ニーアランドの喫茶店   作:アテュ

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グレイス編です。

6話の映像を見て本格的にこのアニメにはまりました。

いやもう歌との一体感がね……。


少し特別なコーヒー

喫茶店とは、どんな場所か。

 

突然だが皆さんは喫茶店に何を求めて赴くだろう。

 

コーヒーを飲みに、友人とお喋りをしに、待ち合わせの時間潰しに、本を読みに。

 

目的は様々だ。だが喫茶店に限った話ではないが1人で行くか2人で行くかで意味は違ってくる。

 

 

 私はとある喫茶店のオーナー、林。お気軽に林さんでもパッシーでもリンリンとでも呼んでほしい。

 

世間は専ら自立人型AIにこういった場所を任せる事が多い。だが私は時折店に立ちたくなりこうしてコーヒーを淹れている。

 

今では多くの事をAIが出来るようになり社会浸透がより活発化している。

 

誰かが言った、犬は人類最古の友だと。ではAIは?

 

友人という表現は何かしっくりこない。もちろん間違いではないが。

 

……ふむ、今日のコーヒーはまずまずか。少し酸味が強くなってしまったがこれもこれで良い味わいだ。

 

考え事をしながら淹れるコーヒーはよくないなと思いつつ時計を見る。

 

もう時間は夕食近い。普段店を任せているAIには休憩に入ってもらっているがどうやらこのまま穏やかに閉店になりそうだ。

 

そう思ったところで来店を知らせるベルが鳴る。……珍しい時間にお客が来るものだ。この店で夕食を食べる人は少ない。

 

「いらっしゃい、……おや?」

 

 入ってきたのは実に美しい女性だった。しかし見たことがある、どこかですれ違っただろうか。

 

桜色のカーディガンを羽織っており彼女の上品で優し気な雰囲気をよく表していた。

 

「こんばんは、突然申し訳ありません。少々お邪魔してもよろしいでしょうか」

 

しかし何より特徴的だったのはAIのお客という事だ。

 

 

「構いませんよ。どうぞカウンターへ」

 

はて、最近のAIはコーヒーを飲めるようになったのだろうか。

 

記憶と最近のニュースを思い出すがやはりそんな事はない。

 

となれば買い物か何かだろうか。喫茶店がメインだが豆も販売しているのでそういったお客もたまにいる。

 

しかしそういったお客は常連がほとんどでたまたま通りがかってというケースはほとんどない。

 

……水はさすがにいらないか、おしぼりだけ出しメニュー表を渡す。

 

「何かご入用で?コーヒー豆の販売もしてますが」

 

「はい、ただどういったものを買っていいか分からなくて」

 

奇妙な話だ、AIが発達したとはいえ人間の指示で動く事が多い。それもコーヒー豆という嗜好品ならばなおさら。

 

 何か事情があるのか。……喫茶店を営んでいればこういった悩むお客と話す事もままある。特にカウンターでじっと座り、携帯電話をいじるでもなくどこか気もそぞろな人は対話を求めている事がある。

 

サービス業とはいつの時代でも変わらない、お客とのコミニュケーションだ。それは人であってもAIでも変わらない。

 

「よろしければご相談下さい。差し支えなければ贈られる方の好みは分かりますか?」

 

「えっ、プレゼントといいましたっけ」

 

「違いましたか?恋人に何を渡すか悩むように見えましたが」

 

「……っ」

 

 恥じるように、メニュー表で顔を隠す。おお、このAIを作った人は凄いな。恥じらいというものをよくわかっている。

 

恥じらいとはその言葉を使う時によく『色を見せる』といった表現をする事が多い。そう色が見えなければ浅い。恥じらい系だ。意識高い系と変わらん。

 

その点彼女はどうだ、見事な色を見せている。桜色だ。満開だ。タ〇リもご満悦だ。

 

おっと話がそれてしまった。そう、世界平和についての話をしていたな。

 

「か、彼が普段からコーヒーを飲んでるので。よくお世話になっていますし」

 

成程、彼ねぇと邪推する心を落ち着けながら、プロとしての自覚を取り戻す。

 

 

「参考までに何という銘柄で?飲まれる頻度なども分かれば」

 

こちらですと言って彼女が見せてきた端末にはいくつかのコーヒー豆が表示されていた。

 

ふむ、少し苦みよりの風味が好きな方のようだ。

 

焙煎も中~深、ブレンドが多い。……多くはブラジルかグァテマラベースか?

