メジロ家の落ちこぼれ   作:神咲胡桃

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個別エンド書いてから、なんかお気に入り減ってくんだけど……。

しかーし! 安心しろ! トゥルーエンドが来た!




かくして、雨は晴れる トゥルーエンド①

――思い立ってからの私の行動は速かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

震える身体をやっとの想いで立ち上がらせ、眼の前の底の見えない濁流を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の眼も、こんなふうに濁っているんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなことを他人事のように感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、疲れた。さよなら、みんな――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胸に残る虚無感が命じるままに、私は左足を踏み出した。

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

それは腰へ、胸へと伝わって行く。

 

 

「(ああ……最後まで、何もなかったな)」

 

望んでいた最後は呆気なかった。

 

本当は、期待していたのだ。

もしかしたら、誰かが私を救ってくれるんじゃないかって。

 

でも、やっぱり、そんな都合の良い展開なんてなかった。

 

 

それでも私は……私は……私は……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『クゥ!/クラウディ!/クラウちゃん!』

 

右手が何かに掴まれる。

 

次の瞬間、私は岸へとひっぱり上げられていた。

 

「……え?」

 

何が起こったか分からない。

 

なんで? なんで? なんで?

 

この期に及んで私に希望を持たせるの?

叶いもしない夢を持たせるの?

 

違うって言ってよぉ……。

やめて、やめて……そんなの、やめてよぉ!

 

「クゥ! クゥ! ……良かった。良かったです……!」

「うわーん! クラウディのバカぁ!」

「クラウちゃーん! 良かったよぉ!」 

 

そうだった。

 

この世界は、いつだって、どんなときだって……()()()()()()()()()()

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

クラウディを川から引っぱり上げた3人は、近くの高架下で雨を逃れていた。

 

「クラウディ、クラウディ……!」

「クラウちゃん……!」

 

壁を背に座るクラウディに、涙目なテイオーとライスが抱き着いていた。

 

「……ええ、はい。河川敷の高架下に、分かりました。お願いします。……三人とも、今迎えの電話を、って何やってますの」

 

電話を終えたマックイーンが、呆れた目で三人を見る。

 

「(そんなに抱き着いていては、私が抱きしめられないではありませんか!)」

 

この中で一番落ち着いているように見えるマックイーンだが、内心クラウディの無事を心配していたのも事実。

本当なら、今すぐにでも抱きしめて、その冷えているだろう身体を温めたい。

だが、それよりもまず、しなければならないことがあった。

 

「クゥ……いえ、メジロクラウディ。なぜ、あんなことをしたのですか?」

「……………」

「メジロクラウディ、答えなさい」

 

語気を強めた問いに、クラウディは何も言わない。

しかしマックイーンは、再び尋ねる。

 

「ちょっとマックイーン。そんな言い方しなくても」

「そ、そうです。クラウちゃんだって、大変な目に……」

「その大変な目の原因は、クラウディの行動です。それから、二人とも少し黙っていてください」

 

それを見咎めるテイオーとライスに、マックイーンは毅然とした態度で二人を黙らせる。

 

そして再び視線を戻すと、クラウディがポツリと話し始めた。

 

「……私は、なんでここにいるんですか?」

「どういう意味ですか?」

「マックイーン姉さまは、天皇賞の期待を受けて、ライアン姉さまやドーベル姉さまだって、家からの期待を受けて……じゃあ、期待されない私は、なんでここにいるんですか?」

 

光を映さない瞳で首を傾げるクラウディ。

 

そもそもなぜ彼女はここまで、期待に拘るのか?

 

 

それはメジロ家が抱える数少ない負の習慣に関係する。

 

メジロ家の悲願は、言わずもがな天皇賞の盾を得ること。

それ故に、新たなウマ娘が生まれようとする時は、一族総出で期待が寄せられる。

 

こんどこそ、こんどこそと寄せられる期待。

もちろん、悲願の成就など生まれてくる新たな命にとっては関係ないし、メジロ家もそれを分かっているため、悲願を聞かせはすれど走ることを強要することはない。

 

しかし、子供というのは案外敏いもので、家に充満する”何か”を感じ取るくらいは出来てしまうのだ。

それはマックイーンも、ライアンも、ドーベルも、そしてクラウディですら変わらない。

 

