各エンドの話には、エンド名を入れています。
で、今回はバッドエンド①ー②
言わずもがな、バッドエンド①ー①の続きです。
とはいえ、各エンドと合わせてパラレルワールド的なものとお考えください。
本編はすぐに進めるので、ちょっとだけ待ってくださいお願いします(土下座)
蝉の鳴き声がうっとおしくなる夏の盆。
都会のけたたましさとは無縁の林道を、壮年と呼ばれてしまう歳の私が歩いていた。
右手には水と柄杓が入った桶が、左手には膨らんだ袋を持っている。
「……やれやれ。ウマ娘と言えど、年は取りたくないものだなぁ。人里離れたここに来るのにも、疲れてしまうよ。なぁ、ライスシャワー、アグネスタキオン」
持ってきた柄杓で水を流していき、雑巾で軽く拭ってやる。
すでに誰か来ていたのか、大した汚れはなくすぐに終わった。
こうしてみると、もう一年が経ったのか。
……ふっ。いかんな。どうにも年を取ると、すぐに感慨深くなってしまう。
「……すまないな。今年は来るのが遅くなってしまって。こっちは相変わらず、変わりないよ」
こうしてみると、やはりというかなんというか、なぁ……。
「タキオン。君は変わらず、研究ばかりなのかい? 君のことだ。すぐに世紀の大発見をして、こちらに来てしまいそうだよ。迷惑はかけないようにね」
――不本意だと怒るかい? 色んな人を光らせてないか、私は心配だよ。
「ライスシャワー。君はそっちで楽しくやれているのかい? 人見知りな君のことだ。何かと寂しい思いをしてたりも、しないのかい?」
――本当に大丈夫かい? 私は心配だよ。
二人の前に持ってきた人参饅頭を置いてやる。
そしてしばらくしてから、私は最後の一人の前に屈んだ。
「あの日から、君のことを忘れたことは、一度もないよ……
――私は、あの後悔の日から、何かできただろうか? ……なに? 今更? ははっ。これは手厳しいな。
彼女の前にも人参饅頭を置いてやり、
そろそろ夏の暑さにやられてしまいそうになり、帰ろうと立ち上がった時、背後から足音が聞えてきて、それが止まった。
「……君も、挨拶に来たのかい?」
「
「ああ。毎年ここに来て、彼女たちに会うのが、一年の数少ない楽しみなんだ。不謹慎だとは思うがね」
ああ。言ってしまえば、彼女には会いたくなかった。
今の私が、どうして彼女と言葉を交わせようか。
「私はそろそろ帰るよ。年を取ってくると、夏の暑さにも弱くなってくるからな」
「ねえ。カイチョー」
「…………」
「少しだけ、さ。話していこうよ」
「いいのか? 君も、彼女たちと話したいんじゃないのか?
「ボクは、カイチョーほど忙しくないからね」
「……そうか。なら木陰に移動しようか。あまりうるさくしても、よくないからな」
例年よりも煩く感じる蝉の鳴く声が、ただただ、この墓地に響き渡っていた。
◇◇◇
その知らせは突然だった。
一人のウマ娘が、山奥の小屋で亡くなった状態で発見された。
彼女の名はアグネスタキオン。
一年前にトレセン学園を
私は大して話したわけではないが、過去に、まったく走らないウマ娘として問題視されていた彼女に、退学の警告をしに行ったことがあった。
それと、ああ、
その関係で、トレセン学園にも聴取のための警察の方が来られた。
当時、次期生徒会長に就任するエアグルーヴへの引き継ぎ作業中だった私も、その場に同席することとなった。
とは言ったものの、彼女は既にトレセン学園から退学した身だ。
イジメやトレーナーによる虐待があったなら話は別だが、前者に関しては、彼女はそんなことを気にするような性格ではないし、後者に関しては彼女たちにしてみれば逆の関係だろう。
このことからトレセン学園に関与している部分はなく、捜査の方もまともな生活を一切送っていなかったと見れることから、実験に没頭しすぎた結果の衰弱死という結果に落ち着いた。
だが、一つ奇妙な点があったらしい。
これも聴取の際に聞いた話だったが、彼女の住んでいた小屋に残されていた研究というのが、どうも『魂の所在と選別、人工ボディへの癒着に関して』という意味不明な内容だったらしい。
そして彼女がトレセン学園を自主退学したのは、奇しくも、
しかし、私に真相を知る手立てはない。
真実は全て、いや、彼女が自主退学した日から、既に闇に葬られているのだから。
◇◇◇
◇◇◇
それは突然の出来事だった。
誰が悪いだとか、誰のせいだとか、おそらく、そういうのではないのだろう。
だが、時々今でも思うことがある。
あの事件を、未然に防ぐことは出来なかったのかと。
それは宝塚記念の時に起こった。
それまで数多のステイヤーの前に、メジロマックイーンと共に立ちはだかり、そして蹴散らしてきた。
しかし、それが一部のレースの客からすれば面白くなかったのか、段々とライスシャワーの勝利ではなく、他のウマ娘の勝利を望むようになった。
勿論、彼女の勝利を望むファンもいるため、結果として良い方向に転がっていた。
一時はその圧倒的なレース展開と勝率から、
私も届けられたその一人だ。
そんな中でも、彼女は変わらず圧倒的な勝率を誇っていた。
