ようこそひより至上主義の教室へ   作:nagai

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長い上にひより出ないので、なんだったらあとがきに要約載せてるので、それを読めばいいと思います。


2話 決着!

「さて、と。二人っきりだね」

「っ……!」

 

 胸ぐらをつかんでいた龍園の手を引きはがして、力を込める。握りつぶすつもりで思いっきり力を入れてやれば、龍園の表情は苦痛にゆがむ。

 

 だがさすがと言うべきか、一瞬力を緩めてみると、その瞬間に手を振り払って抜け出して見せる。

 二三歩後ずさる龍園。石崎たちのように逃げ出したりしないのは、プライドが許さないからだろう。

 

「とりあえず手早く済ませるか。誰かに見られてもまずいし。お前とつながっていることはバレないようにしたいしな」

 

 龍園と二人きりになれた今の状況はかなりありがたい。

 これから龍園と交渉するつもりなのだが、他の誰かに龍園と俺が通じていることはバレない方がいい。今後の戦略の都合上、あくまで龍園は俺に対して無関心で、俺は龍園を完全に無視していると周りに思われた方が好都合だからだ。

 

「チッ……もう勝ったつもりか。お前の方が根負けするまで抵抗してやる」

「ふむ……交渉できないと……?」

 

 話くらいは面白半分に聞いてくれそうなものだし、そもそも龍園は先ほど間違いなく俺に恐怖心を抱いた。間違いなく俺の方が有利に交渉を進められると思っていたのだが。

 

 

「それならそれでもいい。それくらいじゃないと楽しくないしな」

 

 

 俺だって確実に勝てるなら一番だとは思っていても、たまには実力者とのピリつくような対決を楽しみたいとも思う。それに、しばらくは龍園にリーダーをやらせるつもりであるし、ここで簡単に俺に屈しないのは高評価だ。

 

「……グッ……俺に恐怖心なんて存在しないと思ってたぜ…………まさかお前みたいなやつにここまでビビっちまうなんて――――よお!!」

 

 そう言いつつも龍園は、先手必勝とばかりに俺に対して前蹴りを繰り出してくる。

 

 それを体を捻りつつ避けて、手加減した回し蹴りを龍園の側頭部に叩き込む。

 え? 椎名は暴力が嫌い? これバレエの練習。

 

 そんな言い訳を心の中でしつつ、けれどこの学校で誰かに暴力を加えるのは(いや暴力じゃなくてバレエなんだが)これが最後だろう。

 

 

 倒れ伏した龍園に馬乗りになって、両腕を押さえつける。

 

 

 ふとそこで、俺がいまだに龍園たちを少し脅かすために持ってきていた猥褻物を手にしたままであったことを思い出した。すっかり忘れてしまっていたが、想像以上に効果は絶大で、今後も使う余地はあるかと思案するが、一瞬でもう二度と使わないだろうと判断。

 

 

 突然性欲を向けられることは恐ろしいことで、さらに今回龍園たちがあそこまで過剰に反応したのは、やはり不意打ちだったこともある。

 俺が同性愛者と広まって椎名が俺に対して恋心を持たなくなる可能性もあるし、これだけの人数の生徒がいれば、本気で同性を愛している生徒もいるだろう。本気で男の人が好きな人が俺に対してアプローチをかけてきても申し訳ない。

 

 

 また、先ほどの龍園の発言から、これまで誰かに恐怖を抱いたことは無かったのだろう。それが俺に性欲を向けられたと誤解して――まあさせたんだけど――ここまでビビったのなら最後まで利用する。ちょっとかわいそうな気もするが。

 一度感じた恐怖はしばらくは簡単にぬぐえない。今なら簡単に恐怖に飲まれる。とどめと言わんばかりに、こちらが暴力に躊躇がないと誤解させて、これからの交渉は俺の思い通りに進めてやろう。

 

 

 手にしていた猥褻物を龍園の顔の真横に思いっきり叩きつける。ベキョリといっそ心地よいほどの音を立てて、砕かれた。

 

「こいつはもう必要ない」

 

 

 交渉を始めよう。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 先ほどは椎名以外の評価はどうでもいいとは言ったが、だからと言って誰も俺に対して協力してくれないであろう現状はよろしくない。

 

 これから俺の実力を見せていけば、最終的に俺に対して協力してくれるようになるだろうが、それがいつになるかわからない。想定よりも早くクラスメイトに協力してもらわなけらばならないような状況になれば、あるいはもしも退学になるスケープゴートが必要になったとしたら、今この学校で一番俺が不利だ。

