裏ボスの裏ボスによる裏ボスのための戦いっ!~裏ボス黒猫がただ無双していく物語~   作:霧夢龍人

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勇者達の決心と動向

ワタシは猫である。名は既にない。

 

幾万から幾億の眠りから覚め、漸く現世に復活出来たのだ。まぁ、復活したのも今から3ヶ月程前の事だがな。

 

本当であればもっと眠り、あと数千年は目覚めないつもりではあったのだが、ワタシに課せられた勤勉の制約がそれを許さなかった。

 

ワタシが所有する怠惰と対をなす勤勉だが、古の神が全力で籠めたためか、いささか強すぎる気がする……まぁ、これも贖罪のために与えられた機会と考えれば悪くない──いや、やはり悪い……ま、まぁこれ以上考えても意味はないだろう。

 

復活したワタシは、()()()()近くにあった魔王

城を根城としながら、各地を転々と歩き回っている。

 

今日は魔王城の城下町である、“イルーレ”という都市に足を運んでいる。

 

肉球から感じる大地の感触が、目覚めを何度も意識させてくれるのだ。

 

と、程なくして、酒場らしき場所を通り掛かると、何やら中が騒がしい。気になり、全力で聞き耳をたててみると、どうやらこの魔族が蔓延る国の王である、魔王について話しているようだ。

「今日、魔王様御一人で勇者を迎え撃つらしいぞ」

 

「……流石魔王様だ。勇者一行を相手に一人で対抗するとは……勇敢な御方だな」

 

「やはり我ら魔族をまとめ挙げるのはあの御方しかおるまいて。だからこそ、亡くすのは惜しい」

 

口々に持て囃す、所謂平民と呼ばれる魔族達。魔族とは、竜や龍、天使などの天災を除けば、頂点に君臨するであろう身体能力と、魔法能力を持っている。

 

魔王とはその名の通り、この頂点種族達(魔族)を統べる王という意味で使われている。

 

「なぁ知ってるか?今日、魔王様御一人であの勇者達を迎え撃つらしいぞ」

 

「……なに?ふむ、流石は我らが魔王様だな。勇者一行を相手に一人で対抗するとは……本当に勇敢な御方だ」

 

「あぁ、やはり我ら魔族をまとめ挙げるのはあの御方しかおるまいて。しかしだからこそ、亡くすのは惜しい……」

 

口々に持て囃す、所謂平民と呼ばれる身分の魔族達。魔族とは、竜や龍、天使などの天災を除けば、頂点に君臨するであろう身体能力と、魔法能力を持っている。

 

魔王とはその名の通り、この頂点種族達(魔族)を統べる王という意味で使われている。

 

魔王ということだけあって、並みの魔族と比べて更に凄まじい強さを誇っている。強さだけなら、高位存在と並ぶ程なのだ。

 

対する勇者というのは、大雑把な情報しか出回っていないため、詳しくは分からないが、曰く異世界から来訪した、魔王に負けず劣らずの実力を持った者達らしい。

 

魔王と並ぶ実力を持つ人間(?)が跋扈する世界というのは、恐ろしいに違いないと思うが、そんな世界に属する勇者達に一人で挑む魔王は流石と褒め称えるべきだろう。

 

そんな結論に思い至り、町を徘徊する猫の如く優雅な動作で歩き回っていく───のだが。

 

「あっー!黒猫ちゃんがいるっー!!」

 

思わずビクッ、と体を竦めてしまうワタシ。ワタシは何も盗んでないぞ!?と、明らかに関係ないであろう考えが思い浮かぶ程度には、混乱してしまっていたようだ。

 

騒がしい酒場の雰囲気にあっているようであっていない少女の声が、脳内に……いや、酒場に木霊する。

 

なんだ?と恐る恐る酒場の戸口に近づくと、中から特異な格好をした五人組が現れた。

 

「しっ!おい、目的を忘れたのか!?俺たちは魔族の国の下見中……もしバレたら、一網打尽の目に会うんだぞ!?」

 

「ま、まぁまぁ、声だけで勇者だとバレる訳ないんですから、そう神経質にならなくても……」

 

ワタシに声をかけたであろう人物に顔を向けると、明らかにも不審人物だと主張しているかのような黒のフードに、姿眩ましの術をかけていた。

 

ふむ、全部聞こえているぞ……?

