それから守くんは、ベルリーナお姉ちゃんと、
時にはアミーお姉さんと一緒に特訓を続けました
「今日はもう少し遠出しましょうかぁ♪
試験の時はいろいろ条件が違うんだけどぉ、
自分で歩いてモンスターを探せないと合格できないわよぉ」
「はい、分かりました」
二日目は町の外でモンスター退治に勤しみ・・・
「今日は雨だから中でお勉強しましょうかぁ♪
マモルちゃん、それとアミーちゃんも一緒にやりましょうねぇ♪」
「お願いします」
「それはいいんだけど、どうして私もマモルくんと同じ生徒側なの・・・?」
三日目はみんな揃ってお勉強をしたり・・・
「今日はアミーちゃんの戦い方を観察させてもらいましょう♪
アミーちゃーん♪ ファイトー♪」
「お姉さん、気を付けてくださいねー!」
「ちょっとお姉ちゃん、マモルくんをここに連れてくるのはまだ早いでしょ!?
お願いだからちゃんと守ってあげてよ!?」
四日目にはお仕事をするお姉さんを見学したり
「さあ、マモルちゃんの魔力も増えてきたし、
今日はいよいよ新しい魔法を教えてあげるわよぉ♪」
「はい、お願いします!」
「マモルくんならすぐに覚えられるでしょうけど、
使い方は間違っちゃだめよ?」
(でも・・・、普通は魔法を出せるようになるだけでも1日から2日かかるのに
一回で覚えてほとんど完璧に使いこなせるなんて、
改めて考えると女神様の素質ってとんでもないわね・・・)
五日目には新しい魔法を教えてもらい・・・
「さて、今日は本番を想定した実戦練習よぉ、
当日に何をどうすればいいかしっかり教えてあげるから、全部覚えてもらうわねぇ♪」
「は、はい、頑張ります」
六日目には予行演習をこなし・・・
そして、いよいよ試験当日となりました
「それじゃあマモルちゃん、準備はいいかしらぁ?
忘れ物はないわねぇ?」
「は、はい、大丈夫です・・・」
「気を付けてねマモルくん、付き添いはできないけど
とにかく教えた通りに受付に書類を提出すれば後は説明してくれるから・・・」
「はい、じゃあ行ってきます・・・!」
お姉さんたちに見送られ、守くんはベルリーナさんの家を出ていきます
「マモルくん、試験は本当に気を付けてよー? 怪我なんてしないようにねー?」
「合格できたらぁー、ご褒美に二人でちゅーしてあげるわよぉー♡」
「ちょっとお姉ちゃん馬鹿なこと・・・」
「あらぁ? アミーちゃんは・・・」
いろいろな言葉をかけられながらも、それを最後まで聞けないまま
すぐ近くにある本部へ向かいました
あれからお姉さんたちと一緒に何度か訪れた場所ですが、
一人で来るのは初めてであり、守くんは少し緊張します
「いよいよ試験が始まるんだ・・・、えっと、まずはこれを持っていつもの受付に・・・、
あれ、今日は人が多い・・・、えっと、いつもの人は・・・」
普段より人の多い建物の中をあちこち見回し、
この数日で知り合った人を見つけてそちらへ行きました
愛想がよい受付の、年季が入った女性に近付き
おずおずと声を掛けます
「あの、おはようございます・・・」
「あらおはよう♪ 今日の試験を受けにきたのよね?♪
ちゃんと必要な書類は持ってきた?」
「はい、ここに・・・」
「ちょっと待ってね・・・、うん、問題ないわね、
じゃあ向こうの部屋に用意してある服を着て、奥の部屋で待っててちょうだい」
「はい、ありがとうございます」
「君ぐらいの歳で試験を受ける子はあんまりいないけど、
合格した子がいないわけじゃないからがんばんなさいよっ!」
「はい! じゃあ行ってきます」
守くんが試験を受けることは既に知っていたこともあり、
やり取りはスムーズ終わりました
背中を押してもらい、守くんは少しだけ心細さが消えたように思いながら
指定された部屋へ行きます
そこで、とても簡素な構造をした無地の服を貰い、着ていた服の上に着こみました
(この服が、お姉さんたちの言ってた『特殊な装備』、なんだよね・・・、
あんまりそうは見えない・・・、でも、あの時お姉さんが着てた服にちょっと似てるかも・・・)
貰ったものに不思議な力があるのかどうか少し疑問を抱きながら、
守くんはお姉さんたちに教えてもらったことを思い出します
「試験の時にはね、最低限の装備を貸し出して貰えるの」
「そうび・・・、っていうと、やっぱり武器ですか?」
「いいえ、武器は持ち込んでもいいけど支給されないわ、
貸してもらえるのは命を守るための防具ねぇ」
「防具・・・、それってやっぱり鎧とか盾みたいな・・・」
防具と聞いて自分が想像できる物の名前を挙げたところ、
アミーお姉さんが不思議そうな顔になりました
「盾は分かるけど、ヨロイは何かしら・・・?
