彼女は酷く気分屋で行動が読めないウマ娘として知られている。
然し、そんな彼女にも他人には知られていない事が存在する。
これは、そんな彼女の休日から始まる物語。
(怪電波を受信した筆者の妄想と捏造が爆発した作品となっております。受け付けない方は読まない方が宜しかと…。)
期待はしないでね。
割と真面目に。
私達が「現実」と呼んでいる世界とは似て非なる世界線、現代と同水準程度に科学が発達しているその世界には『ウマ娘』と呼ばれる種族が存在する。
そのウマ娘という者達は本能的に走る事と甘味を好み、其の誰もが見目麗しい少女の姿をしている。
古くは人間と同様に森林地帯で生活していた彼女等の祖先だが、進化の過程を繰り返す中で次第に現在の人間の女性とほぼ同じ形態を獲得した。
また歴史的には、彼女等の神秘的な美しさと驚異的な身体能力から信仰や迫害・排斥の対象になったり、古代にはユーラシア大陸のほぼ全てを手中に収めたウマ娘の大帝国を築き上げる等の人間と切っても切れない歴史がある。
現在では人間の特異種である*1と見られているウマ娘だが、耳や尻尾が生えていたり*2人間と同程度の筋肉量・体重でも発揮する力が大幅に異なったり*3、人間と比べ成長速度が早かったり*4等、未だに謎が多い種族である。
そんなウマ娘だが、彼女等は何故か本能的に走る事を好み、勝ち負けに拘る等闘争本能が非常に強いからなのか、その死力を尽くす様な競走は迫力満点で見応えがある。その為世界各国では伝統的な祭事*5としての競バが文化になり、次第に日常的に行われる様になった結果、今では人気エンターテインメントの一つとして人気を博している。
因みに、日本では主に地方競バと中央競バに分かれており、特に中央競バは近年世界に劣らぬ規模と精強さで名を馳せている。
そんなウマ娘を教育している日本を代表するウマ娘教育機関である『日本ウマ娘トレーニングセンター学園』、通称トレセン学園は東京都府中市に位置している中高一貫校であり、日本一の環境設備を有している他、数多くの有名なウマ娘達が在籍している事から日本全国のウマ娘の憧れの学校となっている。
そしてそのトレセン学園には、学園の関係者に(ある意味で)広く知られているある一人のウマ娘がいる。
そのウマ娘の名*6は『ゴールドシップ』という。
誰が言い出したのか定かでは無いが、そのウマ娘の普段の奇怪な言動や行動から、関係者曰く「ウマ娘界のハジケリスト」や「ゴゴゴーゴ・ゴールシ」、「黙れば美人、喋れば奇人、走る姿は不沈艦」等々の(不名誉な?)通り名を保持しているが、レースで魅せるその実力は間違い無く本物であり、一度観たら忘れられないその走りと美貌からファンの根強い支持を受けている。
この話はそんなウマ娘である彼女、ゴールドシップのある日の出来事である。
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広大な規模を誇るトレセン学園には数多くの施設が建ち並び、芝が整備されたトラックや屋内プール、トレーニングルームの他にも多数の施設が存在する。
その中には地方や外国から来ている学生の為の学生寮もあり、生徒の在籍数の多さから二人での相部屋となるが学園の敷地内で生活することが出来る。
また外泊や外出は許可証を申請すれば余程の事(卒業に関わる成績不振等々)が無い限り認められており、要件日の一週間前迄に所属寮の寮長に提出し、その後学園理事長の許可を経ることになる。
そして今、理事長室の主である『秋川やよい』は理事長秘書である『駿川たづな』と共に書類の処理をしており、暫くして一枚の外出許可申請書に手を付けた。その申請をしたウマ娘の名には『ゴールドシップ』と書かれており、外出目的の欄を確認した二人は窓から覗く流雲を何処か遠い目で眺めた。
「驚愕ッ!?…もうそんな時期になっていたか…。」
「そうですね…。私達も時間が空いたら行かなければ…。」
二人して何かを思い出したのか暫くの間それを懐かしむ様な仕草を見せていたが、手が止まっている事に気付き、気を取り直して中断していた書類作業を再開する。
然し、二人の脳裏にはゴールドシップの外出目的に関わる、二人にとっても大切なある人物を忘れられないでいた。
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トレセン学園にはチーム制度があり、基本的にはウマ娘五人以上の所属とチーム専属トレーナー*7がいる事で初めてチームとして認められている。
