ウマ娘の某所に載せた短編集   作:春華ゆが

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マチカネフクキタルとチームを組みたい女トレーナーです
続くかも


マチカネフクキタルとチームを組みたい

 チーム。ウマ娘をまとめ、サポートするトレーナーの在り方。

 チーム。同じ星の下、互いに高め合い競い合うウマ娘たちの在り方。

 トレセン学園において、トレーナーとウマ娘が協力しあう団体。それが、チームだ。……その命運を決めるため、私は今理事長と対面している。

 

「理事長! 設立したばかりなのに私のチームが解散ってどういうことですか! 彼女とのトゥインクル・シリーズ、確かにやり遂げました。つきましては私には更なるウマ娘たちを担当する権利がある! そう思いませんか理事長!」

「見事! 確かに君には実績がある! 優秀なトレーナーがたくさんのウマ娘を導くのは素晴らしいことだ! ……だが」

 

 トゥインクル・シリーズでの最初の担当ウマ娘との三年間を超えた私は、新たなチームの設立を願い出た。それはちゃんと受理されてたみたいだし、今の反応も悪くない。ノセれたと思ったんだけどな。だが、なんだろう。

 

「不足。チーム結成にはある程度人数を揃えてもらわないと成り立たない」

「ちょっと待ってください。私の担当に加えて更に4人、合わせて5人はいるはずですが」

 

 私と彼女の功績を以てすれば、それくらいは呼べる。呼んだんだけど。

 

「そう、そのはずなのだが。……危機! 君の担当ウマ娘は君のチームには入らないと言っている! ……というわけで」

「えっ、えぇっ! ちょっと待ってください、フクキタルからはそんな話一言も」

「残念……。こちらとしても無念だが、チームの柱となる存在が所属を取りやめるとなって、他のメンバーも脱退を表明。チームは設立直後に空中分解……というわけだ」

 

 マチカネフクキタル。私の最初の担当ウマ娘。私の最初のパートナー。トゥインクル・シリーズでかなりの活躍をおさめた私たちは、次なる野望としてチームを結成することを決めた。フクキタルも快く了承、というか乗り気だったはずなんだけど……。

 

「……私、フクキタルに話聞いてきます。このままじゃ終われないんだから……!」

「制止ッ! まだ話は……」

 

 これ以上に大事な話があるものか。私は急いで部屋を出て、フクキタルを探しに出かける。……しかし、どこに行ったのだろう? それにどうして、チームに入りたくないなんて……。

 

 しゃらん、しゃらん。トレーナーさんが来る前に、願い事を済ませておく。トレーナーさんは、あとどれくらいで来てくれるだろうか? 一時間? 二時間? ……ううん、もっと早くきてくれるはず。ここは私たちの思い出の場所。私の1番大切なトレーナーさん。

 ……たとえ、貴女が赦してくれなくても。

 

「……30分。流石ですね、トレーナーさん」

「そりゃあ、私は貴女のトレーナーだからね。……そんな悲しそうなフクはあまり見たことがないけど」

 

 彼女の口は薄く弧を描いていたけれど。その目に憂いが湛えられているのに、私は気づいた。……理由アリというやつか。

 

「……まあさ、いつもみたいに。とりあえず、普段通りに。お話し、しよっか」

「……トレーナーさんは、いつも優しいですね」

 

 気がつけば、私は当初の目的も忘れて。フクキタルと対面したまま、少しずつ会話を進める。

 

 貴女は私の話に、いつものように言葉を弾ませる。いつものように笑みを溢す。トレーナーさんは、変わらない。なんだか私がわがままを言ってしまっているかのように感じる。いや、きっとその通りなのだろう。なら、私は心を押し込めるべきだ。そうするべきだ。

 

「……ふぅ。ありがとうございます、トレーナーさん」

「お礼を言われるようなことは何もしてないよ」

「いえいえ、私からすれば貴女という幸運のお守りが近くにいてくれるだけで! まさに大吉、宝船に乗った気分です! ……では、帰りますか」

「フクキタル……」

「……実は、チームの件も。運勢的にどうかなーって思っただけなんです。だから、ちゃんと入ります。ご迷惑をおかけしました」

 

 ぺこり。彼女は頭を下げて、顔を上げる。彼女はいつもの元気を取り戻したかのようだった。でも、私には分かる。その顔には、まだ不安が張り付いていることが。

 

「フク」

「はい、トレーナーさん?」

「私は貴女のトレーナー。それはたとえチームを組んでも変わらない。そのつもりだから」

 

 私にはトレーナーさんの言いたいことがわからなかった。でも、彼女が安心させようとしてくれているのは分かった。幸せだった。

 

「……すみません、言っている意味がよく」

 

 言葉にするのは無粋だとしても。言葉にすることが不安を取り払うというのなら。私は何度でも、どんなことを言っても恥ずかしくない。

 

「チームを組んでも。私の1番はフクキタルだ。それを、ここに。神に誓う」

 

 私は告げる。

 

「フクキタル。貴女はきっと、私のことを大事に思ってくれた。この3年で、貴女にそれだけ信頼されたのは嬉しいと思う。でも、だからこそ貴女は怖くなった。大事な人が、自分から離れていかないか。つまりその、あーもう恥ずかしい! 後で責任取ってよね!」

 

