サンセット・サンライズ   作:ゆーり

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本作の総合評価が一万を超えておりました。
評価・お気に入り登録・感想をくれた皆さん、何時も読んでいただきありがとうございます。
今回は原作をリスペクトしたプリティーで熱いスポコンを描写できた気がします。


お話ししよう

 絶対に断るという鋼の意志を持って受けた最初の相談。

 その意志は全く役に立つことなく、俺は相談役を引き受けることになった。

 

「はぁ……。まさか一発目からあの手の相談が来るとはな。毎回これだと気が滅入るぞ」

 

 週二回。水曜日と金曜日の放課後約二時間。

 それが俺の受け持つ時間帯らしい。

 

 後で知ったことだが、他の時間帯は別のトレーナーが受け持ち、生徒会側で相談内容ごとに振り分ける方式のようだ。

 女性的な悩みとか、速く走る方法を俺に聞きに来ても意味ないもんな。

 

 相談内容を募っているのは学園のホームページ。

 匿名の目安箱のような機能を元々持っていたらしいのだが、そこに送られてきていた個人的な相談事を本腰入れて対応するというのが今回の主目的らしく、希望者に対して相談室の案内をしていくらしい。

 今後はSNSやメッセージアプリの学園公式アカウントでも相談を受け付けていくようだ。

 

「それにしても、あれで意味なんてあるのかね」

 

 トレセン学園でなんの結果も残せず、地元にも恥ずかしくて帰れない。

 それが最初の相談内容だった。

 

 正直、地元が過疎化して滅びるよりはマシだから帰ってやれと言いたかったが、そういうことではないのだろう。

 枠越しで顔は見えないが、聞こえてくる鬱々として覇気のない声から、本調子でないことは分かった。

 結果が出せず精神は落ち込み、食事なんかの日常生活も徐々に不安定になっていき体調を崩すという悪循環に陥っている訳だ。

 

 こういう場合に問題なのは、自分で自分を信じられなくなっていることだ。

 

 モチベーションがあり、努力をした。

 なのに、まるで目指した夢には届かない。

 ならば他に自力でなにが出来るというのか。

 才能という見えないモノを持ち合わせていなかった自分では、なにをやっても同じように失敗するのではないか。

 一番強く願ったモノで躓いたが故に、それ以外だなんて考えも及ばない。

 

 そういう不安に呑まれ視野が狭くなっている。

 どこにでもある、大体のやつが大人になるまでに経験する悩みである。

 

 子供の頃に描いた夢を叶られる人間というのはどれ程いるだろうか。

 仮にプロ野球選手になるのが夢だったとして、入団すれば終わりではない。

 キャリアを終えたときに満足のいく成績が残せている人間はさらに少ないだろう。

 なんにせよ、折り合いを付けるときがくる。

 

 本人は認められないだろうが、トレセン学園に入学できただけでも才能と努力は証明されている。

 他のモノに向ければ、少なくとも生きていくのに苦労はしないだろう。

 

 俺は夢の後押しをして支える者としては力不足だ。

 こうすればいい、ああすれば上手くいくなんて事は言えない。

 だから具体的なアドバイスなんて無理だし、こう言うしかない訳だ。

 

『なぁ、お前にんじんハンバーグは好きか?』

 

 知ってるか?

 ウマ娘ってのはマグロと違って走り続けなくても生きていけるけどさ、メシは食わねーと死んじまうんだぜ?

 そう言って、顔を合わすのはNGというルールを破って一緒にメシを食いに行くことにした。

 

 ついでに地元に持って帰れる物がないのが恥ずかしいとか言ってたから、隣の生徒会室に突撃して中にいたルドルフとマルゼンスキーにサインを書かせて土産にさせて。

 あまりにも強引すぎる手段だったが、メシを食ったあとにサインが書かれた色紙をぼけっと眺めているウマ娘を見て、多少は元気が出ただろうかなんて考えて。

 

 ふと見たスマホに、凄まじい件数の通話とメッセージの着信履歴があることに気付いた。

 

 

 

 

