シュークルス・フィリィ・ワールド   作:RE×

43 / 52
第四十二話 不思議な果実

 無事に買い物を終え、3人組と分かれた守くんは

お姉さんのいるお店の前まで戻ってきました

 

 約束の時間まではまだ余裕があったものの、

ほどなくしてお姉さんが出てきます

 

 

「マモルくん待たせちゃったわね、思ったより色選びに時間がかかっちゃって」

 

「僕もさっきお買い物して戻って来たところです

さっきこの間の試験で知り合った人に偶然出会って・・・」

 

「それって試験の時に助けてくれたっていう人たち?

まあ、それなら私もご挨拶すれば良かったわね」

 

「お買い物を手伝ってもらったんです、

それで後は明日に備えて休むからって帰られました」

 

「そうだったの・・・、ちゃんとお礼は言ったかしら?

それで、何を買ってみたの?」

 

「はい、言いました、それで・・・、実は、これを買ったんです・・・」

 

 

 そう言いながら、守くんはおずおずと

手にある物を差し出します

 

 それは、容器の中に入った二粒のイチゴでした

 

 なぜか数に対して容器が少し大きめですが、

それを見たアミーお姉さんは、そんなことなど気にならないくらい驚きます

 

 

「えっ!? えっ、えっ!? こ、これ、何・・・?

まさか、果物・・・?」

 

「は、はい・・・、あそこで買った・・・、イチゴ、です・・・」

 

「い、イチゴ・・・、そっか、これが・・・、

だけど、どうして・・・」

 

「あの・・・、こんな高い物をって怒られちゃうかもしれないと思ったんですけど・・・、

どうしても、お姉さんに食べてみて欲しくて・・・」

 

「私に・・・?」

 

「はい・・・、前に、お姉さんは料理を食べたことがないって言ってたから、

日頃の感謝に、せめて果物だけでもって思って・・・」

 

「日頃の感謝・・・? 最近はそんなに感謝されるようなこと、した覚えが・・・」

 

「あの、その・・・、日ごろっていいますか・・・、最初から・・・、

助けてもらったことから、特訓に付き合ってもらったことまで、

いろんなことを改めて感謝したいなって思って・・・」

 

 

 目の前に現れた果物の存在が信じられないためか、

アミーお姉さんは要領を得ない守くんの説明をなかなか理解できません

 

 ですが、なんとなく言いたいことは分かったのか、

一つ息を吐き、肩の力を抜いて返事をします

 

 

「・・・うん、分かったわ、それじゃあ、ありがたくもらっちゃいましょう・・・♪

実を言うと、あのお店を通ってからどんなものが売られてるかずっと気になっていたの♪」

 

「良かった・・・、高い物を買ったから怒られちゃうかと・・・」

 

「さすがにこのくらいじゃ怒らないわよ、

だけど、よくあのくらいのお金で足りたわね? イチゴってそんなに安いのかしら?」

 

「えっと・・・、さっきお買い物を手伝ってくれたみなさんと一緒に買えそうな物を探して・・・、

だけどちょっと足りなかったから結局お金を出してもらって、

そのお礼にと、みなさんに一粒ずつイチゴをあげたんです、だから残ったのはこれだけで・・・」

 

「あら、ということは5粒あったのね、

でも、お金を出してもらったのなら・・・、やっぱり今度お礼を言わないと」

 

「は、はい・・・、その・・・、どうしてもお姉さんに食べて貰いたいと思って・・・」

 

「そこは怒ってないから大丈夫よ・・・♪

じゃあそうね・・・、ちょっと早いけれど、お家に帰りましょうか、

さすがにここじゃ食べられないわ」

 

「はい・・・、じゃあ大事に持ってます・・・♪」

 

 

 高い物を買ったことやお金を出してもらったことについて

咎められるかと思っていた守くんは、お姉さんの温和な様子に胸を撫でおろしました

 

 そして、喜んでもらえるかどうか期待しつつ、

お姉さんと共に帰路へ就きます

 

 帰りの車では、外の景色を見ることもなく

ずっとイチゴを大事に抱え、出発の時よりもずっとドキドキしていました・・・

 

 

「予定より早くなったけれど、必要なものも買えたし充分ね♪」

 

「じゃ、じゃあお姉さん、さっそくこれ・・・」

 

「ふふっ♪ はいはい、荷物だけ置かせてね♪

今のうちに手を洗っておいでなさい♪」

 

「は、はい・・・、じゃあすぐに準備しますね・・・♪」

 

 

 期待に胸を膨らませながらイチゴを用意しつつ、

守くんは言われた通りすぐさま手を洗います

 

 そして、お姉さんの反応を予想しながら

椅子に座って待っていました

 

 

