もはや、おっぱい連呼して夜翰さんを困らせたいだけでは?と思われる作者の挙動←
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右手の薬指に、アイリと彼女の指輪。
左手の中指も、前に使っていたアイリとの指輪で、左手の薬指は結婚指輪。
今その両手に、ボクが誕生日にメロに贈った、ルビーのピンキーリングはない。
サイズは計って買ったつもりだったんだけど、もともと細かった上に指輪痩せしたメロの小指から、お風呂の度に滑って抜け落ちるほど緩かった、指輪の紛失事件がついに先日起こってしまったからだ。
右手の小指なら抜けないらしいんだけど、利き手の隣り合った指同士にしていると、かなり指輪同士がかち合ってしまう。
かといって、ボクの指輪は小さ過ぎて他には嵌められないし、アイリとの指輪を外す気もないらしいメロは、パーカーを脱いだ瞬間に脱いだ服ごとボクの指輪を失くしたその日から、半泣きになって折衷案を用意した。
曰く、革紐に付けて、ネックレスみたいに首からぶら下げておくんだとか。
「チェーンでもいいんだけど、切れちゃった時が怖いし。お風呂は一緒に入れなくなっちゃったけど、これでもずっと一緒にいられるからね」
「なるほどね」
「分かってる!? 指輪としての用途じゃなくなったからって、別に気持ちがなくなったとかそういうわけじゃ全然ないんだからね!?」
「わかってるよ、うるさいなぁ」
それ、ボクの台詞だろうに、そっちから言う?
正直ボクは、モノとしてのそれがなくなったところで気持ちは変わらないから、たとえ失くした指輪が出て来なくても最初からメロを慰めるつもりでいたけれど、そこまで大事にしてもらえるっていうんなら、まあ?嬉しくないことはないよね。
早く革紐買いに行きたいって言ってたけど、結局アイリと昔使っていた奴が見つかって、暫定的にそれに落ち着いたらしい。
秋空の晴れ渡る空の下、気持ちよさそうに空気を浴びて散歩するメロが、ちょっと照れたように言った。
「でも、こうやって付けてると、常に一緒にいるって感じがするっていうか、時々ここでヨハネさんがこそこそって動くから、なんかそわそわしちゃうね」
ふふ、と恥ずかしそうに胸元を抑える仕草が、可愛いけど何となく気になって、ふとボクは問い掛けていた。
「……ん? ちょっと待って。あんたその指輪どこにしまってるの?」
「どこって……おっぱいの隙間だけど?」
「ぶふっ」
それ、公道で言っていいことじゃない。
爆弾すぎる発言に噴き出してから、思わず声が裏返った。
「おっ………………!!! ばっ…………!
ば、ば、バカじゃないの!?!?!? 変態!!!!!」
「いや、自分も一応おっぱいあるくせに動揺し過ぎで草」
「ボクのはっっっ! アバターだからっ!!! あんたみたいにちゃんと、そういうのとは、違くて……っ!」
熱くなった顔で必死で言い返すと、小さく肩をすくめたメロは、楽しそうに頬を緩めて胸を張る。
「よくあるでしょ! 格好良い女性キャラが、一番大事な物を胸の谷間に挟んで隠してるやつ。あれ憧れてて、一度やってみたかったんだ。
まぁ、私は谷間ないから、挟むっていうより隙間にすとんて落ちてるだけだけど」
「いや、アニメとか漫画の世界だけでしょ、そんなん……」
「でも、あんまり素肌に触れるとジュエリー的に良くないかな? 内側って結構汗かくし、胸の隙間は汗の滴伝っちゃうし……」
「知らないよそんなん!!! てかこんなところで見るな!!!」
自分の襟ぐりを覗き込もうとするあんたの手を引っ剥がさして、慌ててそっぽを向く。
生々しいから、ほんとやめて欲しい。ボクじゃなくて、ボクの宿った指輪の話だって思っても……体が熱い。今が秋だとは、思えないぐらい。
「でも、大丈夫だよね? 指輪の時も24時間肌に触れてたんだし」
「せめて! せめてシャツの上にするとかさ! 洋服の外側でさえなきゃ、なくさないだろ!?」
「やーだー。だって、くっついてた方が、体温まで伝わってくみたいでなんか嬉しいんだもん。金属だから、触ったら仄かに温かいっていうか……」
「うわああああああ!!! だからやめろって!」
羞恥で叫びを上げるボクに追い掛けられながら、笑ってメロが階段を駆け上がる。この間まで家で洗濯物干すのもやっと、って感じだったのに、もうすっかり身内限定のお転婆を取り戻して。
家に入って、ちび達にただいまーと声を掛けながら、手洗いとうがいを済ませて帰ってきたメロは、暑そうにパーカーを脱いでから、おもむろにボクの方に詰め寄ってきた。
「じゃあ、そんなに嫌なら、ヨハネさんが無理矢理ここに手ぇ突っ込んで奪ってみる?」
「……、えっ」
虚を突かれたボクを、立ったまま上目遣いで見上げているメロ。
薄いTシャツ一枚を隔てて押し付けられた胸元が微かに緩んで、鎖骨の遥か下に、ふっくらした膨らみと隙間が見えた。
控えめでほにょんとしたそこの柔らかさを、とうに知っているボクとしては、恥ずかしがる所以もないハズなんだけど。なんでこんなに、未だに慣れずにどきどきして、急に触れるのが躊躇われて、目を逸らしてしまうんだろう。
降参の意図を込めて押し黙っていたら、ぷはっ、と笑ったメロは、幸せそうに両手でボクの手を包み込んだ。
「ふふっ。鯨さんだったら、色気もへったくれもなしに、普通に指突っ込んで遊んでるところだよ。
やさしいね、ヨハネさんは」
「……! だ、だから、そんなんじゃ」
今度は普通にハグをしながら、そう言ってきたあんたの体を受け止めた。
単に恥ずかしくて動けなかっただけで、あんたの気持ちを考えたとか、そういうわけじゃなかったのに。
メロは、革紐の先に結んだ苺色をした宝石の指輪に、ちゅっと唇を落とすと、大事そうにまたそれをシャツの内側にしまって、台所に駆けて行った。
「ねぇ、この指輪がここにあったら、私がどのくらいドキドキしてるのかも、全部ヨハネさんに伝わっちゃうのかな。なんか恥ずかしいよ」
「バカ言ってんじゃないよ。そのくらいで丁度いいでしょ。ボクだけに恥ずい思いさせて逃げようなんて、そうはいかないからね」
「ええ〜!?」
もう、知らない。
ボクをこれだけ困らせるあんたの事は、心臓の音一つだって、知り尽くさなきゃ気が済まない。
なんでそんな怒ってるの、と棗と生姜のあったあいお茶を淹れながら、水筒を手に慌てて振り返るあんたを軽く睨んでから、ボクは耐え切れずに笑い声を上げた。