チームには星々に因んだ名称が名付けられており、有名なチームは選抜レースが行われる程である。強豪のチームに所属する事、つまりは優秀なトレーナーの指導を受けられる事になる為、その倍率は非常に高い。
各チームのトレーニングに関しては専属トレーナーに強い権限が与えられており、トレーニング内容はトレーナーによって決定する事ができる。但し、過激な練習によるウマ娘の怪我の防止や効率的なウマ娘の育成の為に一週間に一度の休息日を設ける事を条件としており、休息日はウマ娘側の意向を尊重したものになっている。
ゴールドシップが所属しているチーム『スピカ』もその例に漏れず、一週間に一度の休息日を迎えていた。然しながらスピカのトレーナーには、いや、学園に所属しているトレーナーには休日という名の日はあれど休日は存在しない程には忙しく、今日もトレーナー室で書類仕事に明け暮れている。
普段は騒がしい上に手が掛かると思うチームメンバーのウマ娘達だが、いないと何処か寂しく思うものだ、と不思議な思いに身を馳せるスピカのトレーナーだが、チームメンバーであるゴールドシップの事を思い浮かべた時、ある事を思い出す。
「そういえば…、今頃だったな。あの人…。」
ゴールドシップの関係者であり、自身の恩師でもある人物の事を、トレーナー室の窓から見える青空を眺めながらふと考えるトレーナーであった。
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休息日という事もあり大半のウマ娘達は買い物等で外出をしているが、それはスピカのメンバーも例外では無い。近々にレースを控えていれば練習を優先するだろうが、幸いな事に誰もレースに出走予定は無く、予定があると言って誘いを断ったゴールドシップ以外のチームメンバーで朝早くから買い物に来ているのだった。
皆年頃の少女らしくファッションや趣味の話題で盛り上がっている様で、トレセン学園から少し離れた駅にほど近いショッピングモールを悠々自適に楽しんでいるが、散策途中で此処にいないゴールドシップについての疑問をスペシャルウィークがふと口にする。
「ゴールドシップさん、どうしたんですかね?普段の買い物だったら率先して『お〜!!行こうぜ!行こうぜ!!ファイアー!!』位の勢いで参加するのに…。」
「さあ…。私が理由についてお聞きしても、珍しく真面目な表情で『悪ぃな。どうしても外せない用事が有るんだ…。』と言った切り、理由について何も話して下さらなくて…。」
そんなスペシャルウィークの疑問に、普段何かと交流(と呼ぶかは不明だが)しているメジロマックイーンが答える。
チームのムードメーカー(兼トラブルメーカー)である彼女が珍しくも真剣な様子を見せる用事、とやらが非常に気になるメンバー達だったが、プライバシーに関わる問題な為に深く追求しようとはしなかった。
少し時間が過ぎて、予約していたバイキング形式の昼食*8を食べ終えた一行は午後のショッピングを始めようとして、丁度目に入った花屋に見慣れた気がする神々しいウマ娘を見付けた。
そのウマ娘は前髪を下ろした芦毛の耳と長髪をしており、前髪を留める為の船を模した髪飾りを着けている他、服装は灰色のワンラインがついた黒地のロングスカートに白いブラウスを着ており、ブラウスの襟には真鯛を模したブローチを身に着けている。また持っている鞄には死んだ魚の様な目が描かれた擲弾に棒を突き刺した奇妙なストラップを付けている。
既視感を覚える謎のウマ娘が気になった一行は全員で目配せをすると、静かにそのウマ娘へと近付いて行く。すると、周囲からの視線を集めている謎のウマ娘と花屋の店員の会話が聞こえてくる。
「此方が御注文された白と黄色の菊、桃色のカーネーション、赤のアンスリウム、デルフィニウムの花束ですよ。」
「えぇ、ありがとうございます。とても綺麗な花束ですね。では代金を…。」
「その事何ですが…。今回の御注文は無料で良いですよ、ゴールドシップさん!普段私達をレースで楽しませて下さっている御礼です!!店長からの許可も出ています!!」
「い、いえ、そんな!こんなにも美しい花束を作って頂いたのに無料にして頂く訳には…!それに…レースは走りたいから走っているだけですので…。」
店員の会話によって、あの神々しいウマ娘の正体がゴールドシップである事に驚きの余り言葉が出ない一行。普段の奇行や姿を知っているからか、今のゴールドシップの態度に違和感しか覚えない。
(あの普段は豪快なゴールドシップさんが、一人だとこんなお淑やかなお嬢様キャラだったなんて…!!)
