華琳と純は同い年の姉弟であるが、腹違いであり、純が1日遅く生まれたため、純が弟である。
純の母親は、純を生んですぐに亡くなってしまったため、父親曹嵩は純を引き取り、娘の華琳同様、可愛がった。
そして2人は、幼くしてすぐに非凡な才を発揮し、華琳は覇王としての才を、純も覇王の才があったが、中でも特に彼が抜きん出ていたのは、武人として、または指揮官としての才であった。曹嵩は、その2人を父親として、または曹家当主として愛しており、将来は姉が弟を、弟が姉を助け合うような仲になって欲しいと願っていた。
しかし、そんな思いとは裏腹に2人の仲は、というよりかは華琳が一方的に純を嫌っていたのだ。ある時は、
華琳「子元!私はあなたの助けなんかいらないわ!」
と言ったり、またある時は、
華琳「子元!家中の皆があなたについて行っても、私はあなたに負けないし、あなたを認めないわ!」
と言う次第であった。それには訳があった。それは、人望の差であった。別に華琳にも人望が無かったわけではない。しかし、純は一兵卒でも、文武官でも、民でも分け隔て無く対応していたため、必然と人気に差が出来たのである。それを見ていた華琳は非常に面白くなく、気に入らないと思い、一方的に純と張り合っていた。それは、春蘭が華琳に、秋蘭が純に仕える事になっても変わらなかった。
その度に純は寂しい顔を時々していたが、秋蘭にはその姿を一切見せなかった。しかし、純を慕っていた秋蘭にとって、純の気持ちは痛いほど察しており、華琳に対して悪感情を抱くようになっていた。春蘭も複雑で、同じ武人として純の事が好きであったが、直属の主でもあった華琳の事も敬愛しているため、より複雑な心境であった。
曹嵩もこの状況には頭を悩ませており、どうにかならないかと思っていた。自身が死んだ後もこの状態が続けば、曹家は滅んでしまうと。
しかし、そんな仲が改善するあるきっかけが起きたのであった。それは、曹嵩が病に倒れたことである。この時純は、秋蘭と一緒に賊討伐に遠征に行っていたため、不在であった。
華琳「お父様、お加減はいかがですか?」
曹嵩「華琳か。どうやらわしもここまでのようじゃな。」
華琳「何を言っているのですか!!お父様はきっと良くなります!!弱気にならないで下さい!!」
曹嵩「いや、自分のことは一番理解しておる。その前に、1つお主に言いたいことがある。」
そう言って、曹嵩は寝台から起き上がった。
華琳「何でしょう、お父様。」
すると、
パシン
曹嵩は華琳の頬を叩いたのだ。
華琳「な、何をするのですか!?」
曹嵩「華琳、これまで何も言わずに黙っておったが、お前はいつまで純の事を嫌うのだ?」
華琳「そ、それは・・・。」
曹嵩「お主のその下らない妬みで、彼奴はどれだけ胸を痛めたか、お前は分かっておるまい。彼奴はな、今の曹家の現状を最も理解しておったぞ。」
華琳「現状・・・ですか?」
曹嵩「やはりお前は気付いておらなんだか。今曹家はな、2つに割れかけておったのじゃ。お前の派閥と、純の派閥にな。」
華琳「えっ・・・!?」
曹嵩「もしそのままにすれば、完全に2つに割れてしまい、最悪潰される可能性もあった。だから彼奴は、自身の派閥を抑え込んでこう言った。『例え俺が姉上の命で死ぬことがあっても、恨んではいけない。私心を捨て、姉上によく仕えろ。』と言っておった。」
