シュークルス・フィリィ・ワールド   作:RE×

50 / 52
第四十九話 大人の遊び場

 ディアさんとエミリーさんに肩を貸しながら建物に入った守くんは、

物珍しそうにあちこちを眺めます

 

 妙に薄暗く、あちこちに椅子が置いてあるものの、

遊具の類は見当たりません

 

 ここが一体何の遊び場なのか、当然の疑問を抱いたものの、

それを問いかける前に人影を見つけます

 

 

「今の騒ぎはやっぱりあんたたちかい?

まったく、どうせつまんない男でも引っかけたんだろう?」

 

「ちょっ、気付いてたなら助け呼ぶとかしてくださいよ~・・・」

 

「そうですよ~、ウチら大変な目に遭ってたんですからね~?」

 

「冗談じゃない、本部の御膝元とはいえ厄介ごとはごめんだよ、

それに自分の尻くらい自分で拭えるようにならなきゃ一人前とは言えないね」

 

「ちぇ~、相変わらず厳しいんだから~・・・」

 

「もう少しくらい助けてくれてもいいのに・・・」

 

 

 二人と親しそうに、というより上の立場から話しかけているような人は、

背の高い女性でした

 

 長い髪を腰まで伸ばし、やはり豊満な身体付きをしており、

おまけに体型がはっきり分かるくらい薄い布地のドレスは、胸元が大胆に開いているうえ

スカートには大きな切込みが入っています

 

 薄明かりの下でもはっきり分かるほど真っ白な足が太ももまでむき出しになっており、

相手の恰好が刺激的なことに気付いた守くんは思わずドキッとしてしまいました

 

 

「・・・で、そこの坊やは何なんだい?

あんたがこの娘たちを助けてくれたとでも?」

 

「は、はいっ!? えっと・・・!」

 

「あ~、一応そういうことですね~」

 

「まああんまり助かったとは言えないかもだけど・・・」

 

「ふぅん? この坊やがねぇ・・・?」

 

 

 二人の答えを訝しんだ女性は、身体を屈めて

品定めするように守くんの顔を覗き込みます

 

 長いまつげを携えた目や、濃い色の紅が引かれた唇など、

艶めかしい顔を近づけられ、余計にドキドキしてしまった守くんは、

どこを見ていいか分からずあちこちに目を泳がせていました

 

 

「・・・ま、いいか、世話になったね、

私からも礼を言うよ、ありがとう」

 

「は、はいっ・・・、ど、どうも・・・」

 

「だけど、ここはあんたみたいなガキが来るにゃ10年早いよ、

この娘たちはこっちで預かっとくからとっとと帰りな」

 

「わ、分かりました」

 

「うぇぇ・・・、まあちょっと動いたら痺れも取れて来たし、

もう歩けるからいっか・・・、マモル、ありがと」

 

「そんじゃま、いろいろありがとね、マモル」

 

「あ、いえ・・・」

 

 

 そう言って守くんから離れ、女性の方へ行くディアさんとエミリーさん

 

 これ以上できることもなさそうな守くんは

言われた通り帰ろうとしますが、そこに三人の会話が聞こえてきました

 

 

「それであんたたち、客も逃がしちまってこれからどうする気だい?」

 

「えっ?」

 

「どう、って・・・」

 

「客を連れてくるから早めに店を開けてくれって言ってきたのはあんたたちだろう?

そのためにわざわざ早起きしてこんな時間に開けてやったんだよ?」

 

「げっ・・・」

 

「あっ・・・」

 

「それで結局、肝心の客は取れないと来たもんだ、

無駄な手間取らせたこの不始末はどう落とし前付けるんだい?」

 

「え、えぇっとぉ・・・」

 

「それはぁ・・・」

 

 

 静かではあってもどこか迫力を感じる女性の声に、

ディアさんとエミリーさんは狼狽えてしまいます

 

 言い訳でも探すかのようにあちこちへ目を泳がせ、

そして帰ろうとする守くんの姿に気付きました

 

 二人はお互いの顔を見合って同時に頷くと、

ディアさんが女性に向き直り、エミリーさんが突然走り出します

 

 

「い、いやだな~・・・、あたしら、お客さんちゃんと連れてきましたよ~?」

 

「へぇ? その客はどこにいるんだい?」

 

「それはもちろん・・・」

 

「こ、この子ですよ~!」

 

「えっ・・・? あの・・・」

 

 

 二人が「客」として女性に見せたのは、

訳も分からず抱きかかえられた守くんでした

 

 当然、居ましたが彼を子供扱いしていた女性は

呆れた顔で言葉を返します

 

 

「冗談は良しな、そいつはまだガキじゃないか」

 

「い、いやいやいや、よく見てください、ほら、この子これでも

シュクトゥル・セージュですから!」

 

「しかも階級5で正規の人員だから! ねっ? お客として迎えられるでしょ?」

 

「おいおい、さっきのよりも冗談に聞こえちまうよ、

しかし・・・、なるほどねぇ、人は見かけによらないもんだ、

いいだろう、奥の部屋使いな」

 

 

 二人が守くんの付けているシュクトゥル・セージュの証を見せると、

女性はひとまず納得した様子で中へ入るよう促しました

 

 反対に、何がどうなっているのか分からない守くんは

困惑の表情を浮かべるばかりです

 

 

「あの・・・、一体どういう・・・」

 