これにはさすがに、思わず笑ってしまった。
そうやって彼女は、ヒーローと悪役の二つの面を持った、世にも珍しいウマ娘だった。
そして件の宝塚記念。
私はすでにトレセン学園を卒業して、ウマ娘にとってより良い世界をつくるために、URAで働いていた。
たまたま休みが取れたため、せっかくだからと宝塚記念に訪れていた。
その時のライスシャワーの状態は、間違いなく完璧だった。だったはずなのだ。
第3コーナーを回った時、彼女がスピードを上げた直後、前のめりになって転倒した。
その瞬間、あんなにも沸いていたレース場が一斉に静まり返った。
走っていたウマ娘たちが全員足を止めた。
その中で動いていたのは、命に関わる仕事をしている救護班と、そして無意識に足を動かしていた私だけだった。
レースを引退してから、初めて全力で走った気がする。
階段を5段飛ばしで駆け下り、途中で係員に引き留められてもURAの職員と言い進んだ。
そして地下バ道にようやく着くと、ちょうど担架に載せられたライスシャワーが運ばれてきていた。
駆け寄ろうとしたその時、私は、一瞬だけ、彼女が
その一瞬の光景に、呆然と立ち尽くしている間に、救護班によって彼女は運ばれていった。
そして後に、治療の甲斐なく、ライスシャワーの死がマスメディアを通して発表された。
多くの者が嘆き悲しんだ。
時にはトレセン学園に、担当トレーナーに非があると言いがかりをつける者がいた。
URAに勤めていた私も、悲しみにくれる暇もなく、その対応に追われることとなった。
しかしそれは、ライスシャワーが事前に残していた遺書が発見されたことで、解決を見せた。
内容を要約すると、
もしレース中に何かあったとしてもそれはトレーナーの責任ではない、
トレーナーにはたくさんの恩を貰った、
ガタが来ていたのは分かっていたがそれでも走りたかった、
不幸を呼ぶと思っていた自分がこうして走り続けられて幸せだった、
という旨の内容だった。
後は親や友達への感謝や謝罪の内容だろう。
その部分を除いて、これが発表されたとき、世間はライスシャワーを悲劇のウマ娘として取り上げた。
まあ、実際そうなるだろう。
不幸を呼ぶと自虐するウマ娘が、多くの友人に恵まれ、悪役と呼ばれながらも、同時にヒーローとしても走り続けた。
お涙ちょうだいにはもってこいのノンフィクションだ。
しかし私は、そんな風には思えないでいた。
だって彼女は、嗤っていたんだ。
ほとんど自動車並みのスピードで地面に激突し、腕が曲がり足が折れ、尋常ではない痛みで泣き叫びたいだろうにそれも出来なくて、そんな状態なのに、それなのに彼女は嗤っていた。
後に救護班の人から聞いた話では、彼女は最後まで
その時、私は思い出した。いや、意図して忘れようとしていたんだ。
私は罪悪感から逃げ、忘れ、無かったことにしようとしていた。
ああ、ああ。三女神様よ。これは罰なのか?
愚かな罪を犯した私を、あなた方は裁きに来たのか?
ならどうして、私ではなく彼女を殺したのですか?
どうして……どうして……
◇◇◇
◇◇◇
あれからまた時が流れて、私はURAのトップにまで上り詰めた。
レースや関連商品、はたまた、ウマ娘たちへの様々な対応へと私は大忙しだった。
同時に
そして今や経営から退き、URAの相談役という立場に収まった私は、意外にもある程度暇な生活を送っている。
相談役と言ってもほとんど名誉職なのだから、こんなものか。
どうせなら教員免許を取って、退職後はトレセン学園で教師として働いてみようか。
いや、私のようなウマ娘がいたら逆に迷惑か?
まあ、なんでもいい。
どうせ
そう……気楽に、な……
※注意! 各ウマ娘の元になったお馬さんの墓参りをしたいという方は、然るべき場所に連絡して、許可を貰い、きちんと現実世界のルールや習慣等に従って行いましょう。迷惑かけたら、誰も喜びませんからね。
ライスに関しては、ライスシャワーエンド①の時に来た感想を材料として考えました。
タキオンに関しては、まあ、ふっと思いついたんですよね。
また思いついたら、何かしら書くと思います。
取りあえず次は本編進めるぞー!
見たい番外編は? 上位3つ
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テイオー:注射を打つ
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マックイーン:我慢する
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ライアン:筋トレする
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ドーベル:初めての少女マンガ(百合)
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ライス……どうしよう(※案求む)
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タキオン:実験