 トウカイテイオーは激怒した。必ず、かの無知蒙昧なクズを蹴り飛ばすと決意した。テイオーにはクズの今日の予定がわからぬ。テイオーはJCである。マックイーンのもとで、合同合宿をする話を付けて来た。けれども、クズと一緒に居る時間は人一倍に大切だった。つい先ほど、テイオーはスピカのトレーナー室を出て、数十メートル離れたクズの部屋にやってきた。テイオーには、チームメイトもサブトレーナーもない。この後の予定もない。クズと専任の関係だ。このクズは、毎日自分とトレーニングをして食事を取ることになっていた。夕食の時間も間近なのである。テイオーはそれゆえ、ルンルン気分で部屋に帰ってきたのだ。

 

「なのに、なんでトレーナーが居ないの?」

 

 会議のような長時間部屋を空ける予定はなかったはず。

 もうすぐ夕飯なのだから、なにか買いに出たという可能性も低い。

 ちょっと散歩、ということは考えられるが。

 

「……出ない」

 

 通話に出ず、メッセージを送っても既読にならない。

 つまり暇な状況ではなく、手が離せない何かがあるということか。

 探しに行ってもいいが、滅多にない行動パターンだ。心当たりのある場所にはいないかもしれない。

 

「こういう時は人海戦術だよね」

 

 メッセージアプリで友人たちに所在を知らないか聞いてみると、早速答えが返ってきた。

 

『どこにいるかは知らないけど、エアグルーヴ先輩と歩いているのを見たよ』

 

「……へぇ」

 

 たったの一文で、ルンルン気分は決意の直滑降した。

 放課後のスペシャリストたるクズがいない以上、回復は望めない。

 

 しかし、なぜエアグルーヴなのか。

 今までに接点はなかったはずだ。雑談をするほど相性が良いとは思えない。

 態度の悪いトレーナーをエアグルーヴが注意したとかなら有り得るが、どこへ一緒に歩いていく必要があるというのか。

 

 さらに(もたら)された目撃者の情報からして、向かった先は生徒会室。

 なにか学園内の用事を頼むためという可能性もなくはない。

 だが、ボクの勘が告げていた。 

  

 ここで動かなければ取り返しが付かなくなる。

 これは、敵対行為であると。

 

「……まさか、会長たちまでボクの邪魔をしようとするだなんてなー」

 

 理解してくれていると思っていたけれど、都合の良い妄想でしかなかったかな?

 まぁ、どうでもいいか。

 

 振り切った憧れに拘泥する暇もなければ、敵対者に掛ける情けもありはしないのだから。

 

 "帝王"は首を(もた)げた黒い激情のままに、脚を生徒会室へと向けた。

 

 

 

 

「それで? なんの用があってトレーナーを連れて行ったのかな?」

 

 礼儀正しくノックをして、失礼しますという言葉と共にトウカイテイオーは生徒会室へと入ってきた。

 以前のトウカイテイオーであればなんの断りもなしに部屋に入り浸り、シンボリルドルフに甘えていただろう。

 

 新しいトレーナーの下で礼儀作法を学び、精神的に大人びた……訳ではもちろんない。

 言葉とは裏腹に慇懃無礼(いんぎんぶれい)な態度。

 声に温かみはなく、冷たい視線には微塵(みじん)も親しみが感じられない。

 

 その態度は明確に生徒会に対する敵意を表していた。

 

「気を静めてくれないかテイオー。我々はなにも君たちの邪魔がしたい訳ではないんだ」

 

 対するシンボリルドルフは、立ち昇る怒気に欠片も動じた様子を見せず、清らかな川の(せせらぎ)の如き穏やかさを保っていた。

 同じく部屋にいたマルゼンスキーとエアグルーヴも、トウカイテイオーの攻撃的な態度に多少の驚きを見せていたが、それでも動揺と呼べるほどの反応は示さなかった。

 

 部屋にトレーナーが居なかったことに舌打ちしそうになるのを(こら)え、トウカイテイオーは室内の三人を見回す。

 ボクが来ることを予測していたなと三人の反応から見当を付け、本丸にして主犯だろう"皇帝"に視線を合わせて問いただした。

 