そんな中でクラウディだけは、子供の頃、その”何か”を他の娘よりも強く感じ取ってしまった。

子供は心の機微に敏く、同時に疎い。

それ故に、速く走る=褒めてもらえるという構図が無意識に出来上がり、その象徴こそが『期待』なのだ。

 

だからこそ、『期待』を求める。

 

しかし当主の「才能がない」という言葉で、クラウディは『期待』という呪いにさらに囚われるようになった。

 

期待を貰えないと言うことは、誰にも褒めてもらえない。

だってそれは、誰も自分を見てくれないから。

 

トレセン学園に来て、『期待』を求めて走った。

だが一着も取れないクラウディに、『期待』する者は誰もいなかった。

 

 

「私がいる意味って、何なんですか? 私の……『走る理由』って、一体なんですか……?」

 

もはやクラウディのそれは、問いへの返答ではなかった。

 

触れてしまえば、あっという間に崩れ去ってしまいそうなクラウディ。

きっとここで間違えれば、彼女は壊れてしまうだろう。

 

間を置いたマックイーンは、やがて口を開いた。

 

「……私は、天皇賞勝利の悲願を、()()()()()()()()()()()()()()()

「え……?」

「私にとって、メジロ家の悲願を達成することは確かに目標ではあります。ですが、それは私が走るに足りえる理由ではありません」

 

天皇賞を勝利することは、あくまでも過程。

なぜなら天皇賞を走ったくらいで終わる走りなんて、つまらない以外の何ものでもない。

 

「じゃあ、なんで走るんですか……?」

「……難しいですわね。テイオーのようなことが言えればいいんですけど……。おそらく私は、理由を見つけられていないのでしょう」

「姉さまが見つけていられないのに、私なんかが見つけられるの……?」

「さあ? ですがこれは、私の勘みたいなものですが、理由というのは案外、走っていれば勝手に見つかるものではないでしょうか」

 

おどけたように言うマックイーンに、クラウディは静かに拳を握りしめる。

そして、震える声で恐る恐る声を紡ぐ。

 

「私は、遅いです」

「そうですか」

「私は、一着なんて取ったことないです」

「そんなこともあります」

「私は……才能が無いです」

「それで?」

「私は……私は……走っても、いいんですか?」

 

マックイーンはクラウディの前にしゃがみ、小さな身体を抱きしめる。

 

「当然です。あなたはメジロ家のウマ娘である前に、私の大切な妹分です。ライアンやドーベルだって、きっと私と同じ気持ちです。辛ければ、私の元に来なさい。たくさん応援してあげますから」

「ボクだってそうだよ! クラウディのこと、いっぱい応援するから!」

「ライスも! 上手くできるか分からないけど、クラウちゃんのこと、いっぱいいっぱい応援する!」

「テイオーさん、ライスさん……」

 

ポロポロと涙を流し始めたテイオーとライスに、クラウディの目からも涙が零れはじめる。

 

「わた、し……私、うう……うわああああああああん!!」

 

遂には声を上げて泣き始める。

 

流れる涙は、決して冷たく、止まない雨ではない。

 

 

 

なぜなら、どんな雨もいつかは晴れるのだから――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「――――迎えに来ていただき、助かりましたわ。沖野トレーナー」

「いやいや、別に良いってことよ」

 

クラウディの一件がひとまずの終息を迎えた四人は、テイオーが所属するスピカのトレーナー、沖野が運転する車に乗って学園へと帰っていた。

 

「本当なら私のトレーナーの方が良いのですが、この時間は外に出ていらしたので」

「まあいいさ。昔いたチームのよしみってな。にしても、あんだけ降ってた雨もすっかり止んじまったな」

 

沖野が迎えに来た時に、土砂降りの雨もちょうど止み、今では太陽の日差しが眩しいぐらいに輝いている。

 

「あ、あの……」

 

その時、テイオーとライスに挟まれていたクラウディが、控えめに声を上げた。

 

「どうしたんですの?」

「その、来月にある選抜レース、出ようと思います」

 

選抜レースも、そう何回もある訳ではない。月に2回、多くて4回。

今月の分はもう終わっているので、出ようと思うと来月からになる。

 

「私、もうちょっとだけ頑張ってみることにします……だから、えっと……」

 

