ようこそひより至上主義の教室へ   作:nagai

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 六巻が出たら続きを書くと言っていましたが、まあ五巻が出たのでその記念という事で一話だけ更新します。
 この話書くために今までの話を読み返したんですけれど、主人公が頭おかしくてひいちゃった。


幕間:ウナギ

 端末を放り出して伸びを一つ。

 

 4ヶ月ぶりに更新されたウェブ小説を読んだのだが、以前の内容を読み返すと、主人公の頭がおかしすぎて、作者の精神状態を疑うほどだった。

 

「やっぱ狂人って怖いなぁ」

 

 確かにこの世の中には様々な種類の人間がいるし、変わっているからと言って排斥されることは間違っている。それは分かっていても、やはり変な人を見ると近づかないでおこうと思ってしまうものだ。

 

 さて、と気合を入れて、先ほどから続けていた作業を再開する。

 ウェブ小説を読んでいたのは、あくまで気分転換のためで、俺はCクラスが無事にテストを乗り越えたお祝いパーティーに持っていく料理の準備をしていた。

 

 結果として、どこのクラスからも退学者は出なかったらしい。AクラスやBクラスが大ポカやらかして半分くらい消えろと夜な夜な呪っていたが、俺には呪術は使えなかったようだ。

 

「いや、呪い方が悪かったのかな……? まあいいや、みんなが喜んでくれるといいけれど」

 

 まさか俺がそういったクラスのパーティなどに呼ばれるとは思っていなかったので、なるべく気合を入れて料理を作る。とりあえず『ウナギのゼリー寄せ』と、あとは『ハギス』なんかも喜ばれるだろうか。

 

 しばらく準備を続けていると、部屋のインターホンが鳴った。

 思えばインターホンの音を聞いたのは初めてかもしれない。一度だけひよりが遊びに来てくれた時も、あの時は一緒に部屋に入ったわけだし。

 やってきたのは果たしてひよりで――というか他に訪ねてくる人はいない――思わずにやけてしまう。ドキドキと緊張してくる。

 とはいえどうして突然やってきたのかは不思議だ。

 確かにひよりのことは大好きだが、だからと言ってひよりがやってきたと舞い上がって、警戒心や思考を放棄するほど俺は脳みそお花畑ではない。

 

「わーい! ひより! よく来たね!」

 

 心の底からそう言うと、ひよりは応えて笑顔を見せてくれた。かわいい。好き。

 

「突然すみません。えっと、少しだけいいでしょうか?」

「もちろん。いくらでも」

 

 むしろ一生捧げてもいいが、このド天然のひよりは「いえ、そこまでお時間はいただきませんけど……?」とか言いそうなので口には出さない。

 

「■■君は今回のテストも満点でしたね」

「ああ、頑張ったからね。結果が出たらやっぱりうれしいな」

 

 無難な返事をしておいて、ひよりを室内に誘導する。と、ひよりはキッチンの料理を見て不思議そうに首を傾げた。

 

「今日のパーティーには出席なさらないのですか? 龍園君が来いって言ってませんでしたっけ?」

「? 出席するけど?」

 

 龍園が俺にパーティーに来るように言った理由は分からない。いや、正直なところ、もしかしたらという予想は立っているが、流石に違うだろうという被害妄想に近いものだ。そう言っておけば来ない可能性が高まると思って龍園が俺を誘ったというのは、流石に被害妄想が過ぎるだろう。

 

 と、俺の返事にひよりはますます不思議そうにして。

 

「では、その料理は?」

「パーティーに持っていくんだよ」

 

 ひよりは困ったように笑って、

 

「……料理できるんですね。見たことのないものばかりですけれど」

「ああ、うん。なるべく美味しくない料理にしないといけないから」

「?」

 

 なぜわざわざ美味しくない料理を作るのかと訝し気なひよりに一つ、自慢話をすることにした。

 

 

 俺は控えめに言って天才だ。遺伝で才能が決まるわけではないが、父も母も優秀で、俺は両親を超える才能を持っている。頭脳でも身体能力でも、絵でも音楽でも。ひたすらに俺の能力はずば抜けていた。俺を父と完全に同一の存在にしようとした母親が一番苦心したのは、俺の能力を父親のレベルまで『下げる』ことだった。

