シュークルス・フィリィ・ワールド   作:RE×

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第三十二話 二人の戦いと変化

 セレスティナさんが呪文を唱えると、次の瞬間その手に刀が握られていました

 

 そして守くんが声をかける間もなくモンスターの群れめがけて飛び上がります

 

 

「はっ!」

 

「えっ!? セ、セレスティナさん!?」

 

 

 驚きながら守くんが空を見上げると、

セレスティナさんは既にモンスターの目の前まで近づいていました

 

 そして今度は、姿がはっきり視認できないくらいの早さで

次々と敵の身体を蹴って空中を縦横無尽に移動します

 

 そのままどうするのかと思いきや、最後のモンスターを足蹴にして

セレスティナさんはこちらへ飛び降りてきました

 

 

「あれっ!? セレスティナさん、どうしてこっちに・・・、あぁっ!!」

 

 

 守くんが驚きの声を上げた直後、

なんと空を飛んでいたモンスターの身体が一気に消滅してしまいます

 

 蹴ったくらいで倒せるような相手でないはずなのに、

なぜいきなり消えてしまったのか

 

 守くんは、セレスティナさんが優雅に降りて来たところでそれを尋ねます

 

 

「セレスティナさん、あの、今のはどうやったんですか?

どうして蹴っただけでモンスターが消えて・・・」

 

「んん・・・? ああ、違うよ、蹴ったのは攻撃した後さ、

私はモンスターを切りながら、そいつを足場に移動していたんだ」

 

「え・・・、ええっ!?」

 

 

 なんてことないように告げるセレスティナさんの発言に、

守くんは驚きを隠せません

 

 何せ、はた目には彼女が高速で移動しているだけのように見えていたものですから、

あの一瞬で全てのモンスターを攻撃していたなんて思いもよらなかったのでしょう

 

 

「す・・・、すごい・・・! セレスティナさん、とってもかっこいいです・・・!」

 

「おや、かっこいいと来たかい・・・、ふふ、ありがとう♪

・・・だが、そんな話ばかりしていられないようだ」

 

「えっ? ・・・あっ!」

 

 

 会話の途中でセレスティナさんがまた空を見上げたため、

守くんも視線を向けてみると、なんとまた別の報告からモンスターの群れが来ていました

 

 今度もセレスティナさんが素早く倒してしまうのかと考えていると、

思いもよらぬ言葉がかけられます

 

 

「とりあえず私の実力はいま見せた通り・・・、

ほとんど見えなかったかもしれないがとにかく見せたわけだ、

だから次は君の実力を見せてもらおうかな?」

 

「えっ? ぼ、僕の、ですか?」

 

「そうさ、さあ、早くしないと奴らがどんどん近付いてくるよ?

近付かれれば近付かれるほど不利になるんじゃないかい?」

 

「あ・・・! そ、そうだ、距離があるうちに攻撃しないと・・・!

わ、分かりました、やってみます・・・!」

 

 

 いきなり戦うように言われて驚いた守くんですが、

モンスターとの交戦が初めてというわけではありません

 

 既に見つかってる以上、すぐ倒さなければ危ないと判断し、

緊張しながらも呪文を唱えます

 

 

「よ、よおし・・・、ラー・ヴィグァ・ハイト!」

 

 

 守くんの放った魔法の刃はフォード・ティラニエルの群れにまっすぐ飛んでいき、

一匹残らずしっかりと命中しました

 

 

「おお・・・! 複数の刃を放つ呪文か、全弾しっかり命中させるとはやるじゃないか、

・・・だが、魔法の選択があまり良くなかったみたいだよ」

 

「えっ? ・・・あっ!?」

 

 セレスティナさんの言葉を聞き、守くんがモンスターの群れに目を向けると、

相手は一匹も消滅することなく、体勢を整えてこちらへ向かってきます

 

 どうやら、あのモンスターは今使った魔法では倒し切れないほど強いようです、

守くんは慌ててもう一度身構えました

 

 

「も、もう一回・・・、ラー・ヴィグァ・ハイト!」

 

 