 

会話の内容から察するに、恐らくこの五人が異世界から召喚されたと噂の勇者なのだろう。

 

ワタシを驚かせた猛者である少女と、それを咎めた青年と宥めた少女。後は、喋る様子がない少女と、おろおろして動けていない青年が一人……か。

 

なかなか奇怪なパーティーだな。こんなチームで纏まるのか不安ではあるが、だが逆に言えば、個々の足りないものを補えるパーティーであるとも言える。

 

足りないモノ……弱点がない

 

それになにより、見た目に削ぐわぬ程の高い戦闘力が、魔力を伝ってひしひしと感じ取れるのだ。

……これは不味いな。

この戦闘力の高さを相手に魔王は何分もつか……しかし、だからと言って見捨てるわけにはいかない。

 

魔王(彼女)に死なれては困るのだ。

 

(ふむ、先回りしておくか)

 

「し、しょうがないじゃん!だって猫だよ?黒猫さんだよ?興奮しない方がおかしいって!」

 

猫好き勇者(?)が弁明するかのように、腕をあたふたと動かしてはいるが、全く弁明になっていない。

 

「……はぁ、まぁいい。確かにこの世界で黒猫なんて見たことないからな。猫好き……猫大好きの勇者のお前が興奮しないなんてあり得ないか……」

 

「え、えぇ…諦めちゃってるじゃん……」

 

……だから全部聞こえているぞ、勇者達よ。しかも、猫好き(?)らしい勇者がこちらを凝視しているせいで、動こうにも動けんのだが。

 

「黒猫……黒猫?ふぅむ、おかしいですねぇ」

 

猫好き勇者(?)に続き、ワタシに熱い眼差しを送っていたおろおろとしていた少年が、まるで不可解なものを見たように此方をギッと睨む。

 

「え、何が?」

 

「いえ、今先ほど其方の黒猫を鑑定したのですがerrorという表記が出まして……スキルの故障でしょうか?」

 

「……え!?う、うそ!?見間違いじゃなくて!?」

 

「……あ、ありえ……ねぇ……です……」

猫好き勇者と無口少女勇者が驚き固まっている。だが、お怒り少年勇者と宥め少女勇者は、何か思い当たる点があるのか、思案顔で考え込んでいる。

 

鑑定に………スキル……?何かの特殊技能ということか?

 

いや、もしかすればスキルというのは、贈与(ギフト)のようなものではないだろうか。

 

まぁ、詳しい事は()()分かるだろう。

ワタシはそろそろ大人しく、退散させて貰うとしよう。

 

注意がワタシから逸れている内にな。

 

avaritia(強欲)の禁忌)

 

それこそ途方もない年月だったが、永い時のなかでスキルの制約効果も薄れてきた。

 

だから予定より早く起きる事になったのだ。そのため、()使()()()()()は七つ……まぁ、弱っているとは言え、神の制約は強力なため、全力は出せないのだが。

 

そこは腐っても禁忌の力。弱っていても関係ない。

 

(“願いを叶えよ(ヴェネランタド・リヴィーティム)”)

 

強欲の禁忌の権能は、自らが望む物事の事象を改変、思いどおりに出来る・・・という、強力無比な能力なのだが、制約に縛られているせいで、ほとんど事象を改変させる事が出来ない。

 

が、しかしだ。

強欲の権能は事象の改変・・・ならば、ワタシがこの場所ではなく、魔王城にいるという事象を()()()()()とどうなるか。

 

答えは転移の代わりとなる、というものに行き着く。まぁ、説明は程ほどにしておくとしよう。

 

(さて、そろそろお暇させてもらおう・・・()()()()()、勇者達よ)

 

そう思うと同時に、ワタシの存在は人(?)溢れる城下町から掻き消えたのだった。

 

───

──

 

「………っておい!黒猫がいつの間にかいなくなってんぞ!?」

 

