-レミリア·スカーレット-
コツコツ
静かで長い廊下に私の足音だけが響く。
廊下には沢山のドアがあるが、取り敢えずは放置。
ひたすら歩き続ける。
まずは、私のお父様に会わねばならない。
私には私の記憶もあるが、少なからずレミリアの記憶も残っている。
彼女は落ちこぼれだった。なにもできない者だった。
理由はごく単純。
父親が吸血鬼にしてはかなり弱くて、
その背中を見てきたから、彼の子だから自分も弱いと思っていたのだ。
しかし、本当は違う。
彼女は、本当は天才だったんだ。
それを知らない彼女は、
さっき、私が死にたいと呟いたときに、同じく死にたいと呟いていた。
何故そんな私達が入れ替わった-向こうがどうなってるかは知らないが-かは知らないが、
少なくとも戻らない可能性はあるのだから私は私なりにやらせてもらう。
そろそろか。
レミリア·スカーレットの記憶に残っているこの廊下の長さから予想する。
案の定大きな扉は直ぐに表れた。
私はその扉を思い切り開け、
「お父様」
無表情のまま入っていく。
そこには書斎のような部屋が広がっており、父は椅子で本を読んでいる。
髪は少し長く、整えられている。
顔立ちは端正で、所謂イケメン。肩幅もある。
見た感じ、強そうではある。
本当はかなり弱いのだが。
父はおやといった顔をしてこちらを見ている。
「ん?なんだいレミリア」
「私は、吸血鬼の王をなろうと思っています。お父様にその意思はありますか?」
単刀直入に言うと、お父様、アルジェ·スカーレットは
動揺しながら、私の元に駆け寄ってくる。
「何を言っているんだレミリア!?
······ふ、フランならともかく!能力すらわからないお前が、
泣き虫なお前がなれるわけがないだろう!?」
「私の力は運命操作です」
狼狽えている父とは対照的に冷静な私は、何でもないように返す。
「なっ··········!?」
「今ならお父様にも、フランにも勝てる自信があります」
「レミリアッ!父親に向かっ」
「なら私を倒せばいいでしょう?
倒し、ボロボロで這いつくばる私を嘲笑したらいいのでは?」
「ッ!······いいだろう!」
逆上しながら飛び掛かってくる父に、少し驚く。
なにも考えずに飛び掛かってくる。
そんなだからきっと弱いままなのだろう。
私は呆れを隠そうともせず、
「········神槍·グングニル·············」
槍を具現化し、握り締める。
父はそれに驚いていたが既に遅い。もう私の間合いだった。
向こうの世界で学んだ格闘術を使い、服の胸元を握り、床に叩きつける。
直も反撃する気なのか起き上がろうとする父親を槍で止める。
父親は目を見開き驚いていたが、数秒後目を閉じ、悔しそうな顔をして、
「降参だ···········!」
負けを認めた。
私が槍を消すと、父はまるで知らない者を見るかのような目で私を見つめながら聞く。
「お前は何故···············そうなった?何故そこまで精神的に、肉体的に強くなれた?」
「少し考えを改めただけです。あなたの背を見て育ったせいで、私は自らの強さに気づけなかった。
しかし、今、私は知っています。私の全てを。
能力も持たず、別段強いわけでもない中途半端なあなたでは勝てません」
言われたくない事を言ってしまったようで、
ぐ、と唸る。
そう、父は能力を持っていない。
いや、きっと気づいていないだけなのだろう。
知っていてもあれでは程度がしれているが。
「そうか············すまなかったな。私のせいで············」
「いえ、今知ったから。
今だからこそ私は強くなれました。寧ろ礼を言わせてください」
「あぁ·············しかし、レミリア。言葉遣いも大分変わったな········」
「·········はい····················」
王になるための風格や威厳がいるかと思って、こんな感じにしたが、
やはり、レミリアとはギャップがありすぎたか。
まぁ、いい。大丈夫だろう。
不安に思うほどでもないかと自分に納得させ、父に、向かって微笑む。
父は少し戸惑っていたが、笑顔で応じる。
その瞬間、
「お父様···················?」
破壊はやってきた。
それを見て、心の中で、私は笑みを浮かべる。
恐らくは顔に出せば邪悪に見えるであろう笑みを。
それっぽく。
なんかこの小説楽しい。