ウマ娘の某所に載せた短編集   作:春華ゆが

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リメイクです


幸せナイトメア

「まだ」

「まだだめですよ、トレーナーさん」

 

 俺をトレーナーと呼ぶ見知らぬ少女は、そう告げて。目が覚めた時にはそういう状況だった。身体は立ち尽くしていて、青い瞳の彼女と見合っていた。

 

「ここはあなたの幸せ空間。私にとってのナイトメア。でも、トレーナーさんのためなら。終わらなくたっていいと思う」

 

 そう、意味深な言葉を続ける少女。俺には彼女が言っている意味がわからない。確かに周りは遥かに伸びる壁と細く長い一つの道だけで、悪夢だというのなら筋が通った光景だが。けれどそれでは、彼女の言葉の意味は通らない。幸せも、終わらなくていい、も。少し考えても何もわからず、まずは素朴な疑問を口にする。

 

「君は……誰だ?」

「……誰、でしょうね?」

 

 問いはかわされる。目の前で自分と問答している存在は、誰なのか。芦毛のウマ娘だということは当たり前のようにわかるけど、それ以上は何もわからない。そして、教えてくれることもない。これが悪夢だというのなら、答えのない迷宮は当然のものかもしれない。

 

「……じゃあ、始めましょう。まだ、まだなのですが。まだ夜は、少ししか溶けていないのですが」

 

 また、一方的に会話は切り替わる。その言葉と共に彼女は指を交差させ、口元で妖しくバツを作る。

 

「いけない夜の、はじまりはじまり」

 

 二人きりのナイトメア。二人だけの幸せ。二人はまだ、目覚めない。

 

「ルールはひとつです。あなたが私を捕まえられたら私の負け。そしてその逆。トレーナーさんなら、簡単ですよね」

「とても簡単には思えないけど」

 

 常識的に考えてウマ娘と追いかけっこをして勝てるわけがない。ずっと続く一本道を進むたび、どうしようもないと理解するだろう。そんな不条理な勝負も、悪夢ならではということだろうか。

 

「……そんなことないですよ」

 

 そう、彼女は顔色ひとつ変えずに。少しだけ変わったのは、瞳にこもった感情だろうか。彼女のことを何も知らない自分には、その深層はわからないのだが。

 

「これがただの悪夢なら、ずっと届かないと思いますけど。トレーナーさんはいつだって、私の予想も期待も超えてくれるから」

 

 まるで試すような言動。彼女の目的はなんなんだろう。この短い時間で、何度もその疑問は浮かんでいる。負の御都合主義を張り巡らせるナイトメアに、人並みの理屈を求めてしまう。

 

「なあ、君は一体何のために」

 

 ここにいるのか。それを聞こうとする前に。すーっと、少女はこちらに近づいてきて。目と鼻の先まで、その顔を近づけて。

 

「まだ」

「まだだめですよ、トレーナーさん」

 

 煙に撒くようなその言葉を、リフレインして。今度は俺の口元に、人差し指の敷居を立てた。

 

「朝はきっと来るけれど。それまでは終わらないのが、ナイトメアですから」

 

 相変わらず、要領を得ない。ふらりふらりと誑かし、彼女はこちらを一方的に誘導し続ける。虚数に沈む空無き空間。悪夢を名乗る少女のカタチ。その状況も登場人物も、まるでわけがわからないけれど。地平線の果てまでか細く続くこの世界に、終わりが来るのか来ないのかだって。それでも、自分に出せる答えは一つだ。

 

「選択肢はそれしかないのなら。よし、乗った」

「……さすが、かっこいいや」

 

 彼女は小さく呟いた。そこに込められた何かの感情には気づかないふりをする。感情の存在には気づいても、やはり自分は彼女をよく知らない。だからきっと、まだ足りない。まだ、だめなのだ。やがて彼女はくるりと背を向けて、遅れた尻尾がふわふわと浮かぶ。初めて見た彼女の背中から、もう聞き慣れた声がする。

