ようこそひより至上主義の教室へ 作:nagai
あとちょっとホモネタっぽいのありますが、BLじゃないとは思います。演技ですし。
五月一日になった。
Cクラスのクラスポイントは450。担任の読み上げた遅刻欠席の数々に、わいせつ物がどうのこうのなんていうものがあったせいで少し視線が痛いが、その視線に快感を覚えているフリをして見せると誰も俺を非難しなくなった。
最強無敵とは俺のことだ。
ただ、Dクラスが1000ポイント全てを吐き出しての0というのはなかなか意外だ。綾小路も高円寺も、クラスに働きかけなかったのか、あるいは浮かれていて気付かなかったのか。別に能力があるからと言って完璧にすべての物事に気が付くかと言えばそうとは限らない。Sシステムに気づかずにはしゃいでいたという事もあり得るだろう。そういう意味ではひとまず一勝だろうか。
ただ、先ほど説明されたAクラスのみが勝者というこの学校のシステム的には、今の時点で勝っていたとしても、最後の最後で逆転もあり得る。
情けない話だが、彼らが勝負に参加してこないという状況が一番うれしい。高円寺は金持ちなのだし、Aクラスでの卒業にそこまでの興味はない可能性がある。綾小路には今後探りを入れるとしよう。
優秀な成績を収めているといえるBクラス。だが、Bクラスに上がるのはそこまで難しいとは思わない。Bクラスの人間も優秀な人が多いし、おそらくリーダー格であろう一之瀬も非凡な人間だ。だが如何せん相性が悪い。噂では坂柳もなかなか好戦的らしいし、龍園は言わずもがな。手段を択ばないほどの強力な指導者には、一之瀬は成れない。
普通の学校での話ならば、なる必要もないと続けてあげるところなのだが、この学校のシステム上では致命傷にもほどがある。
Aクラスに対しては、どこかで楔を打ち込む余地がある。というのも、言ってしまえば内戦状態らしい。この学校のシステムでクラス内の対立は、あまりにも大きな隙を見せている。おそらくは坂柳が統合するだろうが、それまでにどうにか強い一撃を与えておきたい。
なんて言う戦略は考えるだけ考えて置いて、龍園が頑張ってくれるとして、目下の課題は今目の前に広がっているアダルトグッズの処理だ。
万が一これが椎名に見られてしまえば、嫌われるどころの騒ぎではないかもしれない。もちろん噂を確かめろと俺が言った以上、俺がこれらのグッズを買いあさった事はばれてしまうのだが、だが実物を見つけられたときにどんな反応をされるのかと考えると……
「でも全部捨てるのはもったいないしなぁ」
まあ、そう何度も椎名を部屋にあげることもないだろうし、のんびり考えておこう。
それに、もし椎名と特別な関係になった時に、やっぱりこういうのがあった方がそういう流れに持ち込めそうな気もするし。
『あっ、椎名それは……!』
『……志島君もこういうものに興味がおありなんですね』
『……悪い。椎名。ごめん……』
『? どうして謝るんですか?』
『どうしてって……』
『私もこういうものに興味が――――』
「ふへへへへへ」
☆
翌日。
俺は放課後の校舎裏にノートを持って訪れていた。
「よう志島。何やってんだ?」
声をかけられて見てみると、龍園だ。後ろには石崎とアルベルトが控えている。
「ダンゴムシの観察日記をつけてる」
「……は?」
脳の処理が追い付かないといった様子の龍園に、俺はやれやれと肩をすくめてノートを見せた。
「今日は石の裏に十匹。昨日は十二匹だったから二匹どっか行ってる。あと、ヤスデがいた。高度すぎてわからないかもしれないが」
「……絵日記じゃねぇか」
龍園は額に手を当てて、頭痛を耐えるようなしぐさをしてから頭を振る。その後片手をあげて背後に控える二人に指示を出した。どうやら俺の発言は無視することにしたらしい。
「静観は先月で終わりだ」
放課後の校舎裏というロマンチックな場所で、俺を取り囲むのは到底ロマンチックとは程遠い三人。
不敵な笑みを浮かべたままの龍園。その舎弟の石崎とアルベルト。
「Sシステムに気がついていただろ? お前は確かにどうしようもない変人らしいが、それでも実力があるなら話は別だ。俺の下につけ」
そんなことを言う龍園の能力も、俺の見立て通りだったようだ。
一見不良のような見た目でありながらも、先月俺のぼやいたお金を使い切ってしまって来月以降が心配だという発言をしっかり記憶し、俺がSシステムに気が付いていたことを察知したらしい。