「そうなんだ。理由なんてどうでもいいけど、ボクとトレーナーの時間を勝手に奪って欲しくないんだよね。例えそれが会長であっても。それで、もう一回聞くけどなんでトレーナーを連れていったのかな? それと、トレーナーどこ?」

 

 問いただしてはいるが、聞く耳は持っていない。そんな態度だった。

 

「此処には居ないよ。先ほど少しだけ顔を見せたが、もう出て行ってしまった。行き先は分からないな」

 

 それでもシンボリルドルフには些かの揺れもなく、泰然自若としたままだった。

 その態度に苛つきながらも、トウカイテイオーは息を吐いて心を落ち着かせていた。

 

 恐らくだが、生徒会――というかシンボリルドルフ――はトレーナーに対して何かを求めて行動を起こした。

 単なる注意や突発的な用事ではない。

 ボクの来ることも想定内となると、冷静さを失えば理詰めで丸め込まれる。

 

 トウカイテイオーは――。

 誰よりも強くシンボリルドルフを目指したウマ娘は、誰よりもその恐ろしさを理解していた。

 レースに於ける強さですらギリギリ手が届くかどうか。それ以外の面では遠く及ばない。

 以前はたった一人で生徒会を切り盛りしていたバイタリティと深謀遠慮。

 多くの者を惹きつけるカリスマ性と、反発した者すら納得させる弁舌。

 目の前の"皇帝"はターフの外でも君臨者足り得る存在だ。

 

 もう戦いは始まっている。

 トウカイテイオーは油断なく、気を引き締めた。

 

「なら、トレーナーを連れて行った用事はなんだったのかな。宝塚記念に向けて忙しい時期なんだけど」

 

 先ほどまでは前哨戦。生徒会側に裏があることは確信している。

 トウカイテイオーにとっての問題は、それが自分たちの害になるのかどうかだ。 

 

「ああ、実はトレーナー君に仕事を一つ頼むことになってね。内容を説明したら、快く引き受けてくれたよ。テイオーと過ごせる時間は少し減ってしまうかもしれないな。事後承諾になってしまってすまない」

 

 いけしゃあしゃあと、シンボリルドルフは澄まし顔で言い放った。

 

『この野郎、いい度胸だ』

 

 目元をヒクつかせ、こめかみに青筋を浮かばせたトウカイテイオーの顔がそう語っていた。

 それでもキレる寸前のところで踏み止まり、彼女は振り絞った理性で弁解の機会を与えた。

 

「ボクたちは忙しいって、そう言ったよね。聞こえなかったかな。それとも喧嘩売ってる? もしそうなら言い値で買うよ」

 

 弁解……と言う名の最後通告ではあったが。

 

「待て、テイオー! これは正式に学園が決定した事で、会長の一存だけという話ではない。納得しかねる事もあるかもしれないが、まずは落ち着いてくれ」

 

 一触即発な雰囲気に、たまらずといった風にエアグルーヴが口を挟んだ。

 尊敬する相手である会長に対して喧嘩腰なトウカイテイオーにも驚くが、その会長自身が明らかにトウカイテイオーの神経を逆撫でしにいっている。

 仲の良さを知る身としては、信じられない異常事態だった。

 

「ボクは会長と話をしているんだけど。黙っててくれないかな」

 

 最初から冷たさを宿していた視線の温度は絶対零度まで下がり、"女帝"と呼ばれるほどの苛烈さを持つエアグルーヴをして体に震えが走るほどだった。

 

 エアグルーヴは、この件について最初は否定的であった。

 なにがしかの施策は必要だが、それを担う人物として()のトレーナーは適切なのか。

 悩みを打ち明ける相手として最適とも思えないし、彼の教え子たちが選んだのは全て学園外に行き先を定める道だ。

 例えば優れたトレーナー陣から技術的なアドバイスを貰えば、成長して納得のいく結果を得られるのではないか。

 そういう未練にも似た想いがあった。

 

 それでも同志たるシンボリルドルフの『多様性がなければ手の届かない者が出てくる』という言葉に従い、彼を連れてきた。

 結果として、今はそれで上手く行くのではないかと言う気がしている。

 