 

 過去は変えられない以上、最も早く大勢の協力者を手に入れる方法は一つ。

 

 一番上を仲間にしてしまえばいい。

 

 それもなるべく対等な関係でだ。

 

 椎名は案外クラスメイトに対して仲間意識を感じているらしいことは話していて分かる。だが、椎名には悪いが俺はクラスメイトなんてどうでもいい。最悪俺と椎名の二人が勝ち残れば何でもいいのだ。龍園の下について共倒れというのは避けたい。

 

 龍園は馬鹿ではないが、かなりリスクの大きな戦術を取る。何度ボコボコにされても笑いながらアルベルトに挑んでいくその様子から、そのリスク自体を楽しんでいる節もある。

 

 

 龍園の危険性は大きく二つ。どこかで確実な証拠と共に告発されれば、龍園の命令で動いた数人もろとも退学になりかねない点。赤点で退学というのは進学校でも厳しい方だし、暴力沙汰は即退学という可能性を現状では捨てきれないからだ。

 

 もう一つは、龍園自身の求心力が下がった場合。独裁が許されるのはうまくいっている時だけ。高校三年間だけならうまくいく可能性もあるが、正直今の龍園ではBクラス以外には勝てない。龍園の恐怖支配から解放されたクラスメイト達が、新しいリーダーを擁立できるかどうか不安がある。一度与えられた恐怖は生涯拭えない。乗り越えることが出来たとしてもだ。バラバラになってしまったクラスは他の三クラスから食い荒らされてゲームオーバー。

 

 後者の理由から、龍園と対等な関係を築いたことは誰かに知られてはならない。評判の低い俺と対等だという事になれば、龍園もなめられてしまいかねない。

 

 

「……紛らわしい言い方しやがって」

 

 

 という事を伝え終えた時の龍園の第一声はそれであった。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「さて、ひとまず石崎とアルベルトに電話をかけろ。スピーカーでな。無事であることを伝えて、今どこにいるのかを聞いて、そのうえでここへ来るように指示だ」

「チッ」

 

 意外なほどあっさりと龍園は俺の指示に従った。

 

「おい、石崎。今どこだ?」

『りゅ、龍園さん……だ、大丈夫なんですか?』

「ああ……」

『今はアルベルトと一緒に職員室前にいます。助けを呼ぶべきか悩んでいて』

「必要ない。とりあえず今すぐさっきのところへ来い」

 

 

 龍園は言い終えると返事も待たずに通話を切る。

 

「よし、これでチェックメイトだな。

 とりあえず俺の要求はシンプル。ひとまず一年の間で良い、俺に対して興味を持ってないふりをして、なおかつ俺に対して過度に干渉するな。試験の種類によっては、暴力と不正行為以外になら手を貸してやらんでもない」

 

「断ったら?」

「石崎とアルベルトを迎え入れるお前はボロ雑巾になっているだろう。お前がこの短時間で俺に敗れたのなら、あの二人はますます俺に対して恐怖心を抱くだろう。正直やりたくはないが、お前のポジションを丸々俺が乗っ取ることになるな」

「この場でその要求を飲んで、俺が守らなかったらどうする?」

「好きにしてみればいい。暴力以外のありとあらゆる手段でお前の地位を俺と同じかそれ以下にしてやる」

「はっ、そりゃあ恐ろしいことだが、口約束で満足するんだったらお前はその程度だってことだな」

 

「書面は必要ないさ。クラスに最低限の貢献はするつもりだし、無理に俺を戦略に組み込むと士気の低下から不測の事態も起こりうる。お前にメリットがないって言うのもある。

 お前にとっても悪くない話だ。あいつらは逃げた罪悪感から……いや、それだけじゃないな。一目散に逃げだすほど俺に恐怖心を持ったんだ、その俺をお前がものともしなかったのだと思えば、支配はより容易になる。お前は俺の持っていたあのおもちゃを破壊し、俺はお前に対して興味を失くして絵日記を続けている。石崎たちが見るのはそんな光景だろう」

 

「気に食わねぇな」

 

「だろう? だから期限をつけている。来年ならいくらでも俺に対して攻撃を仕掛けてくれて構わない。それまでに椎名とイチャイチャチュッチュな関係になっているはずだし、のんびりお前の相手をしてやろう。つまり、俺が言いたいことを端的に換言すれば『今年一年は椎名とのラブストーリーに専念するから余計な事すんな』、以上だ。あ、あと俺のこと話さないように二人の口封じてね」

