「マモルくんが大型モンスター、ザン・ヴィーボラと戦ったの!? なんて無茶を・・・!」
「マモルちゃん、言ったでしょう? 大型モンスターとは戦っちゃだめだって、
あの魔法は中型モンスターを倒さなければいけない時があるかもしれないから、
それを想定して教えたのよ?」
「ご、ごめんなさい・・・、でも、助けないと人が死んじゃうって思ったら・・・」
「それはいいことをしたかもしれないけれど・・・、はぁ・・・、
そういう時はちゃんと試験官に助けを呼ぶのよ?」
「はい・・・、試験の時もそう言われました・・・」
「ふぅ・・・、ま、このくらいにしておきましょうアミーちゃん、
どうやらもう叱られてたみたいだし、人助けをしたってことで、ね?」
「そうね・・・、でも、なんでもかんでも一人でやろうとしちゃだめよ?
いくら女神様が力を貸してくださってるからといっても、あなたはまだ子供なんだから・・・」
「はい・・・、ごめんなさい・・・」
お家に戻ったところで目が覚めた守くんは、試験で何があったかを聞かれ、
そしてそれについて叱られてしまいます
とはいえ人助けのためだったこともあり、
あまりひどくあれこれ言われずに済んだようです
それからは、ちょっとだけ豪華になった楽しい夕食や
もう毎日のように行われている刺激的な入浴も終わり、眠る時間になりました
「それじゃあ、明日からは私のお家に戻るからね、
またいつか来るかもしれないけど・・・、
お姉ちゃん家の豪華なベッドとは今日でひとまずお別れよ」
「今日は疲れたでしょうから、きっとぐっすり眠れるわよぉ♪
二人とも、いつでも来ていいからねぇ?♪
マモルちゃん、もちろんアミーちゃんに内緒でこっそり来るのもかまわないわ♪」
「ベルリーナお姉ちゃん、いろいろありがとうございました、
じゃあお休みなさい」
「ええ、お休みぃ♪」
「明日は私もお休みにしておいたから、ゆっくり眠ってていいわよ、
出発はお昼前くらいにしましょうか、それじゃマモルくん、おやすみ♪」
「はい、お休みなさい・・・♪」
二人への挨拶を終えると、守くんはそのままベッドへ入り
今日あったことをぼんやりと振り返ります
「今日はほんとにいろいろあったなぁ・・・、試験を受けたし・・・、
おっきなモンスターと戦って・・・、でもあれは怖かったなぁ・・・」
「だけど合格できて・・・、それで・・・、お姉さんたちに・・・、
・・・これは思い出さない方がいいや」
「とにかく、女神様との約束・・・、ちゃんと守れたんだよね・・・、
喜んでくれるかなぁ・・・ふあぁ・・・」
「んみゅ・・・、また夢の中で・・・、会えるの、かな・・・、くぅ・・・」
ですが、疲れていたからかすぐに眠気が来てしまい、
考え事もあっさり中断されてしまいました
そのまま暖かなベッドへ身を任せ、守くんの意識は深く沈んでいきます・・・
そして・・・、彼はふと、こんな夢を見ていました
(んみゅ・・・、ぁ・・・、あえ・・・? ここはどこだろう・・・)
(えぇっと・・・、そうだ、めがみさまとであったばしょ・・・?)