華琳「・・・!?」
曹嵩「それほどまでに、お主の事を気にしていたし、曹家の事も気にしていた。にも関わらず、お主の下らない嫉妬で彼奴を苦しめた。お主、分かっているのか!?」
それを聞いた華琳は、俯いてしまった。何て愚かなことをしていたのか、自分の下らない妬みで家が危うくなっていた事を。
曹嵩「ようやくお主も自分のしでかしたことの大きさに気付いたようじゃな。しかし、早まってはならん。まずは、純にしっかり謝るのじゃ。しかし、秋蘭を初めとした純を慕っている連中は、お前のことを許さぬかもしれん。そこからはお主次第じゃぞ。」
華琳「・・・御意。」
そう言って、華琳は拱手した。そして数日後、曹嵩はこの世を去った。
そして、
華琳「私が曹家の後を継ぐわ。これからもよろしく頼むわ。」
全員「「「御意!!」」」
すると、
春蘭「華琳様。曹嵩様の葬儀は、純様と秋蘭を呼び戻してからの方が宜しいかと。」
春蘭がそう言うと、
栄華「春蘭さん、何を当たり前な事を言っておりますの!お兄様抜きで始めるなんて、曹嵩様がお嘆きになりますわ!!」
春蘭「そんなこと分かっておる!!一応聞いてみたのだ!!」
華侖「春姉ぇと栄華も、喧嘩はやめるっすー!!」
柳琳「姉さんの言う通りです。お姉様の前で喧嘩は・・・。」
華琳「やめなさい、2人とも。栄華、春蘭がそのようなことを聞くのは当然よ。私の純に対しての態度は、あまりにもひどいものだったから。」
栄華「お姉様・・・。」
華琳「栄華も辛かったでしょう。あなたも、純の事を本当の兄のように慕っていたのだから・・・。」
栄華「はい。私も、お姉様とお兄様のお姿を見て、胸を痛めておりました。」
華琳「華侖も柳琳も、ごめんなさいね・・・。」
華侖「あたしも辛かったっす・・・。」
柳琳「はい、私も栄華ちゃんと同じ意見です・・・。」
華琳「そう・・・。春蘭、純達に遣いを出しなさい。」
春蘭「御意。」
そして、純達に遣いを送ったのであった。
純達一行は、
純「今回の賊退治、見事な活躍だった、秋蘭。」
秋蘭「ありがたきお言葉。」
純「父上の病も、これで少しは良くなれば良いのだが・・・。」
秋蘭「はい、そうですね。」
その時、
兵士A「曹和様!」
春蘭が送った遣いの兵士がやって来たのだ。
純「どうした?」
兵士A「すぐにお戻り下さい!」
純「何があった?」
兵士A「曹嵩様が・・・、お亡くなりに・・・。」
純「・・・何だと!?」
秋蘭「・・・!?」
兵士の言葉に、純と秋蘭は驚いた。
兵士A「曹嵩様は亡くなる前に、曹操様に曹家を任せ、曹和様は姉曹操様を補佐するようにと。」
その言葉に純は目に涙を浮かべながら、
純「・・・分かった。すぐ戻ると伝えてくれ。」
そう言ったのであった。
兵士A「はっ!」
そう言って、兵士はその場を後にした。
純「・・・。」
すると、
秋蘭「純様・・・。」
純の姿を見た秋蘭は、純の傍に寄って、優しく抱き締めたのであった。
その時純は、泣き顔を見られないように、秋蘭の肩に擦りつけるようにして、秋蘭はまるで赤子をあやすかのように、ポンポンと背中を叩いたのであった。
暫くが経ち、
純「・・・行くぞ。」
秋蘭「御意。」
そう言って、兵を纏め、帰還していった。その道中、
秋蘭(このお方は何があっても守り、支えてみせる!例え大陸中全ての人を敵にしても・・・!)