 

 

 

 

 

 

 ★

 

 

「龍園さん!!」

 

 やってきた石崎とアルベルト。彼らが見た光景は、先ほど俺が言った通りの光景だ。

 

 壊れてしまった卑猥なおもちゃ、余裕の表情で石崎たちを待つ龍園、ダンゴムシの観察日記を書き足している俺。

 

 龍園が俺に完全敗北して、俺の指示に従ったのかと言えば、必ずしもそうではない。

 龍園は俺が致命的なミスをしていると『勘違い』している。

 

 一つは椎名という明確な弱点と行動原理を見せた事。椎名のために、もっと言うとクラスのために行動することが半ば確約されたようなものだ。Aクラスに上がる以外にこの学校では勝ったといえないからな。

 もう一つ、一年という期限をつけた事。龍園が、いずれ自分が俺に勝てると思っている以上、期限をつけたのは悪手だと思っているだろう。

 

 

 

 

 龍園に言えるわけもない、この交渉の最大の目的は、最大の効果を発揮するときは、龍園が誰かに敗北した時だ。

 

 

 

「さて、石崎。今何時だ?」

「ひっ……ま、まて、近づくな」

「もう俺は椎名以外に興味ない。そもそも俺はあれを持った上でお前らをほめただけなんだから、勘違いしないでよねっ!」

「……なんだこいつ。ああ、もういい! ちょうど17時だ!」

「ん。じゃあ俺は買いものに行かないと。取り寄せてたものが届いてるはずだ」

「あ? お前また全額使うんじゃないだろうな?」

 

 プライベートポイントは個人の財産だが、クラス単位の協力が必要な以上、なるべくクラスの総ポイント数は維持しておきたいところだ。龍園は俺の浪費をたしなめたいのだろう。だが、今回は杞憂だ。

 

「違う。おもちゃ買うんだよ……あの、普通の方ね。おもちゃって言うのはゲームとか……あ、ゲームも普通の方ね。あの、超エキサイティングとかの……健全な方ね」

「もういい。いちいち言う必要が――あるなお前は」

「とにかく、三輪車を買いに行ったら売ってなかったから取り寄せたんだ」

「……三輪車?」

 

 

 その場にいた全員が首を傾げたのを無視して俺は、取り寄せて置いたカッコいい三輪車を受取りに走り出す。

 

 

「……マジで何なんだあいつ」

 

 龍園はかすれた声でこぼした。




 長くなったので要約(兼解説)。

・龍園への勘違いワード
 「二人っきりだね」「とりあえず手早く済ませる」「見られてもまずい」「お前とつながっている」「交渉」「(抵抗してくれるくらいじゃないと)楽しくないしな」
 「(馬乗りになった状態でおもちゃを破壊し)こいつはもう必要ない」

 もちろんわざと言ってます主人公は。


・交渉内容
 一年の間龍園は主人公に過度に干渉しない
 暴力と不正行為以外なら手伝うこともあるかもしれない
 俺に対して敵対するのは面倒だからやめとけ(脅し)
 俺を味方にしてもクソ面倒だからやめとけ、俺が戦略に組み込まれていると周りの士気が下がりかねないぞ(ガチのアドバイス)
 
 !今は椎名ひよりとの関係進めるのに専念させてね!

 
 これに対する龍園の思惑としては、
 一度負けたのは事実であるからひとまず手を引く。あえてリベンジの機会を残している主人公は気に食わないが、だからこそいずれ勝てる。椎名ひよりというクラスメイトに熱をあげているのならば、ひとまず放置していても地雷にはなりえない。
 ガチのアドバイスにちょっと納得した。


・余談として
 もしも主人公のダンゴムシ観察場に龍園たちが現れなかったとしても、翌日以降「パラリラパラリラ!」と叫びながら三輪車で遊んでいる光景を見て関わるのをやめる。
 
 本編でもこの後、半年後くらいに、地盤を固めたらもう一回ちょっかい出してそん時は勝ってやるぜくらいには龍園も考えていたけれど、結局その光景を見て一年様子見を決める。



 どっか変な所とか矛盾点とかあっても、それはわざとだと言い張ります。ただのミスなのですが、指摘されても素知らぬ顔で伏線ですと言い張るので指摘しないでください。

1000人お気に入り記念になんかやりたいんですが、そういうの今までにやったことないので、何がいいかアンケート取ります。

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