あ、前線で戦うとか無理なんで偵察してきますね。 作:喪家の狗
その日、勇者に技を使ってもらったんだけど、
「勇者スラッシュ!! ...あ、あれ?」
何回やろうと出ることは無かった。
「サイジャクさん。勇者たちの力、完全に抜け落ちたみたいです」
「やっとか、結構時間かかったなー...」
故にこれをもって、
「そんじゃ、勇者たち解放してやるか」
勇者御一行の軟禁生活が終わりを告げる。
「...はい、伝えてきますね」
☆ ☆ ☆
「ってことなんで、勇者さん達の拘束はもう解けました。この首輪ももうとれるはずですよ?」
「「「「え...?」」」」
「今までお疲れ様でした。明日、御国まで送り届ける手はずとなってるんで、今日は荷物をまとめておいてくださいね。
あ、持てなかったら手伝うんで」
試しにハルコの首輪に触れるとポロッと意図も簡単に解けてしまった。
「それじゃあ、お引越し作業始めましょ」
☆ ☆ ☆
「え、えっと。ハツカ?」
黙々と引越し荷物をまとめる俺とは対照的に勇者一行はサボりなのか中々作業を始めない。
おい、力が無いにしても何かしらなることはあるだろ。
「はい?」
「僕たち解放されるのか?」
「そうですよ、おめでとうございます。長い拘束から解放された時の解放感は中々良いものですよ」
「もう、ここに、居てはいけないのか...?」
「当り前じゃないですか。ここは魔王軍の城ですよ? 敵地で悠々暮らす勇者さんがどこにいるんですか」
手は休めずケラケラ笑う。
「と言うかお国に帰ったら怒られるんですかね、折角頑張ったのにそれは可哀想ですね」
「ハツカ」
「あ、なら人目の付かない境辺でスローライフ、なんてどうですか?」
「...ハツカ」
「良いっすねー。引退勇者の自給自足生活。浪漫があります。羨まし...」
「...ハツカ!」
「うわっ、びっくりした...。
ど、どうしたんすか。急に」
「なんで...なんで、なんだ...?」
「...はい?」
横目で見ると勇者は震え、涙を流していた。
「なんで俺は急にできなくなったんだ? 昨日までは普通に...」
「今あるものがこの先もずっと、なんて夢物語ですよ。いつ無くなっても良いようにしておくものです」
「...なんでさっきから敬語なんだ?」
「だって、もう必要ないじゃないですか。これ以上心の隙間を埋めようと明日にはお別れですから、無意味です」
「......なんで、どうして泣いているんだ?」
「さあ?
...別れたく、ないんじゃない...?」
☆ ☆ ☆
「すみませんでした。お見苦しいところを...」
「い、いや...」
「あ、でも安心してください」
「...?」
「もうすぐ、ここでの記憶も消えますから」
「...え?」
「いやいや、当り前じゃないですか。引退勇者とはいえ敵地の内部を知ってるとかダメっすもん。もし国王さんにでも教えたら広まるのは一瞬ですよ?」
泣いてたところを覚えられたままなのも恥ずかしいから良かったよ~、と安堵しながら説明する。
☆ ☆ ☆
「記憶の消去が行われるのは今日の夜らしいんで家にいてくださいね?」
「あ、ああ」
「それじゃあ、そういうことで。皆さん、短い間でしたけどありがとうございました」
「ぼ、僕も楽しかったよ...」
「...ええ」
「...はい。お世話に、なりました...」
「...」
「...」
「...」
引っ越し準備と詳しい説明、別れの挨拶も終えたので家を出た。
後は城に戻って、説明を終えたことをサイジャクさんに伝えれば終わりなのに、
「ハツカ!」
「なんですか、ハルコさん」
呼び止められてしまった。
「...! オレの事は師匠と呼べと言ったはずデス」
「ああ、ありましたね。そんなこと」
「そ、そうデス! デスからオレとハツカには...」
「でもあれ、【契約魔法】の延長ですよ?」
「...え」
「なんで俺が人間の弟子になんかなんなくちゃいけないんすかね?」
「...え、だ、だって...」
「それに俺、師弟とか望んでないですし」
「や、やだぁー...」
「その契約も切れましたし、もう終わりだって言いましたよね?」
「やだぁ、いやだぁー...。ハツカぁー...」
「さよなら、ハルコさん」
「ああぁ...。あぁぁぁああーーやーだぁーー...いっちゃ、やだぁぁーーー」
泣き声も無視して先を急ぐ。
☆ ☆ ☆
「...」
「...なんでしょうか」
今度は大通り、人目の多いところで捕まってしまった。
「...!」
脚を掴んだユウカの手はさらに力を強める。
「あの、離してくれませんかね? 俺まだやることあるんですけど...?」
「...いや」
「嫌、じゃなくてですね?」
いい加減離してほしいんだけど、最後でわざわざ傷付けるようなことしなくないんだけど。
「ほら、離してください。振り払ったで怪我して欲しくないんですけど?」
「...!」
おい。いい加減に...!
