メジロ家の落ちこぼれ   作:神咲胡桃

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ウマ娘二次創作は初投稿です。

多分続かない。


第一レース
1メジロ家の残りカス


――――あなたに、レースで走る才能は有りません

 

 

その言葉は、ひどく頭に残り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

頭の上にある二つの耳、腰から伸びる尻尾。

明らかに人間とは違う存在、ウマ娘。

人間よりも発達した強靭な脚力を持つ彼女たちが、一度は夢見るレースの舞台『トゥインクル・シリーズ』。

そんなウマ娘たちのために創られた、日本でも有数の学園『トレセン学園』。

そこでは多くのウマ娘たちが日々己を鍛え、しのぎを削り、友情を育んでいる。

また、ウマ娘の他にも、彼女たちをサポートするトレーナ―の育成にも励んでおり、ウマ娘同様、多くの人間がトレーナーとなるために日々学んでいる。

 

そんなトレセン学園は、基本的にどんなウマ娘だろうとその門を開く。

 

そう、熱意に燃える者にも、使命を果たそうとする者にも、気が小さい者にも、少々?奇天烈な者にも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――どんなに落ちこぼれだろうとも。

 

 

それはとても、残酷な話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『今先頭がゴールイン! 熾烈なデッドヒートを制し、先頭は3番―――! 2着は――――――』

 

実況の声がレース場に響き渡る。

今行われていたのは、トレーナーが付いていないウマ娘たちによる選抜レース。

故に観客席にいるのは、有望株がいないか見に来たトレーナーか、大成するかもしれないウマ娘を捜しに来た記者か、酔狂な者がほとんどである。

レースを見届けたトレーナーたちは、一斉にその場を動き出す。

各々、今のレースで目を付けたウマ娘たちにスカウトに行ったのだ。

いつもは一着か二着のウマ娘くらいにしか声が掛からないが、今回のレースでは三着以下のウマ娘にも声が掛かっていた。

 

「君をスカウトさせてくれないか?」

「私と一緒に、勝利を目指しましょう!」

「僕なら――――」

「いや俺が――――」

 

そうやってスカウトするトレーナーと、スカウトされるウマ娘によって混みだした道を、スルスルと抜けるように歩く一人のウマ娘がいた。

 

「(今日も、ドベだった……)」

 

頭の耳を力なく垂らし、沈んだ表情でトボトボと歩くウマ娘の名は()()()クラウディ。

有名なウマ娘の一族、メジロ家の一員である。

もっとも、彼女にとってメジロとはただの名前の一部でしかなく、メジロだからなんだというわけではない。

 

しかし世間にとってはそうではないのだ。

天皇賞(春)で勝利が期待されているメジロマックイーンを始めとして、メジロライアン、メジロドーベルなど、優秀なウマ娘を排出。

さらに過去にも優秀なウマ娘を輩出してきたということだけあって、メジロという名は世間にとって一種のステータスであり、絶対的な期待なのだ。

実際、前述のマックイーン達はそれだけの結果を出している訳であって、クラウディにもそれなりの期待が()()()()()()()

 

そんな期待も昔の話で、今ではクラウディに目を掛けるトレーナーは一人もいない。

当たり前である。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のウマ娘を、誰がスカウトしたいと思うのだろうか。

お陰で数少ない一部の心無い者たちからは、『メジロの残りカス』とまで呼ばれる始末。

ちなみに噂では、そう呼んだ者たちは知らずの内にいなくなったりするらしいのだが、クラウディは『メジロの残りカス』を妥当な評価だと受け入れている。

とにもかくにもクラウディは、取り残されたウマ娘の一人として、やるせない日々を送っていた。

 

「……気にし過ぎても仕方ないよね。トレーニング、始めよう」

 

レースを終えたクラウディは、トレーニングで使っているグラウンドに出ると、柔軟体操を始める。

勿論、トレーニングをするためだ。

普通に考えてレースの直後にトレーニングなどすることはまずないが、様々な能力が劣っているクラウディにとって、やらないという選択肢はない。

 

柔軟を終えると、グラウンドを軽く走り始める。

トレーナーがいないクラウディにとって、自身にあったトレーニングというのはよく分からない。

ただ何となく、これは間違っているんだろうなぁということには、薄々気づいているのだ。

しかし、昔から気が弱く自分から他人と話せない、所謂コミュ症な彼女に、他のメジロ家のウマ娘に聞くことも、聞ける友達もいないし、他人を魅了するような特筆すべき点がないウマ娘にわざわざ助言をするような人間もいない。

