あ、前線で戦うとか無理なんで偵察してきますね。 作:喪家の狗
「突然の来訪すみません、どうしても話を聞いてほしくて...」
「よい、ここに来ることは聞いていたからな」
さっすがヨウカさん!
「遅刻してくるのも聞いていたぞ」
だってさ勇者、ほら謝れよ。
チラッと意味は無いけど勇者を見ると、な、なんか、すっごい睨まれてる...。
「はい、誰とは言いませんが道に迷ったものがいましたので...」
嘘は言ってない。迷ったのは俺なんだろ。ああそうなんだ。
扉を(トウヤが)開けると、そこに居らしたのは変わらぬ様子で鎮座している魔王様だった。
や、やっぱ生で見ると迫力すっごいなー...。
「一応話には聞いているが、何の用か。聞いておこう」
「あ、はい」
緊張して喉とかカラカラだよお...。
「あの、勇者たちなんですけど...」
西支部での戦いの末、サイジャクさんが勇者たちを捕らえ、しばらくの間西支部で生活をしたことによって力が完全に抜けきったことを説明した。
「そうか、監視役、ご苦労だったな」
「い、いえいえ、自分も言っちゃアレですけど、楽しかったので」
「そうか」
(それ、言っちゃって良いんだ...)
勇者、ホントに今はしーっ、だよ。
そういえば最近何気ない心の声も聞こえるような気がする。
熟練度的なあれかな。
今度検証しないと。
「それで、あの...勇者たちの力が抜けきったら記憶を消すって言われてたんですけどー...」
(あ、やっべ...)
...? 今なんか聞こえた?
「...勇者に問う」
「は、はい!」
なんか魔王様少し慌ててる?
いや、気のせいか。
「力を、失ったようだな...」
「それは、もう完全に」
...今思った。俺、力のない勇者よりも力がないらしい。
「また、力をつけ我に挑む気は」
「無くなりました。今、完全に」
今迄は少し狙ってたのかい。
「ほう...」
「そもそも四天王サイジャクに負けた時点でもう勇者としての道を諦めていました」
そ、そうだったんだ。
「でもそこに、一時期は旅を共にした(少し変わった)
懐かしいな、トウヤとの旅。
今思えば少しは楽し...ん? 気のせい? なんか小言挟んでない?
「思っていたよりも短い間でしたけどハツカとの日常(は少しめんどくさい時もあったけど)、そこでの生活は思っていたよりも楽しく」
はいー、今のは聞いたよー。なんか言ってんなあ。おい。
「そして今、全盛期であろうと、そこからいくら力を付けようと乗り越えれない壁を知って完全に気は失せました」
「そうか」
魔王様は一息置くと、
「
「はい」
「好きにしろ」
お、おや?
「国へ戻るなり、ここまでの順路を教えるなり、住民の弱点を教えるなり、(あの)国王に伝えるなり好きにしろ」
ま、魔王様...? そ、そんなに言って、大丈夫なんすか?
「お前に出来るなら、だがな」
「出来ません、いえ、しませんよ」
「魔王である我が、力を失ったとはいえ仮にも勇者の話を信じるなど酔狂な話だが、相分かった」
な、なんだこの2人の空気...。
「もしも、の場合はそこのの首でも...」
はは、ウケる。勇者たちの巻き添え食らってんじゃん、その蝙蝠とか言うざk......あ、はい俺ですね。
「ご安心を。友の命は必ず、僕が守って見せる」
か、かっけー...。こりゃ女の5人や6人惚れるよな。
「そうか」
口数少なく決まるのってなんかカッコいいな。
なんて暢気に考えていると、
「それと...ハツカ」
「は、はい」
やっべ、完全に気ぃ抜いてた。
「今代の勇者の監視任務ご苦労だった」
「い、いえいえ」
「『偵察』任務が、『潜入』任務に変更があったようだが、任務ご苦労だった」
「ひゃ、ひゃい...」
お、おこっちぇるおー...
嫌味か...!? 嫌味なのか~!?
「次も頼むぞ、『偵察』を...」
「......はい(超小声)」
そこから勇者宅までのことは、あんま憶えていない。
☆ ☆ ☆
「ま、魔王、さんってやっぱり威圧と言うか貫禄がなんか、凄かったね...。うちの国王様とは違って...」
「逆にどんな国王なんだよ...」
勇者宅に戻って暫く、皆漸く緊張が解けてきたのか寝る者や、ソファーにグダる者が出てきた深夜の刻。
とりあえず疲れただろうから詳しい話は明日ね、ってことではい、解散。
ってなったけど、気になってお昼寝もできる自信が無いから、疲れたであろう身体に鞭打ってもらってトウヤさんとお話ししてた。
「まさかホントにあんなアッサリ決まるなんてね~」
「あれをアッサリって言える勇者のハートは強いっすよ」
ケラケラ楽しそうに笑う勇者だが、
「...で、どうすんの。ホントに」
なんて声を掛ければその笑みもピタリと止んでしまう。
「こ、このままここで生活を~...」
「な~んてのは無理ってわかってるでしょ?」
多分サイジャクさん達から嫌がらせされるよ?
「...一旦ね、国に戻ろうかと思うんだ」
「国王さんのとこ?」
「うん、そこで『負けました! 勇者、やめます!』って言ってこようかな」
「それ、怒られないの...?」
「怒られはしないよ、元々断ってもいい話だったし...」
「え、そうなの?」
マジで謎だな、その国王。
「うん、勇者の素質があるって言われても僕の他にも適正は低くても十分勇者やれる人はいっぱいいたみたいだし...」
なんか良くわかんなくなってきたな、勇者事情。
「死ななければ何でも良い、って感じだったからね~」
再びケラケラ笑う。
「そうなんだ...」
「あ、それでさ、ハツカ」
見ると、とても楽しそうな顔で、
「ハツカも、来てみる?」
そんなこと言いやがった。
☆ ☆ ☆
___訪問者が退室した魔王の間。
その部屋どころかその城の主である、かの魔王は...
「よし、楽しく話せたな!」
かなり、コミュ障だった。
(親愛度の上がる音)