「とりあえず荷物を置いてきたわ♪

それじゃ、待ちきれないみたいだしさっそく食べてみましょうか♪」

 

「はいっ♪ じゃあ、どうぞ・・・♪」

 

「ありがと♪ これが本物のイチゴ・・・、

確かにそれらしい香りがするわね♪

なんだか艶があって・・・、周りについている粒々は何かしら・・・♪」

 

 

 期待に満ちた表情で差し出されたイチゴを受け取るアミーお姉さんですが、

彼女もまた相応に高揚しているのか

どこか浮ついた様子であれこれ呟いています

 

 そして、いろんな角度からひとしきり眺め終えた後、

ゆっくりと口へ運ぼうとしました

 

 ところが、ヘタを取っておらず、しかもヘタの部分から食べようとしていたため、

守くんは慌ててそれを止めます

 

 

「お、お姉さん? ヘタは取らないとだめですよ?」

 

「あ~・・・、えっ? 下手? そ、そんなに食べ方が下手だった?」

 

「えっ・・・? あっ、えっと、そうじゃなくて、この緑色の部分をヘタって言うんです、

ここは食べられないから取って食べるんですよ」

 

「あら、そういうこと・・・、食べられないって、

もしも食べたら一体どうなるの?」

 

「えっ? ・・・うーん、おいしくないだけ、かな・・・?

お腹を壊したって話は聞いたことがありません」

 

「そうなの・・・? ともかくここを取ればいいのね?

んしょっと・・・、こんな感じでいいのかしら?」

 

「はい、それで大丈夫です」

 

「それじゃあ改めて・・・、あ~・・・、んっ」

 

 

 始めて見る本物のイチゴを前に、あれこれ戸惑い、

珍しく守くんが物を教える展開になりながらも

アミーお姉さんはようやく実食できました

 

 守くんもそれに倣ってイチゴを口へ運びますが、

一口かじったところでお姉さんの声が聞こえてきます

 

 

「きゃっ! な、何これ・・・!? 噛んだ瞬間に水分が出て来たわ!?

それにこの香りを濃縮したような味・・・、酸っぱいけれど甘さもあってなんておいしいの・・・♪

おまけに噛み締めた時の独特の感触、エネレーとは何もかも違うわ♪ 水なしで食べられる食事なんて初めてよ・・・♪」

 

 

 初めての食べ物がよほど衝撃的だったのか、

お姉さんの口からは感想がどんどん溢れ出ていました

 

 守くんも、久しぶりの果物が嬉しくはありましたが

味に関してそれほどの感動は味わえません 

 

 むしろ、おいしいイチゴに比べると少し水っぽく、

甘さよりも酸っぱさが多い安物のような印象を受けました

 

 元の世界なら大金を支払ってまで食べるものでないことは間違いありませんでしたが、

それでもお姉さんに喜んでもらえたことは非常に嬉しく思えます

 

 

「そ、そんなにおいしかったですか・・・?♪」

 

「ええ♪ 本当に・・・、こんな食べ物は初めて・・・♪

イチゴ味のエネレーとは全く違うのね・・・♪」

 

「そうですか・・・、喜んでもらえて良かったです・・・♪」

 

「高いお買い物だったみたいだけど、とれも楽しめたわ・・・♪

ありがとう守くん・・・♪ でもこんなにおいしいものを食べちゃったら

もうエネレーは食べられないかも♪ ・・・なんちゃってね♪」

 

 

 冗談めかしてそう言いながら笑うお姉さんと、

それにつられて笑みを零す守くん

 

 初めての外出は、それなりにいろんなことがありましたが

二人にとっては忘れられない一日となったのかもしれません・・・

 

 守くんは、お礼のプレゼントがうまくいったことを嬉しく思いながら、

いつかお姉ちゃんとお姉様にもお礼ができたらと考えます

 

 なお、次の日アミーお姉さんは「やっぱりこれもおいしい」と

当たり前のようにエネレーを食べていました

 

 そして・・・

 

 

「なあ、この周りについてる奴なんだ? この小さい粒も食えんのか?」

 

「緑色のところはなんか苦いな、いや、これはこれでうまいのかも・・・、

うおっ、でも赤いところなんかすげえぞ・・・!」

 

「かっこつけずに店で食べ方とか聞けばよかったな・・・、

折角の果物なのによ」

 

「ま、今回はほとんどマモルが御馳走してくれたようなもんだ、

いずれまた俺らの稼いだ金で食うとしようぜ」

 

「そうだな、この感動を今度は自分の力で味わってやる・・・!」

 

「俺は今度はイチゴ以外も食ってみてえな、

今から楽しみだぜ」

 

 

 守くんのイチゴを分けてもらった3人も、

それなりに堪能できたみたいです・・・

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。