 いつのまにか私の頬が紅潮しているのが分かる。フクキタルは口をぽかんと開けて、こちらを見ている。

 

「つまり。貴女は私のことが好きだから! 多分、それで! 好きな人を独り占めしたい心理が! ……この、みなまで言わせるか……」

 

 何故私まで照れているのか。私の方が、秘めた気持ちを口に出してしまいそうだった。もう限界だし。私は誤魔化すためにフクキタルに飛びかかり、彼女の頬を思い切り捏ね回す。

 

「ほぎゃ! トレーナーさん……シリアスな空気がー!」

「うるさい! ああもう、とにかく絶対! 貴女から私は離れないよ、絶対に! チームになっても、心の距離も! ……私も、貴女のことが好きだから!」

「! ……はい……!」

 

 どさくさ紛れに言ってしまう。そもそもチームを結成したかったのも、フクキタルの周りが楽しくなればいいなと思ってのことだったっけ。……貴女の"好き"は、愛ではないだろうけど。

 私の"好き"は、恋かもしれない。引っ張られる形で、自分の気持ちの真意に気づく。そう、本当は。貴女が走るその姿に。皆に愛されるその走りに。ずっと最初から、恋焦がれていた。

 

「……さて。今度こそスッキリした? トレーナーに愛を叫んでもらって」

「はい! いやあトレーナーさんがそんなに私のことを想ってくれていたとは! 相思相愛とはこのことですね! ……はっ! 今日のラッキーアイテムは素敵なお姉さん! これはトレーナーさんのことでしたかっ!」

「……その占い本当?」

 

 などと。いつもの軽口に戻る。……でも、本当は戻っていないものがある。私の気持ちは動き出した。チーム結成を引き鉄に、貴女の可愛らしい拗ね方をきっかけに。私は自分の気持ちのブレーキを外してしまったようだ。どろどろした、ナニカ。

 貴女は忘れてしまっているのだろう。本当は、貴女の方が先に皆の愛を受けていたことを。多くのファンから愛されて、私は貴女のファンの1人に埋没していたことを。だから、振り向かせるためにチームを結成しようとした。結果として、貴女は私を手放さないための行動に出た。それを呼び止め、私はまた貴女の1番に舞い戻る。多少の想定外はあれど、読み通りだ。

 ああ、貴女が悪いんだよフクキタル。そんなに距離が近かったら勘違いしてしまう。勘違いだと分かっていても、もう私は止まれない。止まるつもりもない。

 

「ああそうだ、トレーナーさん! チーム名を決めましょう! 確か、前のは仮決定だったはず」

「……うん、いいかもね。チームの名前は私たち2人で決める。それで今回の件は手打ちにしよう」

「なるほどなるほど! それなら私が、絶好の名前を考えましょう!」

「……あっごめんフクキタル。思いついちゃった」

 

 本当は、前々から決めてある。遅かれ早かれ、ここに終着させるつもりだった。だって私たちを閉じ込める花園になるのだから。その名の共有手順は劇的であるべきだ。

 

「……ふむ。なんでしょうか?」

「チーム<ニビル>。幻想の天体。存在しない惑星の名。人間を生み出した知的生命体の住む所……とっても神秘的だと思わない?」

「……おお〜! スピリチュアルなパワーが湧いてきた気がします!」

「早い、早いよフクキタル」

 

 これはオカルトのソレで、本当はそんな星は存在しない。でもフクキタルにはぴったりだと思ったし、何より。

 ……人間たちのために母なる惑星ティアマトを破壊した罪を持つその名は。背徳的な愛に身を包む私にも合っている気がした。

 けろっとした笑みをフクキタルは投げかける。貴女は本当に可愛らしい。それを汚すのは心が痛む。だから、私は決して貴女を汚さない。芯から染め上げ、甘ったるい蜜で貴女を溶かすのだ。

 

「……さあ行きましょうトレーナーさん! 今度こそ、チーム結成です! ……ああどうしましょう、私が逃げたから皆いなくなってしまったんでしたっけ……?」

「そうだねぇ、大変だ」

「あわわ……急いで戻りましょう! トレーナーさんを悲しませることになったら、シラオキ様の祟りが……」

 

 私はにんまり笑っているけどね。それこそ知られたらシラオキ様に祟られてしまうかも、なんて。さて、帰ろう。チーム結成。もちろん新しいウマ娘達に会えるのは楽しみだ。フクキタルの新しい側面が見えるのも、楽しみだ。

 そんな私たちを待っていたのは、今度こそ想定外の事態だった。

 

「報告! 今度こそ、君に伝えることがある!」

「フクキタルは帰ってきましたし。何か他にあるんですか?」

「……新人ッ! 君たちのチーム……チーム<ニビル>に、しかも空中分解直後の時にッ!

 ……参加希望者が現れたのだ!」

「……なんですって?」

「……許可! 入りたまえ!」

 

 がちゃん。扉を開けて入ってきたのは1人のウマ娘。彼女は大胆不敵に、傲岸不遜に言う。

 

「やあ、僕の未来のトレーナー君、そして偉大なる先輩、マチカネフクキタル君! このボク、次代の覇王テイエムオペラオーが! 君たちのチームに参加することを宣言しよう!」

 

 私とフクキタルなら、誰が来ても受け止めれるつもりだったけど。……こんなキャラが濃いのは想定してなかったな……。

 

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