戦闘員さんは転職するようです   作:火影みみみ

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ようやく終わったーーー!!
これを1話でまとめようとしてたの誰よ? 私だよ


星辰戦隊スターセイバー 第22話 大罪騎士アンチフェネクス  後編

「やったの?」

 

 スターホワイトがそう呟く。

 スターレッドの最強の必殺技“レッド・ノヴァ・レオ”は確かにあの怪人を貫いた。

 あれは星辰戦隊の誰もが認める最高の一撃だった。あれを喰らって無事でいられるわけがない。そう願っていた。

 

(おかしい)

 

 ただ一人、スターレッドを除いて。

 

(あの時、確かにアイツは()()()()()()()()()()。何故そんなことを?)

 

 遠くから見守っていた彼らや、アンチフェネクスの背後にいた美波は気づくことが出来なかったが、スターレッドは確かに見た。

 アンチフェネクスが何かを呟いたその瞬間に、自らアンチクロスを握る手を緩めたのを。

 そのお陰で彼の必殺技を命中させることができ、アンチフェネクスは今あの爆発に飲まれることになった。

 だが、何故そのようなことをしたのか彼には理解できなかった。

 

「?」

 

 そういえばあの剣は何処だ、とスターレッドは視線を上げる。

 彼が弾き飛ばしたアンチクロスはくるくると回転しながら宙を舞っていた。

 それは一定の高さに達すると、重力に従いゆっくりと落下し始める。

 徐々に加速をつけ、アンチクロスは爆心地へと落下する。

 アンチクロスが煙の中へと姿を消そうとした、その時だった。

 

「いったぁ~。今のはマジで効いた」

 

 そんな、緊張感の欠片もない声が響いたかと思うと煙の中から伸びた腕がアンチクロスを掴んだ。

 その腕がアンチクロスを振るうと、衝撃で煙は霧散した。

 中から現れたのはやや装甲が破損しているものの、未だに疲労の影も見せないアンチフェネクスであった。

 

「馬鹿な!?」

「レッドの必殺技を喰らって無事だと!?」

「なんなのあいつ!?」

 

 シルバー、ゴールド、ブルーは目の前の事実を受け止めきれないでいた。

 確実に隙をつき最高の一撃を与えた。この状況で出せる最大限の攻撃だった。

 だがそれでもなお、この怪物には及ばない。

 そもそも大罪を得た大罪騎士は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 数の差で押してはいるものの、そもそも地力が違いすぎるのだ。

 

「全く……いつまでかかってるのか知らないけど、これ以上はちょっと死ぬかもしれないし。最後の手段、使おっか」

 

 そう言って取り出したのは、二つの結晶体。

 憂鬱の鳳凰と怠惰の牡牛である。

 

「こんなことなら最初から使えばよかったかな。結果的に長引いて面倒なことになってるし、本当世の中思い通りにはならないよね」

 

 そう言って、変身を解除しようとしたその時だった。

 

『待ちたまえ、アンチフェネクス君』

 

 年端もいかないような女性の声が一帯に響いた。

 

「大総統閣下!」

 

 声を認識したその瞬間に、彼女は片膝をつき首を垂れる。

 彼女が従順な臣下の構えを見せたそのすぐ前方、空間歪みが生まれる。

 半径1メートルほどの円形の空間がまるで渦のように歪み出すと、中央に別の風景が映し出される。

 それは城だった。欧州に聳えるような荘厳たる城砦。

 その前に、誰かの影が見える。

 

「それはまだ君には負担が大きすぎる。たかだか囮任務に使って良いものではないよ」

 

 カツカツと硬い音を立てて、その人影はこちらへと近づいてくる。

 やがてその人影がこちら側へと足を踏み入れると、ようやくその全貌が顕になる。

 それは小柄な女性だった。

 全身に金色の鎧を纏い、美しく輝く金色の瞳と髪を持つ小さな女性。

 だが、彼女から溢れ出る気迫が、彼女を只者ではないと告げていた。

 

「宜しいのですか? 任務のことを彼らに暴露されても」

 

 アンチフェネクスは素直に自身が抱いた疑問を問いかける。

 実際に彼らを見れば彼女がただの囮だったと言うことに衝撃を受けているようだった。

 

「ああ、ついさっき涼太郎から任務失敗の報告を受けた。本来ならばもう少し前に報告をしたかったらしいが、少々アクシデントがあって通信不能に陥っていたそうだ」

「まさか、そのようなものが星辰戦隊に残っていたのですか?」

 

 てっきり全員吊り出したと思っていたのに、と自身の失敗を呪う。

 

「いや、彼を退けたのはたまたまその場にいたサイバーガールだそうだ。全く、彼も運がないね。まさかトップクラスのヒーローと遭遇するとは」

「なるほど、それは仕方ないですね」

 

