戦争のために作られたウマ娘だが、先ほども述べた通り、彼女らのスペックはヒトと同サイズにしてヒトを遥かに凌駕している。
我々より遥かに進んだ古代文明ならば、彼女たちの生産、管理もさしたる問題ではなかったであろう。
しかし地球全土を巻き込んだ大戦争はその文明レベルを著しく低下させていった。
兵器というものは高度になればなるほど生産と管理にリソースを割かねばならず、兵器としてのウマ娘も同じような状況に陥ったことは想像に難くない。
そこで「なぜウマ『娘』でなければなかったのか」という点について考えてみよう。
現在見つかっている化石は「ウマ娘」のみであり、「ウマ青年」のものはない。
兵器としては女性ベースのものより容量に余裕のある男性ベースのほうが優れているにもかかわらず、である。
では兵器が「娘」であるメリットとは何であろうか。
私はこの理由を「ウマ娘の生産管理のため」と考えている。
1からヒトを改造してウマ娘にするよりも、最初から「ウマ娘」を生産したほうが、初期の時間はかかるが結果的な生産効率は上昇する。
現代ではウマ娘もヒトと同じく母体に40週入っており、体が成熟するまでの期間はヒトと変わりない。
しかし状態が良好な古代のウマ娘の骨を調査した結果、現在よりも肉体が成熟する期間が圧倒的に短いことが確認されている。
サンプル数が少ないので断言はできないが、初期のウマ娘は4~5年で肉体が成熟していたようだ。
時代が下がり、ヒトとの混血が進むにつれてウマ娘の成長度合いはベースとなったヒトと同じ長さになっていったことも資料により確認できる。
そして成長が早いのならば、母体にいる時間すらも今よりずっと短かった可能性もある。
しかしウマ息子がヒトの女性と交わってウマ娘を作れば更に効率がよいのではと言いたくなるだろう。
実際ウマ娘は妊娠すればヒトと同じように安静にせねばならず、ウマ息子ならば妊娠することなく常に戦い続けられるのだから、効率の面で言えば比べようもない。
それでもウマ娘が選ばれた理由は、恐らく胎児の性能に古代のヒトの母体が耐えられなかったのだろう。
ウマ娘はその身体性能ゆえ、ヒトとは比べ物にならない量の栄養が必要になる。
母体がウマ娘ならば耐えられるだろうが、ヒトの母体では胎児を満足に成長させるだけの栄養摂取に母親の肉体が耐えられなかったのであろう。
つまり、初期のウマ娘はウマ娘からしか生まれなかったのだ。
現在ではヒトとウマ娘の混血が進み、ヒトでもウマ娘の胎児の妊娠が可能となっている。
ウマ娘が誕生する5万年前より昔の人類のDNAと現在のヒトのDNAを比べるとかなりの部分で変異しており、現在のヒトは古代人とは別系統の人類といってもいいほど遺伝子構成が異なっている。
我々ヒトの中にはウマ娘の遺伝子が5万年かけて完全に融合しており、ヒト同士の子でもウマ娘が産まれるのはこのためなのだ。
ではウマ娘という兵器の「管理」について考えてみよう。
ウマ娘は「女性」であり、「兵器」である。
兵器である以上は勝手な恋愛など許されるわけはないし、妊娠出産もすべてが管理されたものになっていたはずだ。
当然自分が好きな相手の子供を産むなど許されるわけはない。
機械的に管理された初期のウマ娘が最も強く、時代と共にその性能は低下していったと考えていた。
ところが最近の研究で実はこの推測と逆の結果が出てきているのである。
ウマ娘の化石を年代別に骨密度測定した記録があるが、初期のウマ娘よりも文明崩壊後のウマ娘のほうが骨密度や成長状態が良好なのだ。
文明レベルが明確に低下しているにもかかわらず、基本性能の元となる骨格の強度が上がっていたのた。
そして現代に至るまで、ウマ娘の骨格強度は低下することなく一定レベルが維持されている。
戦争が終わったあと、ウマ娘達は戦いから解放されヒトと共に生きた。
その世界ではウマ娘も好きな相手を選ぶことができたはずである。
つまり、機械的な管理よりも好きな相手に面倒を見てもらうほうが成長に良好な結果が得られるのだ。
恐らく戦争中でもこの傾向はあったのだろう。
整備員や研究員でも、特定のヒトが相手だと基本性能が上がったりしたのではないだろうか。
そして相性の良いパートナーを付けることで、ウマ娘の性能を最大限に発揮させる。
私はこれがトレーナーという存在の始まりではないかと考える。