メジロ家の落ちこぼれ   作:神咲胡桃

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感想欄がお祖母様の話題ばっかりで草

そういえば、トレセン学園って高校と同じ扱いで良いんですかね?
ゲームだと育成が3年掛かりますし。

でもそれだと、一応主人公とマックイーン達は同い年なので、デビューしていない主人公と違い、マックイーンはすでにトゥインクル・レースで走ってるわけですよね。

そもそも卒業があるのかすら疑わしい。というか進級とかあるのか?
もし高校と同じなら……やばいぞ。主人公の能力的に、マックイーンと戦えるくらいに成長しても、もう天皇賞(春)は終わってるんじゃ……?


有識トレーナー諸君、まずは今話を見て、その後に意見を求む。


3ねえ、今から曇るよ(ニッコリ)

「はっはっはっはっ……」

 

今日も今日とて、クラウディはやり方があってるかも分からない方法でトレーニングを行っていた。

いい加減、他の誰かに聞いて確かめたいところだが、それが出来るならとっくにやっている。

だから、クラウディはひたすらに走るだけなのである。

 

 

 

 

 

走り続けてすでに3時間が経とうとしていた頃、ピチョンとクラウディの頭に水滴が落ちてきた。

 

「水?」

 

不思議に思い空を見上げると、いつの間にか空を雲が覆っており、あっという間に大雨が降り出した。

クラウディは悩んだ。

レースでは雨が降っていても走ることは普通にある。

これもトレーニングになるのではないかと考えたが、いたずらに身体を濡らして風邪をひくことは好ましくない。

人数の都合上、二人部屋を一人で使っているクラウディからすれば、誰もいない、帰って来ない部屋で安静にするなど、寂しくてかなわないのだ。

 

前に一度だけ風邪を引いたことがあるが、その時の寂寥感は半端なものじゃなかった。

苦しくて、寂しくて、悲しくて、お前は一人だと言われているようで、あんな思いはこりごりだ。

 

「……少し濡れちゃった」

 

少しだけ湿ったジャージを見て、屋根の下に避難したクラウディは身体を擦る。

 

……一度着替えに戻った方がいいのだろうか。いや、もしかしたらすぐにやむかもしれないし、待っていようか。

結局、クラウディは待つことを選択し、地面に座って雨がやむのを待ち続ける。

 

こういう時、自分にトレーナーがいたらなんて言ってくれるだろうか。

風邪をひいてしまうのを心配して、着替えるように言うのだろうか。

それとも、自身の上着を着せてくれたりとか……。

 

「あ……またやってる……」

 

妄想に浸っていると、屋根から垂れた雫が鼻先に落ち、クラウディは我に返る。

慌てて回りを見渡して、今の妄想が聞かれていないことを確認する。

幸い、周囲には誰もおらず見られていなかったらしい。

 

「私、何やってるんだろ」

 

シトシトと降る音だけが響く中、クラウディはさっきまでの自分を振り返ってため息を吐く。

 

あの妄想癖は、トレセン学園に入学してからのものである。

選抜レースでは一度も勝てず、トレーナーにスカウトされる事もない。

そのくせトレーニングの最中は、やけにトレーナーに指導されているウマ娘が周囲にいる環境に苛まれたクラウディが、現実逃避の手段として身に着けたのが、今の妄想癖である。

自身にトレーナーがいたらと言うifの妄想をしてる間は、孤独に苛まれることはないのだから。

 

しかしその妄想癖は、時として悪い方向に作用する。

言ってしまえば、妄想した後はその妄想と現実の差に落ち込んだり、そもそも現在進行形で悪い方向に妄想が膨らんでいたりなど。

 

「……こんな妄想で自分を紛らわせたって、意味ないのに。こんな妄想してる時点で、トレーナーが付くことはないんだって認めてるようなもの……」

 

勿論、クラウディもこんな状況が続いてほしくない。

 

何度も憧れの物語を夢見ていた。

大した能力も持たず、成績が振るわないウマ娘が、一人のトレーナーと出会うことによって、沢山の友人に囲まれ、ライバルとぶつかり合いながらも成長していく物語。

 