 今度の呪文も群れめがけてまっすぐ飛んでいきますが、全ての敵に命中することなく、

2体ほどにかわされてしまいます

 

 魔法が当たったモンスターたちは消滅しましたが、残った2体が

左右に別れつつ近付いてきました

 

 

「は、外れちゃった!?」

 

「いや、狙いは正確だった、今のはモンスターが回避したんだ、

さあ、それより残った2体を処理することに集中しないと」

 

「わわっ、そ、そうだ、まだ残って・・・!」

 

 

 残ったモンスターに意識を向けるよう言われ、

守くんは慌てて敵の姿を目で追います

 

 しかし、2体は複数の方向から迫ってきており、

一回の魔法で倒せそうにありませんでした

 

 

「は、はやく魔法で迎え撃たないと・・・、で、でもさっきよけられたし・・・、

な、なら・・・! グレース・ブルス!」

 

 

 今度は刃の呪文でなく、塊を放つ呪文で対抗する守くん

 

 呪文を唱えた瞬間モンスターは揃って動きを見せますが、

今度の魔法は刃のように早く放たれることなく、

一拍遅れて放物線を描きながら飛んでいき、相手に命中しました

 

 

「当たった! ようしもう一回、グレース・ブルス!」

 

 

 反対を向いて続けざまに魔法を使うと、残ったモンスターに難なく当たります

 

 どうやら、先ほどの呪文に合わせて動いたことで

回避行動が遅れてしまったようでした

 

 

「あ、当たった・・・! も、もういない・・・?」

 

「ああ、今度こそ気配は消えたよ、見事な戦いだったね♪

初めてのモンスター相手に上出来じゃないかな」

 

「あ、ありがとうございます・・・、はあぁ・・・」

 

 

 敵がいなくなったと分かるや否や、緊張の糸が切れたのか

守くんはその場にしゃがみこんで大きく息を吐きます

 

 少しの間そのままでいましたが、一息ついたところでゆっくりと立ち上がりました

 

 

「びっくりしちゃいました・・・、一回の魔法で倒せないモンスターなんて・・・、

それに攻撃をかわされたのも初めてです・・・」

 

「そうだろうね、向こうのモンスターと違ってこっちのはなかなか強いんだ、

私たちの存在にすぐ気が付くし、見た目よりもずっと頑丈で頭が良い、

君のように遠くから戦う人間は複数体に囲まれたら危ないだろう」

 

「そう、ですね・・・、なんだかちょっと怖くなってきました・・・」

 

「そこは大丈夫だ、君が近付いてきたモンスターに囲まれないよう

私のように近くの敵と戦う人間がいるんだからな」

 

「あ・・・、そうでしたね・・・」

 

「そして、私が手を出せない、あるいは出しづらい相手には

君のように遠くから攻撃できる者の手を借りたいわけなんだが・・・、

こういった連携はこれまでやってこなかったのかい?」

 

「ええと・・・、これまでは、確実に倒せるモンスターを倒す練習ばっかりしてました・・・」

 

「やっぱりそうか・・・、まあ基本を覚えるのは悪いことではないんだけど、

それだけでは強くなれないし、いざというときに困るんだ」

 

「いざというとき・・・、ですか?」

 

「そうだ、物事に絶対はない・・・、安全な戦い方をしていても、

どこかで普段と違うことが起こり、それが命を落とす結果につながることは充分あり得る、

だからモンスターと戦う限り、自分で判断するだけの技量と度胸はやはり必要なのさ」

 

「・・・・・・」

 

 

 今まで以上に真剣さを、そして実感が込められたようなセレスティナさんの発言を受け、

守くんは自分のやってきたことを振り返りながら考えます

 

 アミーお姉さんと一緒に戦う時はいつも指示に従い、堅実にモンスターを倒していましたが、

ザン・ヴィーボラと戦った時は自分の力が及ばない戦い方をしてしまい、

運よく他の人に助けられました

 

 あれが『いざというとき』だと言うのなら、次にそれが起こった時

誰かに助けてもらえるとは限りません

 

 自分の進もうとしている道のことを少しだけ理解し、そして恐怖しながらも・・・、

どういうわけか守くんは少しだけどきどきしていました

 