 エアグルーヴは取り成しのために相談者のウマ娘とも顔を合わせていた。

 垂れた耳、伏せられた目線と俯いた顔。

 頑張れば明るい未来があるだなんて、とてもではないが言えなかった。

 

 それを速攻でルールを破って、あの男は手を引いて生徒会室に連れ立ってきた。

 嵐のような勢いで会長とマルゼンスキーのサインを貰うと、外に飯を食いに行くと二人で出て行った。

 

 その時の、呆気に取られて状況を理解できていないウマ娘に同情しながらも、こう思ったのだ。 

 さっきよりは余程にマシな顔をしている――と。

 

 私には、私たちには出来ない方法で彼ならウマ娘の心に活力を与えられるのかもしれない。

 ならば、自分は会長の側に立つ。

 "理想"のために、(すく)んではいられない。

 その想いで、エアグルーヴは口を開いた。

 

「いいや、黙らない。あの男は我々の"理想"に必要になるかもしれない。お前が奴に惚れこんでいるのは知っているが、こちらも引けん。手放すつもりはない」

 

 その全く以って具体的な内容が含まれていない言葉は、"皇帝"以上に明確にトウカイテイオーの逆鱗に触れた。

 

「ふっ、流石は"女帝"エアグルーヴだ。それなりに穏便に言葉を選んで行こうと考えていたのに、宣戦布告に来た使者の首を叩き斬って送り返すが如き所業。末恐ろしいな」

 

 思ったよりズバッと誤解を生む表現で切り込んだなと、シンボリルドルフは冷や汗を掻きながらエアグルーヴを称賛し、対応方針を変更した。

 より、過激な方向へ。

 

 そして、対応がより過激になったのはトウカイテイオーも同じだった。

 

「"理想"に必要? 手放すつもりはない? 関係のない他人がどこからモノを言ってるのさ。あのヒトはボクのモノだ」

 

 絞り出すように呟かれた言葉と共に、トウカイテイオーが放っていた冷たさの全てが反転した。

 燃え盛る覇気、焼き焦がすような視線。

 大阪杯で見せた、己の前に立ちはだかる全てを消し炭にしてやるという気迫。

 

 先ほどまでの冷気すら遠く及ばないほどの圧に押されて一歩後ずさるエアグルーヴとは対照的に、シンボリルドルフと黙って成り行きを見ていたマルゼンスキーは平然としている。

 

 あたかも、この程度で我を通せると思うなと挑発するかのように。

 

「あのヒトはボクのモノ、か。ふふっ、他者(ひと)のことは言えないが中々に傲慢だな」

 

 この一件、一応の理があるように見せているシンボリルドルフではあったが、それなりに無理筋も通している。

 だが、周囲を黙らせるのに必要な結果を出せる公算は十二分にあって、懸念していない。

 そして目の前の王様を黙らせることも、然して難しいことではなかった。

 

「隠すことでもないからな、正直に言おう。彼に頼んだのは、怪我や成績不振で学園からの退学を考えるほどに深い悩みを抱えた生徒の相談に乗ってもらうことだ。去年のテイオーやその先輩たちのような、ね」

 

 ただ正直に伝える。

 それは、なによりも効果的に燃え盛る炎を萎えさせた。

 

「……そんなの、卑怯じゃん」

 

 救われたからこそ、トウカイテイオーは誰よりも彼に価値を見出した。

 一定数、彼であればこそ手を伸ばせるウマ娘が居ることも知っている。

 

 自分と同じ境遇の者を助けたいと言われて、どう否定すればいいのか。

 その行為は、救われた己自身の否定にすら繋がるのではないのか。

 

 トレーナーを取り返す。その望みを叶える答えは、出てこなかった。

 

「テイオー、これを機に君も考えてみてはくれないだろうか。生徒会は『唯一抜きん出て並ぶ者なし』というスクールモットーに基づきウマ娘のレベル向上に努めている。同時に様々な不慮で沈みいく者たちへ手を差し伸べたいとも考えている。トレーナー君だけでなく、君もその一助になってはくれないだろうか」

 

 或いは、"皇帝"と呼ばれる者が立つ視座の高さに対して、どこまでも自分本位な望みに終始している己程度では抗うことなど不可能だったのか。

 そんな考えが、じわりと胸を蝕んだ。

 