「だけど……」

 

悲しくなったクラウディは、涙が零れそうな目頭をゴシゴシと擦る。

 

 

寝る前には必ず妄想するほどで、もはや日課になったそれを、心の中ではありえないと否定しても、そんな物語の主人公になってみたいとやはり望んでいた。

 

()()()()()()……。

 

 

ある一人のウマ娘との出会いが、心の底に残っていた微かな希望を消し去ってしまったから。

 

この現実で、メジロクラウディを主人公とした物語など、どこにもないのだと悟ってしまったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――クラウちゃん?」

 

掛けられた声に、クラウディが顔を向けると、そこには一人のウマ娘がいた。

 

オドオドとしていて、どこか小動物のような雰囲気を醸し出す少女。

だがレースになると、悪鬼もかくやというほどのオーラを立ち上らせる。

 

「やっぱりクラウちゃんだ。えへへ、最近見ないから、心配してたんだ」

 

そのウマ娘はクラウディの姿を認めると、思わず守りたくなるような笑みをこぼして、クラウディの隣に座る。

 

「それは、ごめんなさい」

「あ、別に謝る必要なんかないんだよ! その、()()()が勝手に思ってただけだから」

 

そう言って、主人公の一人(ライスシャワー)は咲き誇る満開の花のように笑った。

 

それを見たクラウディは、今すぐこの場を離れたく……いや、彼女から離れたくなった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

ライスがその人と出会ったのは、なんてことない日でした。

いや、ライスにとっては大変な日だったかな?

 

なんせライスは、出バ予定だった選抜レースをサボってしまったから。

 

「う、うう~……。ライス、またやっちゃったぁ。レースに出なきゃって思ってるのに、怖くて逃げちゃった……」

 

人気のない場所で、ライスはずっと泣いていました。

 

昔からそうだった。

何でもかんでも臆病で、周りに不幸をまき散らすウマ娘。

だけど、今こうして泣いていることが、とても悔しかった。

 

なのにライスの身体はちっとも動いてくれなくて、それで自分のことがさらに嫌いになった。

 

きっと今日は、このまま泣いているんだろうな。

そんな諦めに似た考えが思い浮かぶ。

その時だった。

 

「――ねえ、大丈夫……?」

「ぴゃぁ!?」

 

背後から掛けられた声に振り向くと、そこには中腰になっているウマ娘さんがいました。

私を必要以上に怯えさせないためなんだろうけど、笑顔が苦手なんだろうなって分かるぐらい引きつってる笑みが印象的でした。

 

「えっと、あなたは……?」

「あ、その、私はメジロクラウディ。その、いつもここの辺りで休んでるんだけど、誰かの泣き声が聞こえて」

 

泣いてるところを見られて羞恥に悶える私をよそに、クラウちゃんは私の隣に腰掛けました。

 

「何かあったの?」

「はぇ……?」

「泣いていたから。私で良ければ、話ぐらいは聞いてあげられる」

 

きっと、その時の私はいろんなことが重なって、弱っていたんだと思います。

 

レースから逃げちゃったこと、ウジウジしている自分が悔しいこと、いろんな人を不幸にさせちゃったこと、それでも走ることが大好きなこと。

その全てを話しました。

その間クラウちゃんは、私の話に真剣に耳を傾けてくれました。

 

「そっか……」

「ライスは皆を不幸にさせるから、悪い子なの」

「そう? 私はそうは思わない」

 

クラウちゃんの言葉に、私は耳を疑いました。

今だって、私のせいでクラウちゃんが休む時間を奪ってるのに……。

 

驚いている私に、クラウちゃんはこう話してくれました。

 

「私は、こうしてあなたと話していることが嬉しい」

「そうなの……?」

「うん。こうやって他の人と話すことって、あんまりないから」

 

そう言ったクラウちゃんは、どこか寂しそうに笑っていました。

その時の私は、彼女がそんな表情をすることが何故か嫌で、気づけば彼女の手を取りこう言いました。

 

「あの! ライスと、お友達になりませんか?」

 

