シュークルス・フィリィ・ワールド   作:RE×

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第四十五話 誰にも頼らず

 その後、ある程度休息を取った守くんは

再び近くにいる敵と戦っていました

 

 

「向こうにまた何体かいるよ! 今度は気付いてないみたい」

 

「それとあっちにはちょっと大きのがいるかも、

でもマモルさんなら大丈夫だよねっ?♪」

 

「分かりました・・・、じゃあ気付かれてない方から倒しましょう」

 

 

 ディアさんとエミリーさんの索敵を頼りにモンスターを見つけ、

守くんがそれを倒します

 

 一人でモンスターを探しつつ戦うよりもはるかに効率が良く、

それに奇襲されにくいため、普段より安全な戦いだったと言えるでしょう

 

 ですがその分、いつもより戦う回数も多くなっていました

 

 休憩を挟んだうえ、まだお昼を回っていないにも関わらず

段々と守くんに疲れが見え始めます

 

 

「オッケー、こっちにはもういないよっ♪」

 

「じゃあ次はいよいよちょっと大きい奴お願いするねっ♪

反応からして多分中型のモンスターかな♪」

 

「ちょ、ちょっと待ってください・・・、さすがに疲れちゃって・・・」

 

「大丈夫いけるって~♪ なんたってマモルさん強いんだもんっ」

 

「こいつを倒したら他にはもういないっぽいから

キリのいいところまでおねが~いっ♪

またかっこいいところあたしたちに見せて?♪」

 

「うう・・・、わ、分かりました・・・」

 

 

 休憩を提案する守くんでしたが、

甘えた声で二人に戦闘を求められて思わず頷いてしまいました

 

 魔法の素質と引き換えに貰わざるを得なかった

女性に弱いという素質のせいで、

女性からの頼み事などを断りにくくなっているのです

 

 それでも、大型モンスターと戦った経験があるために

なんとかなるとどこかで考えていたのかもしれません

 

 しかし困ったことに、それは間違いだったと

すぐ気が付くことになります

 

 

「いたいた、あいつだよ・・・! こっちに気付いてるのかな・・・?」

 

「あんまり関係ないと思うよ、だってあれローク・ガストールだもん、

たしか動きめっちゃ鈍いけど頑丈なやつ」

 

「そういやそうだね、だけどマモルさんならやっつけられるでしょっ?♪」

 

「そうそう♪ またかっこいいところ見せて欲しいな~?♪」

 

「えっ・・・? う~ん・・・、あのモンスターとはまだ戦ったことはないんですけど・・・、やってみます」

 

 

 本部でも聞いた中型のモンスターとは、

どうやらローク・ガストールと呼ばれる目の前の存在のことを指しているようでした

 

 荒野の地面と似た色の、巨大な岩の集まりとも言うべきモンスターです

 

 鳴き声なのか何なのか、鈍いうなり声と言える不気味な音が

定期的に聞こえてきます

 

 これまでに戦った大型モンスターほどの大きくないものの、

それでも高さだけで小さな建物くらいはありました

 

 初めて相まみえる敵を前に、

守くんはおだてられるまま一歩踏み出します

 

 

(全然動かない・・・、まだこっちに気付いてないのかな・・・?

だけど・・・、ほんとに岩みたいでどこに目があるのかさっぱり分かんない・・・)

 

(そもそもどこを攻撃すればいいの・・・?

頭を狙うように教わったからいつもできるだけ狙ってたけど、

このモンスターはどこに何があるのかさっぱりだ・・・)

 

 

 目の前にある岩の群体を見て、

どうやって戦えば良いか分からず困惑する守くん

 

 今更ながらに、これまで初めて戦う相手に対しては

常に誰かが指示してくれていたことを思い出しました

 

 

(今は教えてくれる人は誰もいない・・・、

でも、僕が教える側なんだから、ちゃんと教えられる戦いをしなくっちゃ・・・!)

