ウマ娘の某所に載せた短編集   作:春華ゆが

7 / 103
URAファイナルズに向けて水族館に行ってダイワスカーレットにあの女の話をするトレーナー


URAファイナルズに向けてのダイワスカーレット

「水族館なんて、アンタも気が利くじゃない」

 

 有馬記念で見事一着を取りスターウマ娘になったダイワスカーレット。

 彼女を労う意味を込めて、俺とスカーレットはある日、水族館に寄っていた。

 

「で、誰の入れ知恵なワケ?」

「……流石に隠し事はできないな……話すよ」

 

 ここに来たのには理由がある。

 もうすぐ始まるURAファイナルズに向けて、彼女を一番に、『ファイナルズ・チャンピオン』にするには。

 強力なライバルになるであろう存在のことを、話しておかなければならないだろう。

 同期のトレーナー、桐生院葵。そして、その担当ウマ娘であるハッピーミーク。

 彼女達がすれ違い、紡ぎ合い、二人三脚に至るまでの経緯をスカーレットに話した。

 

「……と、こういうわけだ。ウオッカとの決戦もあるだろうが、それだけに気を取られてはいけない……って、うわっ!」

 

 ずずい。むーっ。気がつけば、スカーレットの真っ赤な瞳が、自分の目と鼻の先で睨みつけていた。

 

「ちょっとアンタ、今まで一言もそんな話しなかったじゃない!」

「いや、すまない……! タイミングがなかったというか、言う理由がなかったというか……」

「わかってるわよ。どうせアンタのことだから、余計な心配をかけさせたくなかったんでしょ。……ありがと」

 

 一転、そっぽを向いて。感謝は本心みたいだが……拗ねてる?

 

「で、このタイミングで打ち明けたのも。『アタシのライバルになるから』、なんて。全く」

 

 そう言うと、スカーレットはため息を一つ。そしてこちらに向き直り、告げた。

 

「今一度、はっきり言っておくわ。アタシのライバルはアイツ……それはきっと変わらない。何を言われてもね。それはURAファイナルズでも変わらないわ。でも。

 アンタのライバルが、その桐生院さん。それはわかった。……漸く、アンタの目指してたものが見えた。

 アンタ、その人に負けたくないのよ。自分の担当ウマ娘が、このダイワスカーレットが。"一番"だって証明したいの」

 

 そうか。そうだったのか。

 

「……目標があるヤツは、強い。アンタの強さの源、やっとわかったわ。

 ……あーでもシャクねー! アンタには散々アタシのこと話したのに。アタシもアンタのこと知ってるつもりだったのに。

 ……アンタの一番は、アタシじゃなかったのかも」

 

 少し寂しそうに。そんなことはない、と否定する。本心だ。すると、ぷっと破顔した。

 

「あはは! ちょっとからかっただけよ。アタシのトレーナーが、アタシを最優先にしてくれてたこと。それは知ってる。でもね、だから。

 "これから先はアンタの夢を叶えるの"。もちろん、アタシを一番にするのを忘れちゃダメだけどね?」

 

 夢の扉は開かれた。そんな、どこかで聞いた言葉が頭に浮かぶ。スカーレットじゃない、自分の夢。

 

「……ありがとう、スカーレット。目が覚めた気分だ」

「……なによ。アンタとアタシは二人で一人。それが担当ウマ娘とトレーナーの模範的な関係、でしょ?」

「……敵わないな」

「……今までそれを教えてくれたのは、アンタだった。覚えてる?

 アイツがダービーに出るって聞いた時、道を見失ったアタシにアンタは指し示してくれた。

 ……URAファイナルズでアイツと雌雄を決する。そこまでこぎつけられたのも、アンタのおかげ。ずっと、色んなことを偉そうに教えてくれたじゃない」

 

 褒められてるのか、貶されてるのか。……信頼されてるのは、確かだ。

 

「……ああ。これからもスカーレットのトレーナーとして、精一杯サポートするつもりだ」

 

 宣誓。そしてそれはもう一対。

 

「そう、そしてアタシはアンタの担当ウマ娘として。精一杯走って、一番になる!」

 

 人差し指をいつものように。彼女もまた、宣言する。

 ああ、そうだった。彼女はいつも、輝いている。でも、その輝きは相当な努力の上に咲き誇っている。

 そしてそれをサポートするのが、自分の仕事だ。いままでも、これからも。

 

「……アタシは一番のウマ娘、ダイワスカーレット。そしてアンタはそのトレーナー。つまり……ううん」

 

 スカーレットはそこで言葉を切る。

 

「……この先は全部勝った後に取っておくわ」

「勝てるのか?」

 

 心配するように、挑発するように聞く。

 

「誰が相手でも、当然!」

 

 ふふん、と彼女は鼻を鳴らす。

 

「アタシが一番なんだから!」

 

 そう、彼女は一番のウマ娘なのだから。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。