言ってから後悔しちゃいました。

ライスと友達になったら、きっと優しい彼女にも不幸が訪れてしまう。

それ以前に、彼女が友達となりたくない可能性だってありましたし。

 

でも、彼女はそんなライスの不安を取り除いてくれました。

 

「……うん。ありがとう!」

 

頬を軽く赤に染めて微笑んだ彼女に、私は気恥ずかしくなってしまいました。

だけど、掴んだその手から伝わる温もりが、とても温かかったです。

 

「……ライスさんは、レースに出るのが怖いんだよね?」

「えっと、うん」

「なら……」

 

クラウちゃんは、握ったままの手を持ち上げ、互いの額に当てたんです。

近くで見る彼女はとてもきれいで、まるで空を漂う雲のように()()()()()()()

 

「クラウちゃん?」

「レースに出るのが怖いなら、私が勇気を上げる。私なんかじゃ、頼りないかもしれないけど」

「そんなことないよ!」

「ライスさん……」

「ありがとう、クラウちゃん。次のレース、頑張れる気がする」

「そっか……」

 

後日、ライスはクラウちゃんが応援に来てくれた選抜レースで一位を取った。

クラウちゃんは自分のことのように喜んでくれて、私の心を暖かいものが満たしていった。

 

そして、話はそれだけではなかったの。

実は一位を取ったレースの当日に、後に「お姉さま」と呼ぶようになるトレーナーさんからスカウトの話を受けたんです。

ライスはそのことが嬉しくて、もちろんすぐにその話を受けました。

 

 

ただ、1つ気になる事がありました。

 

スカウトを受けた日から、何故かクラウちゃんと会う回数が減った事。

2,3日に一回は会うけど、前だったら一日一回は会ってた気がします。

 

 

そして嬉しい思い出が増えたあのレースで、後悔したことも出来た。

 

これはスカウトの件から暫く経って分かった事だったんだけど、未だにクラウちゃんにトレーナーが付かないらしい。

基本的にウマ娘は、ある程度トレーナーが付かなければ、それ以降はトレーナーが付く確率は非常に低くなるらしい。

当然、クラウちゃんは焦っていたはずだ。

トレーナーが付かなければ、トゥインクル・ステージのレースには出バ出来ない。

そんな彼女に、ライスはお姉さまにスカウトされたことを何回も話してしまいました。

 

それはきっと残酷なことで、だけど面と向かって謝るなんて出来やしない。

 

今のライスは、『幸せの青いバラ』じゃないから。

 

出来るのは、ただ三女神様にお祈りすることだけ。

 

どうか、どうか……彼女の努力が、報われますように。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

私はライスシャワーが嫌いだ。

 

と言うには語弊が生じる。

彼女が憎い的な意味ではなく、どちらかというと苦手としている的な意味だろうか。

まあそれも、私の一方的なものなんだけど。

 

 

彼女との出会いは、なんてことのないよく晴れた日のこと。

 

いつものようにトレーニングをこなした私は、めったに人が訪れない穴場で休もうとしていた。

だけど、その日は誰かが泣いている声がして、草むらを覗くと、一人のウマ娘が泣いていた。

そのまま知らんぷりしているのもどうかと思ったので、声をかけると声を出して驚かれた。

 

昔と違って慣れない笑顔で彼女を落ち着け、なんで泣いているのか尋ねたのだ。

 

名前はライスシャワー。

本人曰く、行く先々で不幸をまき散らしているらしい。

 

……はぁ?

 

最近ではこう言った冗談が流行っているのだろうか?