 

 

 少し弱気になっていた守くんですが、ここに来てようやく奮起します

 

 決して豊富とはいえないものの、

これまでに戦ってきた経験が少しだけ力になってくれているようでした

 

 とはいえ、意を決したところで

目の前の相手とどう戦えばいいのか見当が付きません

 

 

「大きな魔法はあとどのくらい使えるか分からないからそれなりの魔法で様子を見ないと・・・、

モンスターが動いてない今ならチャンスだ・・・! グレース・ブルス!」

 

 

 守くんが大きな声で呪文を唱えると、

巨大な氷の塊が弧を描いて相手に飛んでいきます

 

 そのまま動かない相手の、山のように積み重なった岩の中心へ大きな音を立てて命中しますが、

相手は消滅しませんでした

 

 それどころか、ガタガタ震えだしたかと思うと、

見る見るうちに形が変わっていきます

 

 

「う、わっ・・・! 動き出した・・・!?」

 

「あー、あれもしかして寝てたんじゃない? それが今ので起きたとか」

 

「っぽいねー、マモルさーん、がんばってー♪」

 

 

 動きを見せるローク・ガストールに対し、

何をするつもりか警戒する守くんと、安全ば場所からはやしたてる二人

 

 傍から見れば物申したくなる光景でしょうが、

守くんはそれどころではありません

 

 二人のお手本になるように、そしていざという時は守らなければいけないと

真剣に考えていました

 

 そうこうしている内に、相手は手と足、そして頭が判別できる形に変化します

 

 

 「形が変わっちゃった・・・、さっきよりちょっと大きい・・・、本当に寝てたのかも・・・、

でも、これなら頭がどこにあるか分かる・・・! もういっかい・・・!?」

 

 

 守くんは頭部らしき部分へ攻撃しようと距離を取りながら構えますが、

その直後につまずいて倒れ込んでしまいます

 

 どうやら、相手の変化に気を取られて

足元がおろそかになっていたようでした

 

 なんとか立ち上がろうとするものの、

転んでしまったことの驚きや敵を前にした焦り、

そしてここまでの疲労ですぐに立ち上がることができません

 

 

(た、大変だ、早く起きないと、

で、でも足がもつれて・・・)

 

(やっぱり魔法を使いすぎてたんだ、

これじゃもう大きいのは撃てそうにないし、次で仕留められなかったら・・・)

 

 

 目の前の相手が倒せるかどうか、

敵は初めて遭遇するモンスターである以上、考えても仕方のないことでした

 

 恐らくもう一回だけなら使えるであろう魔法で倒せない場合は

逃げられるうちに逃げた方が良い、守くんはそう考えます

 

 そして、その旨を後ろの二人に伝えるべく振り向きました

 

 

「あの、ディアさんとエミリーさん! このモンスター、倒せるかどうか分かりません!

もし次の攻撃で倒せなかったら逃げる準備を・・・」

 

「ちょっと、後ろ後ろっ!」

 

「あいつ攻撃しようとしてるっ!」

 

「えっ!? ・・・わっ!?」

 

 

 必要なことを伝えようとうっかりモンスターから目を逸らしてしまったのがまずかったのでしょう、

冷酷なモンスターはそんな隙を逃しません

 

 二人の声に慌てて振り向くと、ローク・ガストールの身体が

また形を変えていました

 

 というよりも、身体の一部だったはずの岩がいくつか宙に浮いています

 

 守くんがそれに驚いたその直後、

宙を漂う岩が彼めがけて勢いよく飛んでいきました

 

 

「うわぁっ!?」

 

「あっ!」

 

「きゃっ!」

 

 

 咄嗟に顔をかばったりしなかったのはこれまでの経験が実を結んだのでしょうか、

守くんは焦りながらも高く飛び上がります

 

 防具による身体能力の強化はきちんと機能し、

一瞬でかなりの高さまで上がることができました

 

 飛んできた岩は全て地面にぶつかり、

岩同士でもぶつかりながらあちこちへ飛んでいきます

 

 そして、その内のいくつかが後ろで見ていた二人の近くを通りました

 

 

「あ、危なかった・・・、でもなんとかかわせた・・・」

 

「ちょっとちょっと! ウチらの方に飛んできたんですけどー!?」

 