「今すぐに答えてくれとは言わない。だが、今回の試みが相応の成果を出したなら、トレーナー君に依頼する仕事の内容も量も増えていく事になるだろう」

 

「……ッ! そんなのダメ! これ以上、ボクからトレーナーを盗らないでよ!」

 

 無力故に駄々を捏ねることしかできない。

 幼稚な我儘でしか自分の意志を通せない。

 それは、トウカイテイオーの明確な敗北だった。

 

 悲痛に訴えながらも、それで退いてくれる訳もない。

 それが分かってしまい涙が溢れそうになったとき、"皇帝"はあっさりと逃げ道を提示した。

 

「ふむ、いいだろう。誰かを助けるために誰かを蔑ろにしていたのでは何も変わらない。テイオーの意志を尊重する手段も設けるとしよう」

 

 このまま理屈で押し通してもよかった。

 だが、それも破綻させる方法がない訳ではない。

 例えばこの後、テイオーが泣きながらトレーナーに嫌だと訴えれば。

 彼はクビ覚悟でもこの話を断るだろう。

 

 だからこそ示さなければならない。

 逃げ道に見せかけた、納得させるための手段を。

 

「我々はウマ娘だ。己の意思を通したいのならば、勝利を以て通せ」

 

 トレーナーは勤め人であるが故の弱みと性根の甘さを利用してコチラ側に寄せた。

 テイオーには屁理屈と彼女の実体験を利用して否定できなくさせた。

 あとは、力で屈服させればいい。

 

「年末の有馬記念、君も出走するだろう? そこに私も出るとしよう。君が勝てば全てが今まで通りになり、我々も彼のことは諦める。逆に私が勝ったなら、我々の邪魔はしないでもらいたい」

 

 あたかも対等に見せかけた、理不尽。

 現役最強のウマ娘に……否、日本史上最強かもしれないウマ娘に勝てという条件。

 

 シンボリルドルフは、実際のところ全く以て譲ってやるつもりなどなかった。

 

「そしてテイオー、君にも協力をしてもらう。おや、これならトレーナー君と離れる時間も多くならずに済むな。我ながら良い案だ。それに、元々テイオーは私を目指していたのだろう。その目的を果たす機会が来たと思えば……」

 

 凡そ自分の思い通りに事が進み、シンボリルドルフは少しだけ気分よく言葉を紡いでいた。

 紡いでいて……気付いた。

 萎えていた炎に、自分がとんでもない量の燃料をぶち込んだことに。

 

「それで、いいんだね?」

 

 以前のトウカイテイオーならば、ここで退いただろうか。

 シンボリルドルフに勝つことを目標としていても、それはいがみ合った末の喧嘩としてではなかったはずだから。

 

 だが、今は違う。

 彼女は既に経験して知っている。

 

 愛憎は表裏一体であるということを。

 

「会長に勝つって夢を叶えて、トレーナーを取り返して、最強の座から引き摺り下ろしてやれば、それでいいんだね?」

 

 向けられる声と視線に、シンボリルドルフは自然と笑みを浮かべた。

 

 ああ、何時以来だろうか。

 己に対して、ここまで強い敵意が向けられるのは。

 

 こうでなくては。

 尊敬や、ましてや崇拝など違うだろう。

 相手が誰であろうと力で勝利し、その全てを()ぎ取る。

 それこそが、ウマ娘の本能にして本懐。

 

 やっと、私を本気で見てくれた。

 そんな身勝手な想いを抱いて、シンボリルドルフは答えた。

 

「ああ。戦おうじゃないか、トウカイテイオー。私と君、それぞれの望みを叶えるために」




マ「黙って見てたら、なんだかすごいことになったわね……」
エ「そう言えばあのトレーナー、会長とマルゼンさんだけで私にはサイン書かせなかったな……」

え?ウマ耳に手を添えてぴょんぴょんするシンボリルドルフだって?
そんな甘っちょろい幻想は捨てろ。
※サインは来賓に頼まれることが多いため生徒会室に常備している色紙を使いました。
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