それがマモルくんの世界にある防具なの?」
「気になるところだけどぉ、今はそれより説明の続きをしましょう?
私たちが外へ行く時に着ているような防具を貸してもらえるのよぉ♪」
「これはね、身に着けた人を守ってくれるすごいものなの、
えっと、モンスターの能力についてお姉ちゃんから教えてもらったかしら?」
「以前教えてあげたわよぉ、モンスターは怪我をしないから、
その生命力が尽きる寸前まで私たちを倒そうとしてくるって」
「そうなのね、それで・・・、この服を着ていると、
私たちもモンスターみたいに怪我をしなくなるの」
怪我をしなくなると聞き、守くんは当然驚きます
でも、そんなものがあるのにどうしてお姉さんたちは
怪我しないよう口を酸っぱくして言ってたのか、そんな疑問も浮かびました
「えっ!? けがをしないんですか? 本当に・・・?」
「そうよぉ♪ だからモンスターに攻撃されたりしても
『ある程度』は大丈夫なの♪ ただ、強い衝撃を受けたりすると
ちょっとふらふらするくらいはあるでしょうけど・・・」
「それと、あまりダメージを受けてしまうと壊れて効果がなくなってしまうの・・・、
モンスターみたいに消えたりはしないけど、着ていた人は気絶してしまうわ」
「モンスターの前で気絶してしまったら、どうなるか分かるわよねぇ?
だから、怪我しないといっても頼り切ってはいけないの」
説明を受けた守くんは、どうしてそのように言われていたか腑に落ちます
結局のところ、支給される防具とやらは完全に守ってくれるものではなく、
やはり教えられた通り相手と距離を取って戦うのが一番確実なようでした
「は、はい、分かります・・・、じゃあやっぱり、
今まで通りに戦った方がいいんですね?」
「そうなのよ、だけど、今までよりは少しだけ
戦いやすくなるかもしれないわ」
「あの防具を着ていると、足が速くなったり
力が強くなったりもするのよぉ♪」
「モンスターとの闘いで私が高く飛び上がったり
剣で倒したりしたのを見たでしょう?
支給品はそこまで強くなれないけど、距離を取ったりするのは少し楽になるわ」
そう言われ、守くんは初めて会った時のことや
この数日の間に見てきたお姉さんの戦いを思い出します
巨大なモンスター相手に素早く立ち回ったり
大きな武器を振るったりできていたのは、その防具によるところが大きいのでしょう
「じゃあ、今までお姉さんがすごく速く動いてたのは、
その防具を着ていたからだったんですか」
「そうよ、じゃなきゃあんな風には動けないわ」
「まあ、支給品はほんとに大したことないんだけどね・・・、
でも実際どのくらい動きが変わるか、楽しみにしてるといいわぁ♪」
(これが、たしかにその防具・・・、でも着てみたはいいけど
あんまり強くなった感じがしないや・・・)
(それに裾を踏んじゃいそう、気を付けて歩かないと)
その防具とやらを着てはみたものの、やはり実感が湧かない守くんは
少し不安になってしまいます
ともあれ準備はできたため、次の部屋へ移動しました
既に多くの人が集まっている部屋の扉を
緊張しながら開き、中へ入ります・・・