 上級の上級のヒーローと遭遇したのならば、彼を責めるわけにはいかない。

 それだけ彼らトップクラスのヒーローは理不尽な存在なのだから。

 ならばアクシデントというのはおそらく通信機器の不調だろうと当たりをつける。

 彼女が放つ強烈な電撃を受けてしまえば、並大抵の機器は破壊されるのだから。

 

「それよりも、だ。私は二つ怒っていることがある。一つは君だアンチフェネクス君」

 

 ビクッと彼女の体が震える。

 

「何か、至らない点がございましたでしょうか」

 

 恐る恐る尋ねる。

 

「アンチクロスを見せてごらん」

 

 一瞬躊躇ったものの、彼女はアンチクロスを渡す。

 大総統はそれを受け取ると、すぐに刀身へと目をやった。

 

「……やはり、刀身にヒビが入っているね。あのまま受けていたら確実にアンチクロスは破壊されていただろう。だが、それはまだいい。武装が壊れるのは戦の摂理だ。けれど、君はそれを恐れて()()()()()()()()()()()()ね。下手したら致命傷を負っていたかもしれないのに」

「……仰る通りです」

 

 それは事実だった。

 彼女はあの時アンチクロスにヒビが入ったのを察し、折れるのを防ぐために、アンチクロスを庇うためにワザと手を離したのだ。

 そして彼女自身隠してはいるが、今彼女の胸部の骨が数本折れている。

 驚異的な回復能力で再生しつつあるが、一歩間違えば更に酷い怪我を負っていたかも知れないのは事実だった。

 

「あの時アンチクロスを暴走させ、爆破させていれば彼など容易に弾き飛ばすことができたはずだ。本来操作できるはずもない自身の鎧すら爆破させることができた君ならば容易いはずだ。何故だい? 武装なんてまた作ればいいだろうに……」

 

 彼女はアンチフェネクスを見つめながら問う。

 その視線には若干困惑したような感情が含まれていた。

 

「すみません。前職からの癖、と申しましょうか。つい庇ってしまうのです。体は寝れば治りますが、装備まではそうもいきませんから」

 

 それは彼女の体に染みついた悪癖ともいうべきものだった。

 幻想機関では装備は基本支給されたものを使えるのだが、破損させてしまうと自分で直さなければならないという悪しきルールが存在したのだ。

 それは下位の戦闘員如きに武装を回すのならばその分の余裕を上級の怪人へと回し、更なる戦力強化を図るというなんとも浅ましい考えによってできたものである。

 彼女もその悪習には苦しめられた。

 まず装備の仕組みを覚え、死んだ仲間から装備を拝借して、それを分解して無事な部品と取り替えたり、丸々交換するなりして日々の装備を整えていたのだ。

 その悪習故に、アンチクロスが交換のきかない一点物と判断した彼女は壊されるくらいならと自分の身を盾にしたのだ。

 

「全く、君の性格については把握したつもりだったが、まだまだ私も甘かったらしい。その社畜精神はゆっくり改善するとして、これは私が修理に出しておこう。ついでに君の戦闘について来られるよう改良させておこう。この程度で壊れるようでは後々の戦いについては来られないからね」

「ありがたき幸せにございます」

「そういうとこだよ君。もう少し気を抜きたまえ」

「…………善処します」

 

 何かいけなかっただろうか? と内心首を傾げる彼女。

 そんな彼女一旦置いておいて、大総統と呼ばれた女は星辰戦隊へと向き直る。

 

「やあ、待たせてすまないね。初めましてになるが、私は裏界十字軍の大総統を務めているクラウディア・デリットというものだ。その愚鈍な脳にしっかりと刻み込んでくれたまえ」

 

 その言葉を聞いて何より驚いたのはアンチフェネクスだった。

 あれ? 大総統ってここまで毒舌だった? と外見は平静を保ってはいるものの内心やや混乱気味だった。

 

「愚鈍とはひどい言い草ね。あんたたち怪人の方がよっぽど愚かな存在ではないかしら?」

 

 その言葉が癪に触ったのか、スタークリムゾンが声を上げる。

 

「いいや愚鈍も愚鈍、愚かしさもここまで極まったかと思えるほどにね。何しろ、よりにもよって彼女相手にそれを使ったのだからね。並大抵の精神ではないよ。ヒーローとは名ばかり、ついに落ちるところまで落ちたかと笑いと怒りが込み上げてきたよ」

 

 あ、これが二つ目ね。と小さく付け加える。

 しかしなんの事なのかアンチフェネクスにはわからない。

 

「何よ!? お父様が作り上げたこの力があなた達に何の関係があるっていうのよ!?」

「おや? 知らないのかい? 実の父親がどのような手段を用いてそんなものを作り上げたのかを。星辰族が犯した愚かしい歴史を。なるほどなるほど。だから涼しい顔をして正義を謳っていられるわけだ。訂正しよう。君は愚鈍なのではなく、無知な只の子供なのだね」