「そうだよ守くん、久しぶり・・・、ってほどではないかもしれないけれど久しぶりだね♪」
「あ、女神さま・・・? 女神さまだ」
少し寝ぼけていたところへ後ろから声をかけられ、守くんが振り向くと、
そこには前に夢で見た時と同じように女神様がいました
相変わらず刺激的な恰好をしていますが、一度見ていたためか
今度はそっぽを向くことなく話を続けます
「女神さま、あの、僕・・・、
ちゃんと約束通りシュクトゥル・セージュの試験に合格しました♪」
「うん、見ていたよ♪ 危ないところはいくつもあったけど、
きちんと合格してくれたね・・・♪ 立派だった♪」
「あはは・・・、ありがとうございます♪」
「それで、こうやって夢の中で会いに来たのは、
そのことで、キミにご褒美をあげようと思ってね♪」
「ご褒美、ですか・・・?」
「そうだよ・・・♪ 何かして欲しいことや欲しい物はあるかな?♪
ここは夢の中だし、今ならちょっとくらいイケナイことも許されちゃうよ・・・?♡」
女神様はさりげなく胸元や腰回りに手をあてつつ、
どこかいやらしい声でご褒美をあげると言い出します
しかし、その仕草には気付かなかったのか、
守くんは少し考えてこう答えました
「えっと・・・、じゃあずっと聞きたかったことがあるんですけど、いいですか?
女神さまはどうしてシュクトゥル・セージュになって欲しかったのか、とか
僕はどうしてこの世界のフィリィ語?をしゃべれるのか・・・、あ、それと女神さまのお名前も・・・」
「・・・ふふ、そっか♪ いいよ、そのくらいなら教えてあげる♪」
守くんの要求を聞くと、女神様は身体から手を放し、
どこからともなく二つの椅子を出して話を始めます・・・
それから守くんは、質問したり他愛のないことを話したり、
女神さまと楽しい時間を過ごしていました
「この世界の言葉や文字は日本語、というよりキミの世界の言葉とは違うんだ、
だから本当はお話もできないんだけど、私の力で会話や読み書きはできるようにしてるんだよ♪
ただ、魔法のようにキミのいた世界に存在しないものの名前は翻訳できないから、そのまま聞こえるんだ」
「そうだったんですか・・・、じゃあ、今女神様とお話できているのも・・・?」
「ああ、それは単純に私が日本語をしゃべってるだけさ♪
こう見えて・・・、いや、見た目通り頭がいいんだよ♪」
「そ、そうですね・・・、あはは・・・」
この世界へ来た日から気になっていた言葉の違いについて尋ねてみたり
「そういえば名前も名乗っていなかったっけ・・・、これは失礼、
私の名前は女神フィリィ、フィリィ様と呼んでも構わないよ♪」
「えっと・・・、分かりました、じゃあ・・・、フィリィ、様」
女神様・・・、フィリィ様の名前を教えてもらったり
「キミに資格を取ってもらいたかった理由か・・・、
これについてはもう少し隠しておこうかな?♪
いっぺんに全部教えると楽しみがなくなっちゃうだろう?♪」
「そうなんですか・・・、なんだか困ってたように見えたので、
悩み事でもあるのかなって思ったんですけど・・・」
「・・・ふふ、キミは優しいね♪ しかし、
女性に弱くなる素質を与えた私が言うのもなんだけど
将来女性関係で苦労しそうだなあ・・・」
「えぇ・・・? そ、そうでしょうか・・・」
はぐらかされてしまいましたが、
この間の夢で頼みごとをされた理由について尋ねたりもしました
気が付けばそれなりの時間がたっていたのか、
突然フィリィ様がこう言い出します
「おっと、また時間がなくなってきちゃったね、そろそろ帰った方が良さそうだ」
「分かりました、えっと、いろいろ教えてくださってありがとうございます」
「ふふ、気にしなくていいよ、お礼を言うのはこっちの方だ、
それじゃ、お別れの挨拶にまたおまじないをしてあげようか・・・♪」
「え・・・、えっ? おまじないって、もしかして、あの・・・」
帰る時間になったらしいフィリィ様ですが、付け足された言葉を受け、
守くんは思わず顔を赤らめてしまいました
以前、夢の中でキスされたことを思い出して恥ずかしいのでしょう
そんな守くんに、フィリィ様はにこやかな笑顔を向けてこう言いました
「もちろん、あの時と同じようにキスしてあげるんだ・・・♪」
「や、やっぱり・・・、あの、その・・・」
「うん? どうかしたかな・・・? もしかして、イヤだったりする?」
「い、嫌なわけじゃなくて・・・、その・・・、恥ずかしいんです・・・」
「あはは・・・♪ なんだそんなことか♪ そう気にすることもないだろう?♪
子供相手に軽いキスをするくらい、キミたちの世界にもあることじゃないか♪」
「そ、それはそうかもしれませんけど・・・、日本じゃあんまり・・・、
それに僕はそんなに子供じゃ・・・」
「そうかな? だけど、あのお姉さんたちにもキスされてたよね?♪
しかもあんなにたくさん・・・♪ そしてキミはどんな反応をしてたっけ?♪」
「あ、あれはその・・・、そうですけど・・・」
「まったくキミは『素質』に関係なく初心だねぇ・・・♪
ほら、ちょっとした練習だと思って受け取ってごらん・・・♪
それとも・・・、男の子なのにキスが怖いのかなぁ?♪」
「う・・・、そ、そんなことありません!