「お願いだから、あたしたち巻き込まないところで戦ってー!」

 

「あぁっ! ご、ごめんなさい・・・!」

 

 

 流れ弾に巻き込んだことを謝罪しながらも、

次は油断しないようにとすぐ前を向く守くん

 

 すると、幸いにも敵は追撃してくる様子を見せていませんでした

 

 

(まだ、攻撃してこない、やっぱり動きは鈍いのかな・・・、

だけど、もう使える魔法はあと一回くらい・・・、

それ以上使ったら多分また倒れちゃう)

 

(あいつを倒せるかどうか分からないけどそれしか方法がない・・・、

でも、どこに魔法を撃てば・・・、やっぱり頭・・・、あ、あれっ・・・?)

 

 

 どうやって戦えば良いか考えながらモンスターを観察していた守くんは、

敵の形が少しおかしくなっていることに気付きます

 

 少し考え、先ほどの攻撃によって飛ばされた岩の分だけ

身体の岩がなくなっていると気付きました

 

 

(もしかして・・・、今の攻撃で身体の岩が減っちゃったの・・・?

・・・うん、やっぱり、飛んできた岩はあそこから動いてない)

 

 

 もう一度後ろへ振り向き、飛ばした岩は戻ったりしないことを確かめると

守くんは思案します

 

 

(今の攻撃を何回か避けたら、弱点か何か出てくるかも・・・?

・・・うん、転んだりしなければまだ動ける、そっか、最後の魔法を撃つ以外にもできることはあるんだ・・・!)

 

 

 前にセレスティナお姉様から教わったことを思い出し、

自分にできることは何があるかもう一度きちんと確認します

 

 そして、戦い方の大まかな流れを想定し、意を決して動き出しました

 

 

「よぉし、やってみよう・・・! こっちだっ!」

 

 

 まずは、後ろで見ている二人から距離を取るため、

あえてモンスターに呼びかけながら移動します

 

 すると狙い通り、相手は守くんを見て向きを変えました

 

 そのまま走り続け、ローク・ガストールがディアさんとエミリーさんに

背を向ける位置まで来たところで・・・

 

 

「岩が浮いてる・・・、また攻撃が来るぞ・・・! ・・・今だっ、えいっ!」

 

 

 同じ攻撃が飛んできたため、守くんはまた思い切り高く飛び上がります

 

 飛んできた岩は先ほどまで守くんがいた場所を全て通過し、

大きな音を立てて地面へぶつかるだけに終わりました

 

 

「やった、また避けられた・・・♪ これならいけるかもしれない・・・!」

 

 

 うまく攻撃をかわしたことで、少しずつ自信を付ける守くん

 

 それとは反対に、攻撃をかわされているために怒っているのか

モンスターは早くも三度目の攻撃を仕掛けてきます

 

 しかし、知能はそれほど高くないのか

それも同じようなことの繰り返しでした

 

 

「また来る・・・、だけど大丈夫・・・! やっ!」

 

 

 複数の岩が飛んでくるとはいえ、タイミングがほとんど同じなため

一度のジャンプで簡単にかわすことができます

 

 そこからさらに2回3回と攻撃をよけていると、

相手が不意に膝をつきました

 

 

「あっ! 倒れ・・・てはいないけど、立ってられなくなったのかな・・・?

よく見ると腕も足も岩が減って細くなってる・・・」

 

 

 改めてローク・ガストールを見てみると、

不気味な岩の塊だったその身体は見る影もありません

 

 攻撃に使いすぎたのか、まともに立っていられないくらい

岩を使い果たしたようです

 

 しかし、身体の岩が減ってきても、

想定していた弱点のような部分は特に見当たりませんでした

 

 

「身体もずっと細くなってるけど、やっぱり全部ただの岩みたい・・・、

じゃあ、弱点はどこにあるんだろう・・・」

 

 

 それでもなお、残った魔力を無駄遣いしないよう

できるだけ攻撃のききそうな部分を探します

 

 そして、不意にどこを狙うべきか気が付きました

 

 

「・・・よく見たら、頭の部分は最初と同じ・・・?

