先ほどの章で、私はウマ娘は人為的に作られた種であるとの主張を行った。
ではなぜ彼女らは作られたのか、今度はその部分に焦点を当てて考えてゆこう。
注目すべきは、彼女らが作られた時期である。
先述の通り、古代文明の衰退とウマ娘の発生はほぼ時を同じくして起こっている。
そして古代文明は急速に衰退し、歴史の中へ埋もれていった。
文明の衰退の原因は主に、他国からの侵略、戦争、食料、環境の変化である。
地層から出土する花粉の研究により、この時代は地球の気温が急激に上昇したことが示されている。
併せて当時世界で生産されていたイネやコムギの花粉量も激減しており、この時代は世界的な環境変化と食糧難が同時に発生したようだ。
そのような環境下でウマ娘を作り出す必要性とは何であろう。
この古代文明は発掘される道具や遺跡から、少なくとも現代の我々以上の文明を持っていたと考えられている。
平和な時代ならば、スポーツ興行やエンターテインメントのために新人類を誕生させるようという試みがあっても不思議ではないだろう。
しかし実際は環境変化と食糧難の時代であり、そのような遊興に科学的リソースを振り分ける余裕はなかったのではないだろうか。
さらに、この古代文明は急激に縮小し、歴史から消え、人類の文化史も一気に衰退しているのだ。
後続の文明もあるが遥かに規模が小さく各地域ごとにばらつきがあり、そこから発掘される道具は非常に原始的なものになっている。
ここまでの急激な変化が起きた中でウマ娘が作られたとなれば、理由は一つ。
戦争である。
ウマ娘が生物兵器であるとすれば、疑問点はその性能である。
彼女らは桁違いの出力を持つが、サイズはあくまで人間と同等であり、銃で撃たれれば死ぬ。
情報処理をするのならば目や腕を増やしたほうが効率的だが、彼女らはあくまで人間と同じ見た目を踏襲したのだ。
これはつまり、彼女らがヒトが行える行動の上位行動を行うための存在であった証拠である。
これが単純に人対人での戦いを行う弓矢や剣の文明レベルであったならば、純粋な強さで勝る彼女らの性能は脅威であっただろう。
しかしウマ娘を作った文明は少なくとも今の我々を遥かに超える技術水準であり、個人の能力が必要になる戦場があったとは考えにくい。
さらにこの時代の遺跡の破壊具合は凄まじく、地下100メートルに埋まっているような施設さえ破壊されたような跡がある。
この時代の戦争は恐らく、大量破壊兵器が主役であったのだろう。
ウマ娘だけの軍隊があれば精強ではあっただろうが、大量破壊兵器には勝てるものではない。
そのような状況で個人の能力が必要とされる場所といえば、暗殺、もしくは艦に乗り移っての移乗攻撃等であろう。
では戦争の相手とは誰か。
以前述べた通り、ウマ娘は発生初期からごく少数とはいえ世界各地で化石が見つかっている。
これほどの技術ならば普通は秘匿されるものであり、一部の地域のみで化石が発見されるか、もしくは内々に処分されるのが自然であろう。
にもかかわらず世界中でウマ娘の化石が見つかるということは、ウマ娘の技術が一か所に秘匿されたものではなく、全世界で共有されたものであるという見方のほうが自然である。
これほどの技術を秘匿せずに世界で共有する事態であれば、地上の国家同士の戦争というよりは、もっと大規模な戦争、例えば地球と地球外に住んでいる者達の戦争ではないだろうか。
現在では我々は地球上にのみ住んでいるが、もしかしたら我々の先祖が宇宙や月、火星に住み、地球の人類文明と戦争を起こしたのかもしれない。
ひょっとしたら地球外生命体と戦ったのかもしれない。
しかし残念ながら、現在の我々の文明レベルは宇宙探査を行う段階まで届いておらず、過去どのような戦争が起きたのかを知る術はない。
いずれにせよ、彼女らは戦い、そして死んでいったのだろう。
しかし化石が見つかるということは、少なくとも彼女らは非道な扱いを受けてはいなかったようである。
もし彼女らが完全な兵器としてだけの扱いならば死ねばそのまま処分されていたであろう。
確かに最初期と思われるウマ娘は簡素な埋葬であり副葬品なども見つかっていないが、少し時代が下ると当時使っていた道具と思われるものや恐らく服と思われるものの破片、お供え物の花の花粉の痕跡等が見つかっている。
この戦争がいつ終わったのか具体的な時間はいまだ不明だが、彼女らがヒトと暮らし始めるのにさほど時間はかからず、自然と溶け込んでいったようだ。