「おす! 一期ネイチャだぜ! ……って何この罰ゲーム!」
罰ゲーム。チームスピカとカノープスでの交流会を開いたのだが、そこにあったのは地獄の王様ゲームだった。
「……3番と5番、今と違うキャラをしてください」
そう王様たるスズカが謎の命令を下したのだが、どうもナイスネイチャにはそれが変な形で伝わったようで。
「いっちょやってやんよ! 何も恥ずかしくないぜ!」
顔を真っ赤にしながら話し続けるネイチャ。ちなみに5番、トウカイテイオーはというと。
「ふん! ネイチャばっかり見ちゃってさ、ボクの事だって見なさい……よね!? よねってなんだ、なんなのー! 恥ずかしいから聞かないでぇ……」
「おいテイオー! こっちの方が恥ずかしいからな! だぜ! ……そんなにだぜって言う?」
周りは大爆笑。南坂トレーナーも笑いを堪えきれていない……。しかし一体どうして、スズカはこんな命令をしたのだろう。端で神妙な顔をしているスズカに声をかける。
「お疲れ様です、トレーナーさん」
「お疲れ様、やってくれたなスズカ」
彼女がこんな悪戯をするのは珍しい。そう言うと、クスリと笑って返す。
「復帰戦の時のネイチャさんが、懐かしくて。本当に、また走れて良かった」
「そうか。そうだな。走れて良かった。同感だ」
走れるということがどれほど彼女たちにとって大切なのか、実感としては得られない。でも、わかる。
「次の王様を決めます……わよ! ちょっとスズカー! これ治してー!」
「はいはい、次の王様は……おっと。スペちゃんかな」
なんとなく、スズカはこのゲームを支配しているような気がした。何もかもが彼女の言いなり。今だけは。
「じゃあ次は私が! えっと、4番さんと7番さん、ぽっきーげーむ? を……」
「あら、4番は私ねスペちゃん。7番は……誰かしら?」
スズカが妖しくこちらを睨む。おいおいエスパーかよ。そもそもスペはポッキーゲームを知ってるのか?
「……あー、7番だ。俺だ、参った!」
「降参してもダメですよトレーナーさん。ポッキーゲーム、しましょう?」
「ポッキーならここにありますよスズカさん! これで何をするんですか?」
説明するのも憚られる。そうしているとスズカは無言でポッキーの片方を口に挟み、目を閉じる。おいおい。なんで乗り気なんだ。全部仕組まれているような気すらした。
「早くしなさいよトレーナー!」「男だろ!」そんなこのゲームを知っているかも怪しい野次に追い立てられ、覚悟を決める。
スズカはじっと目を瞑っている。周りのウマ娘達は何が起こるかも知らずに……いやあのネイチャの態度、あの子は知ってるな。助けてくれ。
南坂トレーナーも目を背けている。助けてくれ。
「あー、このゲームは良い子のみんなは見ちゃダメだ。いいか、ゲームだからやるんだからな! こうポッキーの両端を……」
周りの空気が変わる。間違いを起こすなよ、と言われている気がする。当然だ、と言いたいところだったが。
ポッキーを食べ進める。あんまりにも動かないのも盛り上がりにかけるかも知れないが、ここは真剣だ。とはいえ食べるのをやめられないのは、瞑った目の前から圧力を感じるから。まさか事故を狙ってないだろうな、スズカ……。
そう、祈る。祈るように食べ進める。もうここらでいいだろう、そう直感が告げたので打ち切ろうとした、その時だった。
ぱくん。一瞬何が起こったのか分からなかった。否、次の瞬間には俺はゴールドシップとマックイーンにプロレス技をかけられていたので何も分からないままだった。それも意識を失う勢いで。
でも、確かに見てしまった。目の前の少女が、口元を両手で押さえるのを。
その顔は、紅く。春の桜のように色づいていた。