 

「じゃあ行きますよ、トレーナーさん」

「ああ、絶対に捕まえてみせる」

「……嬉しいなあ。とはいえ、私も逃げには自信があります」

 

 じゃ、と短く言って。彼女はゆっくりと走り出す。緩やかに切られたスタートに面食らってしまっていると、はにかむような笑顔が一瞬こちらを向いた。

 

「はやく来てくださいよー」

「……おっと、ああ!」

 

 自分も脚を動かす。驚くほどに身体は軽く、これなら本当に追いつけるかもしれない。……などと、そう思えたのは最初だけ。全くペースを崩さず軽い調子で走り続ける少女と、それにだいぶ距離を置かれながら食らいつくのが自分。悪夢は正の方向には都合良くなどならなくて、ウマ娘とヒトの身体能力の差を当たり前のように再現している。これではいつになっても追いつかなくて、悪夢は本当に終わらないのかもしれない。そう思った俺を見かねてか、あるいはただ暇を持て余してか。前を行く少女が、今度は振り向くことなく話しかけてきた。

 

「トレーナーさんって、どんなウマ娘を担当したいとかありますか?」

 

 勝負には関係ないはずの問い。けれどそれをすんなり受け止め、荒い呼吸に思考を混ぜる自分がいる。トレーナー、という言葉。彼女の俺への呼称。自分はつい先日新しくトレーナーになったばかりで、誰とも契約を結んだことはない。なのにずっと話していると、彼女との会話はしっくり来る。若い勘など当てにならないが、前を行く少女にトレーナーと呼ばれる感覚は、悪くない。とはいえそんな言葉は、おいそれと口から吐き出せず。

 

「……うーん、そうだな。きっと色んな子がいるからなあ。誰でもいい、って言ったら失礼だけど」

「サボり魔で才能もない、口ばっかり達者な子とかでもいいですかー?」

 

 おちゃらけた口調が前から聞こえる。確かにそれは難儀そうだが。先程の自分の答えは曖昧だが、その問いにはもう少し明瞭なものを返せた。

 

「そんな子がいるなら、むしろほっとけないかもな」

「……へーえ、その心は」

「きっとその子も勝ちたいからだよ。素直じゃないから担当しない、なんてのはトレーナーとしてはだめだ……なんてのは新人だから言えることなんだろうが」

「勝ちたい、勝ちたい……一番でいたい。逃したくない」

 

 代わる代わるの言葉を述べながら、前の動きがぴたりと止まる。追いかけっこを忘れたように、何か別のものに想いを馳せる。追いかけるなら、今のうちか? ……いや。結局そのまま、彼女がまた話しかけるのを待っていた。二人で、立ち止まっていた。

 

「……ボーナスタイムのつもりだったんですけどねえ。トレーナーさんは女の子には触れないタイプですかー?」

「考えごとをしてる時に捕まえるのはフェアじゃないよ」

「フェア。ふーん……じゃあ次の質問です」

 

 そう、少しだけ会話があって。その後また彼女は駆け出して、しばらくして言葉が飛んでくる。この問答が、悪夢と自分の間に許されたただ一つの語らいなのだろう。少し見慣れてきた背中をまた追いかけ始めながら、次の言の葉に耳を澄ませる。

 

「あなたの担当ウマ娘が、回りくどいことしかできない卑怯者だったらどうしますか?」

 

 なるほど、そう来たか。

 

「例えば追いかけてる相手が考えごとをしていたら容赦なくそれを捕まえて、得意げに突き出します。悪びれることなんて万に一つもなくて、いつも小細工ばかりを使おうとします。……どうです?」

 

 それは先程の自分の態度を踏まえての質問。少し意地悪な問いで、やはり彼女は悪夢そのものなのかもしれない。自分と思考の合わない相手を、認めることができるのか。一見難しい問い。けれど、答えは浮かんでいた。

 