と秋蘭が純の背中を見て、改めて決意したのであった。
曹家屋敷・曹嵩霊前
その部屋には、華琳が1人座っていた。すると、
兵士B「申し上げます、曹操様。曹和様が戻られました。」
兵士がそう伝えてきた。
華琳「兵馬の数は?」
兵士B「屋敷に入る際、単騎でした。」
華琳「分かったわ。」
そう言って、兵士を下がらせた。すると、純が来て、
純「・・・!」
曹嵩の霊前を見て、絶句したのであった。そして歩み、両膝をついた状態で、
純「父上、申し訳ございません。俺は親不孝者です。戻るのが遅すぎ、看取る事も出来ず・・・、父上・・・。」
泣きながら曹嵩の霊前で謝罪したのであった。すると、華琳は立ち上がって純にある事を言った。
華琳「子元。いや、純。私に代わって、曹家の後を継いでくれないかしら?」
それに驚いた純は、
純「姉上、何を言われるのですか!?父上は姉上に後を任せたのです。俺は、姉上を差し置いて後を継げません!」
立ち上がってそう言ったのであった。
華琳「聞いて、そうじゃないわ。曹家を思っての事なの。私は臣下からの信頼も無い。けどあなたは、才も徳もあり皆に慕われているわ。あなたが後を継げば、一門、臣下の信頼が得られ、曹家を発展させる事が出来るわ。」
それを聞いた純は、
純「ならば、お聞かせ下さい。姉上は何を?」
そう尋ねた。すると華琳は、
華琳「私はあなたの配下となって、あなたを支えるわ。」
そう言ったのであった。
純「それが父上のご遺言であると?」
華琳「・・・お父様の遺言は、曹家を私が継ぎ、あなたがそれを支えるようにと。しかし、今の曹家を引っ張れるのは純、あなただけなの!」
そう言われた純は、曹嵩の霊前を見て、
純「お気持ちは分かりました。」
そう言った。そして、
純「されどお断りします。」
そう言い、拱手してその場を後にしたのだった。
華琳母の部屋
その部屋には、華琳の生みの母がいた。すると、
純「義母上、純が戻りました。」
純が戻ったことを報告したのだった。
華琳母「純、私は幼くして母を、その後は友であったあなたの母親を、そして今度は夫を亡くした。人生とは、誠に辛いものです。」
純「お察し致します。なれど父上を助け、姉上を育て、そして、血は繋がっていなくても、俺を実の息子の如く扱ってくれて、ただただ敬服致します。」
華琳母「私も辛いですが、私よりもずっと苦しんでる者がおります。」
純「・・・姉上ですか?」
華琳母「いかにも。あの子はあなたと同い歳。あの歳で、曹家を任されたのです。その道は険しいものです。華琳は、大きな不安に苛まれ、今も震えが止まりません。」
華琳母「先程華琳が、あなたに曹家を任せると言われましたね。」
純「はい。お断りしました。」
そして、
純「義母上。父上のご遺言、お聞かせ下さい。」
そう尋ねた。
華琳母「純よ。そなたが言ったように、そなたとは血は繋がっていないが、実の息子同様に思っておる。ゆえに、全てを打ち明けましょう。」
そして、純に曹嵩の本当の遺言を述べた。
華琳母「お父上が残した遺言は、華琳に曹家を任せるというもの。」
真実の遺言を聞いた純は、
純「ならば、なぜ俺に曹家当主の座を?」
そう言った。すると、
華琳母「まだ分かりませんか?華琳は、お父上から、自身のあなたに対しての態度が原因で曹家が2つに割れかけていた事を知ったのです!華琳は、自身の犯した過ちを考え、今そなたに譲った方が良いと考えた。」
華琳母「分かりますか?そうすることで、自分の命を守り、曹家の将来を守ろうとしたのです。さらに、将兵や文武官の殆ども恐らく、同じ考えでしょう。純、あなたも知っているように、華琳は聡明です。しかし、あなたが思っている以上に聡明すぎるのです。よって、将来のために自らの地位を放棄すると決めた。」
そう述べたのであった。そして、純は頭を下げた後、こう言った。
純「義母上、全て心得ました。」
そう言って、部屋を後にしたのであった。
曹嵩霊前
純は、春蘭、秋蘭、華侖、柳琳、栄華を引き連れて、華琳がいる曹嵩の霊前の部屋に来た。そして跪き、拱手してこう述べた。
純「父上!この純は、春蘭、秋蘭、華侖、柳琳、栄華らと共に、父上の霊前で誓いを立てに参りました。心を1つにして姉上を助け、命を懸けて、姉上をお支えします!」
春・秋・侖・柳・栄「「「「「命を懸けて、華琳様/華琳様/華琳姉ぇ/お姉様/お姉様/をお支えします/するっす/しますわ!!!!!」」」」」
そう言って、頭を下げたのであった。それを聞いた華琳は、
華琳「みんな、どうか立ってくれないかしら。」
そう言い、純達は立ち上がった。
華琳「この私も、霊前で誓おう。これよりあなた達と、栄辱生死を常に共にし、曹家を更に大きくする!!」
そう言って、華琳は拱手し、純達もそれに続いて拱手した。これにより、純と華琳の仲は改善され、曹一門の結束は強まったのである。