ならばと自分で調べようにも、メジロの家庭教師すら苦戦させる彼女にはそれも難しかった。

そんな彼女には、ただがむしゃらに走り、巨大なタイヤを引き、コサックダンスでグラウンドを回るしかなかった。

ちなみにコサックダンスは、とあるウマ娘に強制的に止められた。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……! 走……った!」

 

何度も何度もグラウンドを走り、ようやく足を止めた頃にはすでに日が落ちかけていた。

頬を流れる汗を拭いながら、昼から始めた今日のトレーニング結果を思い出す。

 

「……グラウンド、4周。タイヤ引き……1.5周……短距離20回」

 

これを少ないか、それとも順当な結果なのかと考えるには個人差があるが、クラウディ本人は少ないと感じていた。

 

「これじゃ、駄目だ。もっと、もっと頑張らなきゃ……私は、落ちこぼれのまま――――」

「――――クラウディ?」

「……ッ!」

 

いきなり掛けられた声に肩を跳ねさせる。

振り向くとそこには、整えられたすらりとした身体に頭の上の耳と腰から伸びる尻尾。

出来そこないのクラウディとは正反対で、世間やメジロ家から天皇賞(春)の勝利を期待されているウマ娘、メジロマックイーンである。

勿論、彼女はすでに専属のトレーナー契約を済ましており、トレーナーの元による指導も始まっている。

ちなみにクラウディのコサックダンストレーニングを止めさせたのは、彼女だったりする。

 

「あなた、今日は選抜レースだったのでは? もしかして、レース後すぐにトレーニングをしていたんですか?」

「…………」

 

優雅に腕を組み問い詰めるマックイーンに、クラウディは俯いたまま何も言わない。

その様子に小さくため息を吐いたマックイーンは、クラウディに近づくと優しく抱きしめた。

 

「別に咎めるつもりはありません。あなたの向上心は、しっかりと認めています。ですが、レース後に休みを取らず、過度にトレーニングをするのは好ましくありません」

「……はい」

 

トレーニング後で汗をかいているのも気にせず、マックイーンはクラウディの頭を撫でる。

マックイーンは落ちこぼれのクラウディにも、こうして優しく接してくれる。

だが、彼女にとって、それは一種の苦痛でもあった。

マックイーンにとって、クラウディは隣に並び立つライバル足りえることはなく、互いに切磋琢磨し合う友人でもなく、単なる慈善を与える庇護の対象でしかない。

それがクラウディの非才さをより際立たせ、彼女の心に影を落とし続けるのだ。

 

「今日はもう休みなさい。オーバーワークであなたが怪我をするのを、私は望みませんから」

 

そう言うと、マックイーンは寮へと戻って行った。

それを見届けたクラウディは、言われた通りに大人しく寮へと帰ることにした。

 

寮への帰り道をクラウディは一人で歩く。

 

自分の走りの才が非才なことは、確かに悔しい。

だけど、自分を産んでくれた両親が憎いと思ったことはない。

こんな自分でも、お腹を痛めて産んでくれた両親を恨むなんてとんでもない。

 

マックイーンが憎いわけでもない。

彼女が才能だけでなく、とてつもない努力の結果として今の場所にいることはよく知っているし、そんな彼女が優しくしてくれているのも、きっと善意からなのだろうと思う。

ライアン、ドーベルにしても同様だ。

 

だけど、それでも勘ぐってしまう。

マックイーンたちが才能も実力も無い自分に優しくしてくれるのは、ただ単に家の繋がりがあるからではないのか、と。

必死に頭を払って否定するも、そんな考えが頭を埋め尽くす。

 

 

――――あなたに、レースで走る才能は有りません。諦めなさい。

 

「……ッ!」

 

あの時の言葉が、頭を過ぎる。

知らずの内に息が浅くなる。意識が遠のく。平衡感覚がおかしくなり、足元が危なくなる。

 

「違う……ッ!」

 

しかしクラウディは、歯を食いしばり何とか持ち直す。

 

そして頬に汗とは違う雫を流しながら、寮へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

とある休日。

 

トレセン学園の食堂のテラス席の一角に、3人のウマ娘が集まっていた。

 

「実は実家から良い茶葉が送られてきまして、せっかくなので試してみましょうか」

 

一人はメジロマックイーン。

最近の悩みは甘いものを控えたせいでストレスが溜まり、結局甘いものを食べてしまうこと。

 

「その茶葉、あたしの所にも来たよ。それは良いけどさ、さっさと始めちゃおうよ」

 