...落ち着こう、怪我させて嫌な気分になるのは俺だけだ。後味悪いのは嫌いだ。
冷静になったことで簡単な突破口が見つかった。
脚の拘束を気にせず、蝙蝠になる。
「...あ」
それだけで簡単にユウカの拘束は解けた。
人間に戻り伝えたいことを伝える。
「それではまた。蝙蝠なら夜になるとその辺飛んでるんで適当に捕まえたらいいんじゃないですか?」
☆ ☆ ☆
「ハツカさん!」
「...なに」
城の入り口。
また呼び止められた。
もういい加減に諦めてほしい。
「ボク、ここでのハツカさんとの記憶。無くしたくない」
「ダメだって、さっき何度も教えましたよね」
「...!」
「...なんですか、杖をこっち向けて」
「撃つよ」
「は?」
「撃つよ、【契約魔法】」
「...撃てるわけねえだろ」
「撃てるよ」
「撃てねえんだよ」
「撃てるって...」
「撃てねえ!! っつってんだろ!!」
「っ!?」
つい、荒々しい口調になってしまう。
「あー、説明何度もさせんなよ。めんどくせー。
あのな? そこに首輪が無い時点でもうお前らに力も魔力ももう残ってないんだよ。わかる?」
「そ、それでも...撃つって、言ったら...?」
「おい、やめろって。魔力が空の状態で魔法撃つとどうなるのか、お前から教わったんだぞ?」
魔法は魔力が無くなっても体力を消費することで撃てるらしい。
まあ、そんな状態で撃てば当然...。
「...!」
「あ、っそ」
「...撃つ、前に、ひ、1つ...いい?」
「...なんすか」
「ボクね、本気で...ハツカさんが...すk...」
「...【契約魔法】」
「!?」
「【契約内容:本日中限り魔法使用の禁止】」
俺も散々お世話になった(?)この契約魔法、なかなか便利なもんで。
「止めましょうよ、ホント、身体に良くないですよ...」
相手が完全な同意の状態か、相手の魔力が空の状態だと掛かり易い大変便利なもの。
契約内容にもよるけど。
「あと、その気持ちも、きっと勘違いですよ?」
まあ、これも目の前の子から教わったことなんだけどね。
「じゃ、そういうことで」
「ハツカさん...」
泣き崩れる少女を放置し、
「さよなら」
城に戻り、
速足で歩き、
「おお、ハツカ、実はな...」
「すまん、あとで」
「え、いや、ああ、おい...」
偶々出会ったヨウカの声も無視して部屋に戻る。
「はぁーーー...」
部屋に戻るや否や、
「つっ...ら!!」
思いっきり叫んだ。
「ふざけんな、ふざけんなふざけんなふざけんな!!」
各々個人部屋、いろんなことをする機会があるだろうから防音使用にはなっているから大丈夫だと思うけど...。
「なんで俺にこんな役押し付けたんだよ!!」
「どうして俺がこんな思いしなくちゃいけないんだよ!!」
「あー! もー!! マジふざけんな!!」
「あと俺カッコつけんなよなー!? くそだっせーー!! なんだあのキザッたるいやつ!! 気持ち悪りぃーーんだよ!!」
結局、喉が枯れるまで叫んでしまった。
「...あー、あー。うん、喉痛い」
生まれて初めてかもなこんな声上げたの。
「はぁ~~...」
ため息をつき、窓の外を見る。
別れが辛くなるからキッパリ別れた方が良い、とアドバイス貰ったから実行したけどホントにあれで良かったのか?
もっと辛かった気がしたけど...。
「...よし」
そして今後の目標を決めたところで行動を開始す...