分かりました、じゃあお願いします・・・!」
かなり恥ずかしがっていた守くんですが、結局はフィリィ様に乗せられてしまい
固い表情でまっすぐ相手を見つめます
無駄に力の入った彼の様子を見て笑みを零しながら、
フィリィ様はゆっくりと相手の頬に手を添えました
「キスって気合を入れて受け止めるものじゃないと思うけどなぁ・・・、
まあいいや♪ じゃあじっとして・・・?♡」
「は、はい・・・、どうぞ・・・!」
動かないように言われた守くんは、
身体に力を入れて固く目を閉じます
口付けをするというより注射をこらえてそうに見え、
笑いがこみげてくるフィリィ様でしたが、
それをなんとか堪えつつゆっくりと額へ唇を近づけました
「んっ・・・、ちゅっ・・♡ ふふ、どうかな・・・?♡」
「ひゃっ・・・、う・・・、えっと、その、ありがとうございます・・・?」
「んもう、なんだいそれは・・・?♪
ちょっとくらい雰囲気を出して欲しいものだけどなぁ・・・?♪」
「ええ・・・? えっと、その・・・、ふんいき・・・、う~ん・・・」
なんともあっさりとした言葉に対してフィリィ様がおどけてみせると、
守くんは頭をひねって要求に応えようします
とはいえ、そんなことをしたところでいい考えなど
すぐに浮かぶはずがありません
しかしフィリィ様はその様子に目を細めると、
不意に守くんを抱きしめて顔を近づけました
「雰囲気っていうのはね・・・、こういうのを言うものだよ・・・♡
お互いの鼓動が分かるくらいに密着して、瞳に相手の顔が映るまで顔を近づけて、
そして最後は、ね・・・♡」
「あ・・・、あの・・・」
豊満な胸を押し付けるように背中を逸らし、
吐息がかかるほどの距離で妖艶に囁くフィリィ様
お互いの体がくっつき、相手の温度すら分かるような状況で、
守くんは自分の体温がどんどん上がっていく感覚を覚えていました
とうぜん何も言えず、あたふたしてばかりです
そんな守くんをまじまじと見ていたフィリィ様が
どこか艶めかしく微笑んだかと思うと、ゆっくりと顔が近付き・・・
「・・・ちゅっ♡ ふふ、今日のところは鼻先へのキスで勘弁してあげるよ・・・♡
でも、すっごくドキドキしたんじゃないかな・・・?♡」
「えぅ・・・、あぅ・・・」
「うんうん・・・♡ この顔が見たかったんだ♡
あたふたしちゃってかわいいなあ・・・♡
それじゃ、また今度夢にお邪魔させてもらうよ、ばいばい♡」
悪戯っぽく笑って見せながらそう言うフィリィ様ですが、
その頬はどこか赤みがかっているようにも見えます
そして、少し落ち着かない様子でそそくさとその姿を消してしまいました
残された守くんは、今しがた起こったことが夢のように感じながら、
ゆっくりとその場にへたりこんでしまいます
そしてゆっくりと意識が沈み、目が覚めた時にはベッドの上でした
「ん・・・、んん・・・、あ・・・、フィリィ様・・・? いない・・・」
「さっきのは・・・、夢だったん、だよね・・・?