頭の上で手を組んでいるのはメジロライアン。

マックイーンのように可愛くなりたいと思っている。周りには隠しているつもりだが、はっきり言ってバレバレ。

 

「私も送られてきたわ。取りあえず紅茶は貰うけど、そんなことを聞きに来たんじゃないわよ」

 

腕を組み、そう言い放つのはメジロドーベル。

孤高の令嬢などと言われているが、実際は褒められるのに弱いただのコミュ症。一応男性が苦手なのも関係している。

 

メジロ家の3人が、こうして休日に集まるのはおかしなことではない。

マックイーン主催でアフタヌーンティーを楽しむことは、メジロ家にいた頃の習慣なのだ。

入れた紅茶を2人に配り、マックイーンも自身の紅茶に口を付ける。

それに倣い、他の2人も紅茶を飲み始める。

 

「……で、一つ聞きたいのだけど」

「ああ、あたしもだ」

「……!」

 

カップを置いて、ドーベルが話を切り出した。

ドーベルとついでにライアンの鋭い視線の先では、マックイーンが必死に目をそらそうとしていた。

 

「なんで、()()がここにいないのかしら?」

「マックイーン、今度こそ呼んでくるって言ってたよね?」

 

心なしか二人の視線の温度が冷えていくのを感じ、マックイーンは慌てて弁解を始める。

 

「ち、ちちちち違いますのよ! ほ、本当はちゃんと誘おうと思っていたのです! ただ、その時が丁度あの子がトレーニングを終えた時で、なんか抱きしめたらいい香りがしてきたから忘れただけであって……」

「それであの子を誘うのを忘れたんだー?」

 

いつもの優雅さは影も形も無くなり、もはや形を成していない弁明に、二人は呆れた目を向ける。

 

 

「……使えないわね」

「ドーベル、何ですって! ぶち○○ますわよ!」

「彼女一人誘えないくせに何言ってるの?」

「ああん!? ボコボコにしますわよ! ボッコボコですわよ!?」

 

ドーベルの言葉にキレたマックイーンが立ち上がり、メジロ家の淑女にあるまじき言葉を吐きながらドーベルに詰め寄る。

 

「マックイーン、さすがにそれは拙いよ」

「ハッ! ……コホン。失礼しましたわ」

 

さすがに今の発言は不味かったことに気付いたマックイーンは、何時もの落ち着きを取り戻し、椅子に座る。

精神を落ち着けたマックイーンは、減量期間ではアフタヌーンティーの日だけに限定して食べているケーキにフォークを差し入れる。

マックイーンの名誉のために言っておくと、彼女は普段はこんなにキレやすくはない。

今回が特別なのだ。

そして、マックイーンがケーキを口にしようとしたタイミングで、ライアンが疑問を口にする。

 

「そういえば、お祖母さまはあの子にもちゃんと茶葉を送ってるの?」

「まずあり得ないわ。お祖母さまはあの一件を未だに引きずっているもの。だから、私にあの子の分が一緒に送られてきているし」

 

――――バキィッ!!

 

「ちょ、マックイーン、落ち着いて! フォークが折れちゃってるから!?」

 

……今回が特別なのだ。

 

「……ほんとマックイーンは、あの子のことになるとすぐ感情的になるよねぇ」

「フン。別にいいではありませんか。クゥは可愛いのですから、仕方ありませんわ」

「理由になってないと思うんだけどなぁ」

 

先ほどから話題に上がっている彼女やあの子、クゥというのは、メジロクラウディのことである。

普段は表に出さないが、マックイーンはクラウディをとても溺愛している。

それこそ、クラウディのことに関して、メジロ家の元当主と口論になるくらいには。

マックイーンは、彼女をこのアフタヌーンティー(別名:クラウディを愛でる会)に誘おうと思っているものの、その度にクラウディへの愛が暴走しては失敗しているのだ。

 

「さて、今回は朝起きる時のクラウディの仕草について話し合いましょう」

「またくだらないわね」

「ドーベル! もう一度言ってみなさい! 下らなくなんてありません。知っていますか? 彼女は朝起きる時は必ず右手で、軽く目をこすります。しかも体を起こしてから暫くボーッと寝ぼけているのです。この時の眠たそうな表情が非常にプリティーでチャーミングでもう何とも言えない可愛さが……」

 

勢いよくクラウディについて語りだしたマックイーンに、他の2人はため息をついて適当に聞き流す。

 

今日は3時間程度で済めばいいが……。

 

空から見守っているであろう三女神様に、そんな希望を切に願うのだった。

 