あそこの岩だけ攻撃に使わなかったの・・・?

とすると、やっぱり弱点は頭なのかも! よし、あそこを狙ってみよう!」

 

 

 弱点を守るために最後まで岩を残したのだと判断した守くんは、

できるだけ近い位置で攻撃するために走り出します

 

 それを見たモンスターは、苦肉の策か

とうとう頭の岩を飛ばして攻撃を仕掛けました

 

 

「また来たっ! えいっ!」

 

 

 しかし、相手の動きに慣れて来た守くんは、

高く飛び上がってそれをかわし・・・

 

 

「これでだめならもう逃げるしかない・・・! いっけー!

グレース・ブルス!」

 

 

 空中で呪文を唱え、敵の頭めがけて巨大な氷の塊を放ちます

 

 氷はまっすぐに落下しながら飛んでいき、勢いよく相手の頭部へ命中しました

 

 それを受けたモンスターはそのまま地面に倒れたかと思うと・・・、

その姿を正面させ、魔石となってしまいます

 

 地面に降り立った守くんは、恐る恐る近付いていき・・・

そして無事に倒せたことを確認しました

 

 

「や・・・、やったー! 倒したっ! 倒しましたよっ!♪

やりましたーっ♪」

 

 

 やや大きめの魔石を抱え、嬉しそうに二人の元へ戻っていく守くん

 

 さすがに疲れてしまったのか、歩けないほどではないようですが

時折り転びそうになっています

 

 岩陰から様子を伺っていた二人は、

手にある魔石が確認できたところで小走りに駆け寄ってきました

 

 

「わー♪ やったじゃんっ♪ マジすごかったよーっ♪

ローク・ガストールは頑丈だって聞いてたけどあれだけの魔法で倒せるもんなんだねーっ♪」

 

「とにかく助かったよっ♪ マモルさんマジありがとーっ♪」

 

 

 ディアさんとエミリーさんは揃って守くんを持て囃し、その成果を褒めたたえます

 

 自分の力で始めて見るモンスターを倒せたことで

何となく大きなことを成し遂げたような気分になっていた守くんは、

それを受けて嬉しそうな笑みを浮かべました

 

 

「お二人とも、ありがとうございます・・・♪ お怪我もないみたいで何よりです♪

それで・・・、本当にこの辺りのモンスターはもういないんですか?」

 

「ちょっと待ってよー? シェルム・リプナ! ・・・こっちは確かにいないよ」

 

「シェルム・リプナ! ・・・うん、こっちもいないよ、ここらのモンスターは全部マモルさんが倒しちゃったね♪」

 

「そっか、良かった・・・♪ じゃあ、ちょっと早いけど帰りませんか?

さすがにもう魔法は使えなくなっちゃいました・・・」

 

「そうだねー♪ もう戦えないならそうしよっか、

・・・ところで結局さー、魔石どのくらいあんの?」

 

「結構集まったねー♪ ノルマにされてた数よりもずっとたくさん♪」

 

「おっ♪ マジ?♪ いいじゃんいいじゃん♪

しかも小さい奴だけでそれでしょー?♪

今回は中型のそこそこ強い奴まで倒してるからかなり稼ぎがいいねー♪」

 

「だねー♪ 正直外れかと思ってたけど

今回は大当たりだったっぽいよ♪」

 

「・・・? あの、もう充分にモンスターを退治できたはずですから、

さすがに帰りましょう?」

 

 

 今の状態ではもう戦闘できないとして、帰還を提案したところ

二人は唐突に今日の成果を確かめ、よく分からないことを楽しそうに話します

 

 そして、妖しい笑顔を浮かべたかと思うと、

不思議そうな顔をする守くんにとんでもないことを言い放ちました

 

 

「帰るのはいいんだけどー、その前にー、ちょーっとお願いがあるんだー♥」

 

「この魔石と今あんたが持ってるそれ、ぜーんぶあたしらにちょーだいっ?❤」

 

「・・・えっ?」

 

 

 二人の言い出した驚きの言葉に、守くんは呆けた声で返事をします・・・

 

 

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