「……うーん、案外相性は悪くないと思うけど」

「その心は」

「俺がさっき律儀に君を待ったのは、単に不器用だからだしな。別に同じことをしない誰かを苦手になんかならないさ。そりゃいつも小細工ばかりなら、逆にその子も不器用かもしれないけど。お互いの苦手を補えるなら、不器用同士だって悪くない。むしろいいコンビになれるかもな」

 

 これが自分なりの答え。きっと青臭い、新人丸出しの答え。だけどそれなりに真摯に答えたつもりだ。それこそただ不器用故だとしても、この問答に嘘を混ぜ込みたくなかったから。一人のトレーナーとして一人のウマ娘を、などと言うにはとてもトレーナーとしての経験が足りないのだが。

 

「……さすが、なーんて」

 

 けれど、その言葉は受け止められる。たん、たたん。果てしない壁に反響する足音が、少し音色とリズムを変える。少しだけ、二人の走る距離が縮まる。

 

「では次の質問。もし人生をやり直せるとしたら、またトレーナーになりますか?」

 

 そして、次の質問が投げかけられる。これは正直、自信がない。理由は単純。

 

「なる、と言いたいところだが。実は俺、そんなに頭の出来がいいわけでもなくてさ。なんとか資格を取れたような程度だから、またなる! というかなれる! と言うには少し自信がないな」

「なるほど。たまたま、というような」

「まあ、な」

「……それなら、あなたのパートナーになるウマ娘は幸せですね」

「……どうしてだ?」

 

 赤裸々な自分の答えに対して、彼女は少し不思議なことを言う。その意図が分からず、聞き返す。

 

「だって、百回やって一回あるかの運命の出会い、みたいなもんじゃないですか」

 

 百回中一回というほど試験合格できないわけではないと思う……多分。そんな俺の心中を見抜いたのか。

 

「……ああ、お相手のウマ娘が真面目にやる気を出したなら、と言うもう一つの前提がありますから」

 

 先程から例に上がっているサボり魔のウマ娘は、暫定俺の初めての担当ウマ娘らしい。彼女の先程の発言は、それを前提にしていたのか。

 

「なるほど。滅多なことではどうにもならない同士が巡り会えたなら、それは確かに運命かもな」

「ですねえ」

 

 滅多に受からないだろうトレーナーと、滅多にやる気を出せないだろうウマ娘。けれど二人は不器用なだけで、ひょっとしたら二人なら噛み合うかもしれない。そんな出会いができるなら、確かに素晴らしいと思った。

 また、言葉と共に。だんだんと、近づいていく。

 

「更なる質問です。好きな食べ物は」

「またまた質問。小さい頃の将来の夢」

「もっと質問。担当ウマ娘にされて嬉しいこと」

 

 次々と大小の問題が投げかけられ、それに答えるたびに二人が走る間隔が狭くなってゆく。気がつけばお互い僅かに息を切らしながら、手を伸ばせば届く距離。そろそろ、終わりだった。そこまで来て、小さな背中がまた話しかけてくる。ここまで近づいて、肩を切らせるのが見えて、そこまでして。ようやくその背中が、得体の知れないものではないとわかった。そんな本当に小さな背中が、最後に問うものは。

 

「……それでは、最後の質問です」

「ああ、最後まで付き合うよ」

「やさしいですね、トレーナーさん……。では」

 

 少し息を入れて、僅かにもったいぶった沈黙の後。

 

「あなたは、目を覚ましたいですか?」

 

 最後の問いが、形造られる。

 

「そう来たか」

「私と、お別れしたいですか? 現実に戻り、素敵なウマ娘に出逢いに行きますか?」

 

 これは、きっと。悪夢を名乗る彼女が決めた、悪夢の取り払い方。役目を終えた夢の跡が、自らを終わらせる方法。……あるいは。

 

「もちろん望むのなら、ずーっと寝ててもいいんですよ」

 

 文字通りの、悪魔の誘い。まだ、が永遠に続く、終わらないナイトメアへの手招き。それはひどく魅力的に思えた。彼女とならば、ずっとずっと退屈しない気がした。

 

