寝ている。私じゃなくて、トレーナーさんが寝ている。私も寝ようかと思ったが、なんとなく抵抗がある。その、一緒に寝るのはむず痒いというような。別に添い寝をするわけでもないのだが。
なのでその間私が考えているのは、トレーナーさんが起きた時何をしてやろうかということだ。派手に驚かせて、一生セイちゃんの前で無防備な姿を晒せないように後悔させてやろうかな。
でも鉄則として無理矢理起こしたりはしない。昼寝愛好家としてもっとも恥ずべき行為だし、いつもトレーナーさんはそんなことしないしね、なんて。
さて、嫌がらせというよりは気持ちよく起きれたほうがいいだろうか。寝ぼけ眼の隙を突いて、いつもはできないようなことをしてしまおうか。このタイミングならいきなり抱きついたって受け止められそうだ。……しないけどね。
悩み、悩み。あなたの顔を眺めて、じーっとしたり、うろうろしたり。落ち着かない。あなたはものすごく安らいでいるのに不公平だと思う。
……私も眠くなってきたな。時計を見るともう1時間経っている。ずいぶんぐっすり寝てますねえトレーナーさん。日頃の疲れが溜まってるのかなー? ……そこには私がかけている疲労もあるだろうわけで、それには少し罪悪感。
本当ならその、好きな人には負担をかけたくないものだけど。私は困らせることでしかあなたの気持ちを分けてもらえないだろうから。
……あーあ、どうしよっかなあ。このままずっと起きないんじゃないかって気もしてきたな。もどかしい。あなたのことをいつもより近くで見れるのは嬉しいけど、あなたの声が聞きたい。
……私が寝ている時、あなたも同じように思っていてくれたらなんていうのは。高望みなんだろうな。私とあなたの心は通じているのに、私とあなたには気持ちの落差がある。
そこがいつか埋まってくれるだろうか。あるいはどうにもならない差で、私たちはいつか、いつか。
私にはどうにもできないかもしれない。けれど、あなたを頼れることではない。無力な私はいつもあなたにおんぶに抱っこで、策を以って必死に穴埋めしている。
策、策。この場で取れる何かの策。寝ているあなたの起きがけに、何をしてやれば一番あなたに近くなれるだろう。心の距離も、いのちの距離も。
うーん。悩んで悩んで、答えは出なくて。でも心は不思議と幸せで。これはきっとあなたを想うから。あなたの幸せそうな寝顔を見ながらあなたのことを考えるのだから、私は全部があなたのものなのだ。なんちゃって。
「……うーん……」
おっと、起きてしまう。どうしよう。どうしようどうしようどうしよう……そうだ。
ぷにっ。
「……んー、おひゃようしゅかい……ん?」
「おはようございますトレーナーさん。ねぼすけトレーナーさんには、ほっぺたぷにちゃんの刑です。えいえい」
「にゃんだそりゃ」
ぷにぷに。人差し指をあなたの頬で弾ませる。これくらい。私たちの今の距離は、きっとこれくらい。昔は指先ひとつ触れることすらなかっただろうから、それに比べたら大進歩だ。
だからいつかはこの指が、あなたの手に収まりますように。