ようこそひより至上主義の教室へ   作:nagai

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なるべくキモくしようと思ったんですが、キモさが足りないかも。


2話 水着ひより

 どっかの誰かが無人島はあまり好きではないと言っていたような気がするが、どこの大馬鹿野郎だろうか。

 

「ひより、みずぎ、かわいい」

「ありがとうございます」

「ひより、てんしみたい、きれい」

「そ、そこまで言われると照れてしまいますね……」

「ひより、すたいるいいしもでるさんみたい。はだきれい」

「えっと……それくらいで。本当に照れて……」

「ひよりすき。おれ、ひよりすき。おれおれあ、う? おれはだれ?」

「大丈夫ですか?」

 

 脳がショートして、半ば声帯が勝手に喋るのに任せているとどんどんひよりが赤面していったが、最後には急に真顔になって心配された。

 

「ここまでのきおくないなった」

「それは深刻ですねー」

 

 適当に流されてしまったけれど、マジで一瞬何をしていたか忘れた。それくらいにはひよりの水着姿は衝撃だった。

 

 黒のビキニ。ビキニの語源は原爆実験にあると聞いたことがあるが、本当に核爆発並みの衝撃だ。何よりひよりがビキニを着ているというのが、なかなかに来るものがある。インドア派であるひよりは日焼けもなく、白磁のように透き通った白い肌を持っている。だからこそ黒の水着はよく映えた。

 

 ひよりはその水着の上から薄緑色のパーカーを羽織っていた。

 露出の高い水着を着ていながらも、露出を避けるようにパーカーを羽織るという矛盾。そこに高いファッション性と美が隠されているように思われた。

 緩急をつける狙い……俺が今感じたように、露出する場所と避ける場所とで。あるいは単に泳ぐつもりのない事をアピールしているとか。子供みたいにはしゃぐのではなく、海を味わっている大人な雰囲気を見せつけているのだろうか? なんだか知的な感じがする(IQ3)!

 

 いや、けれどこれを望むのは贅沢にもほどがあると思うけれど、せっかくなら俺の前でパーカーを開けてほしかった。前を閉じた状態でやってきて、俺の前で開けてほしかった。

 今から頼む? いや、へんたいふしんしゃだと思われそうだ。

 

 

 まあ、服装はいいとして。 

 改めて目の前のひよりを見る。運動が得意ではないはずなのに、随分と細い体をしている。むしろ少し心配になるくらいには痩せている。とはいえ、病的な瘦せ方というわけでもない。

 肌の白さもみずみずしく柔らかそうで、目のやり場に困った。

 

 顔を見ていればいいのだが、つい視線が下へ向かう。当たり前の事ではあるが普段以上に胸元が見えて、服とは違って乳房の形がよくわかる。というか、水着と下着ってだいたい一緒じゃない? まあ、TPOだとか文化だとか生地だとか目的だとか、水着と下着は違うものだと論理的にはわかるけれど。わかるけれども。それはそれとしてこんなの見ていいのかという気がしてならない。

 そのまま下を見れば、綺麗なおなかが見えた。先ほども言ったように細くて、肌が白くて瑞々しくて、触れてみたいと思ってしまう。一瞬さらにめちゃくちゃきもい事を考えかけたので、慌ててさらに下へと視線をずらす。

 

 腰が細くて、でもそのあと骨盤辺りでちゃんと膨らんでいるところが、性的なものを感じる前に美しかった。手を添えたら、ぴったり収まりそうだ。まあ、腰を手でつかむなんてことは普通ない……結婚するまではないだろうけれど。

 

 例にもれず脚も白い。それでいてそこそこ肉もついている。体の中で一番柔らかそうだし、一番触っても大丈夫そうだし、どうにか触れないかな。カモシカのようなんて表現があるけれど、今度からは美しくてすらりとした脚の事を、ひよりのようだと表現するようにしてもらいたいくらいだ。いや、それだと辞書にひよりの脚の写真が載ってしまいそうだからやっぱヤダ。

 

 

「あの、修治くん? ほんとに大丈夫ですか?」

「……………」

 

 何と言うかどこを見ても、最終的に性的な目で見てしまいそうになるので、顔をじっと見つめることにした。

 

 普段と違う髪型で、おさげにしていた。可愛らしいシュシュが、より女の子らしさを強調している。結婚しよう。

 

 

 そう言えば結婚するまでえっちなのはだめだけれど、結婚すればいいんだよな。

 ニュージーランド*1……は国籍取得するまでに時間が掛かるし。

 改宗してミャンマー*2……は確か法律変わったし。

 

 そもそも、結婚もしていない状態でひよりをそういう目で見るのはよくない。

 