 

「僕・・・、ずっと教えられた通り危ないことを避けてきたんです・・・、

けど、一度だけ・・・、試験の時にザン・ヴィーボラと戦いました」

 

「・・・うん」

 

「あの時は無我夢中だったんですけれど・・・、

後から振り返ってみると、すごくどきどきしていたような気がします」

 

「うん・・・、それで?」

 

「そしてさっきも・・・、簡単に倒せないモンスターが現れて・・・、

だけどなんとか倒すことができて・・・、うまく言えないんですけど、

やっぱり少しどきどきしました」

 

「ああ・・・、少し分かるよ」

 

「怖かったのも怖かったんですけれど、なんとかできた時に感じるどきどきは、

怖いだけじゃなかったような気がしたんです」

 

「それは・・・、ふむ、そうだね、簡単に言えば、興奮や高揚、そういったものだろう、

つまり君は、心のどこかでモンスターとの闘いを楽しむことができたということさ」

 

「そう、なんでしょうか・・・?」

 

「恐らくは、ね・・・、しかし気を付けた方がいい、

その道を突き進むのはとても危険なことだ、君に大事なお友達はいるかな?」

 

「え、ええと・・・、アミーお姉さんと、ベルリーナお姉ちゃんと、

それからあの三人と・・・」

 

「ふむ、それだけいるなら・・・」

 

「あと、受付のおばさんと、セレスティナさんも・・・」

 

「おや・・・、私もか・・・」

 

 

 自分の名前が出てきたところで少し面喰うセレスティナさんでしたが、

少し笑みを零しながら肩をすくめると、改めて話を続けます

 

 

「それだけいれば充分だ、危なくないことをしそうになった時、

危なくなった時はその人たちの顔を思い浮かべてごらん?

そして、その人たちが泣いているところもね」

 

「う・・・、なんだか悲しくなっちゃいます・・・」

 

「そうだろう、そして、君が死んでしまった時、

その人たちはそれ以上に悲しむことになる、これを必ず覚えておくことだ」

 

「・・・はい、分かりました!」

 

「いい返事だ、ではそうだな、死なないためにもっと強くなり、

そして適度にモンスターとの闘いを楽しむためにまだまだ先へ進むかい?」

 

「はい、お願いします・・・!」

 

 

 ほんの少し恐ろしく、そして大事なことを教えてもらいながら

守くんはセレスティナさんの後ろを歩いていきます

 

 周囲を警戒しつつ、モンスターが出たらどう戦えばいいのか考え、

先ほど言われたことをさっそく実践しようとしていました

 

 そんな中、セレスティナさんは歩きながら少し考え事をしています

 

 

(柄にもなくちょっとしゃべりすぎてしまったかな・・・、

こんな風に他人へ肩入れしたのはいつ以来だろうか・・・)

 

(しかし・・・、マモル、なんだか不思議な子だ・・・)

 

(魔法の才能はあるんだろうな、複数発射する刃の呪文を正確に放っていた、

あれはまぐれで出来ることではない)

 

(正直言って嫉妬したくなるくらい、だが・・・、

どうもそんな気は起きないな)

 

(攻撃魔法以外は使えないと聞いて仲間意識をもってしまったか?

我ながら単純なことだ・・・)

 

(だけど・・・、それ以外にも、

なんとなく親しみやすいのは確かだね)

 

(ちょっと怖がりなわりに人懐こいし、

出会って間もない私を友達扱いして・・・)

 

(これまで見て来た私に厭味ったらしい視線を見せたり

同情したりする人間とは少し異なる・・・)

 

(ちょっと興味を持ってしまったな・・・、

これ以上饒舌になってあまり変なことを言わないといいけど・・・)

 

(・・・ま、その時はその時として、

今は警戒に集中しなければね)

 

 

 守くんのことを考え、そして自分の変わりようも考え、

彼を見る目も変わり始めるセレスティナさん

 

 二人の出会いは、お互いにとって変化をもたらす

とっても大事な出会いだったのかもしれません・・・

 

 

 

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