でも夢だけど夢じゃないのかも・・・」
2回もキスされてしまったことに動揺する守くんですが、
一応は夢の中だったということもあり、すぐに気持ちが鎮まります
そしてゆっくり起き上がると、欠伸をしながら部屋を出ていきました
「あらマモルくん、おはよう♪ 昨日はよく眠れた?♪」
「あっ、アミーお姉さん♪ おはようございます♪
昨日は・・・、えっと、よく眠れしました♪」
「そう♪ なら良かったわ♪ もうベルお姉ちゃんは起きてるし、
これから朝ごはんにしましょうか?♪」
「はい♪ じゃあ僕、顔を洗ってから行きますね♪」
廊下でアミーお姉さんと出会い、他愛のない話をしてから
守くんは洗面所へ向かいます
そして顔を洗い、目を覚ますと、
今度は食卓へ向かいました
「おはようマモルちゃん♪
今日は最後だって思うと少し寂しいわねぇ」
「ベルリーナお姉ちゃん、おはようございます♪
でも、また来ていいんですよね?」
「ええ、もちろんよぉ♪ でも聞いたからには
ぜったいまた会いに来てちょうだいね?♪」
「は、はい、分かりました・・・♪」
「明日からは当分あの部屋にいると思うけど、
もう資格を持ってるマモルくんなら一人で来ても問題ないわ♪
受付には話を通しておくから♪」
「ありがとうございます♪」
「マモルくん、もう来たのね♪
それじゃあ朝食にしましょうか♪」
「はい・・・♪ じゃあ、いただきます♪」
朝食の準備をしていたらしいお姉さんも途中から会話に入り、
三人で楽しい時間を過ごします
そして気が付けば、しばらくのお別れの時間がやってきました
「じゃあお姉ちゃん、私たちもう行くわね、
・・・いろいろとありがと、なんだかんだで楽しかったわ♪」
「こちらこそ、久しぶりにあなたと過ごせて楽しかったわぁ♪
それに、マモルちゃんとも楽しく過ごさせてもらったちゃったわねぇ♪」
「ベルリーナお姉ちゃん、本当にいろいろありがとうございました・・・♪」
「ええ♪ 二人とも、またいつでもいらっしゃい♪
遊びに来るのは大歓迎だし、何かあったら力になるわ♪
・・・それじゃ、さようなら♪」
「ベルお姉ちゃん、それじゃあね・・・♪」
「さようなら・・・♪」
精一杯の笑顔を浮かべながら、
二人はベルリーナお姉ちゃんの家を出ます
守くんはちょっぴり寂しさを感じていましたが、
それを紛らわすように最後まで元気よく手を振り続けました
「なんだか長いようで短かった七日間だったわね・・・、
今日はこのままお家に帰ってゆっくりしましょうか♪」
「はい♪」
「だけど、明日からはまた忙しくなるわよ?
マモルくんも、資格を手にした以上は私たちの仲間入りしたことだし、
今後は厳しく指導していかなきゃいけないかもね?♪」
「う・・・、よ、よろしくお願いします」
「本当に、やることも覚えることもいろいろあるんだから・・・、
まあ、それはゆっくりとやっていけばいいかしら・・・、
休める時に休むことは、ある意味では一番大事なことなのよ♪」
「そうなんですか?」
「ええ・・・、マモルくんもそのうち分かるわ・・・、そのうち、ね・・・」
意味深な言い方をするお姉さんですが、
守くんはとくに追及することなく歩き続けます
この先に何が待ち受けているのかはさっぱり分かりませんが、
アミーお姉さんが一緒なら何とかなる気がしているようでした
こうして、守くんの物語はここから本格的に幕を開けることになります