「ひより。ちょっと頭冷やしてくる」

「え? は、はい」

 

 

 

 

 海まで全力で走り、水上バイクで楽しんでいる男子生徒に向けて叫ぶ。

 

 

「かっこいいな! 俺と競走しようぜ!!」

 

 

 当たり前だが負けた。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 龍園の戦略はシンプルだ。といっても俺はその他大勢の生徒と同じように、馬鹿みたいに騒いでリタイアするだけなので、詳細は聞かされていない。

 余計なことをするなとくぎを刺されただけだ。

 

 それでもなんとなく想像はつく。

 龍園が物凄く頑張ることになるので、食べれる野草図鑑で応援したかったところなのだが、不要物として持ち込めなかった。どう考えても必要だろ。

 

 折角ならこの特別試験で暴れたかったという気持ちもあるけれど、リーダーである龍園の指示に従ってリタイアするというのも、立派に参加したと言えるだろう。

 

 しかし改めてルールを確認してみると、結構面白い。

 

 何と言うか、この学校の特異さのようなものが現れているような気がする。規模が大きいとかそう言ったものではなくて、何を見定めようとしているのか、簡単に見えてこないのだ。

 

 この高校以外でも、成績優秀なクラスをAクラス、一組、みたいに分けている学校はあるだろう。総合成績でそれが下に落ちたり上がったりという仕組みも、あるはずだ。

 だが、それはほぼ確実にペーパーテストの成績で決める。

 勉強できる人が優秀だなんて考えは馬鹿げているけれど、社会が使いやすい優秀な人間は間違いなく勉強が出来る人間だ。

 勉強が出来るけれど無能な人間よりも、勉強のできない有能の方が扱いづらいのは明白。少なくとも組織と社会は、学校の成績のいい人間を取る方が無難なので、学力主義は悪くない。

 

 ならばこの学校が、完全な学力主義かというとそうではない。

 Aクラスに特別な授業を施すことはなく、不良品なんて烙印を押されたDクラスと同じ内容。

 さらに、大きくクラスポイントの動くこの特別試験において求められているのは――――いや、簡潔には言い表せないか。

 

 

「うーん………………まあいいや……」

 

 どちらにせよこの試験に今から介入してもうま味はないし、普通にひよりと楽しくバカンスする方がいい。

 ひよりの意見は尊重したいけれど、正直俺はAクラスにこだわっていない。ちょっと前に坂柳にチェスで負けた分はいつかやり返すとして、そのためにチェスの勉強に力を入れた訳だし。他に誰かに勝ちたいとかもない。俺にはひよりという彼女がいるんだから、世界で一番の勝ち組なのは自明だし。

 

「ひより、焼けたよー」

 

 考え事をして時間を潰していると、良い感じに肉が焼けたので、紙皿に移して運ぶ。

 

「ありがとうございます。バーベキューなんて初めてですが、楽しいですね」

「俺も初めて。ていうか肉もかなりいいやつだよなぁ……あ、おいしい」

 

 龍園が適当にバカンスをして満足するとは思わないし、たぶんどっかのクラスに備品を売るぐらいはするだろう。そこからさらに勝ちを狙うとすると、おそらく龍園一人残って、リーダーを当てる。

 

 龍園が本当にそこまでやるかは分からないが、やりそうではある。

 

「うーん?」

 

 龍園が備品を取引するとして、Dクラスはおそらくない。Bは向こうが乗ってこない。ならばAクラスか。流石に先に取引をまとめてからこれだけポイントを贅沢に吐き出したのだろうから、ある意味既に勝ったと言える。どんな取引したのかまでは分からないけれど、将来的な分込みで同額分以上のプライベートポイントとかだろう。

 俺がAクラスだったら、最後のリーダーあてでAクラスを狙わないことを条件に入れるだろうし、当てられるとしてBとD。あるいは、取引を反故にしてでも油断しているAを刺してもいいか。

 

 龍園の考えは爽快だけれど、やはり俺としてはあまりとりたくない戦略でもある。徹底的に堅実に、隙を見せない様に立ち回る方が勝率が高い。

 

 今回の場合うちのクラスが負けるとしたら、戦略を読まれた場合。おそらくは龍園がリーダーになるであろうことも想像がつくだろうし。

 この大騒ぎは他のクラスも気づくだろう。

 

「んんんんん……?」

 

 なんか勝てない気がするな、うちのクラス。

 

「お肉、硬いのもありますね……」

 

 俺が唸ったのを、ひよりは別の意味に捉えたらしく、もぐもぐと一所懸命に口を動かしていた。

*1
結婚年齢16歳以上

*2
結婚年齢かなり若かった。特に基督教徒は

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