 そんな俺が何よりも才能を持っていたのは、数学でも物理でも絵でも音楽でもなく、意外や意外、料理である。これはもう超常的な能力としか思えず、俺を父親に作り替えるという狂気を半ば成功させかけていた母親でもどうにもできなかったほどだ。

 

 母親は俺の料理を「違う」と言い捨てたが、親せきが俺の料理を食べた後は大変な事態になった。曰く、味蕾が爆発したとかなんとかで、俺の料理以外がドブに落ちた粘土に劣るように感じられだしたとかなんとか。

 

 そんなわけで、うっかり俺が本気で作った料理を食べようものなら、冗談抜きでそいつの人生が変わりかねないのだ。

 

「それで、そちらの料理は大丈夫なのですか?」

「ああ、たぶん……なるべく不味く作ったから。本当に大丈夫かはわかんないけど。だからひよりは食べない方がいいかな」

 

 俺の親せきが大変なことになった俺の料理だが、だからと言って人によって程度があるだろう。とりわけその親せきの舌に合っていただけかもしれないわけだし。

 けれど、簡単にヒトで実験するわけにはいかない。さすがの俺にも良識はある。

 

 もちろん、こっそり他クラスに食わせて皆殺しルートとか、ひよりに盛って一生俺のそばから離れなくさせるルートとか考えたことがないといえばウソになる。が、俺にも美学のような物があって、そういうことはしないと決めたのだ。

 

「ですが、それほどまでに美味しい料理というものは気になってしまいますね」

「あはは、食べたら結婚するほかなくなるよ」

「ふむ…………」

「…………え? あ、そうだひより、良かったらパーティー会場まで一緒に行こうよ」

 

 え、なんでそこで考え込むの。別に結婚してもいいってこと?

 だなんてパニックになりそうになった俺は、そこでヘタレて無理矢理話を変えた。

 

 

 ☆

 

 

「……ちっ、来いって言ったら来ねぇと思ったんだがな」

「え?」

「で? お前は大事そうに何抱えてやがる」

「あ、龍園に俺の手料理を食べさせてあげようと思って」

 

 

 パーティー会場で、王様気取りにシャンパングラスを傾けていた龍園に声をかけると、まさか俺の被害妄想がもうそうでなかったことが判明した。もう何も信じられない。

 が、せっかく料理を持ってきたからには食べてもらいたいので、『ウナギのゼリー寄せ』を入れていた容器を差し出す。

 

 と、困惑の表情を浮かべた龍園は、心の底から訳の分からないものを見るような目で俺のことを見た。

 

「おいなんだその見た目。生ごみの間違いだろ」

「いや、美味しいよ。たぶん。ほら、ビビってんじゃないよ」

 

 無理やり押し付けて、そばに置いてあったシャンパングラスを一つ取る。

 せっかくのパーティーなので、この機会に鬱陶しいと思われない程度にクラスメイト達に絡んで、俺に対する悪印象をある程度払拭しておきたい。

 

 

 

 

 

 

 後日、学食のメニューにウナギのゼリー寄せを追加するよう多数の要望があり、Cクラスはカウンセリングアンケートが実施された。




 もともと龍園の誕生日を祝う話とか更新したら面白いかなと思い、主人公とひよりが龍園の誕生日に『ウナギのゼリー寄せ』をプレゼントする話を書いていたのですが、いろいろあって没になった名残。

1000人お気に入り記念になんかやりたいんですが、そういうの今までにやったことないので、何がいいかアンケート取ります。

  • 1000文字ジャストの話
  • ひよりの良いところ1000個あげる話
  • 西暦1000年のIFとかいう謎小説
  • 1000年未来設定の謎小説
  • ひよりと1000㎞ウォーキングする謎小説
  • ひよりと千手観音像を彫る謎小説
  • もう兎にも角にも謎小説
  • 七夕特別編(遅刻確定)
  • デートする普通の話
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