ただ、本人的には大真面目らしい。

 

更にはかなり気が弱いらしく、なんとレースをサボってきたのだとか。

 

勿体ない。

トレーナーの人達にアピールできる絶好の機会を逃すのは、ウマ娘としてどうなのだろうか。

 

……まぁ、一度も勝ったことない上にスカウトも受けたことのない私が言ってもあれだろうが。

 

そのまま話していると、いきなり手を握られて友達になりたいと言われた。

断る理由もないし、むしろ全然友達のいない私としてはとてもありがたい。

 

そんな流れで友達になった私たちだが、彼女はレースに出バするのが怖いらしい。

その怯えきった姿が過去の私と重なって、だからライスシャワーを勇気づけようと、昔ある人にやって貰った方法で勇気を分けた。

本当かどうかわからないが、彼女は次のレースには必ず出ると言い、とりあえずその日は別れた。

 

 

この時、私は気付くべきだったのだ。

 

どうして他人と話すことが得意ではない私が、ライスシャワーに勇気を分けるなんてことをしたのか。

 

どうして彼女に関しては、何の気後れも無く、普通に話せたのか。

 

気づくべきだったと後悔した時には、後の祭りだった。

 

 

 

 

 

あれからしばらく日が経ち、ライスシャワーが再び選抜レースに出バした。

もちろん、私はレース場に応援に行き、声の限り彼女を応援した。

結果、彼女は一位を取り、私も自分のことのようにとても嬉しかった。

 

早く彼女にお祝いの言葉を送りたいと走る私は、ライスシャワーを見つけた。()()()()()()()()

 

その時、彼女はとある女性と話していた。

ライスシャワーの知人だろうかと思いながら話が終わるのを待っていると、ふと、「…レーナー」「ス…ウト」「さいの…をもっ…る」といった言葉が耳に入ってきた。

気づけばレースの時以上に鼓動が速くなり、呼吸が浅くなっていた。

 

二人に気付かれないように近くの角に近づき、耳を澄ますと興奮しているライスシャワーと、彼女と話していた女性の声が聞こえた。

 

 

「はい! そのスカウト、受けさせてください!」

「ああ。その才能を十分に生かせるよう、力を尽くさせてもらう。これからよろしく頼む」

 

 

その瞬間、私は理解してしまった。

ライスシャワーはトレーナーにスカウトされたのだと。

彼女は、自分とは違うのだと。

 

そして悟った。私の汚さを。

 

 

 

心に、黒い感情がこみ上げる。

どうして彼女が? 私だって頑張ってるのにどうして? 

そんな後ろ暗い考えを持つ自分を認識した私は、その原因がすぐに判った。

 

笑顔で女性の、トレーナーの話を聞く彼女を見て、まるで物語の主人公だと、そう思った。

だからこれは、嫉妬なのだろう。  

周りを不幸にすると自身を蔑むウマ娘が、彼女を肯定するトレーナーと出会った。

きっと彼女は成長していく。

 

なら私は?

主人公を押し上げるための踏み台だろうか? ……ふっ、お似合いだな。

 

 

ライスシャワーが憎いとは、不思議と思わなかった。

なぜなら私は、()()()()()()()()()()()()()

 

レースで結果を残せないのは、私だけではない。

 

不安に思うのは、私だけではない。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

同じような立ち位置にいる彼女を心の拠り所(よりどころ)にして、傷の舐め合いをしようとしたのだ。

だが結局、それは私の一方通行で、調子に乗った私が才能もある、意志もある、足りないのは踏み出す勇気だけだった彼女に、ほんのちょっとの勇気を与えてしまった。

そしてこの結果だ。自業自得だな。

 

 

 

話を続ける二人に背を向け、私は気付かれない内にその場を離れた。

 

そしてその日から、自分勝手な私は、身勝手にも、彼女が、ライスシャワーというウマ娘が、ほんの少し、嫌いになった。

 

 




ライスシャワー

才能もある、意志もある、足りないのは踏み出す勇気なウマ娘。
クラウディから勇気を貰ったことで、メンタルチョビ強ライスになってる模様。
ちなみに、クラウディが焦ってることに気付いてるが、その大きさを見誤っている模様。
このままいけば地雷まっしぐらだが、クラウディからもらった『ほんのちょっとの勇気』がカギを握る(予定)


ごめんよライアン。本当は君の筈だったんだ。

この話を書く前にライスシャワーを育ててたのが原因なんだ。

つ、次は書くから……(目逸らし)

ライスのトレーナーはどうするか

  • おはなさん
  • オリトレーナー
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