謁見の間
春蘭「・・・というわけです。」
華琳「そう・・・やはり、黄色い布が。」
その日の軍議は、暴徒の鎮圧から帰ってきた春蘭の報告で始まった。
純「てことは、秋蘭の方もか?」
秋蘭「はい。こちらの暴徒達も同じ布を携えておりました。」
純「そっか・・・。稟、あの3姉妹の居場所はまだ分からんか?」
稟「はい。申し訳ございません。」
純「いや、気にするな。」
華琳「桂花。そちらはどうだった?」
桂花「は。面識のある諸侯に連絡を取ってみましたが・・・、どこも我が兗州と同じく、黄色い布を身に付けた暴徒の対応に手を焼いているようです。」
華琳「具体的には?」
桂花「ここと・・・ここ、それからこちらも。」
そう言って、桂花は広げた地図の上に丸石を置いていく。
純「桂花。そっちでも3姉妹の居場所は駄目だったかい?」
桂花「はい。捕らえた賊を尋問してみたのですが、誰一人として口を割りませんでした。」
純「そうか・・・。」
春蘭「・・・ふむ。剣を振り上げれば逃げ回るクセに、そこだけは口を割らんのか。さして忠義が厚いとも思えんが。」
純「そりゃ、お前の気迫に当てられたら誰だって逃げるわ。しかし、この前討伐した奴らは逃げなかったな・・・。」
春蘭「そう言えばそうでしたな。」
すると純は、
純「・・・黃巾党。」
そう呟いたのであった。
秋蘭「純様、それは一体・・・。」
純「ああ。敵を呼ぶにも名前が必要だと思って、咄嗟に思いついた名前だよ。」
華琳「そう。まあ確かに、敵を呼ぶにも名前が必要だわ。黃巾党という名だけはもらっておきましょう。それで皆、他に新しい情報はないの?」
秋蘭「はい。これ以上は何も・・・。」
春蘭「こちらもありません。」
華琳「ならば、まずは情報収集ね。その張角ら3姉妹の居場所を掴まなければ・・・」
その時、1人の兵士が慌てて入ってきたのであった。
兵士A「会議中、失礼致します!」
純「どうした!」
兵士A「はっ!南西の村で、新たな暴徒が発生したと報告がありました!また黄色い布です!」
言い終わったとき、皆の顔が引き締まり、真剣な表情になった。
華琳「休む暇もないわね。・・・さて、情報源が早速現れたわけだけれど、今度は誰が行ってくれるのかしら?」
すると、
季衣「はい!僕が行きます!」
季衣が真っ先に手を上げた。
華琳「季衣ね・・・。」
純「ふむ・・・。」
しかし、華琳と純はすぐに決断しなかったのであった。
春蘭「・・・季衣。お前は最近、働き過ぎだぞ。ここしばらく、ろくに休んでおらんだろう。」
季衣「そんなの平気です!それに、また知らない村が襲われてるんですよ?せっかく僕、そんな困ってる人達を助けられるようになったのに・・・。」
香風「なら、シャンが行く。」
華侖「だったらあたしも行くっすー!」
純「そうだな。今回の出撃、季衣は外そう。確かに最近の季衣の出撃回数は多すぎる。」
華琳「そうね。純の言う通りだわ。」
季衣「どうしてですか、春蘭様っ!僕、全然疲れてなんかないのに・・・!」
華琳「季衣。あなたのその心はとても貴いものだけれど・・・、自らの力を過信しては、いずれ足元を掬われるわよ。」
季衣「そんなこと・・・ないです。」
純「いや、これは命令だ。」
季衣「・・・でも、みんな困ってるのに・・・。」
華琳「そうね。けれど、目の前の百の民を救うために貴女が命を投げ打っては、その先救えるはずの何万という民を見殺しにする事にも繋がるの。・・・分かるかしら?」
季衣「だったらその百の民は見殺しにするんですか!」
すると、季衣の発言に、
華・純「「するわけないでしょう!/ねーだろーが!」」
季衣「・・・っ!」
華琳と純が覇気のこもった力強い一声を出した。その一声に季衣だけでなく、その場にいる皆が身を縮ませる程であった。
春蘭「季衣。お前が休んでいる時は、私達がその代わりにその百の民を救ってやる。だから、今は休め。」
季衣「ううー・・・。」
華琳「今日の百人も助けるし、明日の万人も助けてみせるわ。その為に必要と判断すれば、無理でも何でも遠慮なく使ってあげる。・・・けれど今はまだ、その時ではないの。」
純「それに我が軍がいかに人手不足と言っても、お前1人に全てを背負わせる程ではねーよ。そうだろ?」
すると、
華侖「おいっす!」
香風「・・・うん。任せて。」
華侖と香風が返事をしたのであった。
季衣「・・・。」
純「桂花。編成を決めてくれ。」
桂花「御意。・・・では秋蘭、柳琳。今回の件、あなた達が行ってちょうだい。」
香風「えー。」
華侖「なんでっすかー!今、あたしと香風が行く気まんまんだったっすよー!?」
しかし、華侖と香風は不満を漏らしたのであった。
桂花「今回の出動は、戦闘よりも情報収集が大切になってくると華琳様と純様もおっしゃってたでしょ。・・・2人とも、気が付いたら突撃してるじゃない?」
すると、
香風「・・・そんなことない。命令なら、ちゃんとする。」
華侖「そ、そうっすー!」
2人は揃ってそう言ったが、明らかに目が泳いでいたのであった。
純「決まりだな。秋蘭、柳琳。くれぐれも情報収集は入念にな。」
秋蘭「は。ではすぐに兵を集め、出立致します。」
季衣「秋蘭様!柳琳様!」
柳琳「大丈夫よ。私達が、季衣さんの分までしっかり村の人を守ってくるから。」
季衣「はい・・・。よろしくお願いしますっ!」
秋蘭「うむ。私達にしかと任せておけ。」
そして、秋蘭と柳琳は出立をしたのであった。
それから暫くが経ち、
純「姉上、都から軍令が届いたとお聞きしましたが。」
華琳「ええ。早急に黃巾の賊徒を平定せよ、とね。」
栄華「あの・・・、今頃ですか?」
華琳「今頃よ。」
純「しかし、朝廷のそれは今に始まったことではねーからなぁ・・・。」
香風「うん。純様の言う通り。・・・でも、することは一緒。」
その時、
華侖「華琳姉ぇ、純兄、大変っすー!」
夜の警備に回っていたはずの華侖が慌ててやって来たのであった。
華琳「どうしたの、華侖。」
華侖「ええっと、秋姉ぇと柳琳が行っている村から救援要請が届いたっす!」
それを聞いた華琳は、
華琳「純、あなたは今すぐに先遣隊として兵を率いて、秋蘭達の救援に向かいなさい。春蘭と華侖はすぐに本隊の準備を。栄華と桂花は、城下に降りて糧食の調達に向かいなさい。」
全員「「「はっ!!」」」
そう指示され、皆それぞれ準備のためその場を後にしたのであった。