そろそろ眠いですねえ、トレーナーさん。……時にトレーナーさんは、夜空と青空、どちらが好きですか? 黒い闇に星が瞬くのと、青だけがどこまでも透き通っているのと。
どちらも素敵で、悩んじゃいますかねぇ……。おや、即答ですか。青空。その心は?
セイウンスカイのトレーナーだから、って……。トレーナーさん、その発言もう一度考え直した方がいいですよ。セイちゃんが聞きたいこととズレてるし。それに、とんでもないこと言ってますって。……私のことが、すき、みたいじゃないですか……。もう!
嬉しくないです! 嬉しくない! やめっ、見ないで……すごくにやけちゃってるから……。はあ。トレーナーさん。私の見解を言います。
私は、どっちも好きです。夜空も、もちろん青空も。……トレーナーさんは、遠く、遠くに広がる青い空も。深く、深くに横たわる黒い空も。どちらも同じ空だって、知ってます? 何を当たり前のことをってそれが大事なんですよ、トレーナーさん。
表裏一体。一心同体。どちらかの存在が、互いを担保する。まるで、私たちみたいだって。
……そうです。青空が私で、夜空がトレーナーさん。だからどっちも好き。理由は結局あなたと同じ。
私はあなたのことが好き。
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トレーナーさん、お風呂もらいましたよー。おお、すごい驚いてる。その顔が見たかった。何で部屋にいるんだって顔してますねえ? なんと! セイちゃんはトレーナーさんのストーカーだったのだ!
というのは冗談。トレーナーさん、鍵落としてましたよ? 多分あれはトレーニング帰りですね。私がめざとく見つけてなかったら、今頃本当にストーカーに……。にゃは。
まあお礼はご飯を作ってくれてお風呂に入れてくれて寝床を提供してくれるくらいで勘弁してあげます。寮への連絡ですか? またまた〜、セイちゃんがふらふらしてるのなんていつものことですよ。……二人きり。トレーナーさん。私今、タオル一枚ですよ? トレーナーさんは、どうしましょうか……?
あー今エッチなこと考えてましたねー、へんたいトレーナーさん。いけないんだー。にひひ。
……私そんなにニヤニヤしてますか? セイちゃんはいつもにこやかじゃないですか、トレーナーさんったら。
ふふふ。……トレーナーさんは、私が今すごくドキドキしてるって知ったら、一生懸命アタックしてるんだって知ったら。……受け入れて、くれますか……?
うん、うんうん。その言葉が聞けたなら今は満足、かな。
……なんちゃって、ね。
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拝啓トレーナーさんへ。この手紙を読んでいる頃には、私はもう……なんちゃって。うーん真面目な手紙なんて書けないなあ。動機は真面目じゃないけど。
私は今、トレーナーさんへ手紙を書いている。日頃の感謝を込めてなんて殊勝なものではなく、スマホでやり取りするのがめんどくさい! とトレーナーさんに言ったら、なら手紙ならどうだということを言われてしまい。トレーナーさんと文通をすることになったのだ。ちゃんちゃん。
面倒くさいわけじゃない。どちらかと言うと、照れ臭い。今時手紙って、しかもいつでも会えるのに。なんだよートレーナーさん、セイちゃんからの手紙が欲しいだけなんじゃないの〜?
なんて。そう思っているのは、私の方かもしれない。他愛無いやりとり。そこに特別な意味を見出したくて、こんな誘いに乗ってしまったのかもしれない。策士策に溺れる。……ちょっと違うか。
ポストに向かう。胸が高鳴るのがわかる。筆に思わず力が入り、何度も消した不恰好な手紙になってしまったけど。本当の自分がそこには浮かび上がっているような気がした。
すとん。投函完了。顔が熱く熱くなる。こんなの思う壺じゃないか。
早く、返事が来ないかな。心がときめく。
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プールだー! いやートレーナーさんの奢りとは、気が利きますねぇ。流れるプールで浮輪に乗って微睡む! これぞまさに至高の贅沢……。あらあらどうしたんですかトレーナーさん、もしかしてセイちゃんの水着が気になりますか?
スクール水着じゃない水着なんて滅多に着ないんですから、トレーナーさんだけの特別ですよ? ……なーんて。さあじゃあ着替えてきましょう! お楽しみに。えへへ。
で。なんですか。私のフリフリにも露出にも目もくれず、流れるプールにも目もくれず。ここ子供用の浅いプールじゃないですか。えっ。今日は泳げるようになるまで帰さない!? 酷い! 鬼だー!
まずはバタ足ですか。いけますよ、それくらいはいけます。はい、手。絶対離さないで。……はい! どうよ! ビート板か浮輪をよこしなさい! 使わない!? そんなの非効率! あっだめ離さないであぶぶぶぶ……。
はあ。……折角気合入れて来たのに、トレーナーさんは別方向に気合が入ってるとは……。でも少しも見てもらえないのは、ショックだな……。おや、聞こえてました? あははー参ったな、空回りしてたのがバレちゃった……。
え? 今から流れるプールに連れてってくれるんですか? ……はい。とっても楽しみです。
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はいはーい、セイウンスカイでー……ひっく! あっ参ったな……ひっく。いやいや酔っ払ってるんじゃないですよ、トレーナーさん私をどんなワルだと思ってんですか。ひっく! これはしゃっくり、しゃっくりです!