「二人きりのナイトメア。数億人の現実世界。私一人と、世界のすべて。どちらを選んでくれますか?」

 

 二者択一。それが悪夢から示された、終焉と永遠の手引き。俺に問われているのは、そのどちらを選ぶのかということ。ここまでの会話でようやくわかり始めた彼女と、これっきりで終わるのか。あるいは現実にある全ても未来も捨てて、始まらない永遠に身を委ねるのか。そのどちらか。なるほど、確かに悪魔の誘いだ。一見、そう見えた。でも。

 

「俺は」

 

 ゆっくりと、吐き出す。俺が、選ぶ答えは。

 

「目覚めるよ。……現実の君に会うために」

 

 答えは、もう一つだ。この路地のように、か細くてゴールが見えないとしても。その答えしか、あり得ないから。

 

「……何を言ってるんですか。私が現実にいて、あなたがそれに会って。それでもって意気投合。……どんな低確率だと」

 

 確かに彼女の言う通り。理不尽の権化であるべき悪夢の弁論としては、筋が通り過ぎているくらいに。彼女は夢の中の存在で、それなら現実にいるはずがない。それが万一現実にいるとしても、そしてトレセン学園にいるとしても。そこまでもしもを重ねても、出会えるなんて限らない。けれど。

 

「運命なら、それもあり得る。いや、それしかあり得ないんだ」

 

 彼女の語った運命の出会い。それが俺たちを結ぶのならば、何があっても出会うことができる。それが俺の結論。自分なりの、答えだった。

 

「……参ったなあ……」

「嬉しくないならやめておく」

「さっすが、トレーナーさん。今のはずるいですね」

 

 彼女の幸せを取るなら、彼女と永遠にいるべきなのだろう。自分の幸せを取るなら、この悪夢に幕を引くべきなのだろう。それを両方取ろうとしたのだから、確かにずるいのかもしれない。

 

「……でも、それが正解です」

 

 完全に彼女は足を止める。振り向いて、俺の目と鼻の先に立つ。ちょっと前に二人で走り始めた時と同じような場面なのに、全ての関係性が変わっていた気がした。

 

「ありがとうございます。また会いたいって、言ってくれて。これで心置きなく、私は役目を終えられます」

「……役目?」

「悪夢の中だから言っちゃえるんですけど。ほんとうは、お別れのために来たんです。遠く遠くから、あなたをちゃんと幸せにするために。二度と、私と会わなくて済むように」

「それは」

 

 幸せにするために、会わなくていいように。最初に彼女が述べた言葉と似通っていた。これは彼女にとっての悪夢であり、俺にとっての幸せのためのもの。ようやく、その意味がわかった。残酷な真実だとしても、わからないよりずっといいと思った。

 

「だからさっさと幻滅してもらって、私に追いつくのも諦めてから夢を出て欲しかったんですけど。……やってみたらめちゃくちゃで、失敗しちゃいました」

 

 引き離すために近づくという矛盾。未来から過去にやってくるというタイムパラドクス。二重に矛盾を孕んでいたら、誰だってうまく計画通りにはいかないだろう。ただ一人、目の前の少女を除いては。

 

「……失敗なんてしてないよ。君のおかげで、これから俺は君に会える。君が何故会わないほうがいいなんて言ったのかはわからない。でも、そんなことないのはもうわかる。君と俺とは、きっと運命なんだ」

 

 目の前の芦毛のウマ娘は、確かに己の運命を繋いだ。どちらか一人しか幸せになれないという二律背反さえ超えてみせた。ならば俺に出来るのは、その運命のバトンを繋ぐこと。彼女が走るのがここまでなら、その先を代わりに走ること。未来から過去へ、運命は逆説的に紡がれる。

 

「……にゃはは。本当に、敵わないなあ」

 

 そう、諦めたような口調だったけど。彼女の瞳はいつのまにか、光り輝いて見えた。上を見ればいつのまにか、青空が光っていた。まるで、閉じた目蓋を見開いたかのように。

 