(あの普段は押しの強いゴールドシップさんが、他人に押されているという大和撫子を発揮するだなんて…!!)
(あの普段は奇行種のゴールドシップさんが、至って常識的な行動と言動をしている上に人気があるなんて…!!)
(トレーナーが作ったあのイカしたチーム勧誘ポスターに対して『センス無いな』とか文句を言っていたゴールドシップが、何か魚が死んだ様な目をしてるイカしたストラップを付けているだなんて…!!)
【何故だろうか。凄い(ウマ娘・女性として/美的センスが)負けた気がする…!!】
初めて知るゴールドシップの態度と対応にスピカの全員が衝撃を受けて茫然としている間に会話が進んでおり、サインをする代わりに無料にしてもらうという事で合意したらしい。
それでも最後まで代金を支払おうとするゴールドシップだったが、店員の圧に負けたのか丁寧に御礼を言って花屋から去って行く。
これ迄の余りの驚きから突っ立っていた一行だが、遠ざかって行くゴールドシップの背中を見た事で意識を取り戻し、全員で目配せをして意識を共有する。
【ゴールドシップ(さん)の秘密、知りたい(わ)(です)(ですわ)!!!】
この決意の元、外出目的が買い物からゴールドシップの追跡*9に変わったのだった。
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急遽ゴールドシップの追跡を開始したスピカの面々だったが彼女に怪しい行動は見られず、追跡中は常に静かに佇み何かを考えていて、深い思考の海に沈んでいる様だった。
そんな彼女はショッピングモール近くの駅から電車にニ時間程乗り、更に降りた駅からバスで三十分程の寂れた灯台と教会が近くにある海岸に辿り着いた。
人が一切見えない穏やかな海岸を黙々と突き進むゴールドシップと彼女を追いかけるチームメンバー達だったが、教会裏手の崖先に辿り着くとゴールドシップが突然立ち止まる。
ストーキングしていた事が遂にバレたかと思い謝罪の言葉を考える彼女達だが、ゴールドシップは彼女等の方向を見ずに崖先の何かを見ており、何かをしながら普段は絶対に聞かない口調で語り掛けている。
何を見て話しているのか気になった一行だったが、ゴールドシップは少しの間立ち尽くしてから屈むと、その視線の先には文字が掠れた墓石があった。よく見ると彼女が持って来た花束も置かれている。
漸く彼女の目的に気付いたスピカの面々は気不味さから全員揃って退却を開始するが、誰かが隠れていた茂みの木の枝を踏んだのか、パキッという小気味よい音が鳴り響く。
周囲は人気の無い海岸で、風も波も静かな此の場所で人為的な音が響かない筈もなく、墓石の方を向いていたゴールドシップが音源の方向へと振り返る。
音の方向に振り向いたゴールドシップが見たのは、草が生い茂った枝を両手に持ちながら忍び脚で茂みから遠ざかろうとするチームメンバー達の姿だった。
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ゴールドシップにバレた事に気付いて逃げに走ったスピカの面々だったが、普段よりも力強い上に恐ろしい迄の速さと無表情で翔け抜けた*10ゴールドシップによって全員が正座の刑に処されていた。
全員を捕まえたゴールドシップは凍てつく様な視線で彼女等を一瞥すると、溜息を吐いてから呆れた様子で質問する。
「勝手にストーカーした事はもう良いです。それで、何の為にこの様な事をしたのでしょうか?」
ゴールドシップの当然の疑問に言葉が詰まる一同。今素直に『ゴールドシップの秘密を知りたいから。』と言えばどうなるのかは想像に難くない。先程味わったあの恐怖を再び感じたいと思うのは、余程の特殊性癖の人位であろう。
そんな中、その質問に一人だけ手を挙げたのはメジロマックイーンだった。
「そ、その前に、一つ質問しても宜しいでしょうかゴールドシップさん…?」
