シュークルス・フィリィ・ワールド   作:RE×

23 / 52
第二十二話 防具の力と新たな魔法

 試験開始の合図が出された瞬間、

受験者たちはいっせいに走り出しました

 

 守くんもそれに倣って大きく足を踏み出そうとしましたが・・・

 

 

「うわっ!」

 

 

 服の丈があっていないせいで裾を踏みつけてしまい、

思いっきり倒れてしまいます

 

 

「いたた・・・、あれ? あんまり・・・、いや、痛くない・・・?」

 

 

 身体をしたたかに打ち付けた感覚はしたものの、

予想していた痛みはまったくありません

 

 これが防具の効果なのでしょうか、

不思議そうに身体を眺めていると、後ろから声を掛けられます

 

 

「君、大丈夫か? 裾が長いなら折り込んで調整しなさい、

肌が出ていても全身がちゃんと守られるから問題ないぞ」

 

「えっ? あ、分かりました」

 

 

 試験官の一人にそう言われ、守くんはアドバイス通り問題なく歩けるぐらいまで

裾を折りました

 

 そしてきちんと動けることを確認すると、今度こそ走り出します

 

 

「ありがとうございました、じゃあ行ってきます」

 

 

 そう言って駆け出しますが、他の人の姿は見えません

 

 すっかり出遅れてしまったことを不安に思いますが、

走っていると、すぐあることに気が付きました

 

 

「これ・・・、すごい! 自転車に乗ってるみたいに早く走れちゃう!

しかも全然疲れないや!」

 

 

 どうやらお姉さんたちの言う通り、この防具は身を守ってくれるだけでなく

着用者の能力を高めてくれるようです

 

 巨大な砂時計が豆粒のように小さくなってしまうほど遠くまで、短い時間であっさりと走り抜けることができ、

守くんは不安も吹き飛ぶどころか楽しくなってしまいました

 

 

「すごいすごいっ! まだまだ走れるっ! よーしっ! とおっ!」

 

 

 調子に乗ってきた守くんは、地を蹴ってカエルのように飛び跳ねてみます

 

 するとやはり、一気に何十メートルもの距離を飛ぶことができましたが・・・

 

 

「おーっ! これ気持ちいいーっ! ・・・って、あっ!?」

 

 

 少し高い丘を飛び越えたところで、守くんはとてもびっくりしてしまいます

 

 それもそのはず、なんと、着地しようとした場所にはビスティ・グルバが2体いました

 

 空中で軌道を変えることはさすがにできず、そのままモンスターの目の前に着地してしまいます

 

 

「う、うわわっ!」

 

 

 普段遠くから倒してばかりだったモンスターに接近してしまったことで、

守くんはあっさり平常心を失ってしまいました

 

 反対に、モンスターたちは外敵の存在を察知した瞬間

問答無用で襲い掛かってきます

 

 着地とほぼ同じタイミングで、ビスティ・グルバは頭を突き出しながら体当たりしてきました

 

 自分よりはるかに大きな相手から攻撃され、守くんはなすすべなく、何メートルも吹き飛ばされてしまいます

 

 

「うぐっ! けほっ・・・、けほっ・・・、お、お腹が・・・、

い、痛くはないけど苦しい・・・」

 

 

 体当たりと地面に叩きつけられた衝撃でひるんでしまう守くんですが、

モンスターたちは手をゆるめません

 

 追撃しようとまっすぐに立ち向かってきました

 

 

「うわわっ、わっ! くぅっ・・・! ら、ラー・ヴィグァ・ハイト!」

 

 

 素早い突進を繰り出そうとした2体のモンスター相手に、

守くんは怖がりながらも呪文を唱えます

 

 白っぽい刃のようなものが鋭く飛び出し、

その内の2つが相手の頭部へ綺麗にあたりました

 

 モンスターたちは、断末魔を上げることなく2つの魔石へと変わっていきます

 

 

「た、倒した・・・! はぁ・・・、はぁ・・・、よ、良かったぁ・・・」

 

 

 ビスティ・グルバたちの姿が消えたところで

守くんはため息を吐きながらその場にへたりこみます

 

 本当なら、もっと周囲を警戒するべきところでしょうが、

そんな余裕はありませんでした

 

 

「びっくりしたぁ・・・、うっかりはしゃいでモンスターたちの目の前に行っちゃうなんて・・・、

ベルリーナお姉ちゃんに怒られちゃう・・・」

 

「それに・・・、新しく教えてもらった魔法、もう使っちゃった・・・、

魔力がいっぱい減るから使うなら1回だけって言われてたのに・・・」

 

「でも怖かったし・・・、うう・・・、もう、仕方ない、

悩んでてもどうにもならないよね・・・」

 

 

 うっかり大きな魔法を使ってしまったと悔やむ守くんですが、

時間が限られている以上落ち込んでばかりいられません

 

 なんとか気持ちを切り替えると、

魔石を拾い、モンスターを探すことにしました

 

 

「また飛んだり跳ねたりしてたら危ないし、ゆっくり走ろう、

さっきみたいに見つかるといいんだけど・・・、」

 

「でも、お姉ちゃんと一緒に特訓してたときはもっといっぱい出会ったのに

周りを見ても全然いない、本当に数が少ないんだ」

 

 

 試験のためにモンスターの数が減らされているという説明が真実なんだと実感しつつ、

守くんは周りを見ながら走り続けます

 

 時折り動く影を見つけては立ち止まるものの、

モンスターではなく同じ受験者だというパターンばかりでした

 

 最初の遭遇は運が良かっただけらしく、

それなりの時間が経過したものの、モンスターは見つかりません

 

 

「全然見つからないや・・・、どうしよう、

もうどのくらい時間がたったんだろう・・・」

 

「もうみんな倒されちゃったのかな・・・、

このままじゃ・・・、あっ!」

 

 

 少し立ち止まり、不安になりながらも周囲を見渡していると、

守くんは複数の動く影を発見します

 

 そして、それはまさしく探し求めていたモンスター、

ビスティ・グルバでした

 

 

「い、いたっ! しかも・・・、2、3、・・・4体いる!

よ、よーし、ちゃんと特訓した通りにやるんだ・・・!」

 

 

 数を数え、どうすれば良いか頭のなかで考えながら

守くんが身構えます

 

 そして大きく息を吸い込むと、一番近くの相手に手を向けました

 

 

「ヴィグァ・ハイト!」

 

 

 魔法を放ち、一番手前にいた相手の頭部へ命中させます

 

 すると、攻撃に気付いた他のモンスターたちが

一斉に突進してきました

 

 

「・・・来たっ! ヴィグァ・ハイト! ヴィグァ・ハイト!」

 

 

 まっすぐ向かってくることを確認すると、守くんは

立て続けに魔法を撃ちます

 

 2匹、3匹と順調に当て、そして・・・

 

 

「ヴィグァ・ハイト!」

 

 

 最後の1匹にも魔法をぶつけ、なんとか全て倒すことができました

 

 

「はぁっ・・・! や、やった・・・! ちゃんと練習した通りにできた・・・!」

 

 

 緊張の糸が切れ、大きく息を吐きながらも

守くんはうまくできたことを喜びます

 

 後は魔石を回収し、最後の1体を探すだけとなりました

 

 ・・・ですが、それを良しとしない人たちがいたらしく、

突然横から声をかけられます

 

 

「お~いおい、何してんだよクソガキが、他人様の獲物を横取りとはいい度胸だなぁ?」

 

「そいつは俺らが狙ってた獲物だぜぇ?」

 

「盗みを働く育ちの悪ぃガキにはお仕置きが必要だなぁ?」

 

「・・・えっ?」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。