「ダメです!!」
「ハグッ!?」
「だ、ダメですよハツカ様!」
いきなりキキョウに怒突かれた。痛いんだが。
「え!? な、なにが!?」
「近隣住民の皆さんに迷惑かけたって追放扱いにはなりませんよ!?」
「え、え!? ちょ、ちょおっと待って!? なんで俺そんな迷惑異端児みたいなことしなくちゃいけないの!?」
「だ、だって、さっきハツカ様、何か決めたようなような顔で窓の外見てたじゃないですか...」
「え、うん」
何時から見てたんだろ、この子。
「それで...」
「あ、ごめん、テラスでクッキーでも食べようかなって...」
「...え?」
落ち着くために一旦クッキーでも洒落込もうかなって...。
ほら、なんか黄昏たい気分ってあるじゃん...?
「な、なんかごめんね。勘違いさせちゃって...。あ、一緒に食べる?」
「...お茶、淹れてきますね」
恥ずかしそうに部屋を出た。
☆ ☆ ☆
「うっま! お茶とクッキーめっちゃ合うじゃん!」
「そ、そうですか...良かったです...」
「うん、ありがとね。
...っは! もしや、蝙蝠の姿で食べればより多く食べれた気に...!? い、いやしかし、人間の方が味覚がしっかり...」
「あ、あの...!」
美味しいお茶と共にクッキーを齧っていると気まずそうに聞いてきた。
「どうしたいんですか、ハツカ様は」
「...野暮って言葉、知ってる?」
「...」
俺は知らん。どういう意味?
この前見た作品で『野暮ってもんだろ...』って台詞があったから使ってみたんだけど、どういう意味なんだろ...。
多分使いどころは間違ってないと思うんだよね。
キキョウにはそれで伝わったみたいだし......賢いねこの子。
よしよし、えらいですね~。
何となく頭を撫でてしまう。
「...!? ど、どうしたんですか、急に...!」
「あ、ごめんね。なんとなくで...」
ホントに何やってんでしょうか、俺。
「な、なんでもいいので続けてください!」
「あ、はい」
懐かしいな。シロちゃん時代ではこんな風に、もみくちゃにされてたような...。
それの影響なのか?
...。
な、なんだろう...。完全に絆されたと思ってたけど、今思い返すと、この嫌の記憶だけはなんか許したくない...。
...なんか、ムカムカしてきたな。
畜生、仕返ししに行きたいけど、カッコつけちゃったし、なんか色々やっちゃったせいで今から行くのすげー恥ずかしいんだけど...。
ど、どうしよう。
「おまえら、いつのまに、そんな、仲に、なったんだ?」
「「!?」」
別に疚しいことしてたわけじゃないけど、なんかびくってなった。
「び、びっくりした...。どしたの、ヨウカ」
扉を開けて固まっていたのは白牛、トオカカンのヨウカさんだった。
「さっき、声かけたが、あとで、って言われたが、緊急、だったものでな、そしたら......ああ、発情期か、どんまい」
「まだ来てねえよ」
思わずダンッと机を叩いてしまう。
誰がハーレム勇者じゃ。
「おや、そうか、黒白、気を、付けろよ、そいつの、発情期は、なかなか...」
「ねえ、それ今言わなくちゃダメ!?」
勇者のこと馬鹿にできなくなるからやめてほしいんだけど。
「...いつでも、お声がけを...」
「何言ってんのこの子」
呪学、学ぼ。
「そ、それで御用件は?」
羞恥プレイとか趣味じゃないから、とっとと話を切り出せ。
「ああ、そうだった...」
ヨウカから衝撃発言を頂いた。
「な、なんと...」
「ああ、それとな」
ヨウカに無暗に女性の頭を触ってはいけないと教えられた。
「な、なんと...」
そ、そうなのか...?
ハーレム勇者はいつもしてたけど?
見て覚えるのは良いにしても人を選ばなきゃなのな。
蝙蝠って中国とかの方じゃ幸運を齎す生き物として扱われてるらしく、最初の頃はハツカさん幸運キャラだったりしたんですよ。でもチート主人公は僕の趣味じゃないからね。ナーフ掛けてやりましたよ(神視点)
話を戻して蝙蝠さん、子宝? とかのご利益? てのかな? なんかそう言うのがあるらしいからね。さぞかし繁殖期では...
まあ、僕の文章力でそれが描けるか、そもそもR18タグ付けてないけど大丈夫なのか。
乞うご期待すんな。