「いいからいいから、さっ、行こ行こっ♪」

 

「初めてのお客さんにはいろいろ教えてあげるから、

まずはあっちの部屋行こうねっ♪」

 

「一応言っとくけどやりすぎるんじゃないよ、

稼げないくらい夢中になられちゃ元も子もないんだからね、

そういう遊び慣れしてない相手は嵌ると抜け出せなくなっちまう」

 

「分かってますよー♪ じゃ行きましょっ♪」

 

 

 ところが、口を挟もうとしたところで二人に遮られ、

守くんは移動させられてしまいました

 

 笑顔を浮かべて両側からくっついていたディアさんとエミリーさんですが、

部屋に着き、扉を閉めたところで溜息を吐きながら肩を落とします

 

 

「は~・・・、あの人の機嫌を損ねずに済んだのは良かったけど・・・、

ねえ、あんたお金持ってる?」

 

「えっ? いえ、持ってませんけど」

 

「だよね~、持ってたとしてもお小遣い程度でしょ・・・、

理由もなしにここで使えるくらい現金持ち歩くわけないもん」

 

 

 いきなり態度の変わった二人を見て、

ますます訳が分からなくなってしまう守くん

 

 しかし、なんとなくですがあの女性を恐れていることは察し、

もう気になることを聞いても良いのではないかと考えました

 

 

「あの・・・、結局どういうことなんですか?

子供だから帰れって言われたり、シュクトゥル・セージュだからいいって言われたり・・・、

そもそも、ここは何をする場所なんでしょう?」

 

「えっ? だから大人の遊び場って言ったじゃん、

それじゃ伝わんなかった?」

 

「一言で言うと~、エロいことするんだよ」

 

「えっ・・・? えぇっ!?」

 

 

 非常に簡潔な言葉で伝えられ、

守くんもここがどういう場所かようやく理解します

 

 さんざん二人の言っていたサービスというのも非常にいけないことだと分かり、

途端に狼狽えてしまいました

 

 

「あ、あの・・・、それじゃあ僕、なおさらここにいちゃいけないんじゃ・・・」

 

「だから普通はそうだけど、あんたシュクトゥル・セージュの階級が5で

限定的に大人扱いされるんだから問題ないじゃん」

 

「えっ? それ、どういうことなんですか?」

 

「どういうこと・・・って、ちゃんとした職業に就いてるものは

大人の権利を得られる、これ学校でも教えてるでしょ・・・?」

 

 

 守くんが尋ねたことは、どうやらこの世界では常識らしく

二人はとても不思議そうな顔をします

 

 自分がこの世界の人間ではないと知られては大変なことになるかもしれない、

それを思い出してどう言い訳すれば良いか考えますが・・・

 

 

「え、えっと・・・、あの・・・、その、ですね・・・」

 

「あ~・・・、もしかして、学校に行かせてもらえなかった系?

悪いこと聞いちゃったかな」

 

「早く金稼げるようになれって無理やり魔法の修行とかさせられてたわけ?

だからその年で戦えるわけか~・・・」

 

「へっ? あ、あの・・・」

 

「ああ、言いたくなきゃ無理に言わなくていいよ、

あたしらも似たようなもんだし」

 

「もっと昔からここで働かせられてんだよね、

まあいろいろあって稼ぎも減って来たから

客を探したり副収入手に入れるつもりでシュクトゥル・セージュになったんだけど」

 

「そうそう、試験のときに魔石たっぷり持ってた奴から上手いこと貰ったんだよね~♪」

 

「で、後はマモルも知っての通り時々ああやって稼いでたわけ」

 

「そ、そうなんですか・・・、あはは・・・」

 

 

 ごまかすまでもなく相手が納得してくれたため、

守くんは胸を撫でおろします

 

 おまけに、ほんの些細な変化で彼は気付きませんでしたが、

二人の態度がどこか柔らかくなっていました

 

 

「ま、学校行けなかったんじゃあたしらみたいにできること限られるよね・・・、

さてと、話ばっかしててもしょうがないし、いっちょタダ働きさせていただきますか♪」

 

「着替えてくるからここで座ってて、お金はウチらのおごりってことでさ、

気にしないでいいから」

 

「大きめの魔石も貰ってるし、前払いと考えてもお釣りはくるね、

じゃ、いい子で待ってなよ♪」

 

「は、はい・・・」

 

 

 そう言いながら部屋の奥にあった扉へ入る二人に、

守くんは身体を強張らせながら返事をします

 

 自分が少し、というよりかなりいけないことをしているような気がして

ドキドキしっぱなしでした

 

 逃げ出したいような気持もあるものの、

ここで待っているようしっかり求められていたこともあってか足は一切動きません

 

 

(ど、どうしよう・・・、ほんとにここにいていいの・・・?

なんだかすっごくいけないことしてるような・・・)

 

(シュクトゥル・セージュだったら大丈夫だって言われたけどて、ほんとかな・・・?、

そういうの、送られてきた書類に書いてあったのかも・・・、帰ったらアミーお姉さんにもっと教えてもらわなきゃ・・・)

 

(それにしても・・・、これからどうすればいいんだろう・・・)

 

 

 あれこれと考え事をして何とも言えない時間を過ごし、

守くんは二人が戻ってくるのを待ちます

 

 そして大した時間ではないものの、同時に長く感じられた時間は

扉の開く音で終わりを告げました・・・

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。