急に口籠る彼女に何を言いたいのか気づいたテイオーは、クラウディに抱き着く。

 

「もっちろん! ボク、応援に行くからね!」

「ライスも、クラウちゃんが頑張るところ、見に行くね!」

「……で、マックイーンはどうなのさ?」

 

助手席に座るマックイーンに、からかう様に話しかけるテイオーに、マックイーンはため息を一つ吐き、当然のように言う。

 

「当たり前のことを聞かないでください。大事な妹分なんですから、行くに決まってるでしょう?」

「あ、ありがとうございます……!」

「もー、マックイーンは素直じゃないんだからー!」

「な、なんでそうなるんですか!?」

 

ギャーギャーと喧しくなる車内で、沖野は笑みを浮かべる。

 

「(どうせならスカウトしようかと思っていたんだけど……。ま、今しても断られちまうか。いやー残念残念! ……ん?)おーいお前ら。外見てみな」

 

何かを見つけた沖野の声で、4人は窓から外を見る。

 

「外、ですか?」

「えーなになに?」

「うわぁ……!」

「綺麗……!」

 

窓から外を見ると、そこには彼女たちのこれからを応援するかのように、大きな虹がアーチを描いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時は流れ、クラウディの走る選抜レース当日。

 

「う~。いよいよかぁ。なんだか緊張してきちゃったなぁ」

「何をしているのですか、あなたは」

「そんなこと言っちゃって、マックイーンだってキョロキョロしてるじゃん」

「そ、そそそそんなことないですわ!」

「あははは! 声が震えてるよ、マックイーン」

「何やってるのかしらね。まったく」

「クラウちゃん……がんばれー、がんばれー、おー!」

 

学園の敷地にある小規模なレース場の一つ。

 

いつもなら特に声など聞こえてこない観客席で、雑談に興じる集団があった。

 

「というか! なぜライアンとドーベルまでいるんですか!」

「そりゃもちろん、クラウディに来てほしいって言われたからだよ」

「自分だけだと思ったのかしら? 残念だったわね」

「私たちにとっても、あの娘は大事な妹分だからね!」

 

そこで、走るウマ娘たちが続々と出て来る。

 

その中にはもちろん、気合十分なクラウディもいた。

 

 

 

 

各ウマ娘が一斉に構えを取り、そして……走り出した。

 

 

 

 

 

 

才能もなく、実力も無く、出来たことはただ走る事だけ。

 

 

誰にも見られることもなく、期待される事もなかった。

 

 

だけど、今は違う。

 

 

応援が聞こえる。風が頬を撫でる。力がみなぎる。

 

 

前には誰もいなくなり、そして――――

 

 

 

 

 

「やりましたわ! クゥが一位ですわ!」

「クラウちゃんが勝ったんだ……!」

「今の走り……そうだよ。あれが、あの時ボクが見た……!」

「やったやったぁ! ドーベル見てたよね!」

「ええ、ええ! 当り前よ!」

 

 

 

これは、『メジロ家の残りカス』とまで言われた一人のウマ娘が、小さな、だけど大きな一歩を踏み出す。

 

 

 

ただ、それだけのお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――へぇ、あの娘……。なるほどね。だから私に見に行けと言ったわけか。それじゃ、さっそく行かないと。鉄は熱いうちに打てってね」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

 




実績:【かくして、雨は晴れる】を獲得しました。
「辛ければ、私の元に来なさい。たくさん応援してあげますから」
「クラウディのこと、いっぱい応援するから!」
「クラウちゃんのこと、いっぱいいっぱい応援する!」

条件:テイオーエンド①、マックイーンエンド①、ライスシャワーエンド①を見た後に、トゥルーエンドを見る。




ここまでが、短編として本来想定していた話、第一レースです。

今は連載にしてるので次がありますが。


さて、ここからはいくつか番外編を挟んで、第二レースへと進みます。

曇らせ要素減るかもしれませんけど、雲ちゃんは雲ちゃんですからぁ(にちゃり)

見たい番外編は? 上位3つ

  • テイオー:注射を打つ
  • マックイーン:我慢する
  • ライアン:筋トレする
  • ドーベル:初めての少女マンガ(百合)
  • ライス……どうしよう(※案求む)
  • タキオン:実験
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