無論その一言だけではなく、水泳での一位や、小テストでの満点一位など、龍園の中で俺が実力者であるという証拠が積みあがった結果だろうが。
「志島。悪いことは言わないから龍園さんの下に付いとけって。活躍して見せれば周りの目も変わるからさ。俺たち男子は案外お前のことを心配してるんだぞ。女子の手前擁護できねぇけど、そういうのに関心があるのは普通のことだからな!」
なんか十年来の友人を見るくらいの眼差しを向けてくる石崎がうざい。
俺の評判は地の底だという話は何度もしてきたが、それは男子であっても変わらない。
ただ、石崎の言うような理由で男子は俺のことを嫌っているパフォーマンスを強いられていることは確かだ。
女子の手前『ド変態性欲大魔神人魚』(水泳で一位を取ってから人魚が付いた。小テストで一位だったのでまた何か付与されるかも)となじられる俺を擁護することは難しい。
男子たちの『あいつはさすがにないわ』と言いつつも申し訳なさそうにしている表情にはいつも救われている。
さすがの俺だって女子に毎日キモがられて全く平気というわけではない。まあ椎名以外の評価は正直どうでもいいが。
「なるほどな。活躍すれば多少なりとも女子たちの俺に対する評価も変わるだろうな」
人間突き抜けた人への評価は案外甘い。問題行動を補って余りある確固たる結果を見せつけることが出来たのならば、俺のことを受け入れてくれるという女子も出てくるだろう。だが、
「椎名以外どうでもいい。あと、それって別に龍園の下につく必要なくないか? 何ならその龍園さんを俺の下にした方が評価上がるし」
瞬間、明らかに龍園の殺意が増した。アルベルトは拳を鳴らし、石崎は勝手に俺に友情を感じているらしく悲し気な表情を浮かべる。
指揮官は方針を決めた。俺をぶちのめすと。兵隊はそれに従うのみだ。
龍園の笑みが深くなる。これから起こる残虐なショーを楽しむ、独裁者のように。
「三人相手でも勝てると思っているのか?」
「まあ、勝てるだろうな」
「プールで見た時から腕も立つんだろうとは思ってたぜ? お前に興味を持ったのもその時くらいだしな」
さて、実際のところ今のこの状況はピンチであった。
この三人を倒すことは出来るだろう。だが、龍園が粘着質であることは分かっている。龍園に目をつけられた以上、一番賢いやり方はおとなしく龍園の下につくことだ。少なくともその場の衝突は回避でき、いつか確実に屠れるときに屠ってしまえばいい。
だが、暴力と恐怖でクラスを支配するそのやり口。龍園は手段を択ばない人間だ。そんな龍園の指示を受ける立場になってしまえば、どこかで椎名に嫌われるようなことが起こりかねない。
この場で抵抗するくらいなら正当防衛だろうが、それが何度も続くと結局椎名の嫌う暴力を振るい続けることとなる。
下につけば暴力を振るう未来、下につかないのならば暴力で抵抗し続ける未来。詰んでいる。
だが、龍園の今の発言で完全に逆転できる方法が生まれた。もちろんあらかじめ用意していた方法ではあるのだが、その効果が何倍にも跳ね上がったのだ。
俺の胸ぐらをつかみ上げた龍園に、俺は見せつけるようにわざと緩慢な動作で、胸ポケットに手を入れる。ハードボイルド小説や推理小説などでは、ちょうど拳銃でも取り出すような動作だ。
龍園も余裕そうな表情を浮かべつつも、わずかに俺への警戒の度合いをあげたのが分かる。さすがに銃が出てくるとは思っていなくても、ナイフくらいなら取り出してくる可能性は捨てられない。
「龍園。俺もプールでお前を見た時から興味があったぞ」
胸ポケットから取り出したるは――――それはナイフと呼ぶにはあまりに卑猥すぎた。
龍園の表情が恐怖に凍った。
「もちろん後ろの二人も。石崎、お前は俺に友情を感じてくれているようでうれしく思うぞ。アルベルトも、いい体をしているな」
それぞれ心配してくれたお礼、体格をほめただけだ。それがどのような意味を含んで彼らに伝わるかは俺の知った事ではない。
舎弟二人はボスを残して一目散に逃げだした。
もちろん主人公の演技なので龍園君は無事に解放されるはずです。
1000人お気に入り記念になんかやりたいんですが、そういうの今までにやったことないので、何がいいかアンケート取ります。
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