「……じゃあ。またね、ですかね」

「きっと、また」

「私ももう少し頑張ってみます。あなたのために」

 

 そうすれば、きっと幸せが掴めるはず。これはきっと運命の話。まだだめだとしても、いつか。闇の中でも、二人なら。それを確かめるための、終わりの近いナイトメア。

 

「俺も、まずは君に会わないとだな」

「……どちらにせよ、悪夢はこれっきり」

「今の君とは、もう会えない」

 

 それだけは少し寂しい。過去と未来の交差は、夢の中でしか許されない。だからやっぱりこの悪夢は幸せで、終わらないとしたらそれはそれでいいものなのだろうけど。

 

「もう、じゃないですよ」

 

 けれど。そう言って、彼女はまた自らの口元に両人差し指を添えて。ばってんの裏から、最後の一言を添える。

 

「まだだめなだけ、ですから」

 

 その笑顔は、今度は晴れやかだった。

 まだ、まだ。崩壊していく景色に最後に反響する言葉は、それだった。時間の流れが足りないだけ。時空は少し超えられたとしても、結局は泡沫に消えるナイトメア。まだ、逢うことはできない。けれど、まだだめなだけ。刻が進めば、また会える。いつかはまだ見ぬ朝が来る。夜を食んで、朝が来る。

 さあ、おはよう。悪いお夢は、これっきり。

 

 

 布団の中で、目が覚める。いつものトレーナー寮の自室だった。いつもと違う感覚があるとすれば、長い夢を見ていた気がする。内容は全く覚えていないのに、心を動かされるような夢を見ていたような。けれどその感覚とは裏腹に思考は冴えていて、よく眠れたような気がする。少なくとも悪夢にうなされていたわけではないらしい、そう思えるくらいにすっきりとした目覚めだった。

 

「今日こそ、担当ウマ娘を見つけるか」

 

 トレーナーとしてトレセン学園にやってきてから数日、まだお眼鏡に適うウマ娘には出会えていない。お眼鏡というのは相手側からの話だ。新人の自分にはまだまだ選ばれる側が似合っていると実感する。荷物を軽くまとめて、今日もトレセン学園へ向かう。空は雲が僅かに浮かんだ青空で、朝からいい気持ちだと思った。

 そしてそんな決意をしてから時間が過ぎるのはあっという間で、すぐに昼の十二時を回った。トレーナー室で作業に追われ、結局誰かに声を掛けたりはできなかった。仕方なくキーボードを打ち、未だ片付ききらない書類を一枚一枚処理していく。

 

「……ふぅ」

「おやおや、おつかれみたいですねえ」

 

 ……え? 誰もいないと思って吐いたため息に、反応があった。驚いて前を向くと、デスク越しにいたのは一人のウマ娘。眠そうに欠伸をしている。短めの芦毛と青い瞳が、なぜか酷く印象的だった。唐突な出会いで、彼女の目的はわからない。それこそ興味本位で鍵の空いていたトレーナー室に忍び込み、ちょっかいをかけに来た。それだけのことで、この部屋から彼女が出ていけば終わる関係かもしれない。少なくとも普通なら、そうだろう。

 けれど。

 

「君は……」

 

 なぜかはわからない。なぜか話しかけずにはいられない、惹かれるものがあって。

 

「なあ、君」

 

 一千年を超えて逢えたような錯覚があって。

 

「……なんですかー?」

 

 夜から覚めても、心に残った影があって。

 

「俺の担当ウマ娘になってくれないか。せめて、名前だけでも」

 

 誰かの想いを、確かに果たせた感触があって。

 

「私? 奇特な人ですねえ、まあ契約は置いといて名前を、とりあえず」

 

 きっとここには、全てのきっかけがあって。

 

「私の名前はセイウンスカイ。これから先、どうぞ末永く……なんちゃって。ま、よろしくです」

 

 だから、この出会いは運命だ。

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