ようこそひより至上主義の教室へ 作:nagai
ランキングに乗ると目に見えてお気に入りが増えてくれるので毎回楽しいです。
いつもとキーボードちがったので誤字多いと思います。
そうこうしているうちに、あっという間に明日が休日である。
椎名との勉強会の約束をきっかけに、俺と椎名の関係は急転換を迎えた。そう、椎名と連絡先の交換ができたのだ。勉強会は図書館で行うのだが、不測の事態があった時のためということで交換することができた。
勢いあまって椎名の電話番号を部屋の壁一面に、油性マジックで書いてしまうくらいには嬉しい出来事だ。
冷静になってみれば、卒業までに何とかできなければ壁紙の張り替え代みたいなの請求されるのではないだろうか。
まあ、そんな些末なことはさておき、連絡先を交換できたことは僥倖だ。毎日おはようからお休みまで、三秒に一回くらいメールや電話をしたいところなのだが、そこまでやると着信拒否一択だろうから、ほどほどにしておく。
だが、メールを送りたい、電話で椎名の声が聞きたいと思ってしまう。
実は先ほどまで椎名と少し長電話をしていたのだ。勉強会の約束の話はもちろん、昨日読んだミステリー小説についての話など。
俺は案外おしゃべりが好きだったようで、もっといろいろ話したいなんて考えてしまっていたが、椎名が眠そうだったのでお開きになった。
「他の奴とでも話しておしゃべり欲を満たすか……」
やっぱりお話をすると楽しくなって、もっといろいろ喋りたくなるものだ。
俺は携帯の連絡先を開き――――
【登録連絡先:1件
椎名ひより】
「あ……寝よ」
明日は椎名との勉強会だ。たのしみだな。
☆
「ところで志島君は数学が一番得意なんですか?」
「うん? まあ、そうかなぁ」
待ちに待った椎名との勉強会。小テストの確認を済ませて、念のため数学の発展問題を解いてたら、椎名がふとそんなことを言った。
「俺の父親が数学者だったから」
「なるほど。お父様が数学者なのでしたら――だった?」
「ああうん。本当に気にしないで欲しいんだけど、もう死んでるから」
思えば、父親はかなり頭のいかれた人だった。
毎朝フルマラソンするし、そのあとの朝食ではウィンナーを珈琲にぶち込んで『あっはっは! これがウィンナー珈琲だ』なんて言っていた。バカなんじゃないかと当時三歳ながらに思った記憶がある。真似してみたら案外普通に飲めた(食べれた?)が。
数学に命を懸けながらも、夫として、父親として、母親と俺を愛してくれた人でもあった。
「それは……」
「いや本当に気にしないでよ? もう十年以上前の話なんだし。ああそうだ、英語教えてよ椎名。俺は数学以外には自信がないから」
「そうなのですか? 他の科目も得意そうですが」
「うちの父親の教えで『科学は宇宙共通で、そのほかのローカルな学問とは一線を画している。さらにそれを越えてもっとも偉大なのが数学だ。物理法則や物質の性質が全く違う異世界があったとしても共通だからだ』とかなんとか。うちの父親は数学ばかり教えてきたから。英語はあんまり自信がないんだ」
もっともそんなことを言いつつも、父親はあらゆる学問の専門分野を持ち合わせていたので、他の学問を軽視していたわけではなく、単純に数学が一番好きなだけだったのだろう。
すごい事なのだが、そのせいで母親からこれほどまでの――いや、終わったことは考えないことにする。
とにかく、椎名には数学以外は自信がないとは言ったが、当然そんなことはない。ほぼすべての分野まんべんなく自信がある。だが、こう言っておけば話が逸らせるし何よりも――!
「それでしたら、数学を教わったお返しと言うことで」
椎名に勉強を教えてもらうという幸せ展開が楽しめる。
高校程度の勉強をするなんて、延々と石を積み上げるような意味もないつまらないことだと考えていたが、椎名と一緒にいるだけで楽しい。
インターネットの情報によれば、ただ一緒にいるだけで楽しいというのは愛らしい。椎名Loveだ。
「――――――ですので、こちらの目的語以降を別の文章だと考えて、更にその説明をしている文だと考えれば」
「ああ分かりやすい。じゃあ訳は…………こう?」
「はい。さすが志島君ですね。この調子なら英語も大丈夫でしょう」
「えへへへ」
天国、極楽浄土、理想郷。幸せホルモンの過剰分泌でもはやトリップ寸前。
椎名に勉強を教えてもらい、さらに椎名に褒められる。
やばい。勉強できるだけで椎名に褒められるなんてそんなことが許されていいのか? 次のテストどころか卒業までのすべてのテストで満点を取れるだろうに。そのすべてで褒めてもらうとして――ああ、だめだ。想像しただけで脳内麻薬中毒で死ぬ。人類史上最高の死に方をする。
ふとそこで、悪魔的発想が下りてきた。
「椎名。もしも俺が次の中間テストで全部満点だったらデートしてくれないか?」
高校生程度の問題で満点を取るなんて、サルにバナナの剥き方を教えるより簡単だ。最初からできるだろうという意味で。
たとえ大学院入試の専門科目を持ってきたところで俺を止めることなんてできはしない。これで俺にとって試験は『デートひより』確定ガチャチケットと化した!