周りの、訝しむような視線をよそに声をあげるのは、パーティーリーダーである太刀使いの青年、“荒川(あらかわ) (まこと)”だ。

 

地球という別世界から召喚された心身ともに強き青年で、人間側からの評価はかなり高く、刀術と呼ばれる当代剣聖の技術の集大成と言われるものを、僅か数日でモノにし、飛ぶ斬撃や次元を切り裂く斬撃、その他数十の独自の技術を編みだし、魔物はそれになす術もなく斬り捨てられる。

また、勇者を統括するリーダーという部分もあってか、世の女性達からのラブコールは数知れず──ある一国の皇太子が、姫を巡って荒川 誠と決闘した──という話は記憶に新しい。

 

「え!?嘘!?あの一瞬の内に!?」

 

と驚くのは、猫好きで有名である女勇者の“沢白(さわじろ) 鳳華(ほうか)”である。主に打撃を主軸としており、攻撃力という面では荒川 誠以上と謳われる程で、キマイラ(A級討伐モンスター)(顔面がライオン故、実質猫)や、その他の猫系モンスターを拳1つで沈めペットにしたという逸話は数知れない。

また、ショートヘアーで容姿端麗のほんわかとした雰囲気に騙されて、彼女にノコノコと着いていった者は、見た目にそぐわない怪力と戦闘力に驚き、恋の感情を一瞬で散らされるという………。

 

「む、僕も調べてみたけど、魔力の痕跡っぽいものは見つからないや……宗田は?」

 

そして次に、魔法を修めたと言われる、魔法帽を被った女勇者“川嶺(かわみね)菜津 (なつ)”は、本来剣技や武術を主体としている勇者とは違い、桁違いの魔力と賢者と見まごう程の精密な魔力操作で、幾十、幾百もの魔物を灰塵に帰すその威力は絶大である。

一人称からも分かる通り、所謂僕っ娘と呼ばれる人種だが、その容姿も相まってか人気が高い。因みにショートヘアーである。

 

「………駄目ですね。足跡も見つかりませんし、何よりあの一瞬で居なくなる猫ですので、何らかの技術を使っている可能性があります」

 

四人目の気弱な勇者、“菅原(すがわら) 宗田(そうた)”は、攻撃全振り勇者達のサポート役である。灰魔道士という役職を持つ彼は、白魔道士の味方にバフを掛けるという効果と、敵にデバフを掛けるという両方の効果を併せ持つ。

本来相容れない筈の魔道だが、それを為し得るのが異世界からの勇者というモノだ。

キテレツな勇者パーティーの中で、唯一の常識人枠?と言われているため、男女問わず勇者パーティーの中でも一番慕われている。

 

「……おか……しい……」

 

最後の五人目の勇者は、“玉城(たまき) 佳南(かなみ)”と呼ばれる女性で、黄統龍(おうとうりゅう)剣術を龍から学び、その身に宿している。リーダーの荒川と比べて、龍独特の叩き割るような剣戟や荒々しさが目立つ剣術であるため、良く荒川 誠とどちらが強いか議題に上がるらしい。また、本人は喋るのがあまり得意ではないためか、パーティーメンバー以外とはなかなか話さない事で知られている。

また、深窓の令嬢のような雰囲気と、光を反射する輝かしいロングヘアー。そして母性や父性を擽られる仕草で、ファンクラブが出来つつあるとか………。

 

以上のこの五人が異世界から召喚されてきた勇者達であり、その年齢と身にそぐわない程の技術と力を内包した強者だ。

 

「……魔族の中でも位が低い奴らしか居ないからって油断してたぜ。ここは魔王が支配する魔族領の城下町なんだもんな、寧ろ、こんな事で驚いててもしょうがないって割りきった方が良いと思うぞ」

 

「そうだね。僕も少し油断してたかもしれない……」

 

「えぇ、一々びくびくしていても仕方ありませんしね」

 

同意を求める誠に、他のパーティーメンバーもそれぞれ反省点をあげ、同意する。

 