 

 




キャラ説明


メジロクラウディ

名家メジロ家の一員。名前の由来はメジロ+クラウディ(曇り)。
マックイーンやライアン、ドーベルとは幼馴染の関係で小さいころはよく遊んでいた。
その関係で、3人からは妹扱いされており、よく可愛がられていた。
容姿はマックイーンそっくりだが、低身長、短髪で髪の色も違う。
レースの才能はからっきしであり、才能がないと当主からはっきりと言われたせいで、一時は引きこもるようになってしまい、幼い頃の快活さは鳴りを潜め感情表現が希薄になり、ドーベル以上の卑屈なウマ娘となってしまう。
選抜レースでは目立った活躍が出来ず、トレーナーが付いていない。スカウトされた事もない。
トレセン学園へ来た理由は、知らず知らずの内に周りに流されたため。入学金や授業業などは、何故か全額メジロ家本家持ちなので断るに断れなかったのもある。
好きなものはぬいぐるみ。嫌いなものは才能のない自分。


ゲームでのステータス(継承前)

スピード40(G)
スタミナ70(G)
パワー30(G)
根性20(G)
賢さ15(G)

芝A ダートF

短距離B マイルB 中距離B 長距離E

逃げC 先行B 差しB 追い込みE

固有スキル 「落ちこぼれだとしても……!」 
・最終コーナーで追い抜くと加速&持久力をわずかに回復。

初期付与コンディション

『これでもメジロ家だから』:グッドステータス
・トレーニングに失敗してもステータスが下がらない。
・『怠け癖』『太り気味』『夜ふかし気味』が発生しない。

『落ちこぼれ』:バッドステータス
・脚質と距離適性がワンランクダウン。
・やる気が下がりやすくなる。
・お休みで寝不足が発生しやすくなる。
・『なまけ癖』『太り気味』『夜ふかし気味』以外のバッドステータスが発生しやすくなる。
・トレーニング失敗確率+20%。体力消費量アップ。
・スキル獲得時のスキルポイント必要量+10。
・レース出バ時にステータスが上昇しない。
・『これでもメジロ家だから』以外のグッドステータスが付与されない。




メジロマックイーン

とあるトレーナーと専属トレーナー契約を結んでいる。
クラウディとは幼馴染。彼女をクゥと呼んでいる。
彼女のことを溺愛しており、たまに暴走する。休日にアフタヌーンティーと称してライアンとドーベルにクラウディの素晴らしさを語っている。
トレセン学園入学前に、当主(お祖母様)とクラウディのことで大喧嘩をしたことがある。
使命は変わらず天皇賞(春)だが、稀にクラウディを可愛がることにぶれる。
トレーナーはクラウディを溺愛していることを知っている。
ライアン、ドーベルと会わせて『メジロ家三大シスコンウマ娘』と呼ばれているとかいないとか。
好きな者はクラウディと甘いスイーツ。嫌いなものはお祖母様。


メジロライアン

多分3人の中で一番の常識人。愛ゆえに暴走するマックイーンのストッパー役。
クラウディとは幼馴染で、妹のように可愛い彼女をライアンはよく可愛がっていた。
今でも可愛がっており、彼女のトレーナーはそのことを察してる。
マックイーン、ドーベルの『メジロ家三大シスコンウマ娘』に混ぜられていることに納得していない様子。
しかし、マックイーンのアフタヌーンティーに何度も参加してる時点で、同じ穴のムジナ。
好きなものはクラウディ。嫌いなものはクラウディを泣かせる奴。


メジロドーベル。

コミュ症。小さい頃は家に閉じこもりがちだったが、家の付き合いでクラウディと知り合い、マックイーンやライアンとも遊ぶようになる。
この事から彼女には恩義を感じており、小柄な彼女を妹のように可愛がる。
それはトレセン学園に入学しても同様で、彼女のトレーナーは微笑ましく見守っている。
当主のクラウディに対する行いに、当時は声を上げることはなかったものの、多分マックイーン以上に怒ってる。
『メジロ家三大シスコンウマ娘』に混ぜられていることには納得していない。
マックイーン主催のアフタヌーンティーに参加しているのは、マックイーンがクラウディのお宝写真や映像を持ってくるからと言い訳しているが、言い訳になっていないのが現状。
好きな者はクラウディのお宝写真や映像(本人と触れ合えればなお良し)。
嫌いなものはババ……お祖母様。




なんやこれ……。

ライスのトレーナーはどうするか

  • おはなさん
  • オリトレーナー
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