張してしまいますので」

 

穏やかな表情を見せるこの初陽(しょよう)という輸入業者は飲料関係を主に取り扱い、最近人気のあるカフェ、喫茶店ブームにうまく乗っているそうだ。

 

 

そう言って先ほど取り出した茶葉を再びこちらに見せる。

 

「まぁ一言でいえばですね。非日常感ですよ、恐らくこちらのホテルに滞在されている方は地球でも多くのホテルに泊まられ紅茶、もしくはコーヒーを飲まれる事が多かったでしょう」

 

「素晴らしい評判の紅茶やコーヒーとは不思議な事に高級ホテルで話題になることが多い。品質も関係あるでしょうが、間違いなく素晴らしい場所で楽しむことでより洗練されたものに仕上がっているでしょう」

 

 

 悔しい事に一理ある話だ。宇宙では水も食べ物も限られており、地球から輸入の際には細心の注意を払い受領を行っている。

 

多くの費用をかけている事は間違いない。不便な事も多いだろう。

 

それでも宇宙という()()()()()()に憧れ、立ち止まってしまう。

 

人はあまりにも圧倒的に、理解を超えた感動を受けると立ち尽くし茫然とする。

 

我を忘れるのだ。それほどの感動をその一瞬後に感受する。

 

 

「仰っている事は十分に理屈が通っているわ。素晴らしい紅茶を素晴らしい場所で楽しむ。お客様は素晴らしい体験をされたと感じて頂けるでしょう」

 

ですが

 

「足し算になるのでは意味がありません。掛け算にならなければ圧倒的な感動にはならないでしょう。場合によってはお互いの最高が邪魔をしてしまうかもしれません」

 

最高とはとびぬけて優れたものであり、足並みをそろえる事には不向きですからと。

 

「ほう、なかなか嗜好品というものを分かっているじゃないか」

 

そういって初陽は少し感心した様子だ。

 

「私はあと3日ほど滞在させて頂きます。あぁ、ここからはビジネスと趣味の混同ですがもちろんお金は払いますよ」

 

急なご注文であるが幸い部屋は空いている。お客様へのサービスに悩んでいた事もあるし、協力してもらえるというのならぜひ現状のホテルを見て意見を頂こう。

 

「ルクレール、B-1の部屋が空いていたと思うわ。ご案内をお願いしてもいい?」

 

「ええ、分かったわ。……サポートAIのメイクはどうされますか?」

 

「あぁ、君たちの方でアシストとして使ってもらって構わない。部屋に置物にしておいても意味が無いからね」

 

少し棘のある表現は気になるが……、せっかくのご厚意だ。設備メンテナンスの担当が足りていなかったのでそちらに回ってもらおう。

 

「分かりました、ではメイクは私と。ルクレール、後はお願いね」

 

「はいは~い」

 

 

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「お待たせしました、初陽様。こちらがお部屋です」

 

「ありがとう、あぁビジネスと趣味と公私混同は少し表現が面倒だったかな。普段どおりの気安さで頼みます」

 

「そう?ありがとう~、こっちもあんまり硬いのは好きじゃないの」

 

申し出がありすぐ砕けた口調になってしまう。元々の性格もあり、変えられるのならばやはりこの口調の方が話しやすい。

 

「ふむ、このホテルのAIはみんな笑顔に溢れている。エステラさんもそうだがその影響かい?」

 

 思わず反論をしてしまいたくなる、いや確かにエステラの指示もあり笑顔レベルは少し高めに設定されているが。どうにも彼女の指示でというのは少し気にくわない。

 

勿論私の使命である『お客様のために働く』事が最優先されることは間違いない、だが彼女の命令でという点は厳守される必要はない。場合によっては反対意見を提案しなければならない。

 

「笑顔が硬くなっているように見えるな。何か気になる事でも?」

 

「いえ、そのような事は。……では業務に戻りますので何かありましたらお近くのスタッフにお声かけください」

 

そう言い部屋を立ち去る。どうにも合理的な考えが出来ていない。調子が悪いのだろうか一度メンテナンスを行おう。

 

 

-----

 

「おやおや、嫌われてしまったかな。……ようやく一人になれたか。うんざりする」

 

そう言って彼は手近なポットから紅茶を淹れる。

 

「悪くない茶葉ですね。元々取り扱っていたものも品質は悪くないようだ」

 

じっくりと紅茶を堪能し思わず――なんとも醜悪な――笑顔になる。

 

「さぁビジネスと趣味の両立は難しいですが、しっかりと両立させねばなりませんね」

 

 

 

2073年にオーナー死亡、小説では就任から4年後




3話と4話何度か見直してたんですけど普通に考えたらルクレール裏切るのおかしいんですよね。ルクレールの使命が何かは分かりませんが、エステラと同じようにライフキーパーとしてお世話するのがってことならだいぶ使命に反してない?って書いてて凄い感じました。

だから彼女の使命はエステラとは違う と自分の中でまずは設定しました。ルクレールの使命とエステラを裏切る事は矛盾しない……と。


オリジナル設定
ルクレールの使命
時系列タイミング オーナーの死が2073年。落陽事件は2076年。
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