纏まっていないように見えて、纏まっているのがこのパーティーなのだ。それは一重に、誠のリーダーシップと判断力、指示力の高さから成るものであり、いかに誠が優れたリーダーなのかが窺えるだろう。

 

「……もう少し……情報……集める?……」

 

と、遠慮がちに意見を述べるのは佳南。

 

今回の勇者パーティーの目的は、魔王が統括する町の下調べと、魔族達の強さの確認。

そして、魔王と同じく人類の脅威となり得る存在の有無の捜索だ。

 

そのためにわざわざ変装までして敵地に赴いたのである。

 

「いや、魔族……あぁ、爵位無しの平民達のレベルは大体把握したからな。もう良いだろう……問題なのはあの猫のように鑑定を弾くような奴もいる可能性があるって事だな」

 

「僕もそう思うよ。鑑定が弾かれるとなると、実際に戦ってみないとわからないからね。だからこそ、自分と相手のレベルを測るものさしが通用しないとなると、優位を保てなくなるしね」

 

「……だがまぁ、勝てないっていう訳じゃねぇしな。とはいえ、魔王ですら初対面の時に何度か鑑定出来たのに、あの黒猫を鑑定出来ないの些か不気味だけどな」

 

とは言いつつも、どこか不安そうな顔をする誠。苦楽を短い期間とはいえ共有してきた味方達を危険に晒す真似は、出来るだけ取りたくないのだろう。

 

「……本当に……今日……戦うの?……」

 

「えぇ、魔王自ら倒しに来いと言っていましたからね。それに他の魔族達で私達を集中砲火してくるような卑劣漢ではないことは、既にステータスからもわかっています………つまり、今日ここで決着をつけるべきなんです」

 

魔王という役職は、基本的に嘘をつくことが出来ない。魔族達の王という立場のため、嘘を付き、他人を欺く事を良しとされないのだ。

 

魔族という誇りが高い──いや、高すぎる種族ゆえの欠点といえるだろう。

 

「おいおい、そう焦るなって。まぁ、気持ちはわからんでもないが……」

 

「あ、焦ってなどいません!しかし、こうしている間にも、魔族の脅威が広がっていると思うと………」

 

「……確かに……その通り……」

 

「はぁ、本当に二人ともせっかちなんだから。たまには僕を見習って欲しいよ……ま、調査という名の観光──じ、冗談だよ!そんな目向けないで?……は取り敢えず終わったから………」

 

観光と言った途端にギロリと他の四人に睨まれ、即座に訂正する奈津。

後は頼んだと、救いを求めるような眼差しで鳳華を見つめる。

 

「もう、しょうがないなぁ。まぁ、戦闘の準備は完了してるから、このまま魔王城に直行しても良いと私は思うよ?とはいえ、一応奇襲みたいな搦め手の警戒を怠らない程度には、集中力を切らさなければ殺れる(いける)と思うよ?」

 

奈津から頼られて、案外満更でもなさそうな面持ちで、案を提示していく鳳華。

即座に考えを纏めあげ、他の面々が納得するような案を分かりやすく簡潔に説明出来る彼女も、実はリーダーの誠と同様に指示力があるのかもしれない。

 

「あぁ、俺も戦闘の準備は整えてある。他の皆もそうだろ?」

 

「「 ええ!(はい)」」

 

勿論、準備と言っても伊達ではない。

 

魔族は聖なる遺物や魔法に弱く、聖水や浄化魔法、聖魔法が弱点であるとされている。

アイテムボックスという、無限に等しい空間が広がる場所にしまっているため、全く準備をしていないように見え敵の油断を誘えてしまう。

 

見た目や雰囲気に騙されてはいけない。勇者パーティーは侮れないのだ。

 

「よし!やる気も充分みてぇだし、そろそろ魔王城目指して出発するぞ!」

 

掛け声に返す声はない。返答の代わりに大きく頷き、各々何も入ってないように見えるアイテムボックス(荷物)を持ち、歩む。

 

 

「………鑑定が通じねぇか……そういえばあの龍皇にも効かなかったな………」

 

 

───だからなのか、誠が呟いたその一言に反応するものは居なかった。

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