トレーナーさんはしゃっくりの経験ありますか? 辛いですよね? 苦しいですよね? ……ひっく! わざとじゃないですったら。でもね、人間でもウマ娘でも、しゃっくりの辛さは世界共通! つまり……ひっく。そう! 今日は休むべひっく! です!
ちょっとなんでニヤニヤしてるんです? 本気でひっく! 困ってるのに……! あーとにかく今日はトレーニングできない……ひっく! つらい、つらいよー!
黙らないでくださいよ、ひっく。……もしかして、怒ってます? そんな芝居までして、よっぽどトレーニングが嫌なんだな、みたいな……そんなひっく。誤解を……。
……きゃっ!
なにもうびっくりするなあ! 肩を急に掴まないでください! ……ドキドキするじゃないですか……。って、あれ。しゃっくりが止まってる。まさかトレーナーさん、驚かせるタイミングを見計らってた?
流石、私のトレーナーさん。策士ですね……。えへへ。
え? さっきの叫び声がかわいかったって……もう! へんたいトレーナーさんめ。
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ふぉっふぉっふぉ。セイウンスカイおじいちゃんじゃよー。やだ、またわしのこと何か企んでないかと疑っておるな? 今日はいつもセイウンスカイの扱いに苦労しているトレーナーさんへ、豆知識を授けるためにおじいちゃんになっているんじゃよ。
ではいくぞ。まずわしより先に寝てはいけない。わしより後にも起きてはいけないぞよ。あー今のそんなの無理って顔。前者はいけるでしょ前者は。
次はのう、おいしいご飯をご馳走してやりなさい。……熱いのはダメじゃ。これは絶対。それと、いつでも身だしなみには気をつけること。トレーナーさんが素敵な人なら、セイちゃんの好感度もぴろぴろぴろ〜っと上がっちゃいますっちゅうわけじゃな。
さて。……気づいた? 気づいてない? おお、そうかそうか。おじいちゃん口調でカモフラージュ作戦は成功のようだねえ。何のことって? 教えてあげませーん! 今日はセイちゃんの勝ちー!
あっ、負けたからって何かとかはないよー。ただ今言った通りセイちゃんに尽くしてあげなされということでした。
まあ、できる範囲で構わないから、ね。
……うっ。そうです、関白宣言です……。……こ、これはネタがバレたから恥ずかしがってるだけです! 見ないで……。
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ご飯を食べると眠くなる。眠くなると、寝たくなる。というわけでねぇトレーナーさんや、たまには一緒に昼寝をしませんか? ……別に深い意味はないですよー。ただただ、昼寝の素晴らしさについて布教したいなーと思いまして。
これからやることがあるって、そんなの後でいいじゃないですか。……あっそうだ。今日は特別に、セイちゃんが添い寝してあげます! 素敵な特典でしょ? ……そういう時に否定しないの、ずるいなぁ……。
さてトレーナーさん、こっちにいらっしゃーい。私が子守唄を歌ってあげましょうねー。
ぎゅっ。……にゃはは。トレーナーさん捕獲作戦、大成功〜! どう、身動き取れないでしょ? さあ参ったと言いたまえー!
あれ。トレーナーさん、本当に寝ちゃうんですか!? 今の状況分かってます? 担当ウマ娘に捕まって、息苦しくないんですか? もしもし? ……本当に寝ちゃいましたね。トレーナーさん、私より昼寝の才能あるのでは。
はあ。これからいっぱいドキドキさせるプランを考えてたのに、これじゃ商売上がったりだ。今日は私の負けだね。……こっちばかりドキドキさせられちゃった。
でも、でも。あなたの寝顔を初めて見れたのは、嬉しい。
お疲れ様。いつもありがとう。
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ねえ、あなた。……なーんて、言ってみただけですよー。そんなこと言ってどうするんだって、やだ興味津々じゃないですかトレーナーさんったら。
そうですねー、まず幸せな世界を想像できるじゃないですか。二人でずっと、のんべんだらりと山奥で釣りをしながら暮らす……。ほら、悪くないでしょう? ……トレーナーさんにしか、こんなこと言いませんから。……なんちゃってー。
ほらセイちゃんそういうの縁がないですから。かわいげも捉え所もないことに定評がありますゆえ、こうしてトレーナーさんをからかって遊ぶ他ないのです。ちゃんちゃん。
……なんですか。私のかわいいところも捉え所もいくらでも言えるって、そういう危うい発言をしていいのはセイちゃんだけですよ。私にしか言わないって、いやいやそういう意味ではなく……。もう! そうやって手玉に取ろうとする! 大人はずるい! 不公平だ! 早く大人になりたい!
……その時は、本気で見てくれますか? ……ふふふ、今のは子供のずるさでしたー。さあトレーナーさん、今日は私の勝ちということで。ね。
さりげなく、あなたに手を伸ばす。さりげなく、あなたの手を掴む。今日の目標、達成。