「何でしょうか、メジロストーカーさん。」
「スト…!?いえ、それは兎に角として…。その服装は良いとしても、その話し方はどうされたのですか?」
「あぁ、この話し方ですか?此方が素ですよ。学園では元気溌剌*11な人物像を意識しているので。普段の私、凄い元気でしょう?」
普段の学園での独特な話し方では無く、自分以上に名家のお嬢様口調が板についている事が気になって仕方がないメジロマックイーンと愉快な仲間達だが、ゴールドシップは無表情なドヤ顔で答える。元気溌剌の意味を間違ってはいないが勘違いしている様な気がしてならない一行だが、指摘はしない。だって後が怖いから。
「それで、何故ストーカー等という行為をしたのですか?」
「そ、それは…。」
最初にして最大の質問をされ困窮するスピカのメンバー達。すると何かを思い付いたのか、スペシャルウィークが勢い良く手を上げて答える。
「その…、そうです!!ゴールドシップさんが珍しく真面目な表情をして断るので、何か悪い事をされるのでは無いかと思って心配で付いて行ってしまいました!!はいッ!!」
「悪い事…ですか?例えばどの様な?」
「えっと…。何か深刻な問題で脅されていて、その…うまぴょい*12を強制される、みたいな…。そうですよね!!皆さん!!」
『そう!!その通りよ(だよ)(です)(ですわ)!!』
スペシャルウィークの間一髪の発想により体裁を保つ事に成功したスピカの面々。それに対するゴールドシップの対応は…。
「そうでしたか…。御心配をお掛けして申し訳御座いませんでした。しかもその御厚意をこの様な形で台無しにしてしまい…。」
(結構無茶があったけど、納得させられて良かった!!)
スペシャルウィークの話に納得をしたゴールドシップはスピカの面々に深く頭下げて謝罪するが、本当は好奇心からストーカー行為をした一行は直ぐに頭を挙げさせる。特に普段の学園での様子とは全く異なる今のゴールドシップに謝られると、罪悪感と戸惑いの感情が湧き出てくる。
そんな一抹を終えた頃には夕日が差し掛る時間となり、寮の門限に間に合うように今度はスピカ全員での帰路につく。
古びた教会からの立ち去り際、ゴールドシップは何かに呼ばれた気がして、今一度墓石のある方向への道を振り返る。
すると其処には、今は亡き最愛の両親と両親の親友であった
視界に見える人達が有り得ない幻覚だと理解していても、ゴールドシップは彼等に駆け寄りたくなる衝動に駆られる。
近寄りたい衝動に駆られ彼等に近付こうとしたゴールドシップだったが、付いてきていない事を不審に思ったスピカのメンバー達が自分に呼び掛ける声に振り返り、少し遠くにいる
最後にもう一度彼等がいた場所を見てみると其処に誰も立っておらず、唯穏やかな潮風が優しく頬を撫でるだけだった。
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〜帰りのバスと電車の中での会話〜
メジ「そう言えばゴールドシップさん、結局誰のお墓参りでしたの?」
ゴル「あぁ、あの墓石は私の義父様の墓石ですよ。メジロストーカーさん。」
スペ「そのネタまだ演るんですね…。ん?義父と言う事は…、御両親は?」
ゴル「…両親は既にいません。私が幼い頃に飛行機事故で亡くなってしまったので…。」
スペ「す、すみませんゴールドシップさん!!配慮が足りず…。」
ゴル「良いのですよ。両親がいなくなった事は確かに悲しかったですが、私には義父様がいましたから。」
トウ「ねぇねぇ!その義父様という人はどんな人だったの?」
ゴル「義父様の事は皆さんには話していませんでしたね。少し長くなりますが、お話ししましょうか…。」
次回 〜黄金船の義父様〜
いつか続きを書くかもしれない。
たぶん書かないけど…。
続きは書くかもしれないし、書かないかもしれない。
予定は未定なのだ。(失踪)