「? どうしてですか?」
「え?」
そういえばこの子天然だった。デートに誘われれば普通察するだろう。
というより、椎名が天然だったから理由を聞かれるだけで済んだが、もしここで『普通に嫌です』みたいなことを言われたらマジで死ぬ。
何が悪魔的発想だよばかなんじゃないのか。
だが、口に出してしまった以上このまま突き進むほかない。
「えっとその……」
ここで椎名が好きだからだよと告白したとする。
俺の脳内コンピューターが導き出した結論は、99パーセント失敗。そういうことはよくわからないと言われてジエンド。残りの1パーセントは、よくわからないのでまずはお試しでと言われるパターンだが、とても想像できない。
だが、ここで椎名のことが好きだからだと言えなければ、男じゃない。
「やっぱり友達とは遊びに行きたいなって」
私は女でいいや。
「それでしたら、試験が終わったら一緒に本屋に行きましょう。別に満点でなくても。私も志島君と遊びたいですし」
「まじ? え? まじで?」
言われてみれば別にわざわざ交換条件出す必要ないわ。普通にデートに誘えばいいのか。勉強になるなぁ。
「そういえば志島君。龍園君主催の勉強会についてなのですが」
「龍園主催の勉強会とかいう面白ワードヤバいな。あ、遮ってごめん。続けて」
「はい。うちのクラスの生徒たちは素行が悪い人たちが多いです」
「ん、案外ズバッと言うな」
「ですが、赤点の危険にある生徒はほとんどいない様です。小テストを適当に受けていたり、変なミスをしていた人が多いようで。男子の方は金田君が見ているので私はわかりませんが」
「男子の方は俺も一回行ってきたよ」
龍園は来なくていいと言っていたので、来てもいいという意味だと解釈した。
楽しい流体力学の授業をしていたら、アルベルトにつまみ出されてしまったのだが。今度は楽しい古文書読解講座でもやろうと思っている。
「男子の方もそこまで問題はなさそうだったかな。龍園も何か策があるっぽかったし。油断はよくないが心配する必要はあまりなさそうだ」
俺もいくつか方法を考えてはいる。
一つは授業完全無視で試験対策に全霊を尽くす方法。できる生徒が授業中に歩き回って、できない生徒の苦手を潰すことに専念する。教師を完全無視しているので減るものが存在しないDクラスくらいでしかできないだろうが。
一つは賄賂。ポイントで買えないものはないとまで言っていたくらいなのだし、点数くらい買えるだろう。
試験問題そのものを購入するというのは、流石にルール的に無理だろう。他に、問題を変える権利とかを購入できるのならば、全部一桁の足し算の問題に変えたら全員満点だろう。
問題そのものをどうにかするのは不可能だろうから、問題の傾向を掴むという意味で過去問の入手も有効か。
まあ、俺と椎名に関しては何の心配もないし、そこまで行動するつもりはない。好感度を稼ぐチャンスではあるのだが、勉強ができるやつではあると認識されている以上、今貢献してもそこまでの評判回復にはつながらない。
俺はしばらくド変態だと誤解されたままで、ここぞという時のギャップで信用を得るのが一番だろう。
故に、そろそろどこかで変態行動する必要があるのだが、正直気が重い。
ただ、アダルトな雑誌のお陰でだいぶそっち方面にも詳しくなった。母親のせいで、ほんの最低限しか、それこそ保健の教科書レベルの知識だけだったのだが、それでは不十分なのだと思い知った。正直学校教育はそっち方面もう少し考えるべきだと思う。
なるべく人に迷惑をかけずに、それでいて今のド変態と言う評価を維持する方法……Aクラスの真嶋先生あたりに保健の勉強を教えてもらいに行こうか。
真嶋先生はたぶん生徒思いだし、真剣に質問しているんだと言えば話を聞いてくれるだろう。
この後生徒の行きかう廊下で延々と保健体育について主人公に教えなければならなくなる真嶋先生。生徒思いですね。
多くの感想、高評価ありがとうございます。励みになります。おかげで頑張って更新してみました。
次回こそは何が何でも遅くなります。4.5巻発売前後に更新できればと。
二期のうわさが広がってますが、ひよりが動いて喋る……来るといいですねぇ。
2022年8月18日追記。まだ動いてないし喋ってないですが、ひよりの後ろ姿かわいかったですね。
1000人お気に入り記念になんかやりたいんですが、そういうの今までにやったことないので、何がいいかアンケート取ります。
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