 

南米のブラジル、中米のグァテマラ。いずれもコーヒー生産地としては有名。特にグァテマラは通な方がよく好む。

 

どちらも深いコクがコーヒーの味わいをより引き立たせてくれる。

 

「苦味よりのブレンドがお好みのようですね。そして日に2~3回は飲まれると。なかなか病みつきのようで」

 

 彼女も少し心配そうな顔を見せている。まぁ確かにコーヒーに限らず飲みすぎはよくないが1日に2~3カップ分ならばさして問題も無いだろう。私なぞその数倍飲んでるし。

 

「まずハズレないのはこのあたりのブレンド、もしくはブラジル、グァテマラベースが多いのであえてそのストレート豆*1を」

 

 いくつか出した豆を興味深そうに彼女が見ている。その表情は真剣そのものだ。

 

「差し出がましいですが、今回プレゼントには何かきっかけが?」

 

「その、彼がいつもお世話になっているからと髪留めをくれまして」

 

少しためらいながら答える彼女。成程、実に甘酸っぱい。聞いた感じ男の方も初めてのプレゼントという様子だろうか。ぎこちなさが透けて見えるのが実にベリーグッドだ。

 

 であれば少し特別な趣向を凝らしたい。何事も初めてというのは印象深い。これは私の勝手な自己満足に過ぎないが、自信を持って出しているコーヒーだ。せっかくならば良い思い出にしてもらいたい。

 

「ほう、であれば少しアレンジしたい所ですねぇ」

 

「アレンジですか、コーヒーだけに?」

 

なかなか分かっているじゃないか、そうコーヒーにはアレンジする挑戦心がとても大事だ。飲み方にしてもメジャーなペーパードリップに至るまでに布ドリップ(ネルドリップ)、パーコレータ、コーヒーサイフォン、エスプレッソマシンといった過程がある。

 

全く別物に変えろというわけでもない。まさかこの機会にだからとトゥーゴーパーソナルリストレットベンティツーパーセントアドエクストラソイエクストラチョコレートエクストラホワイトモカエクストラバニラエクストラキャラメルエクストラヘーゼルナッツエクストラクラシックエクストラチャイエクストラチョコレートソースエクストラキャラメルソースエクストラパウダーエクストラチョコレートチップエクストラローストエクストラアイスエクストラホイップエクストラトッピングダークモカチップクリームフラペチーノをすすめるのは少々チャレンジャーに過ぎる。

 

 同じ豆でもネルドリップとペーパードリップ(ペーパーフィルター)では味は変わる。些細な事で良い。それが心遣いというものだ。

 

「もちろんそのままでも彼は喜んでくれるでしょう。ですが男というものは単純でちょっとした事で大喜びするものです。それが気になっている女性であればなおさら」

 

彼女がまた恥じらうが今度は微笑で耐えている。ほう慣れたか。

 

「そ、それでどういったアレンジなんでしょう」

 

声が若干上ずっている。……見た目の雰囲気はよいところのお嬢さんといった感じだがやはりからかわれるのは苦手だろうか、もしかしてからかう方が好きかもしれないが。

 

 

「簡単です。話を聞いて私がお勧めするのはこれとこれのブレンドです。ですがここに新たな豆を加えたい。……そう、あなただけのブレンドを作り上げるのです」

 

 

*1
その単一エリアのみの豆




書いてたらグレイスと冴木博士をもうちょい書きたくなってきた感

絶対冴木博士っていじられ役ですよね(確信


最終話までにグレイスの話は書きたい
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