ようこそひより至上主義の教室へ 作:nagai
プロローグ
夕日の差し込む俺の部屋で、それも俺のベッドの上で、椎名は持ち込んできた本を黙々と読んでいる。普通警戒の一つや二つはするだろうと言いたいところなのだが、それだけ信頼されていると、ひとまずは前向きにとらえてみることにする。
ただ、この俺に警戒心を持たない時点で椎名はだいぶやばいと思うのだが。
詳しくは今は言わないが、俺の学校での評価は最低レベルと言っても過言ではない。あの龍園ですら俺にかかわることを避けているのだといえば、伝わるものがあるだろうか。
もちろん龍園はあんな性格なので、たまに絡んでは来るのだが、毎回適当にあしらっている。
少し考えて、やはり椎名に一言注意するようにいう事にした。椎名の性格上、下手したらクラスで俺の部屋を訪ねたことを話しかねない。そうなると椎名の評判も地に落ちかねない。
「椎名。やはりお前は俺を警戒するべきだと思う」
「? 何をでしょうか?」
「いや、俺が襲うとかあるかもしれない」
「襲うんですか?」
「いや襲わないけれど。襲われるかもしれないって怖がるべきだっていう話で」
「襲わないのでしたら、何の問題もありませんよね?」
「うん。まあ、そうかなぁ」
いっそのこと襲うふりをしたら危機感を持ってくれるだろうかなんて考えてしまうが、それこそ本末転倒になりかねない。
こっちは襲うふりのつもりでも、椎名が襲われそうになったと感じれば普通にアウトだ。
「ところで、志島君」
おかしなことを考えていると、いつの間にか読んでいた本を閉じた椎名が、こちらをじっと見つめていた。
「あい?」
「志島君は今ポイントいくら持ってますか?」
「…………え。なんで?」
「いえ。早いもので四月はあと一週間しかありません。ですので今更ではあるのですが、来月いくら振り込まれるかわからないという事を伝えておこうと思いまして」
さすがは椎名。気が付いていたのか。
俺がそのことに気が付いたのは三日目のことだ。観察していれば簡単に分かることではあった。Dクラスの生徒が不良品と先輩に呼ばれていることや、Dクラスの先輩が無料の商品を購入していた事。試しに授業中にスマートフォンを見てみると、教師はこちらのことをしっかりと気にしつつも注意しなかったこと。無数の監視カメラなどなど。
また、生徒個人の競い合い以上にクラス間の競い合いが重要であることや、そこそこの割合で生徒が退学になるであろうことは、今日までの期間があれば十分に理解できる。
前者はDクラス単位で馬鹿にされていたことから、後者は登下校する生徒を全員覚えていたら先輩の人数が少なかったから。
椎名は俺のことをさっき友人と呼んでくれた。
『え、いや……俺の部屋に上がるの? やめといたほうがいいんじゃ……俺普通じゃないし』
『どうしてでしょうか? お友達のお部屋に遊びに行くことはおかしなことじゃありませんよね』
『友達……! ようこそ椎名俺の部屋へ』
このようなやり取りがあって、今俺の部屋に椎名がいるわけなのだが。
友人として俺のことを心配して、ポイントのことを話してくれたのだろう。そう思うと本当にうれしく思うとともに、申し訳なさがこみあげてくる。
「というか。椎名は俺の噂知らないのか?」
「噂……ですか?」
「俺ポイントゼロだぞ」
「それは……」
俺が今ゼロポイントであることを伝えると、椎名は困ったような表情を浮かべた。
困った顔も可愛いなと思いつつも。
「まあ、その。俺の口から言うのはちょっと憚られるところがあるし、あれだったらちょっと俺の噂でも軽く聞いてみればすぐに分かるよ」
高校生活五日目。俺は十万円分全てアダルトグッズの購入に費やした。五万円分がゴム。残りはゲーム漫画雑誌おもちゃ。
あまりにも堂々と購入して回った挙句、教師がいないときは(監視カメラに映ってはいるだろうが)ゴムを引っ張ったり舐めまわしたりして遊んでいたら、当たり前のように俺の悪評は学校中に広まった。
捕まってない犯罪者レベルの評判だろう。
話しかけてくるものはおろか、近づくことすら誰もが避ける。プールの女子の見学率が異様に高かったのももしかしたら俺のせいなのかもしれない。
そんな俺に偶に絡んでくる龍園はひょっとしていいやつなのではないかと思う今日この頃ではある。
俺がこれらのものを買いあさったのは純粋な興味だ。今まで存在は知っていたが、垣間見ることすらかなわなかった秘密の花園。
半ば自暴自棄になったというのもある。生涯初めての敗北だったのだ。
先程話した件の不良品のDクラスがマジでヤバイ。綾小路は俺より少し上、高円寺に対してはさらにもう一歩届かないだろう。
俺は見ただけでもかなり正確に能力の格付けができる自信がある。
これまでの人生、俺より上を見たためしはなかった。それがどうだろうか。二人もいる。坂柳なんていう同等レベルの奴までいる。龍園に関してもポテンシャルはかなりのもので、伸び方によっては俺を超えるかもしれない。
思わず自暴自棄になって、憧れのアダルティーな商品を買いあさってしまうのも無理はないだろう。
だが。
「椎名。教えてくれてありがとう。ちょっと無駄遣いしちゃったけど。もうしない」
「いえ。私も思わず本を買いすぎてしまう事がありますから、気持ちはわかります」
椎名という友人。好きな人が出来てしまった。
俺個人では余程かみ合わない限り勝てないが、椎名のためなら頑張れる気がする。
俺個人では到底勝てなくとも、何も個人で戦う必要もないのだ。
必要とあらば龍園に手を貸すし、状況によっては指揮官にでも駒にでもなってやる。
「そういえば椎名は龍園についてどう思ってる?」
「龍園君ですか? えっと、その……やはり暴力や争いは避けるべきだと」
「え? 争いは避けるべき……?」
やっぱいいかな。
高円寺>綾小路≧主人公≧坂柳くらいのパワーバランスという設定で書いてます。
筆者の個人的な考えですが、あくまで個人だけの能力なら綾小路より高円寺の方が上なんじゃないかと思ってます。人間をうまく使ったりするのは綾小路の方が上でしょうが、全部タイマンで勝負したら高円寺の方が上かなと、勝手に思ってます。
原作で格付けされて綾小路の方が普通に上なら普通に修正します。
次回は来年の今日までに。
1000人お気に入り記念になんかやりたいんですが、そういうの今までにやったことないので、何がいいかアンケート取ります。
-
1000文字ジャストの話
-
ひよりの良いところ1000個あげる話
-
西暦1000年のIFとかいう謎小説
-
1000年未来設定の謎小説
-
ひよりと1000㎞ウォーキングする謎小説
-
ひよりと千手観音像を彫る謎小説
-
もう兎にも角にも謎小説
-
七夕特別編(遅刻確定)
-
デートする普通の話