 

 そう言って哀れみを込めた視線をスタークリムゾンへ向ける。

 侮辱されたと感じた彼女がクラウディアへと突進しようとしたが、体が動かない。

 まるで自身の周囲の空気が固定されたかのように重く彼女の動きを阻む。

 

「何!? これは」

「ほう、そんな芸当もできたのかね」

 

 クラウディアが視線を下げると、そこには片腕をスタークリムゾンへと向けるアンチフェネクスの姿があった。

 

「バリアを飛ばす要領で、減退領域をあちらへと飛ばしました。しかし、これをすると自身付近の領域は解除するしかなく、また燃費も随分悪いようで、あまり使い道はなさそうです」

 

 これじゃあバリアで縛った方がマシだったかな。と内心反省点をまとめる。

 

「いや、使いようによっては一軍をも破滅させることができる強力な力だろう。恥じることはない。……長くなったが、そろそろ帰るとしよう。その為に迎えにきたのだから」

「はっ! 了解しました」

 

 歪んだ空間へ歩みを進める大総統の背後を彼女が続く。

 全然気が抜けてない彼女をやや呆れた様子で見つつ、彼女は振り返る。

 

「ではな星辰戦隊の諸君。今回のこれはほんの挨拶と思ってくれたまえ。次からは搦め手なぞ使わず、きっちりと君たちを殺しにかかるので、そのつもりでいたまえよ」

 

 空間が閉じる寸前に、彼らへそう告げる。

 それは間違いなく裏界十字軍からの宣戦布告であり、これから始まる大いなる戦いの序章と呼べるものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でね! 私最近自分の気持ちに素直になったわけなんだけど。自覚したら彼とどう向き合っていいかわからなくなっちゃって。あなたの占いで彼といい関係を続けるためのヒントみたいなのをもらえないかしら!!」

 

 星辰戦隊の基地、その一室で二人の女性が向き合っていた。

 一人はこの国の人間ならば誰もが知っている女性最強のヒーロー。サイバーガールこと光江莉香。もうすぐ三十歳。

 

「いえ、だからですね。私の神託は迫り来る災厄を知らせるものでして、そういった細々としたような事象を知ることはあまり得意ではないのですが……」

 

 もう一人は先代が死去したことにより齢十二という若さで祭壇座の戦士となった現星辰族の長、星辰(いわい)

 何故この二人が一緒にいるかと言えば、スターグリーンである牛沢から「代々星辰族の長は占いが得意」という話を聞いた江莉香が自分達の未来を占ってもらおうと牛沢とのデートの前に急いで飛んできたのだ。

 幸いにも星辰戦隊の基地の職員とは既知の間柄で、急ぎの用事があるというと難なく入ることができた。それでいいのか星辰戦隊。

 

「お願い!! 私の未来がかかってるの!!」

「……仕方ないですねぇ」

 

 この通りと深く頭を下げて懇願する彼女に根負けした祝はゴソゴソと懐から祭壇の形をした結晶体を取り出した。

 

「あれ? それって怜司たちが使う変身アイテムよね。それを何に使うの?」

「ほとんどの戦士はそう使いますが、神託を賜るときはできる限り集中しないといけないので、この結晶体の力を借りるのです」

 

 そう言うと祝は結晶体を握りしめ、瞳を閉じて集中し始める。

 すると、彼女の体がわずかながら発光し始めたではないか。

 逸る鼓動を抑え、両手を組んで悪い結果が出ませんようにと必死に祈る江莉香。

 突如、祝の発光が収まったかと思えば、そこには困惑する祝の姿があった。

 

「…………どうだった? もしかして今すぐ別れろって結果でも出た?」

 

 恐る恐るそう尋ねる。

 だが、彼女の返答は全く異なるものだった。

 

「いえ……私がまだ未熟なのかも知れませんが……。今すぐにそこを離れないと大変なことになる、とのお告げをいただきまして」

「何よそれ、私の恋愛運の話じゃないの?」

「はい。私もそう思っていたのですが、これはどう言うことでしょう?」

 

 うんうんと二人で悩む彼女たち。

 そんな彼女たちの元へ憤怒の騎士が襲撃してくるまで、あと十秒。




・生き残ったブラック企業
 死んだ。具体的にはモードタウラスの突進の時に。
 いくつかビルを貫通して、ようやく止まった彼女が帰るついでに会社を物理的に崩していった。

・アンチフェネクスさん
 自分<<<装備 と言う価値観。まだまだ社畜気質は抜けていない。

・サイバーガール
 自分の気持ちを自覚した途端すぐ赤面するようになった。
 好きな人には奥手になるタイプだったようだ。

・祭壇座の巫女 本名:星辰 祝
 小学生。女子。好きなものは羊羹。
 初恋は今のレッドだった(過去形)。
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